東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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あきやまうにの秘封アレンジ。黄フロ作品とはまた雰囲気の違った、異色の一曲 『東方オトハナビ』全曲レビュー!! Disc3-09『twilight metronome/あきやまうに』

『東方オトハナビ』全曲レビュー 「twilight metronome/あきやまうに」

 8月14日にリリースされた、東方アレンジ“お祭り“コンピレーションアルバム東方オトハナビ

 同人イベントが思うように開けなくなってしまった今、「こんなときだからこそ、俺たちの東方愛を盛り上げたい!」という、COOL&CREATEのビートまりおさんの呼びかけによって始まった「東方アレンジ活性化大作戦」。『東方オトハナビ』は、Disc4枚、合計40曲、総勢38もの東方音楽サークルが集まった、まさにお祭りといえるコンピレーションアルバムになりました。

 参加した面々の中には、なんと「上海アリス幻樂団」のZUNさんも。この『東方オトハナビ』のために1曲書き下ろしています。

 そんな『東方オトハナビ』をさらに盛り上げたい!
 ということで、東方我楽多叢誌では(Bonus Trackの『マツヨイナイトバグ』『幻想に咲いた花』を除いた)全38曲を、1曲ずつレビュー! 日曜日・祝日を除く毎日、1曲1記事のペースで更新いたします。

 本日のレビューは『twilight metronome/あきやまうに』、ライターは白鷺ゆっきーさんです。

 

あきやまうにの秘封アレンジ。黄フロ作品とはまた雰囲気の違った、異色の一曲 ライター:白鷺ゆっきー

Disc3-09 twilight metronome/あきやまうに 

 あきやまうにさんによる『天空のグリニッジ』のアレンジです。

 

 まず、あきやまうにさんの楽曲と言えば、黄昏フロンティアのゲーム作品(萃夢想・緋想天・心綺楼・深秘録・憑依華 etc…)におけるストーリー曲・既存の曲のアレンジ等で知られているでしょう。

 とりわけあきやまうにさんのオリジナル楽曲である『砕月』は、昨年の「第16回東方Project人気投票」の音楽部門でも12位を獲得するほどの人気曲です(『砕月』もいいが、東方萃夢想オリジナルサウンドトラック『幻想曲抜萃』に収録されているうにさんのセルフアレンジ版『東方萃夢想(Arrange)』はもっと良いぞ!!!『砕月』が好きな人は絶対気に入ると思うのでぜひ聴いていただきたい)。

 今回は秘封の音楽作品からアレンジされたということで、うにさんの楽曲としては少し珍しいものがデビューした形となります。

 

 楽曲全体を聴くと、このアレンジは楽曲の展開こそ原曲の『天空のグリニッジ』に忠実ではありますが、今までの氏の楽曲と比べて少々異色のアレンジになるのではないかと思います。

 うにさんの楽曲は例えば、JUNさんのヴァイオリンや荒井英理也さんのチェロ、にいむさんのギターが録音されていたり、管楽器の使い方だとかアコーディオンだとかピアノの使い方などなど……、そういった楽器の語法の面でZUNさんの東方原曲とは違う“うにさんらしいサウンド”というのがあると思います。

 しかし本楽曲では、楽曲全体にシンセを多用しており、そういった“うにさんらしい楽器の語法”とは違った仕上がりになっています。もちろん過去の楽曲でもシンセはいくつか使われていましたが、本楽曲ではシンセによるメロディが楽曲の多くの部分を支配しており、これまでとは一風異なる思い切ったアレンジと言えるでしょう。アコースティック楽器とは打って変わって、電子的な音が前面に出ているので、ミックスの面でも音作りは大きく異なっているように感じられますね。

 一方で、ベースはかなりニュルニュルと活発に動いています。、ベースラインはそれこそ『砕月』のベースを彷彿とさせるほどニュルニュルしています。また伴奏のピアノは『幻想郷ふしぎ発見』のようなジャジーなニュアンスを感じるもので、そういったところを聴くと確かに「うにさんだな」とも感じさせられます。

 

 そしてタイトルは『twilight metronome』、「黄昏時のメトロノーム」といったところでしょうか。

 メトロノームとは、振り子が一定のテンポで拍を刻んでくれる、楽器の練習などで使う器具です。そのメトロノームの音を、このアレンジでは楽器のように使っています。

 メトロノームが「チッ…チッ…チッ…チッ…」と時計のように4拍分拍を刻むだけの音からこの曲は始まるのですが、実はこの刻みの音、楽曲の最後まで途切れることなくずーっと拍を刻み続けています。

 さらに奇数拍(1,3拍目)と偶数拍(2,4拍目)で音程が異なるので、ちょうどドラムのキックとスネアのような関係でリズムセクションに溶け込んでいっているのが面白い点です。

 

 またもう一点、特筆すべき点はテンポです。黄フロの格ゲーで聴くうにさんのアレンジ楽曲は、格ゲーの実装に合わせるべく元々の(ZUNさん作曲の)原曲のテンポとは違うテンポでアレンジされることが多いです(とりわけアップテンポに)。

 しかし、原曲の『天空のグリニッジ』はテンポが120、そして本楽曲のアレンジのテンポも原曲に同じく120で、こちらは原曲と変わらぬ設定になっているようです。

 

 余談になるのですが、120のテンポというのは2拍分でちょうど1秒になり(1拍分は0.5秒)、時計が1秒を刻む音と楽曲のテンポがぴったりシンクロします。この『twilight metronome』のように時の刻みを彷彿とさせるメトロノームの音があり、且つ120のテンポで作られている楽曲の作りは、2010年に有志によって企画された「TOHO CLOCK」を思い出させます。

 これは「1分間の東方アレンジ or 5秒の動画を作ってみんなで持ち寄って幻想郷の時を刻もう」という趣旨の企画のもので、公募当時の楽曲のレギュレーションは、「時計(時報)の音にピッタリ揃うよう60の倍数(60, 120, 240……)のテンポで作られた東方アレンジを作る」ということでした。私も11年前に一曲寄稿したことがありますが、あれからもうそんなに経つんですね……。

 近年はこういう、公募でみんなから創作物をひたすら持ち寄って寄せ集めて一つのものを一緒に作る、というものは、少なくなっちゃったんでしょうか? ちょっと寂しいですね……。少し話が脱線しましたが、このアレンジの構造はそんな思い出も蘇えらせてくれる楽曲でした。

 

 ロンドンの都市、グリニッジは国際標準時の町であり、我々が用いる時計とも縁のある町です。その意味も兼ねて、このアレンジも原曲と同じテンポ120に合わせたのでしょうか。しかしたとえテンポが同じとはいえども、リズムは原曲のダーク&ヘヴィな雰囲気に倣わずポップなノリに組み上げられているので、そこは原曲とはまた違った趣向になっていますね。

 

 このように『twilight metronome』は、黄フロ作品で聴くストーリー曲やアレンジ曲とはまた雰囲気の違った一曲に仕上がっています。

 あきやまうに曲ファンの脳内では、どんな『天空のグリニッジ』のアレンジが思い浮かぶでしょうか? ぜひ、楽曲を聴いて確かめてみてください。

 

 

『東方オトハナビ』

http://cool-create.cc/arrange-daisakusen/

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限定版:¥7,700(税込)

通常版:¥4,950(税込)

委託販売先:

限定版
BOOTHメロンブックスメロンブックス(二次受付)

アキバホビー(タペストリー付き) / アキバホビーTANO*C STORE

通常版
BOOTHメロンブックスアキバホビーTANO*C STORE

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各サークルのリリース情報は、↓こちらのサイトをチェック!↓

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東方ルナティックリリースに合わせて、東方同人音楽流通では『夏の三週連続リリース祭り』も始まっています!

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