東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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東方Projectが神社とコラボ!?霊烏路空に出会える場所、五方山熊野神社『熊野祭』現地レポート(後編)

東方Projectが神社とコラボ!? 霊烏路空に出会える場所、五方山熊野神社『熊野祭』現地レポート(後編)

 初めまして、もしくはお久しぶりです。普段は聖地巡礼を主な活動にしている東葉旅人ひがしばたびとです。

 先日行われた五方山熊野神社と東方Projectのコラボレーション企画は皆さんの記憶に新しいと思われます。

 過去にも聖地巡礼記事で取り上げた五方山熊野神社【※】ですが、東方我楽多叢誌によるインタビューに同席させてもらったということもあり、あらためて関係する東方ネタをより詳しく紹介しながらコラボ企画を振り返っていきたいと思います。

【※】『地霊殿のステンドグラスのマークには元ネタがあるって知ってた?来年のイベントに合わせて、関東“東方聖地”を歩く。――東葉旅人の聖地巡礼手引き』2020年12月23日掲載

文・聞き手/東葉旅人
写真/るぅく
編集/土露団子

 

奉納のど自慢カラオケ大会×東方アレンジ

 コラボ御守りと絵馬が頒布されてから初の土曜日となる9月23日。東方ファンも多く訪れたと思われるこの日には、15時から五方山熊野神社の神楽殿で、奉納のど自慢カラオケ大会が行われました。当初は33組のエントリーでしたが、当日の飛び入りも含めて44組・総勢50名以上が参加し、盛り上がりを見せていました。

 境内にはカレーとクレープのケータリングカーが来て、氏子たちもフランクフルト・やき鳥・かき氷やアルコール・ソフトドリンクを提供するなど、小規模ながら賑やかな祭りの雰囲気を醸し出しました。古くから地域社会の中心であった神社の、時間や場を共有する役割を、文字通り「飲めや歌えや」で果たしています。

 逢魔時が過ぎ、夜の帳が下りた頃、こちらのカラオケ大会に参加した2人により東方アレンジの歌声が披露されました。その際に司会からの紹介で、歌う前にコラボ御守りと絵馬や東方のことにも言及されています。

 1人は、東方アレンジ制作サークルでVocalを務めている、そらとりそらとり氏は霊烏路空のコスプレ姿で 、「SOUND HOLIC」の『Rainy, rainy days』を歌いました。もう1人は、『あつまれ!東方ステーション2023 in ところざわサクラタウン』の大・東方のど自慢大会に出演した、おぼろおぼろ氏は、「幽閉サテライト」の『月に叢雲華に風』を歌いました。

 お二人とも歌に関する活動実績を持っているだけあり、堂々とした歌声を響かせ、東方コラボの幟がはためく神社に花を添えてくれました。下記の動画で、そらとり氏は15:47から、おぼろ氏は16:54から歌っている様子が視聴できます【※】

【※】五方山熊野神社公式チャンネル『ここは葛飾熊野チャンネル』内の『歌ってやっぱりいいな!【熊野祭 のど自慢カラオケ大会】44組総勢50名以上が大熱唱!!』より

 今回、この取材に同行した編集の土露団子氏がお二人にそれぞれインタビューを行いました。まず最初にうかがったのはおぼろ氏。

 今年の9月3日にところざわサクラタウンで行われた『あつまれ!東方ステーション2023』ののど自慢大会にも出場された、中学2年生の娘を持つ主婦おかあさんでもあります。普段は娘さんと一緒にカラオケに行ったり、東方のグッズを買いに秋葉原へお出かけもするなど、親子で東方の世界を楽しんでいます。

 今回のカラオケ大会については、たまたまネットで情報を見つけた際に、「ご縁があったら呼ばれるかもしれない」と思い、締切当日に滑り込みで申し込んだところご縁が結び、参加が決まったとのこと。前回歌った東方ステーションと違い「これから歌う曲をみな知っているのかな?という緊張もあったそうですが、いざ歌い始めてみると子どもたちが合いの手を入れてくれるなど、とても楽しく歌えたそうです。

「我楽多叢誌を通して、この記事を読んでいる読者に伝えたいことはありますか?」と尋ねたところ「私みたいに誰かに聞いて知ったとか、それこそ最初は小さなアクスタとか、そういうちょっとしたきっかけで何かが始まったら、臆せずに前に行ったらいいんじゃないかなって思います」と笑顔で語ってくれました。

 続いて次にうかがったのはそらとり氏。普段はコスプレをして遊んだり、「U.N.逢縁」というバーでお酒を作ったり、音楽系のボーカルをしたりと積極的に活動しています。

 そらとり氏もたまたまX(Twitter)で今回のコラボ企画の情報を目にして「これは行くしかない!」と思って駄目元で申し込んだところ、運良く参加することができたとのこと。

 これまでにもライブなどでステージ上で歌ったことはあったものの、今回は足元にモニターがある配置ということもあり、なかなか思うように目線が上がらず少し下がってしまって、感覚を掴むのがなかなか難しかった様子。それでも今回ののど自慢大会は、彼女にとっても非常に良い経験になったようです。

 余談ですが、先に歌い終えたそらとり氏が、観客席付近でおぼろ氏を応援していました。地霊殿のステンドグラスと似た意匠の御神紋が並ぶ場所で、お空のコスプレ姿をして手を振る様子は、『東方心綺楼』の一幕と重なる光景でした。

 

 

祭りを終えて

 熊野祭が終わり、秋葉原のコラボグッズ販売期間も終了しましたが、10月末の時点でも拝殿前には東方コラボ幟設置されたままです。神社側に確認したところ、しばらくは置く予定とのこと。ただし、年末年始は未定とのことで、コミックマーケット103の前後などは厳しいかもしれません。多くの神社が、初詣に備えて拝殿前は混雑対策の模様替えを行う時期ですので、移動あるいは室内に保管されている可能性があります。

 品切れだった東方コラボの御守りですが、10月28日(土)から再頒布され、コラボ絵馬と共に郵送での対応も行っています。遠方ですぐに参拝するのが困難な人は、神社公式ホームページの「お問い合わせ」から入手可能です。また、通常の御守りや御朱印も郵送対応を行っています。コラボ以前から神社を訪れていた東方ファン(なんとなく判別がつくとのこと)の参拝者は、画像の御守りを求める傾向があったようです。

 1つは袋入りのオーソドックスな御守りである熊野守。紫色の布地に加えて、手に取ると桜色の部分がきらめく仕様で、地霊殿の主や石桜が降り注ぐ地底世界を想起させてくれます。もう1つは五方山熊野神社の縁起を象徴する意匠の五角守。八咫烏が住んでいると伝わる太陽のように金色に輝いています。

 気になる次回の予定ですが、9月23日時点では何も決まっていないとのことです。そうは言っても、期待してしまうのは筆者だけではないと思われます。話は変わりますが、千島宮司は五方山熊野神社と神田明神を兼務していた時期があったそうです。

 東京における初詣の名所として、よくニュースにもなっている神田明神『東方永夜抄』で上白沢慧音が使用するスペルカードの元ネタになっている、平将門公が祀られている場所でもあります。秋葉原に近い立地のため、この記事をご覧になっている人は参拝したことがあるかもしれません。

 その立地から神田明神は、アニメ作品などとよくコラボをしています。千島宮司も兼務時代はそういった案件に関わっており、様々なノウハウや人脈などを持っているようです。それもあってか、今後は『ブルーロック』というサッカーを題材にした作品とのコラボも考えているとのことです。今回の東方コラボによる反響次第では、いずれ何らかの形で東方Project関連の企画が持ち上がるかもしれないと、個人的に期待しています。幸いなことに、五方山熊野神社へ参拝に訪れた東方ファンは礼儀正しいと感じていただいていることが、インタビューで判明しています。筆者もそれに恥じない立ち振る舞いで、神社への祈願に訪れていきたい所存です。

 

後書き

 記事内で紹介した熊野祭ですが、神社の公式ホームページにある「お知らせ」で当日の様子が紹介されています。また、カラオケ大会の部分で記述したYouTubeチャンネル『ここは葛飾熊野チャンネル』で、熊野祭の11日間を記録した動画もアップロードされています。YouTubeでは他にも、神社関係に加えて氏子区域の様々なことが取り上げられています。今年の6月末以降、精力的に動画による情報発信を続けているので、是非視聴してみてください。

 今回の五方山熊野神社の催しは、神社との正式な東方コラボとしては、おそらく初めてだと思われます。本記事が、参加した人には振り返りの機会に、遠方で行けなかった人には追体験の機会となれば幸いです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

東方Projectが神社とコラボ!?霊烏路空に出会える場所、五方山熊野神社『熊野祭』現地レポート(後編) おわり

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