8月14日にリリースされた、東方アレンジ“お祭り“コンピレーションアルバム『東方オトハナビ』。

　同人イベントが思うように開けなくなってしまった今、「こんなときだからこそ、俺たちの東方愛を盛り上げたい！」という、COOL&CREATEのビートまりおさんの呼びかけによって始まった「東方アレンジ活性化大作戦」。『東方オトハナビ』は、Disc4枚、合計40曲、総勢38もの東方音楽サークルが集まった、まさにお祭りといえるコンピレーションアルバムになりました。

　参加した面々の中には、なんと「上海アリス幻樂団」のZUNさんも。この『東方オトハナビ』のために1曲書き下ろしています。

　そんな『東方オトハナビ』をさらに盛り上げたい！
　ということで、東方我楽多叢誌では（Bonus Trackの『マツヨイナイトバグ』『幻想に咲いた花』を除いた）全38曲を、1曲ずつレビュー！　日曜日・祝日を除く毎日、1曲1記事のペースで更新いたします。

　本日のレビューは『檻の中の**／凋叶棕』。ライターは、ベルクートさんです。

 

これは、凋叶棕による東方版『異聞竹取物語』なのでしょう。　ライター：ベルクート

Disc1-10　檻の中の**／凋叶棕

『かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる』

　『かごめかごめ』――それは誰もが知っている童唄。一度は口ずさんだことがあるでしょう。ただ、それは月の姫にとっては呪いの歌だったのかもしれません。

 

※このレビューには私的解釈が大量に含まれます

シンデレラケージ　～ Kagome-Kagome

　アカペラで始まる『かごめかごめ』。透き通る声から始まり、神秘的なピアノの旋律を加えつつ物語の幕は上がりました。なんとも美しいイントロですね。『かごめかごめ』の歌詞とメロディーは皆さんも知っているでしょう。しかしその意味をご存じでしょうか？

　様々な解釈がありますが、その意味は謎のままです。ですが、これが蓬莱山輝夜を歌ったものだったらどうでしょうか？なんでもない子供の歌が恐ろしいものに変質していきます。

 

かこめ　かこめよ　かごのなかに

いかなるせかいの　うつくしきゆめのあれば

 

　『囲め囲めよ』――シンデレラケージは、輝夜の檻のことを指すのでしょうか。かごめかごめにおける『籠の中の鳥』は輝夜のことを歌ったのかもしれません。私はこの曲を『永琳と輝夜の、過去の話』と解釈しました。

 

竹取物語と蓬莱山輝夜

　『竹取物語』というお話は、小中学校で読んだ方も多いでしょうし、あらすじもご存知でしょう。この竹取物語の登場人物「かぐや姫」が、蓬莱山輝夜その人だと言われています。

　冒頭の「囲め 囲めよ」は、竹取の翁が姫をとられまいと屋敷の奥に閉じ込めるシーンだと思われます。なぜでしょうか、ありふれた昔話を歌ったはずが短調寄りのピアノと不穏なメロディに心がざわめきます。

 

あなたは、蓬莱山輝夜と八意永琳の、過去の話をご存じでしょうか？

 

　月で罪を犯した輝夜は、罰として穢れた地上に落とされてしまいます。そこで地上人に拾われ育てられ、やがては刑期満了で月から迎えの使者が降りてきます。ここまでは皆さんが知っている竹取物語とそう変わりはありませんよね。

　しかし、『竹取物語』と蓬莱山輝夜の物語の相違点は、使者の中に八意永琳がいた部分にあります。彼女はあろうことか、月の使者を皆殺しにして輝夜との逃避行に走ってしまうのです。

参考資料：『東方永夜抄 おまけ』『東方永夜抄 キャラ設定』

 

異聞｢竹取物語｣

かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる

 

檻を出た鳥(輝夜)、そして月を裏切った永琳、では輝夜を大切に隠し育てていた地上の人はどうしたのでしょうか。

 

＊＊だらけの　穢土をすてて

とんでいけ　どうか　ふりかえることなく

 

　―――「飛んでいけ」というフレーズに違和感を覚えます。永琳視点ならば｢飛んでいこう｣になるでしょう。しかし『籠の中の＊＊』のラストは輝夜を送り出す歌になっています。輝夜を送り出す人物といえば……これは輝夜と暮らした地上人の視点だったのではないでしょうか。

　地上の人は「穢土(地上)を捨てて」と願っていることから、その最期まで輝夜は月に帰ったと信じていたと思われます。

　ですが、実際は永琳が輝夜と共謀し、現在は別の穢土(幻想郷)にいるのです。地上の人の願いが報われる日は永遠にこないのです。

　そして、二人の去った後の地上は“＊＊”だらけになっていました。「＊＊」の読みは是非あなた自身で聴いて確かめてください。ただ、月の民の言う“穢れ”とはおそらく地上での死を連想する“黒不浄”のことだと考えられる、とだけ申しあげておきます。

 

　繰り返し聴くごとに、馴染み深いはずの童歌がおどろおどろしい怪物に変わっていくようです。畳み掛けるように囁き掛ける歌声、不気味なラララララ♪……間奏に流れる『かごめかごめ』のメロディーがどんどん気味の悪い呪詛のように思えてきました。しかし、それが良いのです……最高なんです。

 

けれどあなたは　あなたのこえは

おりのそとでも　きっとつよくひびくから

 

　輝夜を手放すと決意した地上人は、終始健気に姫の幸せを祈りました。これは、凋叶棕による東方版『異聞竹取物語』なのでしょう。地上人の視点から永琳と輝夜の凶行を追体験できる一曲なんです。こんな体験なかなかできませんよ？　輝夜がグッと近い存在になった気がします。心的ダメージも受けますが、それだけ入れ込める曲なんです。是非アナタも、この悲劇の体験者になっていただきたいです。

　

『東方オトハナビ』

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各サークルのリリース情報は、↓こちらのサイトをチェック！↓

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