東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

     東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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インタビュー
2020/10/09

チャンネル登録者数100万超えのゆっくり実況トップランナー「たくっち」うp主・みぃの東方との出会いとは!?

ゆっくり実況トップランナー「たくっち」インタビュー

 皆さんは「ゆっくり実況【※】動画」というものを見たことがあるでしょうか。おそらく、知らなかったとしても普段YouTubeやニコニコ動画を見る人であれば、どこかで触れたことがあるはずです。

※「ゆっくり」実況
「ゆっくり」の元となったのは、東方Projectに登場するキャラクター、博麗霊夢や霧雨魔理沙の生首のような不思議なビジュアルのキャラクターのAA(アスキーアート)でした。「ゆっくり」は、そんな東方キャラだけではなく、いろいろなアニメやゲームのキャラクターでもパロディが作られてキャラクター自体がひとり歩きを続けていきました。そして、このゆっくりに、SofTalk(ソフトーク)などの音声合成ソフトを使ってゲーム実況をさせるのが「ゆっくり実況」です。


ゆっくりの成り立ちについての記事はこちら
「ゆっくり」が生まれた時のことを、アスキーアート製作者のDプ竹崎さんに聞いてみたよ

 2000年代、ニコニコ動画の盛り上がりとともに「ゆっくり」にしゃべらせる動画が爆発的に増えました。2019年現在でも「ゆっくり」を使った動画は定番です。

 最近では日ごろから動画に親しんでいる小中学生がゆっくり実況を見て興味を持ち、「ゆっくり」から東方Projectを知るケースがよくあるそうです。

 今回は数あるゆっくり実況の中でも、「ゆっくりを知ったきっかけ」として小中学生の間でよく名前が挙がる“ゆっくり実況界のトップランナー”「たくっち」(https://www.youtube.com/user/takuxtuti0502)のうp主ことみぃさんに話を伺うことができました。

取材・文:井口エリ

チャンネル登録者数100万人超え・ゆっくり実況のトップランナー「たくっち」

 「たくっち」は、うp主であるみぃさんとゆっくり霊夢と魔理沙をはじめ、たくっちちゃんねるオリジナルのキャラクター「やみぃ」「あぃ」「ユート」などが繰り広げるドタバタゲーム実況動画チャンネルです。

 マインクラフトやマリオメーカーからモンスターストライクのガチャや攻略の実況動画、バカゲーをプレイしてみた動画など実況するゲームは多岐に渡ります。チャンネルの特徴といえば、登場キャラクターが繰り広げる掛け合い。みぃさんの動画では登場キャラクターたちがイキイキとおしゃべりをしていて、まるで数人のグループでワイワイとゲームを攻略しているような賑わいを見せています。

東方との出会いは友だちの持っていたグッズ

 動画を見ているとゲームが上手くて(時々ドジもするけれど)、霊夢や魔理沙にはいつもいじられている“引きこもり”キャラのみぃさん。いつも画面越しに見ている方が、実際に存在して目の前にいるという事実にちょっと感動しちゃいました。みなさん、みぃさんはちゃんと実在しますよ。さて、実際のみぃさんはどんな人柄なんでしょうか。

マイメロ好きのみぃさん。手元も心なしかマイメロみに溢れていました。

――まずはゆっくりの元ネタである、「東方Project」とみぃさんの出会いを教えてください。

みぃ:
 中学生のとき、クラスメイトが持っていた東方Projectのグッズを見せてもらって、キャラクターがかわいいと思ったことが私の東方の入口でした。そこから東方Projectが気になって、YouTubeやニコニコ動画で検索しているうちにキャラクターだけでなく楽曲もすごく良いということを知って。そこから実際に原作ゲームをやってみようと思って、やってみたのが『東方風神録 〜 Mountain of Faith.』【※】でした。

※『東方風神録 ~ Mountain of Faith.』
2007年8月のコミックマーケットで発表された、Windows用弾幕シューティングゲームで、「東方Project」の第10弾。本作から『東方地霊殿』『東方星蓮船』と、守矢神社に関連した3部作が展開される。また本作と『地霊殿』では、自機はスペルカードを使用する代わりに、パワーを消費してボムを発射できる。

――二次創作や楽曲から、という東方Projectへの入口ってずっと変わっていないのがおもしろいですよね。一番好きな曲とキャラクターは誰ですか?

みぃ:
 好きなキャラクターは霧雨魔理沙です(即答)。好きな曲は諏訪子ちゃんの「ネイティブフェイス」。

――魔理沙なんですね! もともとみぃさんのアバターが東風谷早苗さんだったので、早苗さんかなと勝手に思っていました。

みぃ:
 「霊夢・魔理沙・早苗」はよく見る組み合わせですし、自分の動画で出すならこの3人でと思っていたのが早苗にしたきっかけです。今の「みぃ」は深く考えずに、自分でこんなキャラがいたらかわいいかなと思ってデザインしたものを、きつねさんという方にイラストを描いていただきました。

「ゆっくり実況」を始めた理由は「機材の故障」

――みぃさんってもともとは自分の声で実況されていたんですよね。それが今のようにゆっくり実況を始めたきっかけはなんですか?

▲もともとはみぃさんはゆっくりではなく自分の声でやっていた。

みぃ:
 たまたま機材が故障してしまい、何か代用がないかなと考えたときにあったのがゆっくり実況だったんです。
そこから独学でいろいろ調べて、試しにゆっくりでやってみようと。そうして今に至る感じですね。

――代用からはじまったゆっくりが今まで続いているということは、ゆっくり実況に手応えを感じたんでしょうか。

みぃ:
 生声よりも視聴者さんの反応が良かったんです。なので、それからはゆっくりでどんどん動画作ってみようかなと。だけどそれは、「ゆっくりでの実況スタイルが自分に向いている」と思ってのことではありませんでした。ゆっくりを動かすのは大変で、絶対自分の声でやったほうが楽だし、編集をしている間もほかのもっといろんなことできただろうし……。

――大変なこともありながらもゆっくり実況を続けてきた原動力ってなんですか。

みぃ:
 ゆっくり実況は大変だけど、視聴者さんに楽しんでいただけて、自分のゆっくり実況でワイワイ盛り上がっていただけるのならがんばろうという思いで続けています。

――ゆっくりって、実況者さんごとに個性が出ますよね。

みぃ:
 そうですよね。ゆっくり実況者さんによって魔理沙でも性格が違ったり、霊夢も口調が違ったりとかいろいろあって。私の動画に登場するゆっくりたちも、「自分のチャンネルならこういうゆっくり魔理沙かな」とキャラクター像を作ってきました。

――ゆっくりはみぃさんにとって動かしやすいんですね。

みぃ:
 なかなか生声だと言えないことってあるので。それもゆっくりが言ってくれることでおもしろくなるというのはありがたいですね。例えば、自分でボケて自分でツッコむってできないじゃないですか。それをカバーしてくれるのがゆっくりだから。ひとりでも何人かでワイワイ実況しているようなおもしろさを作れるのがゆっくりのいいところだと思います。

1台の格安PCから始まったゆっくり実況

――ゆっくり実況をはじめたとき、どういう機材からスタートしたんですか?

みぃ:
 格安ノートPCです。

――え!! じゃあ最初から特別な環境がなくてもゆっくりは始められるんですね。

みぃ:
 そうです。今もゆっくりムービーメーカーとフリーソフトのAviUtlの組み合わせで作っています。最初はキャラクターの動作も重たくて、なかなか動かない状況での手探りでやっていて。当時からゆっくりで実況される方はほかにもいたんですけど、私はほかの方に聞くのは失礼かなって気持ちがあったんですよね。なので、とにかく自分で調べられることは調べてコツコツ積み上げてきた感じです。

――勝手にもっと特別な制作環境でやっているのかと思っていました。ゆっくり実況をやってみるハードルは意外と低いんですね。

みぃ:
 はい、全然できます。ノートPCでゆっくりを動かしても全然問題ないですし。

――みぃさんは学生時代からゲーム実況をしているんですよね。最初は今のように登録者100万人も超えて、こんなにもたくさんの方に支持されるようになるとは想像していましたか?

みぃ:
 まったく思ってなかったですね。もともとゲーム実況は、ゲームが好きだったから楽しそうだなと思って始めました。学生時代、自分は普通に会社員になるのだと思っていましたが、就活を意識する時期にはすでに動画投稿者としてやっていくことを決めていました。

――動画で食べていけそうだと思ったのはどういう瞬間ですか。

みぃ:
 実況が軌道に乗ってきたのが、2015年ごろのモンスターストライクがすごく盛り上がっているとき。自分も実況していたのですが、そのときにチャンネル登録者さんや視聴回数が増えるのを見ていてすごいなあって。

 

▲「【モンスト】ゆっくり実況で超獣神祭ガチャ100連引いてみた! ルシファー&卑弥呼はでるのか!! 【たくっち】」動画。この人いつもルシファー狙ってるな……。

みぃ:
 それを、どこか他人事のように自分でも信じられないと思いながら見ていました。そうしたチャンネル登録者さんが増えるポイントが今までちょくちょくありまして今に至っています。ありがたいことです。

小さいころからインドア派だったみぃさん

ゆっくり茶番に影響与えたのはラノベやマンガ

――みぃさんの話を聞くと、演者というよりは脚本家や監督の感覚に近いんですよね。動画投稿前は何か創作をやられていましたか?

みぃ:
 趣味程度ですがもともと絵を描くのが好きでした。あとはいろんなラノベを読んだりアニメや漫画を見たりしていました。そういうものに刺激を受けて自分でもストーリーを作ってみたいなと思って作ったのが茶番【※】動画ですね。

※茶番、ゆっくり茶番
ゆっくりのキャラクターやボイスを使って作られる寸劇。茶番劇のこと。

――それまでに学生時代でたくさん吸収したものが今の動画制作にも活きているんですね!

みぃ:
 それはあると思います!!

――ほかに影響受けたものとかありますか。たとえばみぃさんのテンポの良い掛け合いは、四コマ漫画に近いものがあるなと思ってます。

みぃ:
 あ……! 弟がコロコロコミックをよく買っていたのを読んでいたのでそれも結構影響あるかもしれないです。もともとギャグ漫画も好きだったので。

――弟ってまさかユート……!(たくっちチャンネルに登場するみぃの義理の弟)

▲動画オリジナルキャラも人気です。

みぃ:
 弟は実際にユートみたいな性格というわけではないですね。普通の人です。

――あくまでもたくっちチャンネルのキャラクターなんですね。みぃさんもそうだし、弟や妹もキャラクター……。

動画はみぃさんにとって「生活の一部」

――動画はほぼ毎日のように更新されていますけど、制作には普段どれくらいの時間をかけているんですか。

みぃ:
 だいたい1分作るのに1時間かかる計算ですね。

――みぃさんの動画は10分前後のものが多いので、毎日動画を作る時間だけで10時間前後は必要なわけで。しかもゲームをする時間とプレイを録る時間がほかに必要なんですよね。時間が足りなくはなりませんか?

みぃ:
 足りないですね。大学生のころは大学行っているときもノートPCを持ち込んで、空き時間も動画の制作をずっとやっていました。

――学業と動画の制作って、両立できるものなのでしょうか。

みぃ:
 私は結構いっぱいいっぱいでした。学生時代は学校から帰ったらゲームの実況やってそのまま撮影して、次の日に編集を行っていました。それが毎日。卒業してからはもっと動画に時間をかけられるようになりました。

▲凝った動画だと1分1時間できかない場合も多々あるそう。動画制作って……大変だ!

――動画クリエイターという生き方が世間に認識されたのって割と最近で、みぃさんが始めたころはまだそれほど一般的な生き方ではなかったですよね。

みぃ:
 今でも将来のこととか考えると不安になるし、今の自分の生き方が必ずしも誇れることだとは思ってないんですよね。今の自分にできることだし、見てくれる方がいるので続けようという感じです。自分ができることといったらそれぐらいかなと……。

――みぃさんは動画投稿者の中でもトップランナーのひとりで、憧れられるような立場だと思うのですが、話を伺っているとめちゃくちゃ謙虚ですし、有名人でも驕らないというかそもそも「自分は有名人である」みたいな意識がなさそうな気がします。

みぃ:
 そうですね。自覚はないです。動画を作ることは生活の一部になっちゃっているし、私はそれを続けているだけ。動画を作ることは毎日やるのが当たり前の……たとえば感覚的には歯みがきとかに近いのかもしれない。

――ストイックですよね。今まで動画を長期でお休みをしたことってあるんですか?

みぃ:
 ないですね。たとえば誰かに長期で動画をお休みしてもいいよって言われたとしても、「いいのかな」って罪悪感が生まれると思います。

――動画を作っていてどんなときに楽しいと思いますか。

みぃ:
 動画のストーリーを考えているときが楽しいです! 今休止していますけど、茶番動画は自分で考えたストーリーを作りたいという気持ちから作っています。ストーリーも、お風呂入っているときとか寝る前とか、動画から離れているときに思いつくことが多いですね。

▲茶番動画は動画の長さも長いものが多いです。

――離れている瞬間も、常に動画のこと考えているんですね(笑)。

みぃ:
 言われてみればそうですね(笑)。

続けられることを見つけてみよう!

先日公開された「ゆっくり実況って、おおっぴらに作っても大丈夫なの?」という問題に切り込んだ動画『【ゆっくり解説】真相解明!ゆっくりの歴史と著作権の真実』。
こちらについて、みぃさんから「みんなが安心してゆっくり実況できるようになりましたね!これからもゆっくりを使ってどんどん東方を盛りあげていきたいです!」とのコメントを頂きました。

――この記事を見ている方には、ゆっくり実況などの動画をやってみたい人もいるんじゃないかと思うんですが、そういう方にみぃさんがアドバイスするならなんとアドバイスしますか。

みぃ:
 途中で投げ出さずに、継続することが大事です。これは動画に限らず自分に合ったものを見つけることも大事だと思っているので、いろいろやってみてその中でやっていけそうなことを続けていけばいいと思います。他ならぬ私自身がそういう感じだったので。

――みぃさんも、動画は毎日やらなきゃいけないし大変ではあるけど、作業は辛くないから続けられているんですよね。

みぃ:
 ある程度のところまでがんばったら自分のペースでできるようになりました。始めて1年ぐらいですかね。作業が本当に辛いと思ったことは一度もないです。

――最低でも一年ぐらいは続けてみないとってことですよね。その間、もう辞めようと思ったことはなかったですか。

みぃ:
 何度もありました。やっぱり動かすのが大変だったので……。自分のペースを掴むまでは何回も挫折を感じました。

――それでも諦めずに踏ん張ることができた支えってなんですか。

みぃ:
 やっぱり楽しみにしてくださる温かいコメントとか応援コメントですね。Twitterでも応援コメントやイラストを送ってくださったりしていただいて、もう少し頑張ろうかなって。大変だけど続けていけばきっといいことがあるので。

――いいこと……! みぃさんはどんないいことがありましたか?

みぃ:
 チャンネル登録してくださる方がたくさん増えて、いろんな方からお声がけいただいたり。続けてみて良かったなと思います。続けなかったら見られなかったものがたくさんありました。

自分の「好き」を発信し続けるみぃさん

 毎日ゆっくり実況動画を上げてゲームという自分の「好き」を発信し続けているみぃさん。取材日は、その日のぶんの動画を前日のうちに半分終わらせた状態でインタビューに来てくれました。

 インタビューの合間の「動画投稿者」から離れたみぃさんとは、プライベートで楽しんでいるゲームの話をしたりしました。みぃさんは、ゲーム実況動画を作る息抜きにも別のゲームを楽しんでいて、本当にゲームが好きなんだというゲーム愛がひしひしと伝わってきました。それ以外の部分では「自分の世界をしっかり持っている、かわいいものが好きな普通のオタクの女の子」という印象を受けました。

 途中で投げ出さずに、継続すること……。ゆっくり実況のトップランナーであるみぃさんの口から聞くことで、改めて継続することの大事さを感じました。動画もそうだし、ゲームでもスポーツでもなんでもいいから、皆さんもたくさんいろんなことを経験してみて、その中から「自分の好き」を見つけてみませんか? その経験は、きっと無駄にはならないはずだから。

チャンネル登録者数100万超えのゆっくり実況トップランナー「たくっち」うp主・みぃの東方との出会いとは!? おわり