東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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リポート
2024/11/28

ジャズ初心者でもOK!昼から楽しむ音楽のひととき「紅楼Jazz」ライブレポート(後編)

『紅楼Jazz2024』ライブレポート前半

 皆さんこんにちは、灯花と申します!

 普段は東方で同人小説を書いていたり、こないだは推し香水の記事を書かせていたただきました。

 今回の記事は、東方ジャズアレンジサークル「ついったー東方部」が主催するジャズオンリーのライブイベント紅楼Jazz」のライブレポートです。

 2014年から始まり、今年で10年目を迎えるこのイベントは、ライブイベントの中ではかなり歴史のあるイベントとなっています。

 そんな「紅楼Jazz」に今回初めて参加した私が、ライブ後半の模様についてお伝えいたします。
 ※前編はこちら→「ジャズ初心者でもOK!昼から楽しむ音楽のひととき「紅楼Jazz」ライブレポート(前編)

文/灯花
写真/るぅく
編集/土露団子・西河紅葉

 

大迫力! OTAKU YAKUZA COLONYさん

 4つの東方ジャズサークルによる合同サークル、略してオタコロ。今ライブでは、「東京アクティブNeets」と「ACCORD ON CODES」から6人のミックス編成で登場。

 スーツ、グラサン、派手シャツの装い、みなさん厳つ……いえ、お洒落ですね。

 

♩「始原のジャングル」原曲:始原のビート ~ Prinstine Beat

 1音目から全力の熱いロングトーン!いきなり会場を驚かせていきます。

 ベース→サックス→シンセのソロ回しがとにかくお洒落。ドラムとベースの重低音が、体の芯まで響く迫力ある一曲でした。

 サックスのキノ爺改め、百々瀬鬼之さんのドスの効いたご挨拶を挟んで次の曲へ。

 

♩原曲:無何有の郷

 雪が降りしきる森を思い起こさせるような、渋いアレンジ。

 リズム隊の安定感ある演奏の上に、しんしんと積もるようなねのさんのピアノパートが印象的。

 ソロ後には拍手も見られました。

 

♩「Ambivalent Cityscape」原曲:トータスドラゴン 〜 幸運と不運

 例大祭頒布予定の新譜から一曲。

 サビで登場するタンバリンが変拍子の輪郭を際立たせる後ろで、縦横無尽に動き回るベースが心地よいグルーヴを生み出しています。

 高層にあるバーから、畜生界を見下ろしてほくそ笑む八千慧がいそうですね。

 

♩「Bitter sweet dream」原曲:幽霊楽団

 ゆったりとしたリズムに、サックスのリードメロディが優しく寄り添うバラード調のアレンジ。

 静かな始まりから色っぽいサックス、シンセとシンバルで曲の厚みが増していく様子が激エモすぎます。

 

♩「signal from far distance」原曲:竹取飛翔

 なんとコードがEmしかないという、編曲者のねのさんも認める問題作(?)。バスドラのシンプルなリズムに乗せて、メインメロディも少しダークな印象。

 やがてコンテンポラリーから激しいリフレイン、救難信号のようなポーンポーンという音が静寂の中に消えていく、映画のような一曲でした。

 ここでオタコロから重大発表。

鬼之さん「なんと、活動一年目にしてサークル名が変わります!」

紅維流星さん「ヤクザ卒業です!」

鬼之さん「グラサン見にくいんだよね」

 ということでYAKUZA改め、OTAKU JAZZ COLONYの最後の一曲。

 

♩「Auturm Zipang」原曲:神々が恋した幻想郷

 ジャズの名曲に準えた、「オータム」でスペ…「ジパング」な一曲。疾走感のあるパーカッションに乗せてそれぞれのソロプレイが光ります。

 前フリで「ソロ短めにね」っておっしゃってましたが、たっぷり聞かせてもらいました。「神々が恋した幻想郷」の原曲の激しくなるところって、割とジャズっぽいんですね…。

 大所帯ならではの曲の厚みと情景を描くようなアレンジで、次はどんな世界を見せてくれるのだろうと、終始ワクワクしていました。

 また年末には関東でライブもあるそう。ぜひ写真のQRをチェック?

 ※写真のQRコードを読み取れなかった方はこちら → Far East JAMMING Night 11.5 来場希望者向け予約フォーム

 

ついったー東方部さん こちらも重大発表…?

 東方にとどまらず、日本中のジャズイベントで精力的に活動しているサークルであり、こちらの「紅楼Jazz」の主催サークルでもある「ついったー東方部」さん。

 実は配信曲を予習していたのですが、ジャズの中でもジャンルを広く扱っていらっしゃるまさに技巧派です。

 

♩原曲:世界は可愛く出来ている

 2416さんのコントラバスの丸みのある低音から始まり、tanigonさんの軽快な鍵盤捌きとcrowさんの細やかなサックスが心地よくて聴き入ってしまいました。それらを支えているsakiさんのドラムもメリハリがあって存在感抜群です。

「はい、こんばんは〜……いやちゃうわ、昼や!」とtanigonさん。

 そして、いきなりの重大発表。ドラムのsakiさんが今日を以て卒業! 困惑する会場でしたが、sakiさんのアリスコスに合わせてアリス曲が2曲続きます。

 

♩原曲:人形裁判

 リード楽器がオーボエに変わると、華やかな音色が会場に響き渡ります。

 リズミカルな曲調に伸びやかな低音のコントラバスのソロも相まって、今回のイベントフライヤーを彩るお洒落で可愛いアリスにぴったりのアレンジになっていました。

 

♩原曲:不思議の国のアリス

 こちらはゆったりとした6拍子のアレンジ。表現力たっぷりの演奏と低音の動きに、気がついたら体がふわふわ揺れていました。酔いも随分回ってきてます。

 古いアルバムをめくって紅茶を一口。そんな郷愁に浸っているアリスを思い起こしました。

 

♩原曲:シンデレラケージ

 3音ずつ分解・再構築された印象的なイントロに、気分が高まるシンバルのリズム。持ち替えたベースの跳ねるようなビートと、軽妙なサックスで思わず踊り出しそうな雰囲気。

 鬱蒼とした迷いの竹林も、カクテルライトの眩いダンスフロアに早変わりしそう。

 

♩原曲:トータスドラゴン 〜 幸運と不運

 OTAKU YA…JA…より先に作られたとのことですが、編曲者が違うと印象が丸切り変わるのが、東方アレンジの妙。

 大変難しい変拍子ながら、決して崩れない演奏技術とtanigonさんの凄まじいピアノソロに圧倒されました。

 こちらは騒々しい夜の街を肩で風切って歩く凛々しい八千慧さんが見えます。にしても八千慧さん、どこまでもジャズがお似合いですね……。

 

♩原曲:紅楼

 配信で聴いた中でぼくが一番好きな曲で、生で聞けてとても嬉しい。低音から始まるサックスの音色が、夢の終わりを浚うように会場をしっとりと包みます。

 終盤の掛け合いではセプテットや砕月のフレーズが見え隠れ。遊び心満載です。

 

♩原曲:ネイティブフェイス

 こちらもメインメロディを大胆にアレンジしたイントロで掴みは抜群。細かいベースのソロは不死の煙で〆て、思わずニヤッとしました。

 サックスの凄まじいロングトーンのバックに、ピアノの綺麗な東方アルペジオが重なるとラストスパート。

 実はついったー東方部としての録音音源がないそうで、入れる予定もないとのこと。貴重なものを聴かせてもらいました。

 ジャズの醍醐味であるテーマ→ソロ→テーマの醍醐味が詰まった、王道のジャズをたっぷり堪能させていただきました。ドラムのsakiさんの卒業は寂しいですが、今後も音楽は続けられるとのことです。

 この日は、雪解けおじさん発案で「寄せ書きトラベルカホン」という素敵なプレゼントもありました。

 

紅楼Jazzのお楽しみ? セッションタイム

 3サークルが終わったところで、tanigonさん曰く「本番」のセッションタイムへ。

 各サークルからピックアップしたメンバーで、他のサークルの曲を演奏するという、この紅楼Jazzではお馴染みの企画だそうです。

 1曲目はtanigonさんの意地悪でついったー東方部の「黒い海に紅く」。メンバーはねのさん、わたりさん、itEdakeさんにスチールパンの96木さん。

「コードが訳わかんないっす」と話していた96木さんですが、卒なく演奏されてます。ソロ回し中に少し若干の挙動不審がありましたが、わたりさんの一声でうまくテーマに戻して無事演奏が着地しました。

 2曲目はUnity-gainの「wired into the brick」(原曲:明治十七年の上海アリス)。リズムが難しいらしいこの曲を担当するのは、tanigonさん、crowさん、蒼井刹那さん、あつしさん。プレッシャーもなんのその、安定感の中でも各自のソロ回しが炸裂。

 これには雪解けおじさんも驚愕して、「止まってしまえと思ったのに」と暴露。

 3曲目はオタクのヤの字…ではなくジャの字の曲で「Desire Drive Blues(原曲:デザイアドライブ)」。O太さん、百々瀬鬼之さん、紅維流星さん、2416さん、sakiさんの残りのメンバーで挑戦。

 シンセが鳴り響く派手なイントロでテンションはMAX。それぞれの華麗なソロに会場も手拍子で応えます。

 sakiさんの渾身のアドリブドラムでは歓声も上がり、〆にふさわしい一曲になりました。

 全演目が終わり地上へ上がると、外の明るさが目に染みます。昼公演ということもあって、まだ16時の大阪。

 ここから梅田の地下街で感想を語るもよし、夜公演のイベントに行くもよし。

 ぼくも翌日の紅楼夢に向けて買い出しに行って、早めに休むことができました。

 

熱意

 最初から最後まで、東方とジャズがぎっしり詰まった4時間。ジャズという括りでも三サークル三様の表現で、東方アレンジの裾野の広さを思い知った一日でした。

 特に同じ原曲のジャズアレンジといっても、使う楽器やリズムの違いで全く違うものが見えてくる、東方アレンジの面白さを肌で感じることができます。

 参加者の客層も老若男女問わずで、海外の方は家族で来られていたのも印象に残っています。そういった幅広い客層に注目されるだけあって、非常にレベルや完成度が高いライブだったと感じました。

 セッションタイムも大変盛り上がり、初めての譜面でもアレだけ完成度が出せるのは、もちろん演者さんたちの技量と、「東方」という共通言語とあってこそ。

 演者さんたちの熱意ある演奏と東方愛が、これでもかと伝わってきて、ぼくも東方が好きでよかったな〜、と思える楽しいライブで、次の開催が今から楽しみです。

 

配信もあるけど、是非現地へ!

 実は今回のライブは、Youtubeにて配信も行われていました。会場や演奏の様子など、アーカイブでも確認することができます。

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=iJhuf3D5BAI

 ……ですが! ぼくとしてはぜひとも、現地に来ていただきたいです!

 配信はどうしても音量が抑えられてしまうので、全身に音楽を浴びる経験は、現地だけの特権です。その場で気に入った曲が購入できる物販、それにほかの参加者との交流も、ライブでしかできない貴重な機会です。

 ここ数年は当日だと立ち見になる人気ぶりだそうなので、ぜひとも事前のご予約の上、ご来場ください。

 この記事で「紅楼Jazz」に少しでも興味を持っていただければ幸いです!

 

ジャズ初心者でもOK!昼から楽しむ音楽のひととき「紅楼Jazz」ライブレポート(後編) おわり