
東方風自作曲について~無限の可能性を秘める世界へようこそ
東方風自作曲について

東方風自作曲(以下:東方風とも記載)というジャンルをご存じでしょうか。
「東方っぽい楽曲」を指すこのジャンルは、東方楽曲のアレンジとも異なる文化を形成しています。
十数年の歴史を持つ東方風自作曲。その魅力に、東方我楽多叢誌英語版の日本語校正を担当し、翻訳サークル「考えるな、見よ!」でも活動しているオボロチさんが迫ります。
東方風自作曲とはなにか?
東方風は東方の作者、ZUN氏が作る音楽の特徴、および楽器を取り入れた自作曲のことです。
たとえば、東方に登場するZUN氏愛用のRomantique Tp(通称ZUNペット)や、東方のゲームごとに登場する特徴的な楽器やスタイルを使う「〇〇風」の曲があげられます。また、それらとは別に、ZUN氏の作る楽曲そのものを解釈し、自分なりのスタイルで曲を作りあげる作曲者も存在します。
正確な定義がないため、私個人は、東方風は「ZUN氏のスタイルや特徴を問わず、東方感が感じ取れるような曲」だと考えます。
ニコニコ動画での東方風は2007年ごろより始まっており、投稿された作品では、L*aura(旧名義:高崎ロリエル)氏の『東方っぽいオリジナル曲ができたわけですが』がもっとも古い東方風と思われます。
東方風の作者たちは耳コピから始まり、そこで得た技術を使ってZUN氏のスタイルを再現しようとしています。初期の楽曲としては、桐生氏、FD氏、samidare氏などの作曲者たちが始めたアレンジ曲が印象深いです。
そこから東方風は広がり、ほかの東方作品の音源を取り入れながら、作曲者が増えていきました。ほかにも、自分なりのスタイルを作りだす作曲者たちも存在します。特に、中国や海外勢の作る東方風は自己流の作品が多いです。東方風は音楽分野ではマイナー部類に入りますが、東方に深い歴史と関わりのある音楽作品です。

編註:
現在、魔宝城のサイトに繋がらなくなっているため、ダウンロードされる際は、下記ツイート内のリンクよりご利用ください。
東方魔宝城公式サイトですが、諸事情あって一旦しばらくサイトの方無くなります(´・ω・`)
お手数ですが新規ダウンロードされる方、ご友人に勧められる方はこちらからどうぞ。https://t.co/Dm7N670UxH
— めいす/maceknight (@maceknight) March 12, 2021
なぜ東方風をおすすめするのか?
私が考える東方風の特徴は三つあります。作曲の自由度、アクセスのしやすさ、そして進化し続ける無限の可能性です。
はじめに、作曲の自由度が広いことがひとつの魅力としてあげられます。東方旧作特有のFM音源から、東方虹龍洞で使われてる音源まで、それらを自分なりに利用して使えることが、東方風の自由度に繋がっています。
ありとあらゆる音源を使い、自分の思う東方スタイルを作れることが面白いです。たとえば、『東方風神録 〜 Mountain of Faith.』の楽器を使って、自分なりの風神録風の曲を作ったり聴いたりすることができます。
音源だけではなく、ZUN氏のテクニックを使って東方らしい曲を作りあげたり、自分でZUN氏の式を解釈し、独自のテクニックを取り入れて曲を作りあげることもできます。どちらも自由度は高いですが、自分のスタイルを編み出すことによって、さらなる自由と作者のオリジナリティが成り立ちます。

視聴者目線から見ると、「〇〇さんが作った〇〇風の楽器を使った曲が聴きたい」といったように、自分の聴きたいスタイルを選べるとことも魅力のひとつです。”深蒼穹式”や”Wanwan式”といった各個人の作風を聞き比べることで、面白い発見につながると思います。
次に、アクセスのしやすさがあげられます。東方風はネットでアクセスできるものが多く、ニコニコ動画、Youtube、個人サイトなどで、簡単に楽曲を探すことができます。基本的には、アルバム、CDには縛られず、曲を一つひとつ選んで聴くことができます。
即売会用に制作されたCDも存在しますが、無料でアクセスできる曲のほうが圧倒的に多いです。アルバム以外にも、東方二次創作ゲーム(たとえば『東方桃源宮 ~ Riverbed Soul Saver.』など)のBGMとしても利用されているものもあります。

そして最後に、進化し続ける無限の可能性があげられます。
原作に登場する新しい楽器や特徴を取り入れたりすることで、新たな東方風自作曲を作れます。加えて、作曲者による東方風独自の解釈といった要素も含めて、奥深い東方風の世界を体験することができます。
東方風作曲者へのアンケート
この度、東方風自作曲の作曲者の方へお話をうかがいました。
よいやみさん、FDさん、Wanwanさん、翡翠さん、時見草さん、アンケートに答えてくださって、ありがとうございます。
――東方風作品を作り始めたのはいつごろからですか
2009年 FD
2009年 Wanwan
2011年 よいやみ
2016年 翡翠
2017年 時見草
――どのようなきっかけで、東方風自作曲を作るようになりましたか?
よいやみ:
東方音楽に感銘を受けて、自分でも音楽で幻想郷を表現したかったから
FD:
Samidareさんの耳コピから興味を持ち、東方風自作曲を作っていたので、自分も作ってみようと思った。
Wanwan:
ZUN氏と同じ音や技法(特徴的なトランペットやピアノの高速フレーズ)を使って自分でも曲を書いてみたいと思った所が大きい気がします。
翡翠:
元々曲作りを始めたきっかけが東方のような曲を書いてみたい、と思ったことだったので東方に憧れて、でしょうか。
時見草:
先代の東方風製作者に憧れたのと、単純に曲を作ってみたかったことです。
――東方風の魅力、面白い部分は何ですか?
よいやみ:
人それぞれの心の中の「ZUN」を感じられるところ。
FD:
原作にありそうでないこの感じ。
Wanwan:
東方楽曲の音色や技法を使ってるのに(良い意味で)ZUN氏が作らなさそうな曲が聴けるところが凄く面白いと思っています。
翡翠:
制限があること。
時見草:
主観的ではあるのですが東方風は初期(~2012)、中期(2012~2017)、現在(2017~)とざっくり考えています。魅力はその中で曲の傾向が異なると感じられることです。
初期はバランス良く、原曲成分が強め。中期はZUN氏の曲の中でも、透明感や浮遊感のある曲調に近いものが多い、特にZUNペットのメロディに顕著です。現在は最近のZUN氏の曲調、東方風から発展させた独自路線の曲調といった傾向が感じられます。
ほかには、単純にほかの人の曲調を真似て曲を作るスタイルが、ここまで広がっているのは興味深いというところです。
――あなたが作品を完成させたとき、自作曲に対してどのような感情を持ちますか?
よいやみ:
山奥を迷っていたら小さなかわいい祠を見つけたような感覚。
FD:
めっちゃええやん……!
Wanwan:
あまり何かを意識したことはないですが、強いて言えばその作品を公開するのが楽しみだなと感じます。
翡翠:
もっと良い曲が書きたいといつでも思います。
時見草:
「この展開微妙かな、東方風になっているだろうか」など、常により東方風にするにはどうするか、みたいなことを考えてしまうことが多いので、なるべく自分の曲を褒めてあげるようにしたいです。
――これからどのようにあなたの作品の完成度を高めていきたいと思われますか?
よいやみ:
東方からかけ離れない程度にオリジナリティを強化していきたい
FD:
音源を買いたいです。
Wanwan:
今後も私らしい曲を私自身が聴いて楽しめるような曲を作っていきたいと思っています。それが結果的に聴いてくれた誰かの好みにも刺さってくれると嬉しいです。
翡翠:
とにかくやるべきことをやるしかないと思っています。あと締切を守ること。
時見草:
コード・メロディ展開のパターンを多くしていきたいです。
――あなたが東方風を始めたとき、当時の東方風作曲者からどのような影響を受けましたか?
よいやみ:
目標のひとつ。
FD:
あんまり受けてない。全部我流。
Wanwan:
ピアノロールを動画にしてくださってる方が多いので、その当時の打ち込み方などの影響は大きかったと思います。
翡翠:
ジャンルの存在を知った、という意味で影響を受けました。
時見草:
雰囲気です。
――好きな東方風自作曲者を教えてください。
よいやみ:
東風さん
FD:
時見草さん
Wanwan:
戦ピーさん、深蒼穹さん、H2SO4さん、Sylvyspritさん、Aka Kyuketsukiさん
翡翠:
深蒼穹さん
時見草:
FDさん、たろいもさん、フランシウムさん、ハルカさん、ゆずれすさん
――ご回答ありがとうございました。
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