チルノでもワカル!おえかきのハナシ「ゆっくりをかいてみよう」 #チルワカおえかき
イラストレーター粗茶さんのおえかき講座
初めまして、粗茶といいます。
今回から、創作(特にイラストやクラフトについて)の記事を書かせてもらうことになりました。我楽多叢誌を読んでいる方に、イラストを描く楽しさや始め方を知ってもらうお話をしていく定期連載です。
東方Projectは、見る・感じる・つながることが楽しいコンテンツです。それだけでももちろん楽しいですが、そこからもう一歩踏み込んで「つくる楽しみ」も感じてみてはどうでしょう? ……というお話をしにきました。
誰かが作った物を誰かが見て、その人がまた何かを作って、そうやって東方の二次創作作品は増えて来ました。これを読んでいるあなたにも、その流れの中に入って欲しいなと思っています。
「つくる」を知ることで、今まで見ているだけではわからなかったことを知れたり、経験できたりします。
幻想郷に行くのは難しいです。けれど、東方二次創作の世界はパソコンやスマホの向こうだけではなくて、この世界――あなたの手元にもあるのです。この世界の当事者として、東方Projectを一緒に楽しみましょう!
ゆっくりは「描く」においても入り口になる
初めて「おえかきをしてみよう」と思ったとき、多くの人はまず人物の顔から描き始めると思います。
きっと多くの絵描きが一度は思ったことがある(はずの)言葉を紹介します。
「顔だけで絵が終わればいいのに!!!」
私も何度も思いました。というか、学生時代は大体バストアップ(胸の下くらいまで)まで描いて終わってました。その先を描く気力がなかったり、早く色をつけたかったりと、いろいろと我慢ができなくて。「顔はそこそこ上手いけど体を描かないからダメ」とか、当時はよく言われたものです。
そのころに比べると、今の時代は最高ですね。我々には最高のモチーフがあるのですから。
そう。皆さんご存知「ゆっくり」です。回ってますが気にしないでください。
顔だけですべてが完結する何とも初心者のおえかきに適した「ゆっくり」。
みんな知ってる「ゆっくり」。
あのフォルムはまさに、幼稚園や小学校でア○パ○マ○を描き殴っていたころの感覚で描けそうな上に、
「東方キャラ!」(そうじゃない場合もありますけど)
というキャラ要素が付加された、ここを読んでいる方にとって最も馴染みある、優しい題材のひとつではないでしょうか。
というわけで初めましての第一回目は「ゆっくりを描いてみよう」がテーマです。東方の入り口として名高いゆっくりですが、実はおえかきの入り口としても有能なんですね。
すばらしいぞ、ゆっくり。ゆっくりは万能だ!!
なにを用意したら良い?
おえかきするなら、ペンタブとか液タブとかおえかきソフトとか、スケッチブックとか専用のペンとか、そういうのがいるんじゃないの? と思う人はそこそこいるかもしれません。
いりません。
最初の一歩にそんな物はいりません。そういう考えをまずゴミ箱に捨てる所が出発点です。
今机の上やカバンの中に入っている「かく」物と「かける」物があれば大丈夫。本当に、なんでもいいのです。
必要なのは「やってみるか~」という軽いノリだけです。
カラオケに行って「最近聴き出した曲だから歌いきれるかわからないけど入れてみるか~!」くらいの軽~いノリで、軽率にやっちゃいましょう。
なんとかなる。
実際に描いてみよう
小学校でひらがなや漢字を習ったときに、見本を見ながら練習をしたことを思い出してください。「いま私は、ちょっと難しい漢字を書いているんだ」という感覚で描いてみましょう。
お手本のゆっくりを、置いておきますね。
難しいことは考えずにぱぱっと勢いで描いてしまうのがよいです。勢い、私の好きな言葉です。
とはいえ投げっぱなしなのはあまりにも不親切なので、ちょっとだけ描き方を解説していこうと思います。この描き方は、ゆっくりだけではなくさまざまな物を描く上で応用が効くので、おえかき初心者さんは覚えておいて損はない話かなと思います。知ってる人はこの記事のリンクとともに「この話は知ってた~!」とツイートしましょう。(宣伝ありがとうございます)
何がどうなって「ゆっくり」なのか
「ゆっくり」の特徴を一度しっかり考えてみましょう。一番の特徴は「顔だけしか無い」ということですね。じゃあ顔だけ描けば良いのか?
というわけで顔だけ描いてみました。
なんか違う。ナニコレ。
霊夢かどうかは置いておいて、少なくともゆっくりではないですね。これがゆっくりに見えない理由を考えてみましょう。
わかりやすいのでこれをこの先「ナニコレさん」と呼びます。ナニコレさんをじっくり見ていくと、おそらく最初に気が付く所は「顔がなんか細長い」ではないかと思います。そう、顔が。ゆっくりのビジュアルインパクトの90%(当社比)を占める顔が。
なんか縦に長い!!
では、縦に長くならない様にするにはどうすれば良いのかをお伝えしたいと思います。
「アタリ」という便利なもの
わかりやすくする為に、元のゆっくりをトレースしました。
線が整理されてずいぶんわかりやすくなりましたね。
これに円形を重ねます。
リボン以外のほとんどが円の中に収まります。さすが、まんじゅうと言われるだけのことはある。
これに対してナニコレさんは……。
めちゃくちゃはみ出ている。元気いっぱいとてもアグレッシブです。特にもみあげ。
ここからさらに線を追加します。
十字を入れるとこの通り。ここまで来るとこれは別物だなとはっきりと分かると思います。
ゆっくりの方は、円の中にパーツがある程度収まっていて「ころん」とした印象。それに比べるとナニコレさんは、いろんなものが赤線からずれていたりしてまとまりがありません。
こういった悲しい事故が起きない様に先に入れる線、それが「アタリ」なのです。
そもそもアタリを専門用語だと思うからわかりにくいんですよね。こうすると理解しやすいのではないでしょうか。
実は概念はまったく同じです。「この四角形が円形になってるんだ」今回はその程度の認識でOKです。ひらがなの練習帳にあったような、枠の線を先に描いているんです。
これを理解して比べてみると、
「ゆっくりは中央の線より下に顔のパーツが集まっている」とか
「ナニコレさんは右側の目が下がってる」とか
「ナニコレさんは顎が尖っている」とか
そういったたくさんのことに気付ける様になりますね。
上手い人の下描きなどに見られるこの十字。これは「なんとなく上手く描けたら良いな~」というお祈りではなく「ここにこれを描くぞ」という意味で描かれている線なんですね。
真っ白の紙にいきなり描くのは難しいです。だから多くの絵師さんは「アタリを入れる」のです。
上手くなってきて欲が出たときに言われる「絵柄が安定しない」という悩みは、この概念を理解するだけで実はある程度なんとかなります。
逆説的に「今までで一番うまく描けた!」という絵がある方は、その絵にこの円形と線を追加して、バランスを確認してみると良いと思います。そうすると「今度からどのあたりに何を描けば良いか」がだいたい分かるのです。
アタリ、めっちゃ便利ですよ。
改めて描いてみる
素晴らしい出来です。
円形を重ねるとこうなります。
これはもう紛うことなきゆっくりですね。ナニコレさんに比べてすべてがまとまっている。
おえかきで大事なこと
おえかきをする上で一番大事なのは「楽しいと思えるかどうか」です。
最初から上手い人なんてほぼいないですし、最初から上手い人も「楽しい」を忘れると絵を描くのが苦しくなって、結局辞めてしまいます。当たり前ですよね。楽しくないゲームはすぐに辞めてしまうのと同じです。
なにかイヤなこと・苦しいことがあったときに、没頭できる趣味があると気分転換になります。そういう選択肢のひとつとして「おえかき」があれば素敵だと思います。
「誰かに褒めて欲しいから」おえかきをするのもアリ。
「上手くなりたいから」おえかきをするのもアリ。
「特に何も考えてないし目的もない」けどおえかきをするのもアリ。
そういう自由な世界なのです。
楽しいから続けられる、楽しいからもっと知りたくなる。いつでもやめられるけど楽しいからおえかきをする。当たり前ですが、途中でドロップアウトしてもだれにも怒られないのです。
イヤになったらお絵描きは一回やめてゲームやろうぜ!(重要)
次回はもう少しくわしいアタリのハナシをしようと思います。今回の記事を読んで「そーなのかー」と思った方はぜひTwitterなどで拡散してくださいね。
それではまた次回お会いしましょう~。
チルノでもワカル!おえかきのハナシ「ゆっくりをかいてみよう」 #チルワカおえかき おわり