東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

     東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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同人誌評
2021/02/17

「そしてふたりは気付くのです。“誰かさん”がいたことに」募集企画より全文掲載!やこうせいの亀さんよりいただいた東方同人誌レビュー『composed world』 / brother(名前はまだ無い。)

やこうせいの亀さんよりいただいたレビュー全文公開

 昨年6月に募集しました「東方同人誌レビュー募集」企画。本当にたくさんの反響をいただきました! 編集部に届いたレビューの数は、なんと55件! ご投稿いただいた皆さま、本当にありがとうございました!

 もともと、いただいたものの中から1件を選出してご掲載させていただく予定でした。ですが「コレほどの量、1件だけ掲載するのは申し訳ない! この熱い想いに応えたい!」と、編集部内での想いが高まり、おすすめいただいた東方アレンジの情報はすべて“レビュー文で特にアツいと思った一文を添えて”掲載をさせていただきます! 

レビューまとめはこちら
東方同人誌へのアツい想いがここに!頂いた「東方同人誌レビュー」全部まとめました その①
東方同人誌へのアツい想いがここに!頂いた「東方同人誌レビュー」全部まとめました その②
東方同人誌へのアツい想いがここに!頂いた「東方同人誌レビュー」全部まとめました その③

 さらに、中でもよりすぐりのレビューについては、全文掲載させていただく形にいたしました! 

 今回は、やこうせいの亀さんよりいただきました「『composed world』 / brother(名前はまだ無い。)」のレビューを掲載いたします。ぜひ御覧ください!

※掲載にあたり、一部編集部にて東方我楽多叢誌のレギュレーションに則った構成・編集を行っております。

 

そしてふたりは気付くのです。“誰かさん”がいたことに。『composed world』

BOOTHサンプルページより引用

 この本との出会いが私にとって、秘封倶楽部との出会いでした。

 いつだったか同人即売会で残り千円の所持金を握りしめてイベント終了間際の会場を回っていたところ、この表紙に目が留まりました。当時はまだ秘封倶楽部の名前くらいしか知識がなかったので、これを機に秘封倶楽部を知っていこうと思い購入しました。表紙に一目ぼれしての、いわゆる表紙買いです。このふたりの楽しそうな表情、とても素敵です。かわいい。

 この本のふたりは、特殊な目を持たず、法に触れるような秘密の活動をしていない、ごく普通の大学生です。

BOOTHサンプルページより引用

 パワースポット巡りが趣味の宇佐見蓮子。
 この世界に楽しみを見つけられていないマエリベリー・ハーン。
 
 ふたりは顔を合わせずに物語は進みます。蓮子とメリーは別々の世界にいて、お互いの存在を知りません。そこに マキナ / 真奈 という少女が蓮子とメリーお互いの世界に登場します。蓮子とメリーに近づくその少女が一体何者なのか。

 端末にぶら下げたレザーストラップに刻まれた『G.F.C』――ある時突然視えるようになった新しい世界能力――自分の筆跡であるのに身に覚えのない手帖――書いた覚えのない日記――知らないはずなのに何故か心が焚きつけられてしまう。

 ――加速していく自分の知らない記録、思い出。
 ――この世界の認識、違和感。

 そしてふたりは気付くのです。顔も名前も知らない“誰かさん”がいたことに。

 手がかりは手帖に記された活動記録のみ。

 蓮子はマキナを連れて、手帖に挟んでいた写真をもとに蓮台野へ。初めてのはずの自転車ふたり乗りを何故か上手く乗りこなしてしまう。マキナに星を見ただけで今の時間が分かる能力について話をするが、返ってきた一言に“違うな”と感じる蓮子。蓮子は“誰かさん”の存在を強く意識していく。こうした何気ない描写で誰かさんへの匂わせが非常に上手い!

 ついにふたりの想いは“逢いたい”へと変わっていきます。

 作中で引用される言葉、

 『Die Welt ist alles, was der Fall ist.(世界は事実の総体であり、ものの総体ではない)』

 世界とは、起きていることすべてのことである。逆説的に、起こっていた事実を消してしまえば、認識は改竄されて世界は新しく作られる。

 本のタイトル通り、構成された世界。そう成り立っている世界、という意味なのでしょうか。深い。

 最後の結末で明かされるその人物の正体。
 ふたりは何故乖離してしまったのか。
 すごく原作リスペクトなストーリー内容となっていて、原作を知っているとなお楽しめる作品だと思います。

 ふたりが作中で顔を合わせない秘封。マジでびっくりするほど出逢わないので、ページをめくるたび少し心配でした(笑)。でもしっかりお話もまとまっていて、読み終えたあとも心地よいものでした。

 物語の中で、ふたりは一緒にいないけど、一緒にいるときよりもお互いを想い続ける。そこに強い絆を感じますね。ちゅっちゅ。
 いなくなってから気付く、相方がいない世界はこうも空虚でつまらないものであると……。だからこそ、ふたりが一緒にいる幸せ。読み終えたあとに表紙のイラストを見ると込み上げてくるものがあります。かわいい。

 文章中のルビや――ダッシュの使い方がすごく秀逸で印象に残っています。作中に出てくる蓮子とメリーの衣装、表紙にも描かれているのですが、マジ、超絶かわいい。
 
 秘封原作のブックレット内容がしっかりと組み込まれていて、秘封倶楽部をこれから知っていこうという方にはもちろん、日々張り巡らされた結界を暴くサークルを想い求め続ける方にもおすすめの作品です。

 この本が私の秘封ファーストタッチでしたので、今でもとても思い入れの深い、言わば聖書です(笑)。おかげで今もどっぷり秘封の世界に魅了され続けています。

 作者のbrotherさん、表紙・挿絵を描いたバージニア*コンプレックスさんには感謝しかありません。brotherさんは東方創想話にも素敵な秘封作品を投稿されてます。気になった方はぜひ調べてみてください。

東方創想話 作者:brother

 『composed world』は現在BOOTHで電子版として入手可能なので、ここまで読んでくれたそこのあなた!!!!!ぜひ!!!!

 

作品情報

作品名:composed world
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4471858

サークル名:名前はまだ無い。
http://noname.yumenogotoshi.com

作者:brother
https://twitter.com/brother_NN

委託情報:
BOOTH
https://brother.booth.pm/items/329078