2023年 上海開催東方ライブ 上海THONLY 第11届『东方露明境』レポート ~中国東方音楽サークルファンの、最も熱い一日(前編)~
2023年 上海開催東方ライブ 上海THONLY 第11届 东方露明境レポート
8月20日、14時。
私は上海普陀区にある万代南梦宫上海文化中心の前にいた。
夏真っ盛り、天気予報では32℃。
あつい……。
突き刺さる日差しが容赦なく照りつけてくる。
しかし今が冬であったとしても、私は熱いと感じただろう。
今日は中国の東方音楽サークルファンが4年待ち続けた日なのだ。
上海THONLY 第11届 东方露明境――。
文/ohka
編集/土露団子
中国東方音楽サークルファンの、最も熱い一日
日本と中国の東方アレンジ音楽サークルが集まって催される、6時間におよぶ東方アレンジ音楽の祭宴。
開場1時間前にもかかわらず、すでに長蛇の列だ。
焼けつくような日差しの中、完コスのチルノや衣玖さんまでいらっしゃる。(中国では街なかでのコスプレが普通に行われており、自宅やホテルからコスして来場する方も多い)
並んでいる全ての方々から「今日のライブを絶対に楽しもう」という気迫に近いものを感じる。
入場が開始され、続々と中国東方ファンがフロアの中に入っていく。ゲートのカウンターはすでに1000を上回った。
その数が意味することは、気迫の塊のような彼ら観客たちが、決して広いとは言えないこの会場に1000人以上いることを示している。
日本の東方音楽サークルファンとして、負けてはいられない。ある種の緊張感を抱いて、2階観客席へと移動した。
1階スタンディングフロアは文字通り超満員。
2階チェアーフロアも、席はおろか通路まで猫の子も通さない密度。
しかし誰も閉幕まで動く様子を感じさせず、いまかいまかと開幕を待っている。
ステージでは注意事項のアナウンスが行われると、ついに上海THonly11 东方露明境が幕を開いた。
上海THonly テーマ曲 滴星盏〜露明境
まずは中国サークルのボーカルが集まり、歌われる上海THonlyテーマ曲から厳かにスタート。
2019年に行われた『第十届上海THONLY 東方滴星盞~ほしをしたたるさかずき』のテーマ、『滴星盏』。
続けて静かに始まる、秦こころテーマ曲「亡失のエモーション」のピアノイントロ。
本イベントテーマ曲、『露明境』!
Aftergrowの平茸氏がこのイベントのために書き下ろした、この熱い夜の幕開けに相応しい、落ち着いた、しかし力強い一曲だ。
観客からははやくも「oi! oi!」と一斉のコール!
PVでは過去の上海THONLY の思い出も映し出され、歌詞にもその意図が盛り込まれているようだ。
振り返られる歴史。この日を待ちわびたフロアからひときわ大きな歓声が上がる。
そしていよいよ最初のサークル、舞風(MAIKAZE)の登場だ!
act.1 舞風-MAIKAZE
大歓声で迎えられた沙紗飛鳥さん。
まずは『散りゆく時』、穏やかなpianoアレンジバージョンからスタート。
波のように揺れるペンライト。
続けてアンケートで希望を募ったという『夜桜街道』『にとり』と、エキゾチックな和のバラードで舞風の世界を作っていく。
よく伸びる高音で、フロアを魅了していく。
「开心吗?!」(楽しんでるー?!)
「大家好,我们来了!」(みんな、私らが来た!)
とフロアを煽り、客席からは大歓声。
アクト中には、サイン入りのハットをくじ引きでプレゼントするサプライズも。
トップバッターにふさわしい、堂々としたアクトだ!
サークル最後の曲は夢想夏郷3話エンディング、『螺旋を描く蝶』。
イントロとステージ背面ディスプレイの映像にひときわ大きな歓声があがる。
見事にフロアを沸かして、堂々と次のサークルYonder Voiceにバトンタッチしていった。
act.2 Yonder Voice
瑶山百霊さんが登場し、秘封活動記録のオープニングテーマ、『決別の旅』からスタート!
舞風に続く、東方創作アニメからの楽曲。
やはり映像のある楽曲は、強く記憶と心に残り続ける。
会場のテンションも呼応し、高まり続ける。
今回の取材は2階観客席に陣取っていたのだが、となりのお兄さんのペンライトが激しい。
秘封活動記録がお好きなのか、Yonder Voiceがお好きなのか。
おそらく両方だろう。
その熱意が、おなじ東方ファンとして、なんだかとても嬉しい。
そしてここでサプライズ、yukinaさんtomoyaさんが登場してYounder Voice & TUMENECOコラボのツインボーカル『星月トラジコメディー』!
フロアにはタオルを高々と掲げるお兄さん。
推し曲へのリアクションはどの国でも同じ。掲げずにはいられないのである。
一旦yukinaさん退場からの、『Missing Link』『偶像ハルマゲドン』とノリの良い曲が続く。
ヲタ芸を打てる場所があれば、間違いなく打っているお客さんがいただろう。
しかし現場は超満員。
熱意はすべてペンライトとコールに込められていた。
さらに缨缨Eiさんが登壇し、Yonder Voide & bunny rhyTHmコラボのツインボーカル『紅蓮の夕嵐』。
このサービス精神にあふれるコラボに、Yonder Voiceの老舗サークルのライブ巧者ぶりを見せつけられたのだった。
act.3 bunny rhyTHm
瑶山百霊さんが退場し、bunny rhyTHmの1曲目は『終わらない夏~Memories of Summer~』。
ときは8月半ば、まさに今、聴くべき曲。
日本語歌詞と中文歌詞が入り交じる、じつにbunny rhyTHmらしい可愛い一曲。
フロアもほっこりとしている。
2曲目では『歌于绯想 剑问真情』から、3曲目にはUNオーエン曲『無我夢中、喜怒哀楽』。
「夜雀食堂」とのカップリング曲だ。
「夜雀食堂」はサークル二色幽紫蝶が制作した、みすちーが主役の可愛くてとても食欲をそそる(注:幽々子様的な意味ではない)大人気東方二次創作屋台運営シミュレーションゲームだ。
その可愛さに違わぬ、あまりにも愛らしい1曲。
さっきから可愛いしか言っていないのだが本当に可愛いのだから仕方ない。
ぜひ、筆者が以前レビューした『kiRa☆rhyTHm』もご視聴願いたい。
「中国語で歌われる、日本人に刺さる“かわいい”曲」東方アレンジ楽曲レビュー『kiRa☆rhyTHm』/bunny rhyTHm
東方アレンジ楽曲レビュー『kiRa☆rhyTHm』
今回は缨缨Eiさんソロでのアクトだったが、いつか琉芸Mirukuさんとのツインボーカルを生で拝聴したいものだ。
続いて、ついに日本サークルからトップバッターLiz Traiangleだ!
act.4 Liz Triangle
lily-anさんとkaztoraさん登場にフロアは大歓声!
言わずとしれた大人気の実力派老舗サークル、とうぜん中国にもたくさんのファンがいる。
なにしろ日本でも貴重なLiz Triangleのライブアクトだ。
おのずと観客のボルテージもうなぎのぼりに。
lily-anさん「ペンライト、レッド、OK?」からの『ネガポジ』!
怪しさあふれる疾走感で、一気にフロアの心を鷲掴みに!
続けて『夜のサーカス』。前の曲に引き続き、まさにサーカスのように胡乱でうさんくさい、しかし美しい曲。
上海租界のある魔都上海にふさわしい曲選び。
本当に上海に来て良かったと心から感動する。
ここでハルトマンの『アナザーエゴ』。
切ないバラードでいったんフロアを落ち着かせる。
美しく揺れる緑のペンライト。
そして最後はトドメとばかりに、言わずとしれた『Who Killed U.N.Owen』!
破壊衝動と美学に満ちた本曲に、フロアの熱気は最高潮に達する。
「「あなたはわたし、わたしはだぁれ?」」
上海の夜に中国東方ファンの日本語シンガロングが響くのであった。
act.5 Tsubaki
続けて中国の老舗サークルTsubaki。
今ライブでは初のフルバンドでの登場だ。
最初の曲『源』。
筆者も大好きな激しい和のロック。
原曲『神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field』がテーマ曲である八坂神奈子様を彷彿させるN-apoleonさんの力強い歌声に、フルバンドの演奏がガッチリと応える。
N-apoleonさんが「Tsubakiの世界です!」とシャウト。
フロアのペンライトが力強いムーブで応える。
この連帯感、愛されている。
『star-crossed』では、ストリングスがヘッドバンキングしながら前奏入り。
バンド形式は、この楽しそうなメンバーのアクトが醍醐味と言える。
見ているだけで楽しい。
そして次曲、『回転木馬』。
これまた筆者の大好きな曲。
しっとりした、けれどもすこし跳ねたレトロな大人のバラード。
2階席フェンスで立ち見している爾子田里乃さんが、肩を揺らして聴き入っている。
こんな風景が見られるのも中国の東方ライブならではだ。
サビの「らーらー らららーらーらー ♫」をフロア全員で合唱。
めちゃくちゃ楽しい!
最後にG Freeから『なぜ魔術は科学になったんだろう?』。
激しいスイングロックに、青いペンライトが激しく揺れる。
ロックもバラードも、かっこいいの一言に尽きるアクトだった。
N-apoleonさんの「Tsubaki 最強!」にフロアが「Tsubaki、最高!!!」と応えて、堂々と退場していったのだった。
続けて中国から、Echollapsarだ!
act.6 Echollapsar
暗すぎない、明るすぎない、アンニュイともいえる日常のボサノバ。
ここまでの熱い流れを一度落ち着かせるひととき。
透き通った歌声に、ヒートオーバーした腕と心を落ち着ける。
さらに、フロアのペンライトの振り方もナビゲート。ほっこりする。
2曲目は『月詠─織姫─』。
思わずガッツポーズと雄叫びを上げてしまった。
レトロフューチャーな大正ロマンとでもいうべき、大好きな曲。
上海でこの曲が聞けるとは思っておらず、完全に我を忘れてしまった。
わずか2曲ではあったが、筆者の心に完全に刻まれたアクトだった。
次は日本から、上海初公開。
フーリンキャットマークの登場だ!
今回はここまで。
続きは後編にてお届けしたい。上海の一番熱い一日は、まだ始まったばかりだ!
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