東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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インタビュー
2020/03/26

“パズル ”と “音ゲー ”はいかにミックスされたのか? 『東方スペルバブル』スタッフインタビュー【PR】

第2回

“拍撃”は音楽もわかるプログラマーだからこその実装だった

――やはり『パズルボブル』に音ゲーの要素を入れるのはすごく興味深かったんですよ。『東方スペルバブル』では5つ以上、玉を繋げた時に“拍撃”というリズムゲームを発生させるデザインが面白かったです。どのように実装されていったんでしょうか?

米陀:
 企画段階からお話しますと、最初は澤田が「パズルゲームに音ゲー要素を加えたい。音にノりたい」ということから始まりました。

 まずはパズルを触っていくときに、たとえば玉が消えるタイミングとか、玉が反射するタイミングなどが自然と音楽に合っていくものからスタートしました。ただそれだけだと、曲にノっている感じがわかりにくかったんです。

 澤田からも指摘があり、「音楽にノると、ボーナスとかいいことが起こる」とか「ゲーム的に有利になる要素」を入れたら、より音楽にノりやすいんじゃないかと考えていました。

 いくつか案が出る中で、「玉が連続で消えるときに、(音ゲーらしいリズムに乗せるような)輪っかのインジケーターが出て、そこに合わせてボタンを押す」というものを一回作りました。他にもいろいろ作ったんですけど、それが一番しっくり来て、今の形に落ち着きました。

ビートまりお:
 (リズムの譜面も)16分音符とか細かくしちゃうとわけわかんなくなっちゃって、ハードルも上がっちゃうから、短いものでも4分音符にしようみたいな話があったんですか?

米陀:
 基本的には輪っかのインジケーターって、重なったりしてしまってUIとしては見辛い部類になっちゃうんですよね。なのであまり煩雑にはしないというところもプロトタイプから出てきました。

ビートまりお:
 16分音符を入れたバージョンもあるんですか?

米陀:
 試したのは最大でも8分音符だったんですけど、試してみて一瞬でやめました。というのも、そもそも「多くの人に楽しんでもらいたい」というところから、音ゲー自体の難易度もそんなに上げたくないという思いがありました。

ビートまりお:
 あくまで『パズルボブル』なんですよね。

米陀:
 そうですね。やっぱり今の音ゲーって敷居が高いと感じていて、今回の『東方スペルバブル』における音ゲーの意味は、ライブの音楽に合わせて観客が手拍子するとか、そのレベルなんです。手拍子なら、音ゲーができない人でも参加できるひとはたくさんいるということで、そのレベルに落とし込むために、今回の譜面は4分音符までにしよう、と絞りました。

―― “拍撃”は東方楽曲のライブで手拍子をしてるようなものということですね。

米陀:
 まさにそうですね(笑)。

――米陀さんは別のインタビューで「昔から音ゲーを作りたかった」とも語られていますよね。

米陀:
 自分はもともとプログラマー志望だったんですけど、大学で音を研究していたこともあって、音楽に関するプログラムをやりたいなって気持ちがすごくありました。タイトーに入ってから、音ゲーに関われる機会をずっとうかがっていました。

澤田:
 そういう意味では非常に珍しいタイプのプログラマーなんです。音楽的な素養がすごくある。たとえば、何分音符で打つとどうなるとか、音楽理論と実際のプログラミングで、(音ゲーとしての)気持ちよさを上手く調整できるのは、あんまりないタイプのプログラマーです。そういう意味では米陀がいて僕はラッキーでした(笑)。

――プレイしていて “拍撃”は違和感なくリズムにノれましたね。

米陀:
 音楽って時間に対してシビアで、すこしでもラグが生まれてしまったりとか、間が開いてしまうとそれだけで音楽が崩れちゃうんです。 場面の切り変わりもローディングを挟まないように、ちゃんと音楽に合うようにとか、そういった細かいところも生かされていて、ゲームがずっと進行する中で、音楽にノり続けることに繋がったかな、と思います。

――『東方スペルバブル』で興味深かったのは、ワンプレイで曲をフルで流していることです。一般的な音ゲーはワンプレイが2分で終わることを考えると、長い曲では5,6分近くなる曲の尺は、リズムゲームとしては少し異例です。最初からこうすることは考えていましたか。

澤田:
 僕らもまさに同じことを考えていて、音ゲーってだいたい1分半から長くて2分ぐらいがセオリーですよね。なので、そのくらいの尺でテストしてみると、あっという間に終わっちゃうんですよ。これはテストでわかったことです。

 要するにリズムゲームって高速で物事を処理し続けるゲームなので、その集中力も必要になってきますし、一瞬の隙も作れないゲームなんです。しかし、パズルのプレイだったり、リズムも一定の簡単なリズムってところで、ずっと集中していなくても大丈夫というか。

 音ゲーに比べると、ある程度、長くプレイしても遊べるゲームになっているんですね。というのも、(『パズルボブル』に音ゲー要素を)入れてみてわかったことですね。1分半や2分で全然足りないですし、勝負も面白くならないんですよね。一回ダウンぐらいでおしまいになっちゃうので。

 もっと対戦の展開が行ったり来たりするには、尺が長くないとだめだという話になり、「そこまで来るんだったらフル尺でできるよね?」となりました。今だと最大6分弱の曲があったり。

ビートまりお:
 『ナイト・オブ・ナイツ』は3分くらいじゃないですか?  短けーな!(笑)

澤田:
 (笑)。短い曲は短い曲なりに遊べるんですけど、ただ『ナイト・オブ・ナイツ』くらいの尺がギリギリですね。

ビートまりお:
 フル尺って、落ちサビがあったり、曲によって展開があるじゃないですか。間奏でシンセフレーズが入ったりいろいろある。ああいう展開が増えるから、音ゲー部分がもし16分音符とかすげぇ入って来るゲーム性だったら、2分で限界があると思ったんですけど、あくまでもそこはシンプルなんで。

 やっぱりパズルゲームの要素が強いじゃないですか。だからフル尺でちょうどよかったのかなって。最初「長いんじゃないのかな?」と思ったんですけど、あれくらいあったら、やりがいもあってちょうどいいですね。

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「誰でもノれるように」と工夫したリズム

――楽曲にノートを入れるときにこだわったところってありますか?

米陀:
 最初は誰でもノれることがレギュレーションとしてあったので、4分音符しか置けませんでした。しかも最初のストーリー上、連撃のチュートリアルが始まる前はイージー譜面なんです。イージー譜面は全部2分音符のタイミングしか手拍子できないんですね。

 そうなってくると連撃も裏拍から開始され、要は裏ノリのリズムっていうのがこのゲームはかなり使いづらくて、必ず表に拍を置かなきゃいけないっていう厳しい制約があるんです。

 でも、曲って必ずしも表に拍があるとは限らなくて。例えば決めが裏だったりもするので、そこで表拍を抜いてしまうと、その表拍に合わせてパズルで連鎖をした人が拍撃できないという別の問題も発生してしまい、そこの調整はかなり苦労しました。

 たとえば掛け声が思い切り裏拍みたいな楽曲は、パズル的な厳密さを少し無視してでも、裏拍でノれるようにしたっていう部分はあります。曲に合わせるか、パズルゲームを重視するかというのはかなり葛藤がありましたね。

 なので、たまに今、押すところが連撃じゃないけどずれたなとか、ちょっと違和感を感じるタイミングっていうのが少なからずあるんですけど、そこは妥協点というか、少し難易度が上がってしまうんですけど、そこだけは曲に合わないより合っているほうがいいっていうことで、仕方なしに裏拍に置いてる部分もあります。

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音ゲーが他ジャンルとミックスした過去タイトルとの違い

澤田:
 開発しながらよく話が出てたんですけど、音ゲーと何かを組み合わせるってなったときに、同時に処理させるゲームが多かったんです。

 『ミュージックガンガン!』は、ガンで狙いながら、フォーカスが合ったタイミングで打つってなると、ガンで狙ってるタイミングはずっと狙えてるんですけど、円が来るまでは待たなきゃいけないとか。

 要するにプレイフィールとして、二つのことを同時にまとめて処理しなきゃいけないっていうのは、結構大変なことなんですよね。難しいゲームになってしまうので、できるだけ間口を広くやるために別々で処理をしています。

 パズルはパズルで処理をして、うまくシームレスで音ゲーに移行して、簡単な音ゲーのリズムに乗ることをやり、またパズルに戻ってくるっていう。そこの混ぜ合わせ方っていうのが、うまくブリッジしてるっていう感じだと思うんですよね。

 本当に一緒に溶け込んでるようなゲームになると、一緒に処理しなきゃいけなくなってしまうので、うまく違和感なくシームレスに行ったり来たりするっていうのが、今回の特徴かなと思います。

ビートまりお:
 パズルパートと音ゲーパート。

澤田:
 まさにそうですね。1個のゲームになっている。音ゲーと違うゲームが一緒になったとき、急にただの音ゲーになるやつとかもあるんですけど、場面が変わっちゃうと、それはゲームが変わってるだけになってしまいます。なので一つの盤面、一つのゲームの中で、どうやって音ゲーとパズルを共存させ、いいプレイフィーリングにするかっていうのは、課題としてやってたところですね。

米陀:
 今回の音ゲーは、パズルのご褒美みたいなもんですよね。長い連鎖を作ったときに、音ゲーができるっていう形で紐づいてます。

 今回、ショットはビートに合わせる必要をなくしたんですね。そこを合わせなきゃいけないっていうふうにしてしまうと、難易度が急激に上がってしまうので、パズルをするときはパズルに集中し、パズルでうまくいったら音ゲーを始めるっていう形になってます。

――ショットにビートを合わせて打たせるっていうのは、これまでの音ゲーと別ジャンルのミックス系でよく見られるものでした。そこを切ったのは本当に英断だったと思います。

澤田:
 単純に僕ができないんですよ(笑)。

一同:
 ワハハハハハハハ(爆笑)。

MASAKI:
 あくまで『パズルボブル』っていうゲームが主軸なので、これの制約になるような音楽の入れ方はしてないっていう感じですよね。狙って打ちたいけど、曲のタイミングが来るまで待たなくちゃいけないっていうのは制約になってますから、そういうのは外すっていう。

澤田:
 パズル部分だけで楽しみが成立するので、そこはちゃんとやらなきゃっていうところですね。

各年代に刺さる楽曲セレクト

――今回バラエティ豊かな東方楽曲を揃えていますよね。楽曲セレクトの方針っていかがでしたか?

ビートまりお:
 楽曲セレクトは全体的にニコ厨って感じしますね(笑)。そのおかげで「おおっ!」となった曲もありましたよ。懐かしいなこの曲!って盛り上がりがすげぇあったんで。

  “ごっすん ”(『魔理沙は大変なものを盗んでいきました』)が入った時点で方向性がそのまま、古のニコ厨感が出たんで、あれはすごくよかったなと思って。普通あの曲は入れないですよ。

澤田:
 そうなんですね。

ビートまりお:
 IOSYSだったら “チルパ ”(『チルノのパーフェクトさんすう教室』)とかにいくので、あの曲が入っているとニコ厨感がすごくある。懐かしい気持ちになれるんすよ。『えーりん』とかもボーカルバージョンがそのまま入っていたとか。

澤田:
 『えーりん』はボーカルバージョンがいいなあ、と思っていて。今回、いざ東方のゲームとして作るとなったときに、コンセプトとしてどんな形にしようかというのは、チームとしてけっこう話し合ったところ、「みんなで遊べるゲームにしよう」というのがコンセプトになりました。

 音ゲーは、けっこう先鋭化してくると、上手い人と下手な人がいっしょに遊ぶのが難しくなったり、上手い人がギューッと凝縮した、密度の高い世界になったりするので、それよりも開放的な、みんなで遊べるようなゲームにしたいなというのが最初のアプローチとしてあって。その中で楽曲を選ぶとなったときに、やっぱり古の人気曲も、定番曲も、新曲も幅広く揃えたいのがあって、そこでド直球の曲は入れておきたいなというのがありました。そういうコンセプトに沿って選曲したところはありますね。

――広い世代の東方ファンに向けたセレクトだったんですね。

澤田:
 『東方Project』は歴史が長いので、どこを取るかってなると選曲がすごく難しくなってくるじゃないですか。なので、定番曲と、古の曲と、最近のヒット曲といろいろあるので、できるだけ偏らないようにしました。最近の(音ゲーが)入れないような曲を入れたのはそういう意味合いもありますね。

――僕も『東方スペルバブル』をプレイしていて、10年前に聴いた曲だぞ!というのがいくつかありましたね。

澤田:
 インターネット老人会って言われてます(笑)。いちインターネット老人としてこうした反応が出るのは嬉しいですね(笑)。

ビートまりお:
 老人会だけかと思ったら、森羅万象さんの曲を多めに入れてるじゃないですか。森羅万象さんは新しめで人気があって。本当にちょうどよく入れていて。暁Recordsさんもそうですし。

澤田:
 選曲に関して言うと、『グルーヴコースター』のプロデューサーである花形(琢真)とも相談しました。僕らだけだと、特に最新のトレンドとかわからない部分もあったので。

 花形やMASAKIとかに聞いて、「最近だとこの辺のサークル、それこそ森羅万象さんがいいよ」みたいなことを話していました。

縁の下で苦労して作られた『東方スペルバブル』オリジナルBGM

MASAKI:
 シナリオなどのBGMを作るのも大変だったんですよ。

――えっ、メニュー画面とかマップ画面に使われているBGMですよね。さらりと出来ているように感じられたんですが。

MASAKI:
 やっぱり『東方Project』って、ZUNさんじゃないですか。もう神様なんですよ。最初に澤田とも話してて、システムBGMを東方のアレンジにしようかっていう話もあったんですが、それを突き詰めちゃうと、原曲を使うのが一番いいので、中途半端にアレンジするぐらいだったら、1から完全なるオリジナル曲として作ろうっていう話になりました。

 ただ、東方って、ものすごい原曲をすごくいいアレンジする、すごいコンポーザー、アーティスト、サークルがいっぱいいますから、どういうふうにやったらオリジナルのBGMが受け入れられるのかなって試行錯誤をしていました。

 音楽的にはいわゆる東方でよく使われるコード進行とかを取り入れつつ、東方の音楽って楽器で言ったら何だろう? ZUNペットとかあったんですけど、取り入れるのも微妙だなと思ったり、曲に我を出し過ぎず、シーンを彩る脇役に徹して主張は控えめにしようと、試行錯誤をかなりした上で、今のサウンドを作っています。

澤田:
 あそこは米陀も含めてなんですけど、かなりのリテイクが入ってるんですよ。

――そこまで苦心して作られていたんですね。

ビートまりお:
 違和感なくふっと入ってくる感じ。

澤田:
 そうなんですよ。実はストーリー上の曲とか、対戦画面のキャラクター選択の曲とか東方アレンジのほうが本当は楽だったんですよ。原曲アレンジの曲だからいいねって。でもキャラ選択とかストーリーに集中してほしいというのもあって、楽曲に引っ張られすぎないようにというのもオリジナルのBGMにした理由でもあります。

 ただ、東方らしさって何だろう?とは考えました。東方らしさを保ちつつ、例えばほのぼのしたシーンですとか、シリアスなシーンに合うものをどう表現するかとか。

MASAKI:
 「東方らしさとは?」ってすごく話しましたよね。

——結果的に東方らしさはどこに落ち着いたんですか?

MASAKI:
 音楽的に言うと、オリエンタルな響き。ヨナ抜きとか言いますけど、日本和音階みたいな、それは入れようっていうのはあって。東方って和の曲が多いけど、キャラクター的には和とは限らないじゃないですか。魔法使いとか。

 なので、オリエンタルな響き以外の音楽要素も取り入れてて、例えばマップ曲ではいろんな国のいろんな音楽的スケールを取り入れようっていって、ベースでラの音。Aを基準にエジプトの音階とかいろんなのをやって、いろんな世界とつながってる感を曲で表した結果、今の形になってます。

澤田:
 和っぽくなった瞬間もあって、「和風すぎる」みたいなことも言われてましたよね。

MASAKI:
 最初のほうだとああいうキービジュアルなので、「ポップな感じが合うかな」と思って明るい曲を作ったら、現代風っぽいからちょっとイメージと違うなっていう。

澤田:
 MASAKIが一番苦労したのはそこだと思う。間違いなく。最初のトーンを決めるところから揉めましたからね。とにかくどこを着地点にしたらいいんだろうっていうのが、僕も分からないですし、MASAKIも分からないっていう中で、探り探りでやってたので。ラスボス曲の『境界の宴』を作るよりも大変だったよね。

MASAKI:
 一度、最初に明るめのBGMを作ったときの印象で、女児向けアニメ冒頭の10秒で流れてそうな曲を作ったんです。

澤田:
 女子高生がセーラー服を着て、パンをくわえながら、「おはよう」って言う朝のシーンみたいな感じだったんですよ。「これはちょっとな……」みたいな。

 そこはすごい苦労しましたね。逆に言うとすんなり入ってるからこそ話題にならないっていうのは、それはかえって成功だったのかなと思います。

――メインの音ゲーの部分に使う楽曲を邪魔しないようにしつつ、東方の格調が保たれてるのは感じましたね。

MASAKI:
 東方らしさについても、東方の何に触れてきたかで個人差がかなりありますからね。それこそ自分の上司の石川【※】とかに聞いたら「森君、こういう感じだよ」って澤田と全然違う解釈だったりするんです。なので。「このままだとまとまらないので、着地点で迷ったらプロデューサーの澤田のほうに寄り添おう」と思って。

【※】タイトーのサウンドチーム“ZUNTATA”の現代表、石川勝久氏。『東方スペルバブル』では効果音を担当している。

ビートまりお:
 東方って人それぞれの解釈があるので、それをどういうふうに受け取って吐き出すかっていうのが重要なんですよね。

澤田:
 そうなんですよ。「やっぱりピアノなんじゃないか?」とか。でも、そうすると寄りすぎちゃうみたいなところとか。

MASAKI:
 もちろんシナリオも全部何度も読んで、「異変」じゃないっていうところで、キャラ選択画面の曲も大変でした。キャラクター同士も殺し合いをするわけじゃないから、あんまりシリアスすぎても違うよねとか。

「今日はいい酒が飲める!」会心のラスボス曲

――ラスボス曲『境界の宴』もMASAKIさんのお仕事ですよね。

澤田:
 インゲーム曲はまた別で、シナリオの終盤にある『境界の宴』はちゃんと盛り上がる。

ビートまりお:
 あれはザ・ラスボスっていう感じで、すげぇテンション上がるんですよ。

MASAKI:
 八雲紫の声を担当された、伊藤静さんが歌ってくれた曲ですね。

――歌スタートの楽曲ですよね。

澤田:
 歌スタートな感じだったんですけど、そうするとアイドルソングとかアニメソングっぽくなって、ちょっとかわいらしすぎるなと思って、僕がわがままを言って、「超ボスっぽいイントロが欲しい」と言って、イントロを付けてもらいました。

米陀:
 『ナイト・オブ・ナイツ』のような最初のテッテテレッテテテレレレ♪ のボス来た感。ああいう感じが欲しいのはありました。

澤田:
 いきなり歌で始まると、ポップな感じの印象になるので、じわじわじわっと来る、「この曲来たぞ!」っていう雰囲気にしたいよねと。あとは音もブリンブリンにしてほしいと言って、割とバッキバキな感じの音づくりにしてもらいましたね。

ビートまりお:
 スパソ(SuperSaw系の音色)のフレーズから、タラララーラララーララララー♪ あのフレーズ来たら「お、来た!」ってなりますよね。

澤田:
 とにかくボスだし、一番速くしてほしいっていうこともお願いしてました。あとは歌もですね。伊藤静さんの歌唱が本当に良かったんです。あれはすごかったですね。収録に立ち会ったのは僕とMASAKIだけだったんですけど。

MASAKI:
 イントロはありますけど、歌い始めがタータータタター♪ってサビ始まりで。収録で曲が始まって、最初のサビを録り終わった瞬間に、澤田さんとパッと顔を合わせて、「いける!」ってなりました。

――すごい手応えがあったんですね。

澤田:
 「今日はいいお酒が飲めるな」みたいな(笑)。

聞き手:葛西祝、ビートまりお
文:葛西祝

(第3回につづく)

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