【全2回】「幻想郷フォーラム」関係者座談会
同人誌には「評論・情報」と呼ばれるジャンルがある。
批評、デザイン、学問、料理レシピ、エッセイ……そこには一般の人が想像する、漫画やイラストの本ではない同人誌が集まっている。“コミケ巧者”たちが「コミケの本当に面白い場所はここにある」とこぞって話す世界だ。
東方にも評論・情報ジャンルは存在する。「東方考察」と言い換えたほうが、馴染み深い人も多いだろうか。「考察系YouTuber」なんて言葉も席巻する現在だが、東方以外の他ジャンルにおいて、考察系――評論・情報の同人誌がひとつのイベントにおいて多数頒布されることは、ほとんどない。あっても1,2冊程度だろうか。
そんな評論・情報だけで、しかも東方だけに絞ったオンリーイベントとして開催されているものがある。今週末、6月25日にポートメッセなごやにて開催される「幻想郷フォーラム(正式には『Re:幻想郷フォーラム2023』)」だ。
ポスターセッション・オーラルセッションという、他の同人イベントにはない独自の形態での参加が可能な『東方Project情報・評論系オンリー同人イベント』だ。こんなイベントが実現できるほどに、東方の情報・評論――あえてここでは考察と言い換えたい。東方の考察は拡大を続けている。
なぜ、東方では考察が流行るのだろうか。
ZUN氏が私たちに垣間見せてくれる不思議な世界――幻想郷と、そこに或る幻想少女たちについて、多くの人がもっと「知りたい」あるいは「考えたい」と思っているのは間違いない。でも本当にそれだけで、オンリーイベントが開けるまでに、発展するものなのだろうか。
この座談会では、4年ぶりの開催となる「幻想郷フォーラム」の関係者たち5名にお集まりいただき、「幻想郷フォーラム」が生まれるまでの流れについて、そこから派生して生まれた「川崎読書会のプレゼンタイム」「東方発表会」「東方カンファレンス」、そして東方考察が歩んできた道筋について、主にイベント開催の観点から話を伺った。
そしてたどり着く「なぜ東方では考察が流行ったのか」について。そして「東方を考察する」とは一体なんなのか、それぞれに仮説を出すことにした。
前後編合わせて3万字を超える長編インタビューとなっているが、ぜひお付き合いいただきたい。
文・聞き手/西河紅葉
目次
前編
「幻想郷フォーラム」の発足が及ぼした影響と、東方評論・情報サークルの萌芽
更新: 2023/06/22
後編
『東方文花帖』と『東方求聞史紀』こそが、最初の東方情報・評論本なのではないか?という仮説
更新: 2023/06/23