頭が飛ぶ!増える!!文字通り“頭を使う”パズルアクション!! 同人ゲームレビュー『クビナシリコレクション』/給食頭蛮
同人ゲームレビュー『クビナシリコレクション』/給食頭蛮

はじめに
こんにちは。今回サークル「給食頭蛮」さん制作の東方二次創作ゲーム『クビナシリコレクション』のレビューを執筆させていただく、人形使いです。
私はさまざまな東方二次創作の感想をブログ『A Day in The Life』で書いています。東方我楽多叢誌では、以絵会友・tripper_room制作の東方二次創作ゲーム「ヨイヤミドリーマー」をレビューさせていただきました。
「言葉を尽くさず物語を語るとは――」 同人ゲームレビュー『ヨイヤミドリーマー』/以絵会友・tripper_room制作
同人ゲームレビュー『ヨイヤミドリーマー』
今回取り上げる「クビナシリコレクション」は、東方二次創作ゲームや東方アレンジ、そしてVtuberなど多岐に渡って活躍中のサークル「給食頭蛮」のぱらどっと氏が、愛してやまない赤蛮奇を主人公にした二次創作ゲーム。赤蛮奇の能力である「頭を飛ばせる程度の能力」をパズルゲームのシステムに落とし込んだ、一風変わった作品です。
1.赤蛮奇への愛情と理解に支えられた東方二次創作ゲーム

東方Projectには、2026年7月現在で200人近いキャラクターが存在します。その中でも、本作を制作したぱらどっと氏のお気に入りが、赤蛮奇。東方Project第14弾「東方輝針城」で初登場したろくろ首です。
作者の活動を追っている方なら、イラストや東方アレンジなどの作品の大部分に赤蛮奇が登場していることがわかるでしょう。本作もまた、そんな赤蛮奇に対する愛情や理解に支えられて制作された作品なのです。

2.赤蛮奇の能力をそのままパズルに組み込んだ特徴的なゲームシステム
ゲームの解説に入る前に、まずは赤蛮奇というキャラクターを改めて振り返ってみましょう。
赤蛮奇は、東方Project第14弾「東方輝針城」の2面ボスとして初登場したキャラクターで、種族はろくろ首。ろくろ首は首が長く伸びる妖怪ですが、赤蛮奇の能力は「頭を飛ばせる程度の能力」となっており、ゲーム中では胴体から頭だけを切り離したり、その頭を増やしたりするトリッキーな攻撃でプレイヤーを苦しめます。

「クビナシリコレクション」のストーリーでは、赤蛮奇のまわりにいる影狼やわかさぎ姫といった妖怪たちが、なぜか大切な思い出を忘れてしまうという小さな事件から幕を開けます。
違和感を抱えつつも、日常を過ごしていた赤蛮奇が目を覚ましたのは夢の世界。その世界には、失われた思い出のかけらが散らばっていたのです。赤蛮奇は夢の管理人・ドレミーに頼まれ、夢の世界に散らばった思い出のかけらを集めることにしたのでした。

このように、本作はステージ内のギミックを解き明かして散らばった夢のかけらを取得するのが目的。ステージをクリアするごとに夢のかけらから再現される思い出は、ぱらどっと氏の温かみのあるイラストで描かれており、絵本のような柔らかな印象を受けます。
そして、この夢の世界のパズルを解き明かすための本作の醍醐味が、「ふたつの意味で頭を使う」と題された、赤蛮奇の能力をうまくゲームとして再現したシステムなのです。
では、この「ふたつの意味で頭を使う」とはどのようなゲームシステムなのか? それを次の段から見ていきましょう。
3.「ふたつの意味で頭を使う」という特徴的なシステム
赤蛮奇は、自分の頭を増やすという能力をもっています。ゲーム中では、この頭を足場として高い足場にジャンプしたり、重しとしてスイッチを押したり、障害物を破壊したりとさまざまなアクションが可能。
つまり、原作で自分の頭を増やしたり飛ばしたりする赤蛮奇の能力を、そのままパズルアクションを解くための能力として使っているのです。
以下に、その基本的なアクションを紹介しましょう。



赤蛮奇が頭を増やせる数は、ステージによって決まっています。そのため、ギミックによってはただ単に増やした頭を使うだけではなく、増やした頭をいかに使いわますかが重要になるのです。ギミックは作動させたものの取りに行けない場所に頭を置いてしまったり、後戻りできない場所に行ってしまったりするとクリアできません。また、複数のギミックが絡み合った後半面では、最初にどのギミックを作動させるかも重要になってきます。
このように、プレイヤーは文字通り「ふたつの意味で頭を使って」ステージに挑むことになるのです。
一方で、本作のパズルは各ステージで規定されている頭の数をすべて使わなくてもクリアできます。そのため、上級者の中にはより少ない手数でクリアするやりこみを行うプレイヤーも。ただ単にクリアするだけでなく、ゲームシステムの理解が深まるごとにやり込めるようになっていく奥の深さも本作の大きな魅力と言えるでしょう。
4.ステージごとに増えていくさまざまなギミック
本作の舞台となる夢の世界には、さまざまなギミックが立ちはだかり、プレイヤーを苦しめ、また楽しませてくれます。
以下に、代表的なギミックを紹介していきましょう。



基本的なギミックでもこれだけバラエティに富んでおり、後半ステージともなると多数のギミックが複雑に絡み合っています。一手間違えただけでクリアできなくなったり、最初の正しいアクションを見つけ出すまで何回もリトライしたりすることになるでしょう。
本作にはステージ全体を見渡すスクロール機能があります。ゴールまでの道程が長い後半ステージでは、まずステージ全体のギミックを確認してから最初の一手、そしてギミックを解いていく順番を決めていくことになります。
しかし本作にはアクション要素もあるので、なかなか想定通りにはいかないもの。誤って穴に落ちてしまったり、敵に不意打ちを食らってしまったりすることも。このパズルとアクションが高いレベルで融合しているのが本作の難しさであり、また大きな魅力でもあるのです。
さらに本作にはやりこみ要素として、ゴール地点となる夢のかけらとは別に各ステージにひとつパズルピースが配置されています。
これがなかなかの曲者で、パズルピースを回収してからゴールするとなるとこれまでとはまったく違った攻略ルートを求められることになるステージも多く、二重三重のやりこみができる作品となっているのです。
さらに、これらのパズルピースは単なるコレクタブルアイテムではなく、全取得すると真ENDを見ることができます。ノーマルエンドでは見られなかった事件の真相を見ることができるので、周回プレイの際はぜひとも全取得を目指してみましょう!
5.ゲームプレイのストレスを減らすさまざまな配慮
後半面になるとアクションとパズルの両方のスキルが必要なステージも増えるので、本作のパズルゲームとしての難易度はかなり高いといえます。しかし、難しいからと言って投げ出してしまうのはもったいない! 本作には高難度ステージで行き詰まってしまったときのユニークな救済措置があるのです。
その名も「ナインズヘッドモード」。

これは、すべてのステージで頭を9個まで増やせるようになるというもの。数の制限を解除することでギミックを強引に突破できるようになるため、攻略難易度が大幅に下がるほか、ノーマルモードではできないスピードでのクリアに挑戦することもできます。また、まずはナインズヘッドモードでギミックの全容を把握したうえで、ノーマルモードで段階的に攻略するというプレイも可能です。
もちろんこの元ネタは「東方輝針城」難易度ルナティックで赤蛮奇が使用してくる、頭を9つに分裂させるスペルカード「飛頭『ナインズヘッド』」です。こうした救済措置までしっかり赤蛮奇の能力を徹底してゲームシステムに反映しているところに、ぱらどっと氏のこだわりが感じられるでしょう。
また、本作のストレス軽減の工夫としてあげておきたいのがリトライのしやすさ。
ゲーム好きなら多くの人が、ゲームオーバーから毎回数十秒のローディングを挟まれてイライラ……という経験があるでしょう。その点本作は、いつでもボタンひとつでリトライすることができます。
本作では、頭を使い切ってしまったり脱出できない高さのくぼみに落ちてしまったりといった「詰み」が頻繁に起こります。そのたびに毎回ローディングで待たされていたらプレイ中のストレスは大きなものになってしまうでしょう。
しかし、本作はボタン長押しで迅速にリトライできるようにすることで、高難度ゲームにおける「高難易度ステージで詰むと長時間そこから進めなくなってしまう」「リスタートが遅いとプレイのたびにストレスがたまってしまう」というマイナス要因を排除し、ストレスなく試行錯誤できる設計になっているのです。
6.ぱらどっと氏による可愛らしいドット絵とキャラ絵とBGM
これまで述べてきたように、本作は赤蛮奇を主人公としたパズルゲームとして非常にプレイしやすく、なおかつ手応えのあるものとなっています。
その魅力を支えているのが、ぱらどっと氏による可愛らしいドット絵や立ち絵、そしてBGMでしょう。

グラフィックはゲームの外見的な魅力と方向性を決定づける要素です。本作に登場する赤蛮奇をはじめとする東方キャラは、どれもぱらどっと氏の絵柄をそのまま反映したかのような可愛らしいドット絵で表現されており、見ているだけで楽しい気持ちになれます。本作が配信されているsteamのレビューの中にも「赤蛮奇のドット絵が可愛かったので買った」という声が散見されるほど。
個人的な良ゲー判定基準として「キャラを動かしているだけで楽しい」があると思っているのですが、この点も十分満たされます。
プレイヤーキャラである赤蛮奇には、多彩なアクションがあるのと同じように、多彩な表情と動作があります。よく見てみると増やした頭にはさまざまな表情があるのがわかるでしょう。このように、多彩な表情を見せてくれるドット絵は、高いクオリティでプレイヤーを楽しませてくれるのです。

ぱらどっと氏の手掛けるデフォルメの効いた立ち絵は、第2章で述べたメルヘンチックなストーリーと非常に相性がよく、各ステージをクリアしたあとに開放されるさまざまな東方キャラの思い出も温かみを感じさせてくれます。ギャラリー要素も完備されており、いちど突破したステージの思い出は、メニュー画面から見ることができます。
メニュー画面のUI自体にもふんだんにぱらどっと氏のイラストが使われており、ただの無機的なメニュー画面では味わえない、絵本を広げたような賑やかさがあるのです。
もちろん、ゲーム内の個性豊かなステージとストーリー展開を盛り上げてくれるBGMの存在も忘れてはいけません。多くの人が知る通り、ぱらどっと氏は多数の東方アレンジを自身のyoutubeチャンネルにて投稿したり、各種イベントでアレンジCDを頒布しており、そうした素晴らしい東方アレンジの数々は本作でも健在。キャラやステージの雰囲気に合った、多種多様な東方アレンジ楽曲が楽しめます。
個人的にぱらどっと氏の東方アレンジですごいと思っているのが、同じ原曲から全く異なるアレンジの曲をたくさん作っている点。本作では赤蛮奇が主役なので、テーマ曲である「柳の下のデュラハン」がゲーム各所で、それぞれ異なるアレンジのBGMとして使用されています。
本作のサントラ「ドリームフォノグラフ」を確認してみたところ、「柳の下のデュラハン」のアレンジ楽曲数はなんと13曲! しかもこれらの曲は、ただ単にアレンジの方向性が違うというだけでなく、どれも使用されているゲーム中の場面にぴったりのアレンジになっているのです。ひとつの曲からこれだけのアレンジを生み出し、なおかつゲーム中のさまざまな場面に違和感なく納めているのは、まさに第1章で触れたぱらどっと氏のマルチクリエイターとしての面目躍如と言えるでしょう。
おわりに
東方Projectは今やあらゆるメディアに広がっており、さまざまな場所で東方キャラを目にします。それらのメディアやグッズとして露出が多いのは、やはり霊夢や魔理沙、咲夜といった主役級のキャラ。
しかし、東方二次創作には本作のようにあまり知名度の高くないキャラを主役としたものもあります。そうした作品は、本作を制作したぱらどっと氏がそうであるように、作者による深いキャラ愛に支えられていることも少なくありません。
本作のような東方二次創作ゲームは、コンシューマー機に移植されているものも多いので、2026年7月現在ではPCでしか遊べない東方原作に比べて「ゲームの中の東方キャラ」に触れられる貴重な入口であるとも言えます。そうした意味では、東方二次創作ゲームは自分の好きなキャラクターが活躍する作品を見つけられる貴重なジャンルだと言えるかもしれません。
東方Projectには無数のキャラが存在しますが、どんなキャラにもファンはいるもの。そして、同じキャラを好きな人と出会うことも東方Projectという世界の大きな楽しみです。そうした出会いの中で、自分も大好きなキャラのために何かを表現してみたいと思ったら、作り手としてこの世界に参加することもできます。この懐の深さこそが、東方Projectというジャンルの大きな魅力なのです。
あなたも、自分の好きな東方キャラのために、思い思いの作品を二次創作ゲームとして表現してみるのも良いかもしれませんよ?
作品情報
作者名:
ぱらどっと作品名:
クビナシリコレクションサークル名:
給食頭蛮HP:
https://sekibanki.jp/works/PRGA-0001.html
・Nintendo Switch:https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000043988
・steam:https://store.steampowered.com/app/1635980/_/?l=japanese
・BOOTH:https://zenerat.booth.pm/items/3360755







