テーマは「愛の物語」。ダンカグという現象に対するひとつの回答。『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』株式会社ストーリーノート、藤澤 仁氏、武田 稚乃氏インタビュー
『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』株式会社ストーリーノート、藤澤 仁氏、武田 稚乃氏インタビュー
いよいよ発売が目前となった『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』。このタイトルは、2022年10月28日に惜しまれながらもサービスを終了した東方Project初公認スマートフォンゲーム『東方ダンマクカグラ』をリビルドした音楽ゲームだ。
そんな『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』とはいったいどんなゲームなのだろうか。リリースを記念して、東方我楽多叢誌ではその裏側に迫るインタビューを3日間連続でお届けする。
とうとう発売前日を迎えた第三弾は、前作に引き続きストーリー・世界観構築を担当した、株式会社ストーリーノート代表の藤澤仁氏、そしてリードシナリオライターの武田稚乃氏へのインタビューだ。
「ドラゴンクエスト」のシナリオライターが、まさかの東方にやってきた。『東方ダンマクカグラ』シナリオを担当した、藤澤仁氏の株式会社ストーリーノートインタビュー
『東方ダンマクカグラ』シナリオ担当、株式会社ストーリーノート 藤澤仁氏・武田稚乃氏インタビュー
2021年公開の東方我楽多叢誌のインタビューから、早3年が経った。『東方ダンマクカグラ』のサービス終了という事実に、彼らはどのように向き合ったのか。そして大きく話題を呼んだ「この世界が毀れたのは君のせいなんだよーー」という言葉の真意とは。その上で描く『ファンタジア・ロスト』という作品で伝えたい「愛の物語」とは。
『ダンカグ』という現象を愛したファンの皆さんに、ぜひ読んでいただきたい。
インタビュー:にしかわ
文・編集:西河 紅葉
またここで、もういちど
――本日はインタビューよろしくお願いいたします。スマートフォン版『東方ダンマクカグラ』から継続してメインシナリオを担当されるストーリーノートのおふたりに、本作『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト(以下、ファンタジア・ロスト)』のシナリオについてお伺いできたら幸いです。
まずはじめに、前作から継続してシナリオを担当することになった経緯について教えていただけますか。
藤澤:
前作『東方ダンマクカグラ』が残念な形で終わってしまって、ユーザーさんの感情はもちろん、ぼくらとしても不完全燃焼な気持ちを抱えていました。それで、新しくリビルドすると話が上がった時には「ぜひ自分たちにやらせてほしい」と我々の方からお願いしました。アンノウンXのみなさんも「もちろん。一緒にやりましょう」と言ってくださって、両想いで今回の座組みになりました。
武田:
藤澤さんから「ダンカグのリビルドの話が正式に来た」と伺って、ぜひともやらせてほしいという気持ちで、本作も担当させていただきました。
ーー最後の放送で出たティザー映像でも、最初から「ストーリー再構築:ストーリーノート」の表示と、おふたりのお名前が出ていました。おふたりがシナリオを担当されるのは、リビルドの最初の段階から決まっていたんですね。
藤澤:
『ダンカグ』は武田稚乃が中心的に進めてくれていたので、サービス終了を聞いて社内で誰よりも無念を感じていたのは彼女だったと思います。
武田:
私はもちろん、社内でもみんな悲しんでいましたね。
藤澤:
だからもう……弔い合戦だ! 想いを新たに出陣じゃ! みたいな気持ちでした。
ーーソーシャルゲームは特にですが、一度終了してしまったタイトルをもう一度再構築する弔い合戦が行えることなんて、早々ないですからね。
藤澤:
ソーシャルゲームって、終わると遊べなくなってしまうので、やはり心のなかに虚しさが残るものなんですよ。ユーザーも作り手も。そういう無念をちゃんと焼き尽くせるような場所が与えられてありがたいし、大きな喜びがあります。
武田:
本当に前例のないことだと思っています。もう一度、あの世界のお話が作れることもそうですし、終わってしまった無念を晴らす場を与えていただいたというのは、とても得難いことで。その分の熱量をシナリオに注がせていただきました。
幻の第3章ーースマホ版『東方ダンマクカグラ』で本当に描きたかったもの
ーー冒頭でも出ましたが、あらためて前作『東方ダンマクカグラ』についてお聞かせください。2022年10月にサービスが終了する、と最初に伺ったときはどんな気持ちでしたか。
藤澤:
やっぱりショックでしたね。もちろん僕たちもまったく予想してなかったわけではないんですが、とはいえきっと大丈夫だろうという思いの中で日々執筆していましたから。ただそれよりも「(サービス終了が決まった時点でも)まだ多くの人がこのゲームを遊んでいる」ということを知っていたので、このユーザーたちの気持ちはいったい何処へ行ってしまうのか、と感じたのを覚えています。
武田:
実装される予定だったシナリオを作っている最中にお聞きしたので「このキャラが出てくることをずっと楽しみにしているユーザーさんもいたんじゃないかな」と思ったり、無念さを感じました。申し訳無さが大きかったです。
ーーストーリーノートさんのもとには、楽しんでいるユーザーさんの声が届いていたんでしょうか。
武田:
当時ときどきエゴサして、ユーザーさんが「このシーンが可愛くてよかった」なんて言ってくださっているのを目にしていました。あとは、有志の方が作成したWikiを拝見して、ちょこちょこ反応を見ていましたね。コメントや情報量がすごくて『ダンカグ』ユーザーさんの愛と熱量がすごいことを常日頃から感じていました。
藤澤:
僕はあんまりエゴサはしないですね。心臓に悪いので。
武田:
そうでしたね(笑)
藤澤:
ただ、メインストーリー第2章について(実装時期がサービス終了数ヶ月前だったにも関わらず)多くの方に好感をもって受け入れてもらったという話は、周囲から教えてもらいました。
ーーサービス終了が発表されて「メインストーリーはどうなっちゃうんだろう?」と感じたユーザーが、その直後に実装された第2章を読んで「ちゃんと幕を引いてくれてよかった」という感想を述べているのを多く見ました。
藤澤・武田:
それはよかったです。
ーー本来は第2章のあともお話が続いていく予定だったかと思うんですが、もし継続していた場合にはどんなストーリーになる想定だったんでしょうか?
藤澤:
もともとぼくらは第1章から第3章までをセットにした三部構成で考えていて、大枠はすでにそこまでできていたんですね。第3章のシナリオもだいぶ制作が進んでいたところで、突然バタッと終わってしまった、というのが僕らの感覚でした。
武田:
『ダンカグ』では「これはあなたの幻想郷のお話なんですよ」というのをずっとテーマとして置いていて、その結論部分を第3章に置くような構成を考えていました。「人の数だけ幻想郷」という言葉が、個人的に大好きで。そういう「あなたが思う、あなたの幻想郷がある」という話を作れたらな……と。プレイヤーが見ていた幻想郷もすべて原作とは違うもので、「本当のものではない、けれどだからこそあなたにとって価値がある」という着地を考えていましたね。
ーー原作、ZUNさんの見ている幻想郷と、ZUNさんを通してぼくらが見ている幻想郷の、差異の部分というか。「本物か偽物か」という話は、実はメインストーリー以外の、キャラエピソードやイベントエピソードの一部に盛り込まれていたんですよね。
武田:
はい、そうでしたね。もしよろしければ、これかも……というものを思い出してみていただければ幸いです。
東方は神話、二次創作は民間伝承
ーーストーリーノートさんは(スマートフォン版の開発から数えると)かれこれ4年以上東方Projectの二次創作に携わっているわけですよね。あらためて、4年間東方Projectと向き合ってみて、どのように感じていますか。
藤澤:
ぼくはプロジェクトのスタート時点では東方への理解が深かった人間ではないので、そこから真剣に「東方」に向き合う日々でした。知ろうとすればするほど、ZUNさんの「原作」とその周辺にある「二次創作」という関係性を俯瞰的に見るようになって、それが面白くて。東方Projectの創作はすべてがリスペクトでできている世界観なんだ、と理解しました。ほかのコンテンツでは見られない深さみたいなものを感じましたね。
ーー原作、ZUNさんに対するリスペクトがなければ、二次創作は生まれないですもんね。
藤澤:
変な話「東方は宗教」という言葉は本当に事実なんだなと思います。宗教って、ひとつの原典が存在して、それを信仰する人の思いによって派生していくことがありますよね。東方もまさに同じ構造をしていて、そういう成立の仕方をしているIPはほかに存在しない気がしています。
武田:
私も、東方って神話だなと思っていて。神話っていろんな顔、いろんな一面を持っているというか、多面的ですよね。東方も同じだなと感じています。原作の解釈の仕方が多岐にわたるということは、神話がそれぞれの民族や世界で形を変えて受け入れられてきたのと同じじゃないかって。
藤澤:
神話って民間伝承の果てに完成していくじゃないですか。ひとつのお話が、語り手や伝承経路、土地柄や時代背景、さまざまなものを経由して、いま現在の語られる形になっている。そんな民間伝承をいま現在リアルタイムで体現しているものは、東方Projectしかないと思います。
ーーしかも、それが未だに多くのファンを持っていて、若い世代も取り込んで、ずっと好まれ続けているのが面白いですよね。
藤澤:
本当にそうなんですよ。その根底にあるものは、やっぱり愛や尊敬、リスペクトの感情なんですよね。これは生み出そうと思って生み出せる世界観じゃありません。ZUNさんには一度だけお会いさせていただきましたが、尊敬の念が絶えませんね。
ーー本来、この変遷の過程の何処かのタイミングで、御本尊の神格化や情報の体系化が行われるはずだと思うんです。でもある意味未だに、原始的なアニミズム信仰の状態のまま進んでいる。
藤澤:
本当にその通りで、プリミティブな多神教世界のまま進んだ、稀な世界観だなと思いますね。
ーー非常に日本人的な文化だな、と感じています。
藤澤:
宗教と呼ぶとなんとなく別の意味合いが付与してしまうので、「東方は神話」にしておくのがミーム的にもいいのかもしれませんね。東方は神話、二次創作は民間伝承。
ーーストーリーノートさんはほかにも数多くのIPコンテンツやゲームタイトルのシナリオ・世界観構築を担当されていますが、その中でも東方Projectのような世界観のものはない、ということなんでしょうか。
藤澤:
ないかな。僕はそう感じましたね。今まで体験してきたものとは違う体験ばかりでした。だからこそ、最初は理解の浅かったぼくが中心じゃなく、その神話の語り部になってくれた武田稚乃がプロジェクトの中心に居てくれたので、成立したんだと思いますよ。
武田:
東方でシナリオを書くということは、ほかの携わったプロジェクトに比べて特殊なものだったと感じています。なんというか、どんなものを表現しても受け止めてくれる心の広さのようなものが、東方Projectそのものにあって。それは原作の力強さもありますが、東方が好きなファンの皆さまの心がとても広いからだと思うんですね。そんな土壌があるので、原作をそのままなぞりきったシナリオだけでは物足りない、より新しい解釈、より新しい一面を、ということを考えながら向き合うのはなかなかない経験でしたし、とても楽しいことでした。
ちなみに藤澤さんはプロジェクトの中心にいなかったと仰ってますが、そんなことはなく、一緒に作らせていただいた世界が『ダンカグ』のシナリオだと思っています。
ーーほかの二次創作であれば原作に寄り添うことが真に求められがちですが、東方はそれをしてもしなくてもよくて、なんならさらに新しい「解釈」がないとみんな満足しない、というところはあるかもしれないですね。
武田:
優しくも厳しいというか、でも楽しいところですね。
ーー武田さんが東方二次創作シナリオを書いていて、最も楽しかった瞬間は何でしたか?
武田:
すこしズレるかもしれませんが、シンプルに好きなものの二次創作をこの場所でやらせていただけることはとてもうれしく、面白みを感じていました。あとは、社内のライターさんから出てくるさまざまな解釈を見れるのが、楽しいんですよ。
ーー以前のインタビューでは、ストーリーノートの社内全員で執筆しているタイトルは『ダンカグ』だけ、と仰っていましたね。
武田:
そうですね、スマートフォン版は当時の社内全員で担当していました。『ファンタジア・ロスト』では社内全体で、という形ではないのですが、その分結構コアな……東方に詳しい方を中心に制作を進めて、またライターそれぞれの思う解釈を見せていただいて……素直にいち東方ファンとしてまた楽しい思いをさせていただきました。
「この世界が毀れたのは君のせいなんだよーー」その真意は?
ーーそろそろ『ファンタジア・ロスト』のお話も聞かせてください。あらためて本作のストーリーのあらすじを伺ってもいいでしょうか。
武田:
はい。毀れてしまった幻想郷を、霊夢が旅をするお話です。「この世界が毀れたのは君のせいなんだよーー。」ティザー冒頭に登場するこの言葉はいったいどういうことなのか、なぜ毀れてしまったのか、幻想郷に何が起きたのか。その真実を知るための旅、という物語です。
ーー「この世界が毀れたのは君のせいなんだよーー。」この言葉にはティザーを見た全員が衝撃を受けたと思います。この言葉は、どこから生まれたものだったんでしょうか。藤澤さんが考えた……?
藤澤:
話していたら、だんだんリビルド決定当時のことを思い出してきました。(『東方ダンマクカグラ』プロジェクトファウンダー、東方我楽多叢誌主催の)斉藤大地さんからぼくに「リビルドシナリオの企画書を出してほしい」と連絡が来て。「〆切は?」って聞いたら「明日の朝」だと。その時点でもう終業時間2時間前だったんですよ(笑)
急遽、社内の集まれる人間を集めて、とにかくわーっと意見を出し合いました。そこで話題になったのはやっぱり「ダンカグを遊んでいた人の想いは何処へ行くのか」だったんですね。そこから、とあるスタッフが「『お前のせいで幻想郷が壊れた』って言われたら、キツいっすよね」って言い出して。最初は苦笑いだったんですが、なぜか全員その言葉に感じ入るものがあったんですね。それを物語のテイストに合わせて言い換えたら「ねえ知ってた? 幻想郷が壊れたのは君のせいなんだよーー」になったと。
ーーまさにティザーで放たれたセリフと同じですね。
藤澤:
そこからはもうイメージボードの構築まですぐに進んで、崩壊した渋谷の背景に霊夢が立っている絵が浮かんで。Photoshopでがちゃがちゃと絵を作って、文字を載せてみたら、全員が「これ、いいかも!」となったんです。そのビジュアルをそのまま企画書に載せて提出したら、開発チームのみなさんに「これだ!」と共感してもらえました。ぼくが今回のプロジェクトで一番仕事したのはココかもしれない(笑)
武田:
いやいやいや。
ーー今の公式サイトにあるメインビジュアル、このイメージがほぼ最初から固まっていたんですね。
藤澤:
手応えがあって、その手応え通りに反応を得られたのは、いい出来事でしたね。
武田:
さすがに怒られないかな……? とはすこし思いましたけど(笑)
藤澤:
言葉を濁さずに言えば、ユーザーの想いは「この世界が毀れたのは、運営、君のせいだろ!」だと思うんですよ。
一同:
(笑)
藤澤:
自分たちはこんなにこのゲームを楽しんでいるし明日も遊びたいのに、どうして壊しちゃうんだ、終了するのはお前のせいだろ?……っていう、ユーザーの言葉を代弁しているセリフでもあるんです。
ーー「『君』ってユーザーのことでしょ、課金しなかった君が悪いってこと?」なんて言われていますが、ユーザーからしたら「世界を新しく始めておいて勝手に終わらせるのはどういうことだ。運営のせいだぞ」って言いたいのは、まさにそのとおりですよね。ダブルミーニングだと。
藤澤:
両方の意味で取ってもらえたら、という想いを込めたメッセージでしたね。あともうひとつ僕がやった仕事は「■■異変」って言葉を考えただけかな。
※■■はシナリオの根幹に関わる内容だったので、伏せさせていただきました。知りたい人は『ファンタジア・ロスト』を遊んでみてね!
ーーストーリーノートさんのパブリックイメージって、『ドラゴンクエストX』のような大型タイトルや、『Project:;COLD』のようなシビアなものだったりと、基本的に真面目な側面が大きいのかなと個人的に思っているんですよ。でも実際は「君のせいなんだよ」とか、■■異変とか、思いの外ユーモアに溢れたシナリオ制作会社なんだなと思っていて。
藤澤:
いや、ぼくらは日頃から、いかに笑わせるかばっかり考えてますよ(笑) ある種、毒のある笑いのようなものをわりと好んでいるかもしれません。シニカルさというか。
ーーシニカルさ、東方Projectとは相性の良いものだと思っています。
テーマは「愛の物語」ーー『ダンカグ』という現象に対する、シナリオチームとしての回答
ーー前回のインタビューでは、シナリオのテーマとして「東方がもし夏休み公開の映画になったら」というものを掲げておられましたが、本作『ファンタジア・ロスト』のシナリオはどのようなテーマですか。
武田:
そうですね……テーマはたぶん、「愛」じゃないでしょうか。
藤澤:
今回はわかりやすく「愛」ですね。皆の中にある「誰かに会いたい」という感情を、物語にしたと思っています。
ーーSteamページのあらすじには、霊夢だけじゃなく魔理沙についても描かれています。「一方、魔理沙は、行方不明の霊夢を探す旅に出る」とありますね。魔理沙の視点では霊夢は行方不明になっている。会いに行く旅なんですね。
藤澤:
会いたい人を探す旅ですね。
ーー魔理沙のお話も、企画当初の時点で浮かんでいたのでしょうか?
藤澤:
最初は霊夢の話だけだったんですが、斉藤さんやたかむらさんとディスカッションを重ねるうちに、魔理沙のストーリーが浮かび上がってきた感じだったよね。
武田:
そうでしたね。
藤澤:
自分たちの中でも、霊夢の旅路だけでは語りきれない何かを感じていたので、霊夢の想いと魔理沙の想い、その二面性が出てきたときにはじめて、物語としての奥行きが出たのを感じています。
ーー『ファンタジア・ロスト』の博麗霊夢・霧雨魔理沙は、どのようなキャラクターとして描かれているのですか?
武田:
今回の霊夢は、何もかもすべてを忘れてしまっている霊夢です。ある種、役割を持っていない霊夢だったのかもしれません。むき出しの少女なのかな。「博麗の巫女」ではない霊夢を描いていたと感じています。
魔理沙の方は、幻想郷の象徴のような……この先はぜひ、シナリオ本編を読んでもらいたいです。
藤澤:
霊夢は自分探しの物語で、魔理沙は情念の物語です。そのふたつが糾える関係性になっています。今回、武田稚乃が本当によくやってくれたと思っているんですよ。エンタメというよりかは、音楽ゲームを彩る文学作品のような位置づけになったかなと思っています。前作に比べると、本作は物語の独立性も高いし、それ故に表現の幅も広がっています。結果的に作品性の高い物語になったのかなと。
ーー続きが読みたくなる、世界にユーザーを引きずり込むようなシナリオになっている感じでしょうか。
武田:
霊夢編は自分探しの旅でもあるので、彼女が自分を取り戻す瞬間に一番注力しました。自分が取りこぼしてしまったもの、やったことではなくやらなかったことを思い出す……みたいなところがあって。そのあたりを表現するために、前作よりもすこしドライな感じで描いたりなどもしました。ギャグ調のパートもありますが、しっかり温度差が出たかなと思います。
藤澤:
東方Projectの特徴のひとつに、キャラクターがたくさん出てくることで世界を彩るという世界観があると思うんです。ただ、それとは逆に「霊夢と魔理沙の物語」というところに集約する描き方もあると思っていて、今回はそんな物語になりました。前作とはまったく違うフォーマットだからこそ、制作も楽しめたのはあったのかなと思います。
ーーネタバレにならない範囲で、武田さんが一番気に入っているシナリオはありますか?
武田:
紅魔館のお話でしょうか。キャラの好みに引っ張られているかもしれませんが……。それ以外だと、プロローグとエピローグでしょうか。エピローグは自分でも気合を入れて書いたので、思い入れがあります。
藤澤:
武田稚乃の書いたエピローグを最初に読んで「書いている人の気持ちがずいぶん乗った文章だな」と感じましたね。伝わるものがあるので、ぜひ最後まで読んでもらえたら。
ーー先ほども少し語っていただいたかと思いますが、今回のシナリオには「前作が大好きだったユーザー」に向けての回答になっている部分もあるのでしょうか。
藤澤:
いろんな想いを持っている人がいるので、全員が納得できるひとつの答えはない思っています。ただ……僕たちは『東方ダンマクカグラ』というのは、ひとつの現象だったと思っていて。その現象はどのように終わるのが正しかったのか、少なくともぼくらはあのサービス終了が正しい終わり方だったとは思えていなかったんですよ。
とはいえ、そういう耐えられない想いって生きていくうちに何度も直面することで、仕方がないし避けられないことではあるんだけど、今回『ファンタジア・ロスト』では、ひとつ「こんな形はどうですか?」という提案ができた。そこに共感してくれる人も、そうじゃない人もいるかも知れないけれど、これはぼくらなりのひとつの答えです、と胸を張って送り届けられるものになったと思います。ぜひ、楽しんで下さい。
武田:
今作のシナリオは『東方ダンマクカグラ』という現象に対する我々シナリオ側としてのひとつの答えであり、ダンカグを愛してくださったユーザーの皆さんの愛に応えるための、ひとつの答えだと思っています。皆さまがどのように感じて頂けるかはわかりませんが、この「愛の物語」の行方を確かめていただければありがたいです。
ーーゲーム上でシナリオを読むのが本当に楽しみになりました。本日はインタビューありがとうございました。
『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』2月8日発売!
Steamページはこちら
https://store.steampowered.com/app/2190220/_/?l=japanese公式サイト
https://danmaku.jp/phantasia-lost/無料DLC第1弾として、Toby Fox & ZUNによるコラボ楽曲『U.N. Owen Was Hero?』を2月8日に配信!
『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』
ジャンル:リズムアクションゲーム
プラットフォーム:Steam / Nintendo Switch
レーティング:CERO 審査予定
対応言語:日本語 / 英語 / 中国語(簡体字 / 繁体字)価格:
Steam 通常版:3,960円(税込)/デラックス版:9,980円(税込)
Nintendo Switch 未定発売日:
Steam 2024年2月8日
Nintendo Switch 未定発売前日!2月7日19時55分ごろSTART「発売直前!収録楽曲全部聴く放送」
そのあとは2月7日23時30分より「発売開始のボタンを押す放送」をON AIR!!
2月8日0:00(JST)に発売開始予定の『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』。その発売の瞬間に開始のボタンを押すだけの番組です。
テーマは「愛の物語」。ダンカグという現象に対するひとつの回答。『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』株式会社ストーリーノート、藤澤 仁氏、武田 稚乃氏インタビュー おわり