コラム
2021/01/21

『伊弉諾物質』のジャケット画像、元ネタは文京区の植物園に――東葉旅人の聖地巡礼手引き

東葉旅人の聖地巡礼手引き【白山・蒲田・丸子橋・鴨川】

 東方我楽多叢誌をご覧の皆さん、こんにちは。東方の聖地巡礼を主な活動としている東葉旅人です。

 これから東京(川崎)で予定されている同人誌即売会としては下記のものがあります。

2021年1月24日(日曜)と3月7日(日曜)に大田区産業プラザPiOで開催される【東方合同イベント2021新春!】【東方合同祭事・漆
2月21日(日曜)に東京綿商会館で開催される【華激ノ宴3 FINAL】(編集部註:こちらのイベントは延期となっています)
2月27日(土曜)に川崎市産業振興会館で開催される【幺樂団カァニバル!10R/幻想人形祭4R

 今回の記事ではそれらの前後に訪れやすい聖地巡礼スポットを紹介していきます。

編集部註
こちらの原稿は2020年中にご執筆いただいたものです。現在、東京都内は非常事態宣言が施行中です。各イベントの開催状況はそれぞれの公式サイト、Twitterアカウントなどをご覧ください。
現在、関東圏での移動は難しい状況となっておりますが、『聖地』は比較的逃げにくいモノですので、また動きやすい世界が訪れたら、ぜひこの記事を参考にして巡礼に赴いて頂けたなら幸甚です。

 

伊弉諾物質のジャケット画像と依神紫苑についての元ネタ―小石川植物園

「華激ノ宴3 FINAL」の最寄り駅のひとつである馬喰横山駅から乗り換えて、14~18分ほどで到着する白山駅。ここから徒歩9分程度の距離に、小石川植物園という二重の意味で東方の聖地巡礼ができる場所があります。

 ひとつ目は【伊弉諾物質】となります。

 ブックレットやCDケースの背景として使用されている森林、これは「素材辞典 Vol.76 樹木-豊かないのち DC101」という写真素材です。素材の説明欄には、5月の小石川植物園で撮影されたと表記されています。写真素材中央付近を切り取って、表側はそのまま、裏側は左右反転させた形で背景に使用されています。

 ブックレットの表紙では黄泉比良坂を連想させる「ぶどう」「桃」「たけのこ」を加えることで神の時代の風景を、CDケース裏面では反転させることで「緑のサナトリウム」の文章にある科学世紀の森林を表現しているのかもしれません。

 植物の成長や風雨の影響もありますので、残念ながら写真素材と同じ場所が小石川植物園のどのあたりかは不明瞭です。しかし東京ビッグサイト西1~2ホールを併せた面積の9倍以上ある敷地の植物園だけあって、奥側に進むと都会にいることを忘れてしまいそうなほど自然にあふれた風景が広まっています。森林浴も兼ねて散策してみれば別世界を幻視できるかもしれません。

 ちなみに敷地内の日本庭園には、池の畔に2階部分の外壁が紅魔館のような擬洋風建築があったりします。

 そしてふたつ目は、【植物の春紫苑】が挙げられます。

 日本では貧乏草という通称もあることから、依神紫苑の元ネタ要素なのではないかと思われる春紫苑。上にある2枚の画像を見ての通り、依神女苑の元ネタ要素と思われる姫女苑という植物と良く似ていますが、姉妹の体格と同様に春紫苑の花びらのほうが細長くなっています。

 もともとは北アメリカ原産の植物で、大正時代に日本に渡来した後に小石川植物園から日本全国に広まったようです。道路沿いの雑草として見る機会が多いですが、会いたいときに限って会えなかったりするもの。そんなときは源流ともいえる小石川植物園で探せば見つけやすいかもしれません。葉桜の時期になると姿を見せ始めてくれます。

 日本でもっとも古い植物園で広大な敷地があるため多様な植物が育てられ、四季を通してさまざまな花が咲いています。「華激ノ宴3 FINAL」の時期は、東方の作中でも季節を表す描写などで度々使用されている福寿草が咲くころです。四季のフラワーマスターのイベント前後に訪れてみてはいかがでしょうか。

住所・アクセス

小石川植物園
東京都文京区白山3-7-1

開園時間 9:00~16:30(入園は16:00まで)
定休日  月曜(祝日の場合は翌日)
入園料  500円

最寄り駅:
白山駅(都営三田線)
A1出口より約660m 徒歩9分程度
 

 

卯酉東海道CDケース裏面の元ネタ―洗足池

 「東方合同イベント2021新春!」「東方合同祭事・漆」の会場まで徒歩圏内で、「幺樂団カァニバル!10R/幻想人形祭4R」の会場最寄り駅である川崎駅からはすぐ隣である蒲田駅。その蒲田駅から東急池上線で乗り換えなしで到着できる洗足池駅の目の前には、【卯酉東海道】に使用されている背景と同じ場所である洗足池があります。

 卯酉新幹線『ヒロシゲ』のカレイドスクリーンに採用されている『東海道五十三次』を描いた広重。

 上にあるひとつ目の画像は、同じくその広重によって描かれた「名所江戸百景 千束の池袈裟懸松」です。現在では洗足池と呼ばれている場所を描いたこの浮世絵の中央部分が、ふたつ目の比較画像のように卯酉東海道CDケース裏面の背景として使われています。CDレーベルの背景としても使用され、より複雑な加工が施されていますが、飛んでいる鶴を目印にすると分かりやすいと思います。

 浮世絵の題名にもなっている袈裟懸けの松は、代替わりはしてはいますが現在も妙福寺の境内に存在しています。

 卯酉東海道のロゴマークが載せられている辺りに確認できる袈裟懸けの松は、天保期(1830年~1843年)の時点で幹の太さが約54センチメートル、高さは15メートル程あったそうです。

 「袈裟懸松」という名は、鎌倉時代に鎌倉で活動を行い伊豆や佐渡に配流された過去を持つ日蓮上人が、休憩のため袈裟を松に掛けて足を洗ったことに由来します。「洗足池」という地名も、このことに由来しているという説があります。

 加工がされているため隠れてしまっていますが、卯酉東海道CDケース裏面に「3.竹取飛翔」や「4.彼岸帰航」と表記されている部分の左端辺りには、千束八幡神社が描かれています。

 ここは旗揚げ八幡とも呼ばれ、鎌倉幕府を開いた源頼朝が名馬「池月」と出会い、それを吉兆として旗を高らかに揚げた場所として知られています。八幡様が氏神である源氏の旗が白い(素い)ことを考えると、6曲目である「お宇佐さまの素い幡 Most Famous Hero」を思わせる場所とも言えます。

 浮世絵に描かれたランドマークのふたつが、ともに鎌倉に縁がある人物の逸話に因んだ名を付けられています。ひょっとしたら鎌倉に駅を作ろうとしてお蔵入りになった繋都新幹線を連想させる要素として、この「名所江戸百景 千束の池袈裟懸松」を背景に選んでいたりするのかもしれません。

住所・アクセス

妙福寺
東京都大田区南千束2-2-6
※洗足池は妙福寺に隣接しています。

最寄り駅:
洗足池駅(東急池上線)
駅出口より約200m 徒歩4分程度

 

万歳楽の元ネタ―丸子橋

 【東方茨歌仙】5巻第22話に登場した「万歳楽」。漫画の最後で描写されていた内容を考えると、この「万歳楽」はかつて「たまちゃん」の愛称で親しまれていたアザラシだと思われます。そんな可愛い海獣こと「万歳楽」に関係する場所を紹介していきます。

 「卯酉東海道CDケース裏面の元ネタ」と同様に、蒲田駅から乗り換えなしで到着できる沼部駅(東急多摩川線)から徒歩6分程度の場所に丸子橋があります。

 東京都と神奈川県の境界である多摩川をつなぐこの橋の付近は、「たまちゃん」が最初に現れた場所として知られています。幻想郷に来る直前に「万歳楽」が訪れていた河として【東方茨歌仙】で描かれている場所は、アーチ橋という外見的特徴が一致しているこの辺りなのかもしれません。

 本人は幻想入りして姿を消してしまいましたが、キャラクターとしては現役。

 大田区矢口地区では、コミュニティバスとして毎日元気に走り回っています。画像のように外側も内側も「たまちゃん」だらけのバスは2009年から試行運行として開始し、元号が令和に改まった2019年にめでたく本格運行に移行し地域に定着しています。

 「たまちゃんバス」のバス停近くにある矢口特別出張所でも、入口付近で「たまちゃん」が出迎えてくれます。地域住民や通勤者にはおなじみのご当地キャラクターとして、楽しそうな表情で人間たちと触れ合っています。

 食べ物の顔としても活躍中で、丸子橋から約300mの場所にある多摩川駅構内の「BAKE SHOP 神戸屋」というパン屋では、焼き印で「たまちゃん」の顔に仕立て上げた「多摩川あんぱん」が売られています。

 「たまちゃんバス」のバス停が近くにある下丸子駅から約180mの場所にある洋菓子屋「パティスリー コリウール」でも、「たまちゃんホロホロクッキー まるこポーロ」という品があります。単品でも販売していますが、当時はまだ子供だった「たまちゃん」をイメージしたふわふわな手触りの巾着付きのセットも用意されています。

 【東方紅魔郷】や【蓬莱人形】が頒布日より数日前の2002年8月7日に認識され始めた「たまちゃん」という存在は、上記のようにキャラクターとしては確立したものとなっています。しかしながらそれが故に、その名や姿が伝えられつつも忘れられた神や妖怪と同様になり、名存実亡の存在として幻想郷にやって来たのかもしれません。

 ちなみに【東方深秘録】でも登場している「万歳楽」。本人そのものは幻想入りしないと見ることはできませんが、同じ種族であるアゴヒゲアザラシは日本国内にある水族館で見る事が可能です。

 日本動物園水族館協会(日動水・JAZA)の飼育動物検索で調べた限りでは2020年12月時点で三つの水族館で飼育され、関東では千葉県の「鴨川シーワールド」が該当します。流石にアザラシショーは行われていませんが、泳いだり陸に上がってゴロンとしている姿が見られます。東京駅から直通の高速バスや特急電車で2時間程度かかりますが、限られた水族館にしかいませんので会いに行ってみてはいかがでしょうか。

住所・アクセス

丸子橋
東京都大田区田園調布本町39-1

最寄り駅:
沼部駅(東急多摩川線)より約450m 徒歩6分程度

 

鴨川シーワールド
千葉県鴨川市東町1464-18

営業時間 9:00~16:00 or 16:30(チケット販売は閉館の1時間前まで)
定休日  整備などでその都度変わるが主に平日
入館料  3,000円

最寄り駅:
安房鴨川駅(外房線)より約1km 徒歩13分程度(無料送迎バスあり)

 

おまけ―セブン-イレブン 京急ST蒲田改札前店

 聖地巡礼というわけではないですが、大田区産業プラザPiOのイベント前後に注目したい場所が京急蒲田駅構内にあるセブン-イレブンです。最寄り駅構内という立地もあって、こちらのお店ではイベントに合わせた内容のイラストが外側に向けて飾られていることがあります。

 上の画像は2018年の2月と3月にそれぞれ設置されていたときのものです。常にイラストがあるとは限りませんが、東方に限らず大田区産業プラザPiOで開催される同人イベントの当日などに飾られているようで、思わず親近感がわいてきます。

 COVID-19の影響もあってか、残念ながら大田区産業プラザPiO内部にあった喫茶店とレストランは2020年8月末日に閉店してしまいました。2021年1月や3月に利用する際もおそらくは空いたままだと思われます。食べ物や備品などが必要なときは、人里の里の香霖堂こと「セブン-イレブン 京急ST蒲田改札前店」の利用はいかかでしょうか。イベント会場から非常に近いので、蒲田駅から歩いてくる人にも体力的な負担が少ない便利なお店です。

 

あとがき

 本記事をご覧いただきありがとうございました!

 次回の記事では神奈川県にある聖地巡礼スポットを紹介する予定です。記事を通してまたお会いできることを楽しみにしています。

『伊弉諾物質』のジャケット画像、元ネタは文京区の植物園に――東葉旅人の聖地巡礼手引き おわり