東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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横浜・山手の丘には紅魔館があった?――東葉旅人の聖地巡礼手引き

東葉旅人の聖地巡礼手引き【山手・大山・高円寺・秦野】

 東方我楽多叢誌をご覧のみなさん、こんにちは。東方の聖地巡礼を主な活動としている東葉旅人です。

 前回までの記事では、イベントに合わせた東京の聖地巡礼スポットを紹介してきました。大都市であり様々な要素が集まる東京は、コミックマーケットや博麗神社例大祭などを含めた同人イベントへの参加以外でも、何らかの理由で遠方から訪れる機会は少なくないと思われます。

 これ以降の記事からは、用件が済んだ後で時間に余裕がある場合を想定して、交通の要衝である東京から日帰りか1泊程度で行ける関東の聖地巡礼スポットを紹介していきます。関東に住んでいる人にとっては、身近な場所で気軽に行きやすい聖地巡礼スポットでもあるかもしれません。

 今回の記事では神奈川県の聖地巡礼スポットを紹介します。

 現在は新型コロナウイルスの影響により外出が厳しい情勢ですが、落ち着いた後の聖地巡礼計画の参考にしていただければ幸いです。記事の内容や営業時間などはコロナ禍における感染拡大防止策が影響しているので、収束後に訪れる時とは違う可能性があります。ご注意ください。

紅魔館の元ネタ

 幕末から明治の一時期まで外国人居留地だった横浜の山手。現在も内部を見学することが可能な西洋館が7つあり、西洋の文化と東洋の文化が入り交じった都市としての雰囲気を残す一端を担っています。そんな山手地区の一角に、明治17年頃にイタリア領事館があったことから、イタリア山と呼ばれている場所があります。そこに建てられている「外交官の家」という西洋館の内部には、紅魔館の元ネタになったと思われる箇所があります。

 上の画像は「外交官の家」2階にある主寝室です。この右側にある窓・カーテン・椅子が、『東方妖々夢』『東方永夜抄』の咲夜EDで描かれている紅魔館の内部と酷似しています。

 東方作品の元ネタと思われる写真が複数掲載されている「歴史遺産 日本の洋館〈第1巻〉明治篇(1)」「歴史遺産 日本の洋館〈第2巻〉明治篇(2)」という書籍があります。この第2巻では、机がなく窓枠もはっきり見える状態の写真が掲載されているため、EDの冒頭で表示されている絵とほぼ一致します。ここを訪れてからEDを眺めてみると、より紅魔館の情景が浮かびやすくなりそうです。

 瀟洒な洋館には付き物の庭園。「外交官の家」の前にも、紅魔館同様に見事な庭園が広がっています。主寝室の一部である八角形の部屋から一望できますが、現在は感染症対策のため立入制限がかかっています。部屋の入口までは入れますので、館内の人数制限で待つことはあるかもしれませんが、紅魔館の窓辺を目にすることは可能です。ただ、現在は滞在時間が長くならないようにするためか写真撮影は禁止となっています。

 紅魔館といえば紅茶。残念ながら洋館部分ではないですが、建物入口の付属棟では「ブラフガーデンカフェ」が営業しています。テラス席もあるので、感染症対策をしながらティータイムを楽しめます。

 横浜だけではなく、東京都北区にも紅魔館の元ネタがあります。東方Projectオフィシャルマガジンである『東方外來韋編』の弐(2冊目)。そこで掲載されている紅魔郷の紹介記事で、イメージ画像として使用されているのが「旧古河邸」という洋館です。都立庭園である旧古河庭園のバラ園から眺めるとイメージ画像と一致します。
※緊急事態宣言の期間中は休園しているためご注意ください。

 春と秋にはバラフェスティバルが開催され、洋館の周囲が華やかになります。『東方花映塚』の咲夜EDで描写されているような紅い薔薇をはじめとして、多種多様な薔薇の花が館を彩っています。

 洋館内部の見学は通常ならばガイドツアーですが、現在はコロナウイルス感染拡大防止のため1階を自由見学(400円)という形式になっています。また、喫茶室の利用という形でも入館が可能です。紅茶やコーヒーを楽しめる1階の大食堂は紅色の壁となっているため、紅魔館に招かれた人間の里の住民気分を味わえます。洋館内部はコロナ以前から撮影が禁止のため、画像による紹介はできませんが、人が少ない時はとても良い雰囲気なのでおすすめです。

住所・アクセス

外交官の家(山手イタリア山庭園)
神奈川県横浜市中区山手町16
開館時間 9:30~17:00(入園は16:00まで)
カフェの営業時間は10:00~16:30(ラストオーダーは16:15)
定休日  なし
入園料  無料

最寄り駅:
石川町駅(JR根岸線) 
元町口(南口)より約180m 徒歩3分程度

元町・中華街駅(みなとみらい線)
3出口(中華街口)より約1.1km 徒歩14分程度

 

旧古河邸(旧古河庭園) 
東京都北区西ケ原1-27-39
庭園の営業時間  9:00~17:00(入園は16:30まで)
定休日  なし
入園料  150円
建物の営業時間 10:30~16:30(入館は16:00まで)
定休日  公式サイトでその都度告知
入館料  400円(1階の部分の自由見学)
喫茶室の営業時間は11:00~16:30(ラストオーダーは16:00)

最寄り駅:
上中里駅(JR京浜東北線)
出口より約480m 徒歩6分程度

駒込駅(JR山手線)
北口より約800m 徒歩10分程度

 

八意永琳の元ネタ

 山岳信仰や天狗信仰などで知られている神奈川県の大山。その登山道の入口付近にある大山ケーブル駅から歩いてすぐの場所に「八意思兼神社」があります。「八意思兼」は天岩戸の神話などで活躍した智惠の神様で、その名のとおり『東方永夜抄』で初登場した八意永琳の元ネタだと思われます。

 ここは元ネタの神様が祀られていることの他にも特筆すべき要素があります。それがこの神社の額で、『東方儚月抄(漫画版)』の上巻で著者近影として使われています。ある意味では、原作に登場している場所とも言えるかもしれません。由緒書きがないためこの神社についての詳しいことは不明ですが、追分社と書いてあるように男坂と女坂という2つの登山ルートを選択する場所となっています。

 「八意思兼神社」に向かう途中に気付くと思いますが、この大山では豆腐料理が名物となっています。2007年3月に東方の原作者であるZUN氏のブログ【博麗幻想書譜】で紹介されているように、毎年3月頃に開催されている「大山とうふまつり」では湯豆腐をふるまう仙人鍋があります。ZUN氏にも好評の美味しさのようですので、この時期に聖地巡礼するとより楽しめそうです。2020年と2021年は中止のため、コロナ禍が収まってからの話になりそうですが……。

 ちなみに、大山産の豆腐は首都圏のスーパーなどで売られていることがあります。参道の茶屋などで提供されている温豆腐(お吸い物などに豆腐が入っている)であれば、自宅でも手軽に作れますので、お住まいの近くの店に置いてあれば買ってみてはいかがでしょうか。

 東京都杉並区にある日本で唯一の「気象神社」でも、八意思兼命は祀られています。「晴」「曇」「雨」「雪」「雷」「風」「霜」「霧」という八つの気象条件を司ることができるとされ、香霖堂で語られそうな言い伝えとなっています。

 絵馬は天気占いでおなじみの下駄のデザインとなっています。この気象神社で参拝をして、絵馬の奉納やお守りを大切に持った結果、雨男・雨女を脱したという声もあるようです。

 天気関連の悩みがあるならば、助けを求めると良いことがあるかもしれません。

住所・アクセス

八意思兼神社
神奈川県伊勢原市大山

最寄り駅:
伊勢原駅(小田急小田原線)
北口 バス4番線から終点の大山ケーブルバス停まで約30分
八意思兼神社の近くにある大山ケーブル駅まで、バスを降りて徒歩15分程度

 

気象神社
東京都杉並区高円寺南4-44-19(高円寺氷川神社境内)
参拝時間 早朝~17:30(10月~3月は17:00まで) 時間外は閉門

最寄り駅:
高円寺駅(JR中央線・総武線)
南口より約120m 徒歩2分程度

 

スターサファイア製「桜の塩漬け」

 『東方三月精 〜 Visionary Fairies in Shrine.』の2巻第10話で宴会に登場している「桜の塩漬け」。神奈川県秦野市は「桜の塩漬け」に使われる花びらの生産地で、全国シェア8割程度を占めている日本一の場所です。桜というとソメイヨシノが定番ですが、食用としては八重桜が加工され、八分咲き程度になると収穫されます。

 小田急線の渋沢駅前にある「JAはだの 特産センター 渋沢店」などでは、地元で収穫・漬け込みを行っている「桜の塩漬け」が毎年6月頃に販売されています。また小田原市の「梅の里かみお」というお店では、通販でもさくら茶・桜花漬などの名称で扱っていて、通年で販売しているので入手が容易です。お酒・お茶に浮かべるのはもちろん、塩気があるのでご飯に混ぜるなど料理に使用しても美味しくなります。自宅でも可能な花見として、霊夢や魔理沙に好評だった「桜の塩漬け」を食べてみてはいかがでしょうか。花映塚や天空璋のような異変の影響がなくても、一年中桜が楽しめます。

 小田急線の秦野駅北口1階にある「名産センター」では、桜の名産地らしく「桜の塩漬け」が使用されたお菓子の土産物が販売されています。

 「桜の塩漬け」が使用されたお菓子自体は、桜の咲く時期に合わせて日本全国で売られていますが、秦野市ならば時期を選ばず入手できます。筆者が11月に訪れた時は、「さくらの小径」「みなせの桜」「鶴巻温泉まんじゅう」の3種類がありました。

 秦野市の飲食店やお菓子屋では、他にも花見の時期に合わせて「桜の塩漬け」を使用した特別メニューが提供されます。渋沢駅や秦野駅は「八意思兼神社」の最寄り駅である伊勢原駅から近いので、同時に訪れる場所としてもおすすめです。

住所・アクセス

JAはだの 特産センター 渋沢店
神奈川県秦野市柳町1-14-2 
営業時間 9:00~20:00

最寄り駅:
渋沢駅(小田急小田原線)
北口より約80m 徒歩1分程度 

 

名産センター
神奈川県秦野市大秦町1-1 小田急マルシェ1F
営業時間 9:00~19:00

最寄り駅:
秦野駅(小田急小田原線)
北口より徒歩1分程度

 

おまけ

 東京からも近く、神奈川県の代表的な観光地の一つである横浜中華街。直接的な聖地巡礼ネタこそありませんが、東方的な小ネタならば色々とあったりします。

 秘封俱楽部でおなじみの宇佐見蓮子。この蓮子という字は、中国語においては蓮の実という意味を持ちます。中華食材屋などでは、乾燥された状態の蓮子が袋に入って販売されています。

 蓮の実を使用した餡が入っている中華菓子(月餅など)には「蓮蓉」という名が付いていることが多く、横浜中華街のような場所ならば少し探せばすぐに見つけられるので、カジュアルに蓮子が食べられます。中秋節(9月か10月)の時期になると、普段は蓮子味の月餅を扱っていない店でも販売されたり、豪華版(満月に見立てた塩漬卵黄入り)になって登場します。

 ZUN氏のブログ【博麗幻想書譜】で紹介されている東方ネタ的な品もあります。アジアの雑貨などを扱っている「チャイハネ」というお店では、「陰陽玉」と「パチュリー」が販売されています。

 2005年12月や2006年2月の【博麗幻想書譜】に載っている「陰陽玉」は、健康玉・健身球・鉄球など複数の名称で呼ばれている代物です。横浜中華街にある本店を含めて、日本全国にある「チャイハネ」の店舗で扱っています。「チャイハネ」では陰陽デザインの健康玉は赤色のみですが、他の店舗や通販サイトでは緑・青・黄もあります。

 同じく2006年2月の【博麗幻想書譜】に載っている、寺院の香りである「パチュリー」。

パチュリーのお香自体は様々なエスニックショップで販売されていますが、陰陽箱に入ったYING-YANGブランドとは限らないため、確実に入手したければ「チャイハネ」をおすすめします。名前ネタになりますが、白蓮のお香も販売されています。

 横浜中華街には他にも、陰陽や八卦が描かれた物や、吉弔と重なる姿である龍亀の置物などがあり、東方好きな人ならばより楽しめる要素があふれています。紅魔館の元ネタがある「外交官の家」からも近いので、食事を兼ねて寄ってみたらいかがでしょうか。

 

後書き

 本記事をご覧いただきありがとうございました!

 次回の記事では東京都と埼玉県にある聖地巡礼スポットを紹介する予定です。記事を通してまたお会いできることを楽しみにしています。

横浜・山手の丘には紅魔館があった?――東葉旅人の聖地巡礼手引き おわり

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