「東方力」の頂点を賭けた、トップシューターの祭典――東方原作STGの国際大会「Touhou World Cup 2023」日本運営座談会 第1回
東方原作STGの国際大会「Touhou World Cup 2023」日本運営座談会 第1回
さあ、それぞれの”東方力”を武器に、魅力的に戦い、希望のお面を奪い合え!
2023年8月6日、東方原作STGの最高峰の国際大会である「Touhou World Cup 2023」が閉幕しました。
2か月以上に渡って繰り広げられた、それぞれの作品を極めたトッププレイヤーたちによる弾幕の祭典。全世界から集った、原作の最高難易度「Lunatic」を軽々とクリアするような猛者たちのプレイは、観客のことごとくを魅了しました。
今や多くの人が注目するTouhou World Cup(以下、TWC)。原作に親しんできたプレイヤーだけではなく、原作にあまり触れていないような方も巻き込んで、その熱狂は年々と大きくなっています。一方で、大会に出場するような腕を持ったプレイヤーの瞳には、TWCという大会はどのように映っているのでしょうか。
この座談会では、前回TWC2023のインタビューをさせていただいた日本運営代表の海神さんを始めとして、TWCの日本支部の運営に携わってきたトッププレイヤー3名にお集まりいただきました。前編ではTWC2023での印象に残った試合について、後編ではTWC、そして原作界隈の将来についてお話しいただきました!
編集:紡
聞き手・文:おみず
「東方力」の頂点を賭けて――TWC2023運営座談会
――本日はよろしくお願いします。みなさま、自己紹介お願いしてもよろしいでしょうか。
海神:
海神と申します。主に地霊殿をやっています。今回のTWC2023は日本運営代表を務めました。先日のTWC2023でもインタビューさせていただきました、本日はよろしくお願いします。
海神(わだつみ)
地霊殿LNN4機体と神LNNN 夏稼ぎ全2など/TWC2023運営代表でした/アイコン→@akarinomiya_aTwitter: https://twitter.com/wadatsumi_312
https://twpf.jp/wadatsumi_312
SOC:
SOCです。去年までは日本支部を率いて大会運営をしてきましたが、今年はそこまで動いておらず、運営サポートとして動いていました。選手としては今年風神録のLunaticスコアアタックに出場しています。解説としては、永夜抄LNB【※】の予選、本選の紅魔郷Exスコアタなどをしました。実績は……一応全作品全機体LNMNBと風神録Lスコアタ全国二位と、紅魔郷も昔は全国一位(以下:全一)でした。好きな作品は紅魔郷と風神録です。
SOC
Lunatic全作品全機体ノーミスノーボム・Touhou World Cup運営・RTA in Japan Summer 2023走者参加など東方原作STGを中心に活動。Twitter: https://twitter.com/soc_saudade
YouTube: http://youtube.com/@soc_th06
Twitch: http://twitch.tv/soc_th06
岩魚 (絶):
岩魚 (絶)です。今年のTWCは、途中までですが色々運営のお手伝いさせてもらいました。大会では、選手として永夜抄Lunaticスコアアタックに参加して、永夜抄LNBの予選、本戦の風神録Lスコアタ、星蓮船LNBの3部門で解説させていただきました。好きな作品は全部かな。実績は、救済なしLNMNB八作品、永夜抄Lスコアアタック全一とかです。
岩魚(絶)(いわな ぜつ)
永夜抄スコアアタック総合世界一位/救済無しLNN9作品16機体とかやっています。リグルになりたいTwitter: https://twitter.com/Iwana_Minoriko
https://twpf.jp/Iwana_Minoriko
※ LNB
Lunatic No Bombの略。難易度Lunaticでボムを使用せずクリアすることを指す。
LNMNB(もしくはLNNと表記することもある)であればLunatic No Miss No Bombとなる。
また、LNNNのようにNが続く場合は、作品独自のシステムまで含めた縛り内容となる。
――TWCとはどういったイベントなのかについて、改めて説明をお願いしてもよろしいですか?
海神:
Touhou World Cupとは、年に一度行われる、世界最高峰の東方原作STGの非公式の国際大会です。
現在のTWCは3チームの対抗戦です。それぞれの試合は、オンライン上で選手が同時に並走する形で行います。それぞれの試合は制限時間が決まっていて、制限時間内ならいくらでもやり直すことができます。制限時間内に一番高いTWCスコアを記録した選手が優勝となります。
試合についてですが、紅魔郷から虹龍洞までの各作品ごとに、Lunatic Survival、Lunatic Score Attack、Extra Score Attackの三部門の試合が開催されています。Lunatic SurvivalはLunaticをNBで戦う部門、Score Attackはその名の通りスコアで戦う部門です。大会の途中からにはなりますが、試合の冒頭に出場する選手や、試合の見どころについて紹介しております。
今年は5月27日から始まり、8月6日のエキシビジョンマッチをもって全日程が終了しました。これまでの開催の経緯などは前回のインタビューのときにお話しているので、よろしければそちらもご覧ください。
中国から全世界へ、集えルナシューターたちよ――最高峰の東方原作STGの国際大会『Touhou World Cup 2023』日本運営代表、海神氏インタビュー(前編)
『Touhou World Cup 2023』日本運営代表、海神氏インタビュー
――つい先日大会が終了したということで、運営お疲れ様でした。
海神:
TWC2023も終わって、運営をやり遂げたという達成感もありつつ、無事に終わったんだな、と安堵しています(笑)
スコアのためなら、対戦相手さえ研究仲間です
――それでは早速、今年の大会について振り返りたいと思います。始めに海神さんから、今年の注目の試合について教えていただけますか?
海神:
はい。正直どの試合も熱かったと思うんですけど、第11試合の地霊殿Exスコアアタックと、第5試合の天空璋Lスコアアタックが印象に残っています。まず地霊殿Exスコアタからですが、地霊殿は去年自分が出ていたこともあり、思い入れのある部門です。それもあって注目していたのですが、本番でたけのこさんが霊夢紫支援(以下:霊夢A)を使って、11億というとんでもないスコアを叩き出したので……。それだけでも驚いてたのに、他の選手も高いスコアを次々と記録し、数回にわたる逆転劇が繰り広げられました。地霊殿Exは見ていて本当に楽しかったですね、画面にくぎ付けになりました。
SOC:
たけのこさん予選でのプレイもすごかったので。
――なるほど。地霊殿Exスコアタは予選も開催されたのですね。
海神:
予選はたけのこさんが10.99億で一位突破なんですけど、本戦でそれを上回る11億を出したのに負けるという……。意味が分からない結果になってましたよね。
SOC:
予選ではたけのこさんぎりぎり11億届かなかったのですが、それでも群を抜いた異常な完成度でした。それに触発されたのか、他の選手も本戦では完成度の高いプレイを次々に披露し、凄まじい試合になりました。地霊殿Exは裏側的なとこを言うと、最近すごい熱心に研究が進んでて。
海神:
そうですね。
――研究、ですか。
海神:
研究の甲斐あって、数年ぶりにExスコアタの全一が更新されてましたよね。魔理沙アリス支援(魔理沙A)だっけ。
岩魚 (絶):
6年ぶりくらいかな。それまではずっと霊夢Aのスコアがトップで、霊夢Aつえー、なみたいな認識の人も多かったと思うんですけど、まさかその記録が魔理沙Aで抜かれるなんて。歴史が動いたな、という感じでした。
海神:
地霊殿Ex研究会というディスコードのサーバーがありまして、Exスコアタについて研究し、成果を共有する場になっています。本選はたけのこさん、idtnさん、Apoさんの3人による試合だったのですが、全員がそのサーバーに参加していて、大会が始まる前から本当に研究しつくしていました。
SOC:
作ったパターンとかをみんな共有したがるから(笑)
岩魚 (絶):
後日談になりますが、本戦で地霊殿Exで優勝したidtnさんが、その後も地霊殿Ex魔理沙Aでやり込んで、11.2億という大記録を樹立したのもめちゃくちゃ熱かったですね。
――大会の本戦だと戦い合う選手同士っていう関係にはなりますが、その裏で協力して互いに高め合っていたんですね。スコアタでもノーボムでも選手どうしの仲は良いのでしょうか?
SOC:
同じ部門でやっている人は基本的に仲いい人が多いですね。
海神:
むしろ誰か手出したら囲いに行きますよね。囲え囲えって……
――興味を持っている新規の人をどんどん取り込んでいるのですね。
SOC:
新規の方も増えてはいるのですが、作品、部門の数もすごい多いので。人も分散しちゃいます。だからわざわざ自分が参加している部門を選んでやってくれる、ということ自体がありがたいですね。
最弱機体と最強機体の勝負!?TWCスコアタ部門の妙
――続いて、天空璋Lスコアタ部門についてお聞きいたします。
海神:
この試合はおいたんさんとひろさんの一騎打ちとなりました。おいたんさんの機体が霊夢夏、ひろさんが文秋と、異なるサブ季節での勝負でした。両者で全く違う稼ぎ方になるのにも関わらず、とても競った試合となりました。特によく覚えているのは、おいたんさんの最後のプレーですね。夏装備のラストスペル「パーフェクトサマーアイス」を取得したら逆転できるか、というところで、覚悟を決めて挑んでいたのがとても印象に残っています。今年の天空璋Lスコアタは、自分がTWCスコアの調整を担当したので、面白かったと同時に、試合が無事に終わって安心していましたね。
――とても僅差の試合でした。今回出場されてるお二人は大会の常連なのでしょうか?
一同:
そうですね。
岩魚 (絶):
ひろさんは確か本戦の前の練習の段階で世界記録を更新し続けてたみたいなのがあったような……。その勢いのまま本戦でも勝つところに、天空璋ベテランの安定感を感じましたね。
海神:
ひろさんもおいたんさんも、4年以上ずっと夏と秋というサブ季節でやりこんできた方なので、その練度が大会で出たかなと感じましたよね。
SOC:
そうですね。
――天空璋のスコアタの見所として、季節によって稼ぎ方が全然違う、というのがあります。大会の場で、選手ごとに違う季節が見られるのは面白いです。
岩魚 (絶):
TWCスコアがなければこうはなってないですね。みんなスコアが簡単に出る最強機体使うと思うので。
海神:
天空璋の稼ぎは季節開放で弾幕を消すことが基本になります。一番弾幕を消しやすくてスコアを稼げる秋装備と、一番稼げない夏装備で競い合えるって幸せですよね。
――全員に選択権がある、というのは面白いです。
SOC:
そうですね。でも機体ごとのスコアの調整が……さっきも言ってたけど。
海神:
めちゃくちゃむずかった! 一週間ぐらい悩んでましたよ。
SOC:
スコアタだと調整が一番難しいのかな。永夜抄も機体数が多くてスコアも全然違うので、そこは分からないですけど(笑)
岩魚 (絶):
今年は同じ機体での対決だからLスコアタのほうは助かりました。
SOC:
永夜抄は単騎含めると12機体もあって、全部含めると調整がすごく難しくなるので。天空璋のスコアの調整は、今年もまだまだ難しいねっていう感じだったんですけど、結果としては僅差に終わりました。
海神:
調整がうまくいったようで、本当に良かったです。
本日はここまで。次回は岩魚 (絶)さん、SOCさんの挙げる、LNB部門のベストバウトについてお伺いします。
「東方力」の頂点を賭けた、トップシューターの祭典――東方原作STGの国際大会「Touhou World Cup 2023」日本運営座談会 第1回 おわり