東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

     東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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コラム
2025/09/30

あつまる人はだれでも参加者!――もう怖くない「東方同人誌即売会」参加のススメ

「同人誌即売会ってなあに?」から、イベント当日までに準備すべきことまでをお伝えします【前編】

 みなさまは「同人誌即売会」「同人イベント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 原作や、そこから派生した様々な東方Project作品に触れるなかで、この単語に触れる機会は多いと思います。

 でも、検索してみてもなんだかよくわからない。

イベントっていうからにはお祭り的なもの?

東方Projectの新作が売られているらしい??

夏冬でニュースになっているコミケのこと???

……と、なんとなくしかわからない人もいるでしょう。

 昨今では「子供が同人誌即売会にいきたいと言っているが、どんな催し?」「何を準備したらいいのか見当もつかない……」とお困りの親御さんも、多いのではないでしょうか。

 今回は、そんな「同人誌即売会」とは一体なんなんだ? という初歩的なところから、実際に参加してみるにあたって知っておいた方がいいポイントなどを、チュートリアルとしてご紹介したいと思います。

文・久樹輝幸
挿絵・柏森たま
協力・島村(東方紅楼夢)、hamp
編集・西河紅葉

 

同人誌即売会って、なんだ!

 同人誌即売会。ざっくりと一言で説明するなら「個人で作った作品を持ち寄って見てもらうフリーマーケットです。

 即売会にはさまざまな「作品」が置かれています。本だったり、音楽やゲーム作品だったり、アクセサリや服といったグッズなど、多種多様です。

 そしてその作り手は「個人」で、会社ではありません。出版社やレコード会社などの企業ではなく、個人や数人の仲間内で作った本を「同人誌」といいます。あなたが中学生以上であれば、国語や社会の教科書で『アララギ』や『白樺』なんて本を、明治時代の文豪たちが作っていた話を習ったかもしれません。

 いまでは本だけでなく、さまざまなものを個人で作ることが出来る時代となりましたので、CDやグッズなどもまとめて「同人作品」と呼びます。

▲「同人誌即売会」と一口にいうけれど、本にCDにグッズに、いろんなものがあります

 即売会は「展示即売会」の略です。個人で作ったものを展示したりその場で売ったりするフリーマーケットスタイルのイベント、それが「同人誌即売会」なのです。イメージができてきたでしょうか?

【ミニコラム:東方Projectは同人?】

同人誌即売会に参加している人たちって、どんなひと?

 同人誌即売会の重要なキーワードは「個人」です。ここでいう個人は、一人であることだけを指すのではなく、数人から数十人の仲間内も含みます。

 同人誌即売会に参加している人の大半は個人です「一般客」として来場している人はもちろんのこと、作品を作って持ち込んだ人も個人ですし、それどころか、イベントを開催する運営側も、多くは個人です。

 企業として同人誌即売会を開催しているところもありますが、東方Projectで一番規模が大きく、数万人以上が参加する「博麗神社例大祭」をはじめ、ほとんどの東方同人誌即売会は個人が開催しています。ビックリしました?

 何故そんなことができるのでしょうか。それは同人誌即売会に来る人がみんな「同人誌即売会というイベントを創り上げよう」という気持ちで参加しているから、です。

 先ほど「一般客」と表現した、展示品を見たり買ったりするために来場する人のことを、同人誌即売会では「一般参加者」といいます。また作品をつくって持ち込む人のことは「サークル参加者」といい、企業として参加する人たちを「企業参加者」、運営に携わる人のことを「スタッフ参加者」といいます。

 つまり、どんな形であれ、同人誌即売会に来ている人をみな「参加者」と呼んでいるのです。

 これは、いわゆる「お客様」と「運営企業」の関係でオモテナシする・される形ではなく、みんながそれぞれの立場でイベントを作る担い手なのだ――という意味が込められています。参加者すべてがイベントを開催するために協力的であること、それが同人誌即売会を「個人たちの力」で成功させている最大の秘訣といえます。

▲イベントでいい作品を手に入れられるのも、作品を作った「参加者」がいて、会場を運営する「参加者」がいて、イベントを開くと決めた「参加者」がいるから。イベントにいる全員が参加者という考えは、同人誌即売会において基本であり鉄則なのです。

 言い換えると、同人誌即売会に参加するには、いろいろと協力しないといけないことがあります。その多くは常識的なルールやマナーの範疇ですが、なかには、同人誌即売会独特の決まりごともあります。

「同人誌即売会」とはなんぞや、といった概念的な話はここまでにして、ここからはより具体的に、参加する際に覚えておいた方がいいマナーやノウハウをご紹介しましょう。

【ミニコラム:同人誌即売会は個人が運営している?】

一般参加者のススメ――まず情報を集めよう

 同人誌即売会に参加したいと思ったら、まずは公式サイトにアクセスしてみましょう。いつ、どこでやっているのかという基本的なところから、参加するための方法も案内されていると思います。ここで情報を集めるのが第一歩です。

 近年ではサイトを持たず、Xの公式アカウントのみで運用しているイベントなどもあります。まずは、イベントの名前でネット検索してみるのが良いでしょう。

 ただし、ページを確認するタイミングも重要です。同人誌即売会の開催が決まるのは開催日のおよそ半年から一年前です。

 一般参加者として参加するのであれば、早めのタイミングで分かるのは開催日と開催場所くらい。それ以上の情報が出揃ってくるのは(例大祭などの)大きなイベントで1~2ヶ月前、小さな規模のイベントだと2週間前くらいです。同人誌即売会は個人で開催していることもあり、情報発信が後手になりがちな面もあります(ゴメンナサイ by イベント主催の声)。

開催日時」開催場所」、そして入場料の払い方」この3つが分かれば、とりあえず一般参加は可能です。追加で、募集サークル数イベントのテーマもおさえておくとよいですね。

 

同人イベントの規模とテーマ

 同人誌即売会には、数十人くらいで開催する小規模なものもあれば「博麗神社例大祭」のように10万人以上が一堂に会する大規模なものもあります。

 来場者数はあまり公開されていないので、主に「募集サークル数」から開催規模を推定することが多いです。東方Projectジャンルにおいては一般的に、大まかに100サークル(スペース)以下を小規模、1000サークル以下を中規模、それ以上を大規模と捉えることが多いです。

 それぞれの規模に応じた違いを説明しましょう。

▲写真は2024年開催「第十一回博麗神社秋季例大祭」のもの。

 大規模イベントには大勢の人が訪れます。ですので、たくさんの作品や企画などがあり、会場にいるだけでお祭りの気分を味わえます。

 反面とても混雑するので、なにか目的がある場合には、しっかり計画・準備して参加しないと思うようには立ち回れないでしょう。なによりも、かなり疲れます。体感としては、登山のようなものだと思っていただければいいかもしれません(笑)

 反対に小規模イベントは、参加者数こそ少ないですが、その分一つひとつの作品にじっくりと向き合えます。

 また小規模イベントは、テーマが決まっていることが多いです。例えば「稗田阿求オンリー」のイベントは、稗田阿求の作品をメインに発表されるサークルが集まったイベントですので、阿求好きにとっては大規模イベントよりも濃密な一日となるかもしれません。

 大規模なイベントに比べると時間的な余裕も生まれやすく、混雑も少ないため、ゆったりと楽しむことができます。大都市だけでなく、地方や「聖地」で開催されているイベントも多いので、お住いの近くで開催されてるイベントを探してみてください。

 もし大規模イベントに参加したいと考えている方も、同人誌即売会が全くの初めてだという方は、可能であれば最初に中・小規模のイベントから参加してみることをオススメします。イベント全体を眺め、こんな感じなんだなということを体感しているといないとでは、同人イベント参加へのイメージが全く変わってくるでしょう。

【ミニコラム】代表的な東方イベント

一般参加者のススメ――往復の交通手段を考えよう

 小規模で開催会場が近くであればフラッと向かってサクッと帰ればいいわけですが、これが遠方であればちょっとした旅行です。

 東方同人誌即売会は全国各地で開催されています。気になる方はケットコムの検索や、東方我楽多叢誌などで探してみてください。

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東方我楽多ステーションは、東方ステーション/東方我楽多叢誌が運営する、毎日が小さな即売会のようなDiscordコミュニテ…

 イベント開始時刻は大規模だと10時~11時、中小規模は11時~12時開始が多いです。

 何時くらいに会場に到着すればいいか悩まれる方もおられますが、開始時刻30分前~30分後くらいが目安です。ほとんどのイベントは、開始時刻から10分もたてば、並ばずに入場出来ます。大規模イベントだともう少しかかりますが、1時間以内にはほぼ入場待ちは解消しているでしょう。

 あまりにも早く会場に到着するのは「早朝来場」としてルール違反となります。会場前に人が集まると、近くに住む人や道路を通行するにとって迷惑となり、最悪の場合「このイベントは会場に迷惑をかける」とみなされて、会場の貸し出しを拒否されてイベントが開催できなくなる可能性すらあります。

 そもそも、早くに来場しても入場時間はほとんどかわらず、メリットはほぼありません。時期によっては熱中症などにかかるリスクもあり、いざ開場した際に調子を崩しては本末転倒です。

 また、学生などお金がない人は節約のため夜行バスを利用することも多いと思います。慣れている人なら問題ありませんが、寝付きが悪い人の場合、これもまた体力を消耗するリスクがありますので、自分の体力とよくよく相談しましょう。(最近はホテル代が高騰し、気軽に前泊してくださいとは言いづらくなりました……😢)

 新幹線や飛行機は、出来るだけ早く予約した方が安く確保できます。また飛行機を利用する際は、出航時間の1時間前には空港に到着するようにしましょう(新幹線は便に間に合わなくても乗車変更できることが多いので、少し気が楽です)。

【ミニコラム:一般参加の参加費について】

一般参加者のススメ――サークル出展情報を集めよう

 イベントの開催日が近づいてくると、出展サークルからの作品情報も徐々に出てきます。とはいえ、サークルも学生だったり会社員だったりのなかで作品をつくっているので、情報が出てくるのは大体1週間前くらいから……ということが多いです。なかには前日や当日の発表だったりすることもありますが😅

 サークル情報は、小規模であれば公式サイトに掲載された「参加サークルリスト」から辿るのが手っ取り早いですが、大規模となるとリンクを辿るだけでも大変です。

第十二回博麗神社秋季例大祭 サークルリスト

 大規模イベントだと、カタログが事前に同人系書店へ委託されることもあります。電子チケットを導入している大規模イベントですと、カタログは入場料を含まない純粋な情報誌として扱われていることが多いです。カタログが無くても入場は可能ですが、冊子をめくりながら気になるサークルを探すことができますし、イベントが終わった後も記念品として残ることなどのメリットもあります。

 最近ではWebカタログが公開されているイベントもあり、サークルカットなどを確認しながら効率的に情報収集できることもあります。Webカタログとして「hamp」などのサービスを利用しているイベントも増えてきましたので、ぜひイベントの案内を確認しましょう。

▲「hamp」を利用しているイベントはサイトから一覧で見れる使い方はこちらのページを参照。

 それでも、最終的にはpixivやXでイベント名で検索するなど、地道なリサーチをしないと告知情報にたどり着けないこともあります。いちファンとしては「もっと早く、わかりやすく情報出してよ!」と思うものですが、サークルも個人ですから、告知の速度や熱意にも偏りがあって当然のことです。

Xの検索欄に行く予定のイベントの名前を(略称で)入れてみよう。参加サークルは名前にイベント名を入れていることが多いので、どんな作品や作者が参加しているのか見つけられちゃうぞ。探すのはイベント一週間前後がベター。

【例大祭22東方アレンジまとめ】第二十二回博麗神社例大祭で頒布される“東方アレンジCDの試聴まとめ”が『東方音楽歴』より到着!

第二十二回博麗神社例大祭新譜のクロスフェードまとめ

▲新作の東方アレンジを探したいなら、東方我楽多叢誌では大規模イベントに合わせて「新曲クロスフェードまとめ」を公開しているぞ。過去のイベントを振り返りたいときにも使えるので、ぜひ参考にしてほしい。

 逆に言えば、なかなか見当たらない情報を掘り当て、現地でとっておきな作品を手に入れられたときの感動はひとしおなわけです。同人誌即売会に「ハマる」ひとの心理は、こういった“宝探し”的な側面もあるわけですね。

 

一般参加者のススメ――当日のもちもの

 当日持っていくものですが、ある程度お金を崩し、100円、500円硬貨、1000円札を多めに用意するようにしてください。スムーズな頒布に協力するためです。

 作品を買うときは、出来るだけお釣りの出ないようにお金を出すのが良しとされます。特に、イベント開場直後はサークル側が準備している小銭が足りないこともありますので、そのために小銭を多めに持ってくることが推奨されています。

 カバンは大きめのトートバッグがあると便利です。出来れば財布や飲み物は出し入れしやすい別のカバンにしておく方が良いです(スリなどに遭わないよう、ポケットに入れるのはあまりオススメできません)。

 買った本が折れ曲がるのが嫌だ! という人は100均でクリアファイルやクリアケース(同人誌はB5サイズが多いので、A4だけでなくB5サイズもあるとGood)

よく使われる、100円ショップの蓋付き書類ケース。これに同人誌やクリアファイルを入れておけば、カバンの中で折れたりぐちゃぐちゃになったりしないので便利だぞ。 同人誌は一般的にB5サイズが多いので、そちらも用意しておくとなお良し。

 飲み物も重要ですが、現地で買うことも出来ます。

 入場がカタログ制の場合、カタログを事前購入した場合はもちろんカタログを、電子チケット制のイベントではQRコードの事前発行をお忘れなく。電子チケットはすぐに画面を出せるよう、スクリーンショットで保存しておくとよいでしょう。持っていけるスマホがない人は、紙での印刷を忘れずに。

 そしてなにより当日に向けて、万全の体調を整えていきましょう。ご飯はしっかり食べ、お風呂に入り、夜更かしせずよく寝る。基礎的ですが、これをやっているかいないかで当日の体力は雲泥の差です。

 

 ここまでで、イベント当日までの準備についてお伝えしました。

 次はいよいよ、イベント本番! 後編では、会場内での一般的な注意事項や、参加者同士の交流についてのマナーなど、同人イベントを楽しむコツをお伝えします。

【ミニコラム】イベント参加Q&A

あつまる人はだれでも参加者!――もう怖くない「東方同人誌即売会」参加のススメ おわり

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