純度の高い原作追体験。「石鹸屋の偶像」は、欲しい。 『東方オトハナビ』全曲レビュー!! Disc1-03『黄昏のイドラデウス/石鹸屋』
『東方オトハナビ』全曲レビュー 「黄昏のイドラデウス/石鹸屋」
8月14日にリリースされた、東方アレンジ“お祭り“コンピレーションアルバム『東方オトハナビ』。
同人イベントが思うように開けなくなってしまった今、「こんなときだからこそ、俺たちの東方愛を盛り上げたい!」という、COOL&CREATEのビートまりおさんの呼びかけによって始まった「東方アレンジ活性化大作戦」。『東方オトハナビ』は、Disc4枚、合計40曲、総勢38もの東方音楽サークルが集まった、まさにお祭りといえるコンピレーションアルバムになりました。
参加した面々の中には、なんと「上海アリス幻樂団」のZUNさんも。この『東方オトハナビ』のために1曲書き下ろしています。
そんな『東方オトハナビ』をさらに盛り上げたい!
ということで、東方我楽多叢誌では(Bonus Trackの『マツヨイナイトバグ』『幻想に咲いた花』を除いた)全38曲を、1曲ずつレビュー! 日曜日・祝日を除く毎日、1曲1記事のペースで更新いたします。
本日のレビューは『黄昏のイドラデウス/石鹸屋』。ライターは、Jさんです。
純度の高い原作追体験。「石鹸屋の偶像」は、欲しい。 ライター:J
Disc1-03 黄昏のイドラデウス/石鹸屋
私見で恐縮だが、東方アレンジの最低限のルールは「原曲を追体験できること」である。主にその方法はメロディだが、歌詞や楽曲の構成、楽器の使用方法などもあるだろう。これまで数千ものサークルが数万もの方法で原曲追体験の形を提供してくれた。
そして今回、とうとう、石鹸屋の偶像である。
注:ここで言う「偶像」とは、原曲の「偶像に世界を委ねて」あるいはそのアレンジを指す。
物体としての「石鹸屋の偶像」は、欲しい。
待ちに待った石鹸屋の鬼形獣アレンジ。オタク界では常識だが、石鹸屋の最初のアルバムは「東方弾打團 ~Feast of roaring beast~」である。勝手に飛躍すると、鬼形獣アレンジが期待できないわけがない。
そうだね。飛躍しすぎてるね。ちゃんと説明しよう。
とりあえず英題部分に「roaring beast」とあるわけだ。「ビースト」で「ロアリング」だったら完全に鬼形獣なんですが!?!? まぁbeastってそれなりにroarするから奇跡の一致ってほどではないけどさ!! でもさ!!!
つまりですね! つまりですよ??? 自分たちを「roaring beast」と記した石鹸屋の!!! 鬼形獣アレンジ!!! ってことはつまり……つまるところ……
え……もう……16年前?(膝から崩れ落ちる)
レビューに関してまだ3行しか書いてないので、ここから本気出してちゃんと書こうと思う。
注:以下、個人的な石鹸屋びいきのような表現が入りますが
ほかのサークルや楽曲を貶める意図はございません。
石鹸屋の『偶像に世界を委ねて ~ Idoratrize World(以下、偶像)』アレンジ……、手が震える。喜びの反面、怖くもあった。
僕は、誰から頼まれるわけでもなく強引に1stアルバムと鬼形獣との関連性を結びつけて、不必要にハードルを上げてしまっているのかもしれない。そのせいで、単純に良い曲だったとしても、勝手に期待を下回らせてしまうかもしれない。
そう、石鹸屋も偶像も何も悪くないのである。幻覚見ちゃってハードル上げたユーザー(僕)だけが悪いのだ。
再生ボタンを押す前に深呼吸して自分に言い聞かせる。
まぁそもそも偶像自体が好きな原曲だし? そもそもどのサークルの偶像アレンジも良い曲だらけだし?
美しい偶像アレンジも良い。元気な偶像アレンジも良い。しっとりした偶像アレンジも良い。どの偶像アレンジも素晴らしい。
こういう現象は往々にして起こる。好きな原曲のアレンジはどの曲もだいたい好き。パブロフの犬になっちゃってんだわ。
だから「偶像アレンジ」ってだけで、食べログで例えるなら最低限★3.85〜くらいは見積もっていいでしょ。普段食べてる牛丼が★3.07だし絶対問題ない。
だから石鹸屋に関係なくさ、偶像アレンジの時点で当然良いに決まってる。他の偶像アレンジも最高なんだから。だからさ……石鹸屋がどうこうじゃなくて偶像アレンジなんだからさ……僕は偶像アレンジってだけで満足できるんだ……そう、どんな偶像アレンジだろうと……
班長「フフ……へただなあ、へたっぴさ……..! 君が本当に欲しい偶像アレンジは…石鹸屋……
ディストーション強めなギターとアンニュイなAメロで荒々しく寂寞とした畜生界を想起して….
畜生界にトリップしたところでBメロの鬼気迫るドラムが、偶像崇拝という史上有数のパラダイム転換の力強さを描いていてさ……
サビは一転して溢れる疾走感。それが石鹸屋らしいガッツリ重厚なサウンドで奏でられて、偶像崇拝による形而上的新領域の発見とそれを核に人間社会が拡大・発展して地上を支配していく人類史のダイナミクスを追体験したい……! だろ….?」
否。それだけではない。
原曲Bメロで一瞬顔を覗かせるシンセサイザーのサウンド。それがギターの刺激的なチョーキングで表現されていて、気持ち良すぎる。
あとAメロの秀三の歌い方がセクシーすぎる。グラビアみたいなアルバムジャケット撮ってたけどこんなエロい裏声もあっていいの?
さて、まだサウンド(と1stアルバムの幻覚)の話しかしてない。石鹸屋と言えば歌詞の話は避けて通れないだろう。
歌詞は一貫して一つのテーマを綴っている。顕著なのはサビの歌詞。
キミは委ねられた 傲慢ながら儚い夢を
キミは委ねられた 向こう見ずな思いを
キミは委ねられた 理不尽なまま廻る世界を
小さなイドラデウスよ 黄昏を終わらせて
この曲の歌詞はおそらく、原作にて埴安神袿姫が「人間霊たちの起死回生をかけた祈りによって召喚された」まさにその瞬間の情景を物語っているのだろう。
「小さなイドラデウスよ 黄昏を終わらせて」の一節に、人間霊の悲痛な祈りが詰まっている。
要は、歌詞の原作臨場感が凄まじいのだ。凄まじすぎて原“曲”追体験どころか、原“作”追体験である。
描写される人間霊とシンクロしちゃって、自分も袿姫に全てを委ねてしまいそうになる。ジャンルとしては畜生界転生モノに分類されるだろう。そしてはっと我に返り、自分は動物霊に支配された畜生界の人間霊ではなく、テクノロジーに支配された現代の人間なのだと思い出す。そんな、二段重ねの原作追体験が待っている。
この臨場感満載の歌詞と、さっき謎の班長が語ったサウンドが爆裂シナジーを引き起こし、純度の高い原作追体験を提供する一曲となっている。いや、むしろ耳から摂取するタイプのお薬と言ったほうが近いだろう。3分49秒の電子ドラッグ。
まさに「犯罪的な」偶像アレンジである。
語りたいことはまだまだある。
その前にまず、ここでお見せしたいものがある。この企画を担当している東方我楽多叢誌の方からのお言葉だ。
————ここまで2,200字超————
すまねぇ……。
どれだけ言葉を重ねても本物には届かない。今すぐ自分の耳で聴いて、人類史のダイナミクスと人間霊起死回生の祈りの瞬間を、追体験してほしい。
最後にひとつだけ。
人間霊から夢も思いも世界をも委ねられた小さなイドラデウスが、黄昏を終わらせて作り変える世界とはどんな世界だろうか。
想像の余地は無限にある。
しかし、そんな想像のひとつとしてDisc3の2曲目『Baby Deus/ゼッケン屋』を聴くのも面白いのではないだろうか。
『東方オトハナビ』
http://cool-create.cc/arrange-daisakusen/
こんな時代だからこそ、俺たちの東方愛を盛り上げたい! 4枚組!驚異の40曲!!東方アレンジお祭りアルバム登場!!!
限定版:¥7,700(税込)
通常版:¥4,950(税込)
委託販売先:
限定版
BOOTH / メロンブックス / メロンブックス(二次受付)アキバホビー(タペストリー付き) / アキバホビー / TANO*C STORE
通常版
BOOTH / メロンブックス / アキバホビー / TANO*C STOREアニメイト / あきばお~こく / ブックメイト / DIVERSE DIRECT / Grep /とらのあな
東方ルナティックリリース
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各サークルのリリース情報は、↓こちらのサイトをチェック!↓
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東方ルナティックリリースに合わせて、東方同人音楽流通では『夏の三週連続リリース祭り』も始まっています!
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