10年経っても変わらない、音ゲーへの愛。聴き応え抜群の美しい殺意を耳に刻め。『東方オトハナビ』全曲レビュー!! Disc2-09『STNC/非可逆リズム』
『東方オトハナビ』全曲レビュー 「STNC/非可逆リズム」
8月14日にリリースされた、東方アレンジ“お祭り“コンピレーションアルバム『東方オトハナビ』。
同人イベントが思うように開けなくなってしまった今、「こんなときだからこそ、俺たちの東方愛を盛り上げたい!」という、COOL&CREATEのビートまりおさんの呼びかけによって始まった「東方アレンジ活性化大作戦」。『東方オトハナビ』は、Disc4枚、合計40曲、総勢38もの東方音楽サークルが集まった、まさにお祭りといえるコンピレーションアルバムになりました。
参加した面々の中には、なんと「上海アリス幻樂団」のZUNさんも。この『東方オトハナビ』のために1曲書き下ろしています。
そんな『東方オトハナビ』をさらに盛り上げたい!
ということで、東方我楽多叢誌では(Bonus Trackの『マツヨイナイトバグ』『幻想に咲いた花』を除いた)全38曲を、1曲ずつレビュー! 日曜日・祝日を除く毎日、1曲1記事のペースで更新いたします。
本日のレビューは『STNC/非可逆リズム』です。
10年経っても変わらない、音ゲーへの愛。聴き応え抜群の美しい殺意を耳に刻め。
Disc2-09 STNC/非可逆リズム
Hi. 私はサンフランシスコのジェニーよ。今日はみんなに、聴き応え抜群のAnthemを紹介するわね。
『STNC/非可逆リズム』。音楽ゲームのシーンでその名を轟かす、モリモリあつしの新作東方アレンジよ。
耳に残るリードシンセ、
けたたましいキックの連射、
とてつもない音数の多さ、
めくるめく展開のラッシュ、
イントロからラストまでクライマックス……。
この曲は間違いなく「Hard Renaissance」という音楽ジャンルにカテゴライズされる曲だと感じたわ。
ハードルネッサンス、あまり聞き慣れないワードかしら?
これは音楽ゲーム、KONAMIの「BEMANIシリーズ」から生まれた、いわばゲームのために創作された音楽ジャンルの名前なのよ。
源流は「Trancecore」という、トランスを早回しにしたDJプレイから生まれた、高速なBPMとトランス特有のメロディアスさを特徴に持つ音楽よ。
この特徴が、音楽ゲームにおける最難関の曲―ボス曲―と、大変相性よかったのね。巷の音ゲーには、今でも数多くのハードルネッサンスリスペクトなボス曲がリリースされているわ。
昨今では「Arcade core」なんて呼び方もされていて、ゲームのために生まれた言葉が一つの音楽ジャンルとなって、世界中で愛されているんだから。
話が逸れちゃったわ。曲の話をしましょう。
『STNC』を再生して感じるのは、圧倒的なボス曲としての風格。
音楽ゲームの文脈を知らなくても、この曲からはものすごい圧力を感じられると思うの。お前をタダじゃ帰さない、という明確な殺意。
だってそりゃそうよね、この曲は「西行寺幽々子」のテーマ曲アレンジなんだから。
あなたは『東方妖々夢 ~ Perfect Cherry Blossom.』をクリアしたことはある?
いつまで経っても訪れない春、雪が降る中を越えてたどり着く冥界、その先に妖しく咲く妖怪桜。その前に立つ、亡霊の姫。
本当に、幽々子の弾幕ってきれいなのよね。きれいだけど、殺意を感じる。
その美しい殺意はどこから来るのかしら?
それは、彼女が「死を操る程度の能力」を持つからかも知れないし、
単純に難易度がそれまでとは一段あがるからかも知れないし、
当時としてはオーパーツと言っても過言ではないほどにゲーム的な演出を極めた、東方妖々夢というタイトルだからかも知れない。
壮絶な弾幕に肉薄されて、いい曲だいい曲だって泣きながらすべてのスペルカードを乗り越えたプレイヤーの前に最後に現れる、「反魂蝶」。
「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」という曲は、曲そのものが持つカリスマ性も最たるものではあるのだけれど、やっぱりゲームの中で聞くと、咲き誇る弾幕の中で聞くと、より美しいの。
『STNC』も、そう。
音楽ゲームにおけるカリスマ性を存分に表した音数と展開の多さ。
これでもかというほどに注ぎ込まれたピアノロールとキックの連射。
轟音の中で現れる、原曲の美しいメロディ。
原曲の美しい殺意と、ボス曲としての美しい殺意。その二つが一体となってリスナーの前に現れているわ。
ゲームのために必要な音が、音楽としての美しさに消化されている。機能と意味が一体となっている。ボス曲の美しさって、そういうところにあるんじゃないかしら。
『STNC』は間違いなく、西行寺幽々子を音楽ゲームの世界で顕現させた、紛れもないラスボス曲ね。
モリモリあつし氏は、東方アレンジを始めることになったきっかけが音楽ゲームにあると語っているわ。
この曲のタイトルは「Some Things Never Change」の略。つまり「相手変われど主変わらず」という意味。10年前に氏が寄稿したアルバムの曲と同じ名前なのね。『STNC』にも、その曲の面影が感じられる。
10年経っても変わらない、音ゲーへの愛がそこにある曲。
音ゲーを遊んでいる人もいない人も、この曲を聞いて、是非その愛を感じてみて。
『東方オトハナビ』
http://cool-create.cc/arrange-daisakusen/
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限定版
BOOTH / メロンブックス / メロンブックス(二次受付)アキバホビー(タペストリー付き) / アキバホビー / TANO*C STORE
通常版
BOOTH / メロンブックス / アキバホビー / TANO*C STOREアニメイト / あきばお~こく / ブックメイト / DIVERSE DIRECT / Grep /とらのあな
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