同人誌評
2020/12/04

東方同人誌へのアツい想いがここに!頂いた「東方同人誌レビュー」全部まとめました その③

東方同人誌レビューの中から“特にアツい一文を”掲載


【ユーザー投稿企画】〆切を6/30まで延長!あなたの東方同人誌レビューを募集します!

6月に行いました「東方同人誌レビュー募集」企画。本当にたくさんの反響をいただきました!

編集部に届いたレビューの件数は53件! 前回募集した東方アレンジレビューに引き続き、本当にたくさんのレビューを送っていただきました。

今回も、
オススメ頂いた東方同人誌の情報はすべて、
“レビュー文で特にアツいと思った一文を添えて”掲載
をさせていただきます!
さらに、中でもよりすぐりのレビューについては、数件、全文掲載させていただく形にいたしました!

同人誌名/制作者(制作サークル)
※レビューとともに作品情報リンクをご投稿いただいたものは、タイトルに直接リンクを貼らせていただいております

 いただいたレビュー文の中で、特にアツかった一文(抜粋)

――レビュー投稿者のお名前

という形で掲載いたします。

今回の掲載分に載っていないレビューは、後日ピックアップの形で掲載させていただきます。改めて「東方同人誌レビュー企画」にご応募頂いたみなさま、本当に有難う御座いました!

過去のまとめ

東方同人誌へのアツい想いがここに!頂いた「東方同人誌レビュー」全部まとめました その①

東方同人誌へのアツい想いがここに!頂いた「東方同人誌レビュー」全部まとめました その②

 

東方同人誌へのアツい想いがここに!「東方同人誌レビュー」まとめ その③

花鏡 / ひよい(かふか堂)

ひよいさんと言えば4コマ漫画と思われる方が多いかと思いますが、イラスト集「花鏡」はとにかく美麗でした!

描き込み量と熱量、世界観がはんぱなく、ページをめくるたびにキャラクター愛が伝わってきます……!

ーあおいさん

 

なきむしもこたんまとめ / もこもこね(もこもこね)

この本で私が好きなところは、ほかの方の同人誌でも見るように、慧音は妹紅の保護者的な立場で描かれることが多いが、妹紅が小さくなったことで、それがさらに強調されている。

小さい妹紅が何かをするたびに興奮したり、妹紅の話を優曇華たちに長々と話したりと、慧音は本当に妹紅のことをかわいがっていることが分かる。

ーろくろペンギンさん

 

きっと、幻想郷でなら / 柳太(だいたい2トン)

1ページ目にも書いてあるのですが茨歌仙・はなおうぎを読み終わった人向けの作品です。

茨歌仙のお話を振り返りながら読める作品となっていて、「あー、この話もう一度読みないしたいなー」って思いながら読ませていただきました。

ネタバレになるのであまり言えませんが、華扇ちゃんの鬼と仙人の狭間の苦悩やにゃんにゃんの圧力(17ページの一番最後のコマのセリフなんか特に)などがひしひしと伝わってきます。お話のルート的には本家とは違いますが、性格を考えるのと鬼ってことを考えると自然な感じで読んでいても違和感がなくて凄く良かったです(ラスト47ページ辺りからものすごい好き)。

ー剣踊人さん

 

空の帰り道 / 雲海(うかいぷ)

東方において、二次創作と「バトル系」との相性は良くないと思われがちな気がします。

バトルがある作品であるなら、それなりのストーリー展開が要求されます。戦闘シーンの前に用意されるべきストーリーがなければ、ただただキャラクターがスペルカードを取り出して深い理由もなく弾幕を交わすだけの乾いた作品の出来上がりです。

だけどそれも不可能ではありません。当然東方の二次創作作品となるのですから、一次創作の東方というバックグラウンドがすでに存在しているのです。一から世界観を作るのではなく、すでにある世界からキャラクターの感情や思惑をどう解釈し、それを薄い本の中でどう表現するのかが重要になってきます。

 

紹介する作品「空の帰り道」は東方星蓮船おまけテキストで語られる話が主軸になっています。その昔、聖白蓮が封印され、地底に閉じ込められた雲居一輪・村紗水蜜のふたりが主人公になっており、このときのふたりはあまり仲が良くありません。さらには聖が封印されたとき、毘沙門天の弟子である寅丸星はその役目を全うするため聖を裏切ることになり、結果一輪からも憎まれてしまいます。ほかの二次創作で登場する星蓮船キャラはだいたい仲良く描かれることも多いですが、「空の帰り道」では、最初、結構ギスギス描かれているんですよね。地底に閉じ込められたあとの一輪は雲山を使役できず、鎖でつながれて離れることができません。それでも必死にその状況を打破しようとあがき続けますが、そんな一輪に冷ややかな目を向け、冷たい言葉をかける村紗。彼女は拘束されておらず、一輪のいる場所から遠ざかることができますが――とここまでがあらすじ。

戦闘シーンに入ったときの読者の置いてけぼり感がなく、それどころか感情を掻き立てられる展開が用意されています。ストーリー構成もさることながら、何より重視すべきはキャラクター同士の関係です。村紗と一輪は仲は悪くも、ともに聖を慕う者同士であり、そしてお互い唯一聖のことを思い出させてくれる存在でもある(聖の遺したものは彼女の身柄と一緒に法界に封印されたり、あるいは村紗や一輪の近くにはなかったのですから)。一輪は寅丸星のことを恨めしく思っていますが、では星のほうはいったいどんな感情でいるのか。そういったキャラクター間の感情こそ、まさしくこの作品の醍醐味と言えます。

ー綿西狩真さん

 

唐傘おばけにご用心? / salt(seasoning)

小傘ちゃんが蓮子さんとメリーと出会う夢本ですよ。

終始かわいい〜が詰まっているので読む際はご用心を。

ーティルさん

 

わかさぎジェラシー!!! / 粟子ッコ(ニワトリ先祖返り)

足が生えたわかさぎ姫が人里と守矢神社に行き、飲み食いするほのぼの漫画です。

キャラの登場の仕方が上手くて、わかさぎ姫に突然足が生えるシーンがあるのですが、なるほどあれはこのための伏線だったのか!

なぜわかさぎ姫がジェラシーするのかと誰にジェラシーするのかを知ってほしいですね。

ーティルさん

 

黄金の降る場所で / 銘宮(風切羽)

「上白沢慧音が『ある人物』を殺した」、岡崎夢美による奇妙な告発。ハクタクの能力によって歴史ごと抹消されたというその「被害者」の調査。雲を掴むような事件へと、哨戒天狗・犬走は乗り出す――。

先生はなぜ殺人を犯したのか。被害者はいったい誰だったのか。そしてなぜ、岡崎夢美は一介の哨戒天狗へと犯罪を告発したのか。

張り巡らされた綿密な伏線が巧みに回収される見事な結末。そして、同人誌の特性を最大限に活かした圧巻のラスト1ページはきっと、衝撃なしに見ることはかなわないでしょう。

 

この作品との出会いはもう3年ほど前、大学の先輩の勧めからでした。

そして、「東方×ミステリ」というそれまで私がまったく触れたことのなかったジャンルへとハマっていくきっかけとなった作品でもあります。

それほどまでに、この作品の結末は私にとって衝撃的で、切ないものだったのです。

 

なんと言ってもその設定が秀逸です。「犯人当て」というのがミステリーの王道ですが、今作は「被害者当て」という普通に書こうとするとトリッキーで難しい設定を、ハクタクの能力の設定と組み合わせることで見事に東方の世界観へ落とし込むことに成功しています。

また、伏線のフェアさも見事です。「人妖が数多存在する幻想郷の中で、存在自体が歴史から抹消された『何者か』を探す」という無理難題を解決しようとするわけですが、状況証拠などではないきっちり「何者か」が確定する証拠が我々の前に提示され、さらにその「何者か」が記憶から完全に失われているにも関わらず、探偵役がその正体に至るまでの論理プロセスが用意されているのです。種々提示される伏線の数々も、東方の世界観を存分に活かしたものとなっています。

そしてなんと言っても、この作品を名作たらしめている最大の理由として、ラスト1ページ。ラスト1ページの慧音先生のある「一言」が、この作品に強い物語性を宿しているのです。これこそが最大の「東方Projectでしかできないミステリー」と呼べる点だと思います。

 

これを機に、東方×ミステリーというジャンルの面白さを知る方が増えていってもらえれば幸いです。

ーIwannaさん

 

ご英断恐れ入ります / ガガンボ

さとりが大昔の月面戦争で大将を務めていたらどうしていたかという物語です。この方以上に恐ろしく敵に回したくないと思わせてくれるさとりはいません。

ーBD230さん

 

きこえるとも / へたれ(チリトリガカリ)

あるオオカミの群れの、最期までのお話です。

荒々しくも淡々と描かれていく情景はほの暗くも生命力に満ちています。ダイナミックなタッチですが、狼たちのやり取りや争う姿などは繊細に描かれており、まるで自分も群れの一匹となったようです。どうなるんだ、どうなるんだとハラハラしながらも最後は「幻想郷」という概念そのもので話を着地させています。

描き手の情熱、エネルギッシュで衝動的な場面作りにただただ雷に撃たれたような感動を覚えました。素晴らしかったです。

ー猫好たまさん

 

ななめまえの偶像 / 仲谷 鳰(リレバ)

幻想少女の在り様は、作品が発表されスポットが当てられるたびに、絶えず変化していきます。変化していくというより、別視点からの描写により、新しい側面が浮かんできたり、新たな謎が増えたりする、という表現が正しいでしょうか。

宇佐見菫子はその筆頭とも言える存在だと思います。

それを踏まえた上で、菫子には変わらないものがあります。他者との――特に、有象無象との関わり合い方です。

 

内容は、「わたし」(作中で主人公の一人称は明かされていませんが、便宜上ここでは「わたし」とします)が、ななめまえの席にいる菫子に対し、勝手に色々と思いを寄せる、簡単に言ってしまえばそんなお話です。

菫子は、新しい人間関係の構築に迫られている人間を、

『あなたたちと付き合って、私に何か得るものがあるの?』

という一言で切り捨て、孤高を手に入れます。深秘録おまけtxtでも明かされている通りに。

 

最初のページで、「わたし」はこう叙述していました。

『宇佐見菫子さんと友達になりたい』『きっとみんなそう思ってる』

それは紛れもなく、ほかの誰でもない「わたし」自身が、そう願っていたのです。

同時に、菫子の求める価値を自分が持っていないことも理解していました。だからこそ、不用意に距離を詰めようとはしませんでした。

けれど、夏休み中に起こった何かがきっかけで、そのハードルが低くなっているとするならば。

有象無象のように、人間関係の構築を望んでいるのなら。

変わってしまったのなら。歪んでしまったのなら。堕ちてしまったのなら。

ならば、せめてもの慰みとして、その他大勢に紛れてしまう前に、自らの友人として、その特別な存在をつなぎ止めたい。

彼女の、友達になりたい。

「わたし」はそれに縋ったのでしょう。

 

こうして菫子は、「わたし」にとって、永遠に手が届かない偶像となったのです。

 

この本には、宇佐見菫子の在り方(あるいは我々が押し付けている「在ってほしい姿」)が短いながらもぎゅっと詰め込まれていて、大変素晴らしい作品です。菫子が好きでまだ未読な方はぜひ。

ー東風谷アオイさん

 

チルノちゃんは最強ですから /  うがつまつき(あさつき堂)

力が強すぎるがゆえにほかの妖精から疎遠にされてきたチルノ。

そんなチルノが出会ったのが、湖に流れついた名も無き妖精。

チルノはその妖精に「大妖精」と名付けて看病する。お互いに「私に触れて平気なの!?」と驚きながらも意気投合し、初めての「妖精友達」となったふたり。

<もうこの時点でとても尊い大チルです!>
<このあたりの数ページのとても仲の良い大チルもとても尊いです!>

この作品を見たら、本当にチルノは最強なんだと認識せざるを得ないと思います。

ー冬もぐらさん

 

花の牢獄 / tamiko(paseri)

生前の西行寺幽々子と妖怪・八雲紫の出会いと別れ、そして現在に至るまでを描いた作品です。表紙が幽々子、裏表紙が紫で対になって彩られているのが特徴です。

作品の構成は過去の回想と現在の会話を交互に展開する形式をとっていて、雰囲気は全体的にシリアスの面が強めです。

紫と生前の幽々子の物語は、妖々夢おまけテキストの設定で仄めかされている程度のものであり、今後も大きく語られることはないと思います。しかしながら八雲紫、西行寺幽々子は現在も作品内で存在感を示すような魅力的なキャラであり、そのふたりの出会い、別れ、そして今に至るまでの物語は、原作のお話にも並ぶほどに重要なものであると思います。

そんな謎に包まれたふたりの物語のひとつの答えを丁寧な作画と深い構成で示した非常に完成度の高い作品であり、私がふたりの物語に今なお強く想いを寄せる理由のひとつともなっています。

ーイブさん

 

鏡像のM /  仲谷鳰(リレバ)

仲谷鳰先生の『鏡像のM』ですけど要点としては『入れ替わっているのか』という点があるのですが、そこははっきりとした答えがありません。
蓮子ちゃんの主観としては『宇佐見蓮子』と『メリー』であるという答えが出ているのですが、それは鏡の世界の『ふたり』の関係も『宇佐見蓮子』と『メリー』であるため『入れ替わっていない』ということにはなりません。
その話をしているときのメリーちゃんは『あなたが言うならそういうこと』としていてそこでENDのため、そのときのメリーちゃんの目になにが見えているのか分かりません。

ここからが僕の妄想なのですが、仮に『入れ替わっていた』ならきっと31ページのメリーちゃんの目には18ページのような蓮子ちゃんが見えていたと思われます。
実際このとき『ふたりとも』すでに入れ替わっていると思われるので、そういうオチなのではないかと思います。
入れ替わってはいるのですが、今回の3ページ目から物語が始まっているのであれば5ページ目から現れる『通常のメリーちゃんと蓮子ちゃん』と思われるふたりがそもそもおそらく『鏡像のメリーちゃんと蓮子ちゃん』なんですね。
それは3ページ目で『鏡像のM』という文字がひっくり返っているのでそういうことを表しているのではないかと思います。
なので物語の途中で入れ替わったのであれば『元に戻った』ということなので良い(良い?)のではないでしょうか。
メリーちゃんは蓮子ちゃんを見て『気持ち悪い目』と言いますよね。いやまぁそれはまた別の話になるのですが。
さてどこで『入れ替わった』のかという点についてですが、そもそもこの『入れ替わる』というのがどのようにしたら入れ替わるのか明らかになっていないのでこれも妄想でしかないのですが、『触れた』時点で『入れ替わる』のではないかと思いました。
6ページや22ページの描写にて『鏡の世界の言語は鏡の世界の住人にしか理解できない』ということが分かります。
ところが23ページではほぼほぼしっかりとした日本語になっています。
これは『触られてしまいその世界の住人となってしまった』ため理解できるようになったのではないでしょうか。
24ページにおいてもお店の文字などが鏡文字ではなくなってしまっています。
これについても『鏡の中の世界の通常の文字』である鏡文字を『その世界の住人となったメリーちゃん』は通常の文字として認識してしまったのではないでしょうか。
同様に蓮子ちゃんはそのあとに見事な膝蹴りで助けてくれますが、すでに『触れられている』ため『入れ替わって』いるのではないかと思われます。
『入れ替わった』結果『通常の蓮子ちゃんとメリーちゃん』に戻ったため『いつもの鏡文字でない世界』として認識しているというところで終わりのようです。
仲谷鳰先生は鏡像のふたりと通常のふたりを見事に描き分けていますので、『5ページ目から登場する蓮子ちゃんとメリーちゃん』はそれぞれカバンを右肩に、さらにメリーちゃんは服のボタンを右側を前にして留めています。
鏡の中のふたりは逆になっていますね。
メリーちゃんはあとベルトも逆になっています。
『5ページ目から登場する蓮子ちゃんとメリーちゃん』と『26ページ以降で出る蓮子ちゃんとメリーちゃん』のカバンのかけ方や服をどちらを前にして留めているかを統一することで『入れ替わっていない』『最初から変わっていない』ということを表現されています。
見事ですね。
26ページで登場する蓮子ちゃんは入れ替わっているのかについては、最初の蓮子ちゃんとカバンのかけ方が同じなので入れ替わってなかった! 良かった! 良い話だな! と納得することも可能です。
可能ですが、僕は『ふたりとも入れ替わって』はいるのかなと思いました。

 

あとここからが重要なんですけど、なんとなく蓮子ちゃんの作画がロリっとしててめちゃめちゃかわいくないですか?

ーよしれっくすさん

 

楽土の先付 /  NiceTea(釣師)

私たちの前にてゐと鈴仙が登場してから早十数年、「トラブルメーカーと火消し役」という息の合ったキャラクターコンビは、非常に拘束力が高く当時から絶大な魅力を発揮してきました。
しかし十数年後の現在、逆に“キャラクターの拘束力が高すぎた”ため、どうしても発生してしまう側面が「ネタの固定化」です。

そんな購入者と作者共々、新しいネタ探し飢饉で苦しむ渦中に一石を投じたのがNiceTea氏による「東方耽美郷(たんびきょう)」というシリーズであり、今回紹介する本はその中の一冊【楽土の先付】(うど×てゐ)です。

■ポイント①【冷静な鈴仙とイナセなてゐにウットリ】 
東方二次制作の楽しみ方のひとつに「東方という素材をいかに独自解釈で調理して展開するか」というのがありますが、NiceTea氏が描くキャラたちは、東方のキャラクターとしての記号は守りつつも、男女目線問わず心身ともに「カワイイからカッコいい人物」へとコンバートされており、しかもカッコよくするだけでは飽きたらず、ちょっとした表情やしぐさ、コマとコマの間からキャラの心情を語るという、ロジックとして太い一本が通っているのだから最高です。

■ポイント②【額縁に飾っておきたい言葉が多数】
てゐ:「鈴仙様…あの美しい兎(ひと)のためならば、己は死んだっていい」
鈴仙:「夢みるように私を見ないで…」

……こんなセリフ読んだらなんか真顔で遠くを見ちゃうよね。

■ポイント③【テーマの伝え方が非常に繊細】
人を許すこと。そして人を許したことで自分も許されていくということ。
自分の中にある過去の痛みや過ち、後悔を互いに認め合うことで、その先にあるやさしさと思いやりにつながっていく……という至極真っ当なテーマを作中のセリフでは語らずに、ふたりの行動を通して語ることで、外にいる読者の想像の中に本当に伝えたいことを託す……という非常に繊細で計算しつくされている手腕が堪能できます。

表紙を見て分かるように、作者特有の“クセ”がありますが、“濃い味”が好きな方は、自分だけの一冊を発見したような感じを味わえることまちがいありません、ぜひぜひご覧になってみてください!

ーナナシノ@ゆゆ様扇子でゴキ退治さん

 

赤蛮奇と妖怪の山 /  Niy(ニイ工房)

わかさぎ姫に訪れる危機を草の根ネットワークがさまざまなアプローチで他勢力の力を借りて解決する話です。

この作品の魅力のひとつにモブを用いた状況の演出が挙げられます。モブたちが「生きている幻想郷」を彩ってくれています。

魔理沙の八卦路が回転する「カラカラ」といった音や、弾幕ごっこに八雲紫の承認が必要であったりする公式にないけどきっとそうであると納得させてくれる安心感みたいなものが素晴らしい点です。

ちなみに一番好きなシーンは白狼天狗たちに追いかけられる今泉影狼が大ジャンプするコマです。この作家様はカメラワークが抜群にカッコいいので読み進めるのが楽しくて仕方ないのですが、このコマは本当にめちゃくちゃカッコいいです。

ー煮え湯さん

 

ジロー日和 総集編4 「魂の消費期限」「雨曝しのボロ傘」 / ジロー(ジロー日和)

今回は私が最も好きなジローさんの作品、そして「ダーク」なジローさんが全面ににじみ出た作品を紹介していきます!

「魂の消費期限」
少し未来のお話、一時は門下生に溢れていたが、次第に信仰が減っていき、ついに門徒が全員いなくなってしまった命蓮寺が舞台です。
「飽きれば離れるくせに笑顔で寄ってくる間抜けども! 死ね!死ね!死ね死ね死ねッ!」
基本的に誰にでも優しく平等なキャラとして描かれることが多い聖ゆえ、そのキャラが崩壊するさまを見るのはかなり心に刺さります。

「雨曝しのボロ傘」
この作品の魅力は、読み手が小傘に共感しやすいところです。皆さんも一度は経験したことがあるのではないでしょうか? 勉強にしろ、スポーツにしろ、自分の夢にしろ、何度やっても思ったように成果を残せず、挫折してしまったことは。この作品における小傘も、何度やっても人を驚かすことができず、心が折れそうになっています。それゆえに読み手、少なくとも私は、小傘の気持ちが少し理解できてしまい、自身や他者によってボロボロになっていく小傘と、読み手の心情が自然と合わさってしまい、なんとも言えない恐怖心が生まれてくるのです。

また、「封獣ぬえ」の存在にも注目です。始めは無理矢理小傘に付き合わされていた彼女ですが、小傘と親しくし、苦しむ小傘を間近で見ることにより、段々と素直になり、小傘を全面的に支えるようになる、そして小傘にとってもぬえは心の支えになる、という一種の友情や、ぬえ自身が成長する姿が作品中に描かれています。この友情がいつまでも続けばいいのですが……。

どこまでも弱い存在である小傘、彼女が報われる日は来るのでしょうか……それとも……?

 

このように、東方キャラの設定を利用、さらに自身の解釈も取り入れることにより、ダークな幻想郷の一面を作り出す。これこそがジローさんの真骨頂です。

ーだいつんさん

 

壁サーの邪仙 / 柳太(だいたい2トン)

今更言及するまでもありませんが、昨今の同人にまつわる情勢は試練の時代と言っていいほど急変しています。

そんな時勢だからこそ同人活動と東方Projectを絡めた作品をご紹介したいと思います。

内容は神霊勢の屠自古と青娥が同人誌を創作する作品となっていて、全体的にギャグ調となっています。特に随所に散りばめられた同人誌作成のあるあると神霊廟勢に関する深い知識の親和性でとても楽しめる作品となっています。

このご時世だからこそ、この作品を通じて同人活動の苦労や喜び、ほかの人への沼への誘い方、趣向を同じとする同士とのやり取りの良さをもう一回追体験し活力としていきたい。そんな作品です。

同人活動讃歌であり、応援歌でもある素敵な物語。ぜひとも皆さんも読んでみてください!

余談ですが自分もこの作品を読んで青娥娘々の言う通り推しキャラについてアウトプットしていくうちに、初めて小説を書くきっかけとなりました。

ーネコジルさん

 

カミングアウトと七日間 / 松本文(真茶屋)

蓮メリちゅっちゅという言葉をご存知ですか?

この本をpixivで読んだとき、それまで僕は百合というものに興味はありませんでした。
秘封倶楽部の存在を知ったのが、ND氏の秘封霖倶楽部という少々変わり種の三次創作だったからではありますが……(蓮メリがNLな作品)

そこから普通の秘封とはどんな作品かと漁っていたところに初めて飛び込んできた王道の百合作品。それは僕の趣味思考を変えるには余りある力強さがありました。

そして百合の中にあり秘封倶楽部について回る「秘封倶楽部という関係と恋愛感情とのジレンマ」にも言及があり、この作品から原作秘封の世界観にのめり込み、百合属性に目覚めたという次第です。

ーロモアさん

 

幻想少女恐怖シリーズ / 五十嵐月夜(Escape Sanctuary)

人智の及ばぬ能力を持って人間を襲い恐れられる一方で、わいらしい容姿をしたギャップを持つ幻想世界の妖怪少女たち。人間たちに恐怖を振りまく少女らが、逆に自らのアイデンティティに裏切られたとき、彼女たちの精神はどうなるのか……というのがこのシリーズの特徴です。

このシリーズの特徴として真っ先に挙げるべきは、作者である五十嵐月夜さんの妖怪やキャラクターの設定に対する深い考察と、それをしっかりと小説の中に盛り込んであることでしょう。特に総集編の冊子は黒カバーに合わせて「黒レンガ」とも称されるくらいのボリュームですが、それに見合うほどの丁寧な描写や登場人物の心情が描かれています。

このシリーズでは恐ろしい力や能力を持った妖怪はその一方で、存在が希薄で精神や概念に縛られた不安定で儚い面を持つ存在でもあるということが強調されていると思います。妖怪は精神が軟弱というわけではないけれど、本人にもどうすることのできない弱さや縛りを持っており、だからこそ恐ろしい力を持ちながらも時として脆弱な人間にも退治されてしまう理由付けが複数のエピソードで触れられております。

個人的には古明地さとり編で、さとりの傷が治らない理由と覚妖怪の設定を組み合わせた展開は思わずなるほどと唸りました。

人間が肉体に負った小さな傷が少しずつ膿んで痛みを増していくように、少しずつ精神を摩耗していく幻想少女たち。必死に絶望に抗おうとする彼女たちは、様々な形で結末を迎えますので、気になる方はぜひ見届けてください。

ーピリ辛大根さん

 

もし今日私が死んだなら / もりのほん(ForestRest)

私が、同人誌がなんなのかを知らないときに偶然見つけた本です。

この本の好きなところは「寿命で死ぬ」と重めのテーマをギャグ路線に持っていっている点です。はじめは冗談半分で悪ふざけのようにストーリーが進む中、途中パチュリーの行動など疑問に持つシーンがあります。本題である「寿命」についての複線を張っているのかとも考えられますが、すぐ元通りのギャグに戻るため、気のせいだったと捉えてしまいます。

でも日常のふとした瞬間に、それが冗談ではなかったと気づいたときからシリアスへの転移に衝撃を受けました。

最後に部屋に鳴り響く「カチン」という音は時計が止まった音なのか、死にたくないと心の奥底で願った咲夜さんの願いで時を止めたのか分からない。けれど、時が止まっているわけではないが、まるで時が止まった瞬間のようにそこから動けなかった美鈴の感覚だと思いたい。

文章が下手でこの作品の魅力を上手く伝えることができませんでしたが、この本は一度読んだらなんともいえない感情に襲われます。6年以上も前の作品ですが、当時読んだとき中学生ながら衝撃を受けたことを覚えています。よければ一読していただけたら幸いです。

ー鯖のみそにさん

 

スタードリーム /  人比良(四面楚歌)

日本人に発音しにくいハンドルネームを選んで後悔しているイギリス出身の東方ファンです。

2013年でした。その前年に東方Projectにハマった私は困りました。

あのときは電子書籍があんまり流行っていなかったため、海外のファンは東方同人誌や公式漫画・原作のゲームさえも手に入れにくいもので、イギリスに住んでいた私は海賊版の00代系のギャグ東方同人誌がしか見つけられなくて、まったく満足しませんでした。変な英語に翻訳された咲夜のPADやニート輝夜などの冗談はもう腐るほど読んでしまって飽きました。

やっぱり私はシリアス系の東方同人誌を読みたい! 泣いてしまうほど感動させてほしい! それで漫画だけじゃなくて小説もあれば……! という気持ちで和英辞書を掴んで日本語のインターネットに飛び込みました。そして、メロンブックスに辿り着いてこの小説と出会いました。

 

それが四面楚歌の「スタードリーム」なんです!

レイマリの関係性について「大」長編シリアス小説、というセリフが目に入り、サンプルをちらっと見たらワクワクが止まりませんでした。これだ! こういう同人誌を探していましたよ! と喜びながら注文しようとしました。

もちろん海外クレジットカードはお断りです!

結局、日本に住んでいる知り合いの助けを借り、ほかの本とともに買えました。数週間後、玄関に小包が届いて震える手で包装を解きました。

手に入れた小説は、重くて美しかったです。

 

面白そうですが400ページ超えの小説はちょっと……と思っているあなた! 安心して。この本は読みやすくて内容は読め止められないほど面白いです。当時赤ちゃんレベルの日本語しか持たない外国人の私でも、この小説が読めました。赤ちゃんのレベルの日本語で、辞書とともに読みました。

ほぼ1日1ページのペースで。読み終わるまで1年半かかりました。

1 年 半 で し た 。

真面目だから! 小学生向けの漢字さえもできなかった私は全部部首で調べており、この小説を読み続けられるように精一杯頑張りました。霊夢!! 魔理沙!! を考えながら必死に単語を調べました。続きを知りたかったので、止められませんでした。そんなに面白い小説です。後悔なしです!(普通の日本人なら多分1~2日間で読み終わると思いますが!)

ちなみに東方同人誌のおかげで日本語能力試験2級が合格できました。やったね。同人誌は最高の勉強ツールですよね!

ーhungrybookwormさん

 

境界を越える時 / 東風谷アオイ(一言芳恩社)

『境界を越える時』は秘封倶楽部メンバーたちの卒業を描いた合同作品です。

秘封倶楽部のさまざまな「卒業」を描くこの合同誌。現実世界での卒業をめでたく思ったり、社会人になって秘封倶楽部を解散(卒業)しないといけない描写は悲しみをもたらします。菫子の話では幻想郷の描写が多く、幻想の世界に残り続けることができるのか、または卒業せざるをえないという問題が何度も取り上げられています。

自分はこの作品の伝えようとしているメッセージが好きです。題名『境界を越える時』の意味。作者によるとそれは「卒業」の境界を乗り越えることが書かれてます。しかし、自分はこう解釈しました。

いつか人々は卒業します。卒業は昔のものを置いて、新たな未来に進むイメージが強いと思います。学校や仕事、趣味から「卒業」するのを辛く感じます。それでも捨てられない、失いたくない「何か」を続けようというのがこの作品の意図です。たとえ「大人の境界」や「社会人の境界」を越えることになっても昔ながらの思いや物を捨てずに生きていこうというイメージを感じ取りました。自分もいつかは東方を卒業することになるでしょう。けれど自分に秘められた経験や思いを捨てずに抱え、大きく成長させたと思っています。

最後の話、東風谷アオイさんのCross the Border(クロス・ザ・ボーダー)はこのようなことを伝えようとしています。
卒業式中に無人列車へ転送され、突然出会うメリー、蓮子、菫子の話はとても興味深く思いました。幻想と現実、未来と現在の交わったこの三人の不思議な出会いと会話は希望と勇気を与えてくれました。未来は列車の乗ってるまっすぐなレールを進んでいくように見えますが、現実には紆余曲折の繰り返しです。「未来」という境界に進みながら「過去」という越えた境界を振り返えながら生きていこうと思いました。

ーオボロチさん