感想は、だれかの活力になる――東方アレンジの感想の書き方・伝え方
東方アレンジの感想の書き方・伝え方【後編】
「東方アレンジの感想の書き方・伝え方」をテーマとした当コラム。中編では、
・感想はなるべく具体的に書くと書きやすく伝わりやすい
・感想を書くハードルは低くて良い
・感想は質でも量でもなく数
・音楽の感想や紹介に便利な三要素
といった内容について紹介しました。
後編では、前回言及した「音楽の感想や紹介に便利な三要素」をもとに、さらに詳細な感想を書くために「どのように音楽を聴けば良いか」など、感想を書くにあたってのアプローチの方法等についてお話していきます。
ボリュームのある感想を書くために――語彙力よりも、音を耳でどのように拾うか
ボリュームのある感想を書くための方法は、ふたつあります。
ひとつ目の方法は、たくさんの言葉を使って説明すること。
「とつぜん稲妻が走るような大きな衝撃とともに、たいへん刺激的で破壊的な音楽がはじまるが、ただ刺激的で破壊的なのではなくその中にも理性的なものが感じられて、強いインパクトだけでなくクールさも兼ね備えた世界観がこの音楽を彩る……」
とか、
「まるで濃霧の中を想像させるような静かでぼんやりとした世界、しかしそこでじっと待っているとやがて美しい叙情的なメロディが聴こえてきて、神秘的な世界へ私をいざなう……」
といったように。
一見上記の例は語彙力がありげな文章に見えますが、実際はそうでもありません。大事なのは語彙力よりも「音を耳でどのように拾うか」です。どれだけ語彙があっても、言及する音を耳で拾えなければ言葉は出てきません。カメラのシャッターを切るように、連続する音の中のひとつひとつの気に入った瞬間を拾い上げていくことが大切です。
ほかにも、自分の体験の話を交えるのもいいです。「おばあちゃんの家に遊びにいった時を思い出しました」のような。情景が浮かぶ描写は、読んだ側も「どのような気持ちで聞いてくれたのか」が想像しやすくなります。
ふたつ目の方法は、言及する箇所について細かく分けて小出しにすることです。こちらのほうが簡単だと思います。なぜなら、これはすでに記事内で行っていることなんです。
中編で、「音楽の感想は具体的であるほうが書きやすい」と書きました。
「例大祭の新譜良かったです!」
よりも、
「例大祭の新譜の◯曲目が良かったです!」
のほうがより具体的で明確です。同様に、
「例大祭の新譜の◯曲目が良かったです!この曲のサビが好きです!」
と、具体的に出来ますね。さらには、
「例大祭の新譜の◯曲目が良かったです!この曲のサビのメロディが好きです!」
さらに細かくすると、
「例大祭の新譜の◯曲目が良かったです!この曲のサビのメロディが好きで、その中でも最もクライマックスに至る部分がめちゃめちゃカッコいいです!」
ぐらいまでは言えちゃいます。もし、「全部良い」のなら……それを伝えてもヨシ!
音楽の感想を言い慣れてる人というのは、語彙力があるというよりも、ほんの一瞬間の良いところを見逃さずにキャッチする程度の能力を持っているものです。
大事なのは語彙力よりも、「音を耳でどのように拾うか」です!
どのように音を拾うのか?
いきなり「音を拾う」と言っても難しいと思います。なので、ここでは音を拾うヒントを紹介していきましょう。
まずは楽曲全体に関わるものから。
メロディは好きですか。 エモい? カッコいい?
テンポはどうですか。 速い? 遅い? ノレる?
楽器編成はどうですか。 よく分かんないけど、たくさんの音が鳴っていますか? それとも、ピアノソロのように少ない楽器数で演奏されていますか?
伴奏はどうですか。 カッコいいですか? エモいですか? きれいですか?
音の質感はどうですか。 強くて大きくて刺激的ですか? 弱くて優しい音でしょうか?
音の重さはどうですか。 軽い? 重い?
世界観はどうですか。 西洋的? 東洋的? 日本的? 異国的? 未来っぽい? 古くさい?
次に細かい部分についてです。音楽は時間芸術なので、(特殊な効果を狙った音楽を除いて)ほとんどの場合、時間の経過とともに「展開」があり、何かしらの変化が起きます。その変化に注目してみましょう。
Aメロ→Bメロ→サビに至るまでの盛り上がりの変化
音量や音の密度の変化 (音量が大きくなる?小さくなる?密度が高くなる?低くなる?)
楽器・音の数の変化 (多くなる?少なくなる?)
メロディの音程や音域の変化 (音程が高くなる?低くなる?音域が広くなる?狭くなる?)
リズムの変化 (刻みが細かくなる?ゆったりしている?)
ハーモニーの変化 (明るくなる?暗くなる?単純になる?複雑になる?オシャレになる?シンプルになる?)
このように細かく切り分けて捉えてみると、あなたのお気に入りの音楽にも色んな表現を試みたものがあって、一曲の中でも色んな変化が起きていることに気づくかと思います。その中で気に入っているところや、いつも楽しみにしているところをキャッチして言葉で具現化していくといいでしょう。
たくさん要素を挙げましたが、自分が印象に残っている一、二箇所を拾うだけで良いです。もちろん、多くある場合は多くてもOK!
「テンポが速くてアグレッシブなアレンジ好きなんです!」でも、
「バックのギターの音がクールですごい好きです」でも、
「低いところから高いところまでしっかり歌いこなしていてすごい!」でも、
「Aメロ→Bメロ→サビの展開がドラマチックで好きです!」でも。
このとき、「自分が音楽を知らないだけでほかにもっとすごい音楽があるんじゃないか……?」のような知識不足を憂う必要はありません。感想とは自己紹介なので、あなたにとってすごいと思ったか否か、それが大事です!
Aメロ、Bメロとかがよく分からないという人は、具体的な再生時間を指定すると良いでしょう。
「2分31秒のところからがとっても好きで……」
YouTubeですと、上のような時間指定をいれたコメントをよく見かけますし、ニコニコ動画でもよく見る「ここすき」というコメントも、その再生時間にあわせてコメントをしているものなので、同じですね。
アレンジャーは、どの音もひとつひとつ一生懸命作っています。たくさん紡いだ500とか1000とか10000とかの音符のうち、どれかたったひとつでも、たった一行の歌詞でも、リスナーの耳に引っかかれば、これほどうれしいことはないのです。
どうしても音楽を語る語彙を増やしたい! という人向けの表現集
原曲やキャラへの愛を交えた肉付け
東方アレンジですと、自分の好きな原曲の、あるいは自分の好きなキャラクターのテーマ曲をアレンジした楽曲がありますね。こういった糸口から感想を送るのも、良い方法だと思います。
「この原曲のアレンジ好きなんです! アレンジしてくれてうれしいです!」
とか。こんな感想も大変うれしいですね。「その曲チョイスして良かったー!」ってなります。歌詞があるものなら、
「キャラクターのスペカや元ネタに関連するワードを歌詞に入れていて好きです」
なんて伝えられますね。もっと具体的に、
「輝夜のお姫さま感出てますね」
「萃香のアレンジで日本のお伽噺のような世界観合うなあ~」
などなど。また、これは東方アレンジならではのアプローチですが、「原曲から比較して説明する」という感想の伝え方も良い手段です。
「原曲のメロディの良さをそのまま生かしたアレンジが好きです」
「サビを2回繰り返してくれるのうれしい」
「激しい原曲をさらに激しくしてくれて助かる」
「原曲のサビの部分をまったく違う雰囲気でアレンジするとは驚いた。斬新だった」
「ふたつの原曲を組み合わせてカップリングを表現しているのがエモかった」
「このメロディ、人間が歌えた or 演奏できたのか(驚愕)」
このように。表現はいくらでもありますね。
感想は、だれかの活力になる
実のところ、音楽は非常にジャンルが幅広く、すべての音楽をカバーするように言及することは難しいです。しかし、音楽の感想は気軽に書いてよいこと、「ここすき」程度のものでもそれはすでに立派な感想であるということがお分かりいただけたのではないかと思います。
ところで、音楽はどうしても一曲の音楽を仕上げるのに時間がかかるものです。曲を聴いてもらうために動画を作ったり、CDにしたりするのにも時間がかかります。
これゆえ音楽はどうしても、「前に発表した作品と新しい作品とのあいだに時間が空きやすくなる」という性質があります。つまり、イベントとイベントの間は寂しくなりやすいことを意味します。例大祭が終わった! ひとつの新譜を完成させることができた! けれども、次の新しいアルバムを作るためには、また長い時間が必要……。
この間に何かしらの反応がファンの人から来ると、とっても活力になります。
中には、全国津々浦々のイベントに参加していたり、あるいは独自でライブやコンサートなどを開催したり、生配信をしたりと、活動的なサークルさんもいます。なぜこのように精力的に活動するサークルがあるかというと、「ファンとの交流する時間・機会を増やすため」なのです。こうすることで、「リスナー・ファンの確固たる存在」を継続的に実感することができるのです。
しかし、すべてのサークルがそれを実践できるわけではありません。全国のイベントに参加するにも休みの日程や旅費の確保が必要ですし、自分で独自に何かイベントをしたり生配信するのはとても大変なことで、到底容易に実践できるものではありません。
ですから、イベントからしばらく経っていても気にせず、思い出したときでもよいので、感想を書き残したり送ったりしてみてください。
「いつも聴いてます!」
これは継続的なファンであることのアピールになるので、めちゃくちゃうれし度がドアップします。
「ドライブしているときに聴いてます!」
「これを毎朝、通勤通学時に聴いてガッツを入れてます!」
シチュエーションが載っている感想もうれしいですよね。あーうちの曲は色んなところで役に立ってるんだなーと、しみじみとしたうれしみがあります。
あなたがYouTubeやニコニコ動画などで楽曲を聴いたとき、「この曲についてみんなどう思ってるのかな?」という疑問を持ちながらコメント欄を見に行ったこと、ありませんか? その疑問は、ほかの人も同じく持っています!
実は、感想が欲しいのは作者だけでなく、同じものを愛するファンたちも同じなのです。
あなたは「感想をコメントに残す者のひとり」として、ほかのファンからも必要とされています!
もしあなたが、Youtubeやニコニコで繰り返し再生している動画、何度も聞いている音楽があるなら、ぜひコメントを残してあげてください。(無断転載ではなく、サークルさん本人が上げている公式動画に、ですよ)
必ずしもコメントにサークル主が反応してくれるかどうかは分かりませんが、喜ばれるはずです。イベントとイベントの合間に応援メッセージが来たら、次の作品もがんばって作ろうと思ってくれるはずです!
「人は褒められると伸びる」と言いますが、「伸びる」って、何が伸びるのでしょう?
その人の能力が?
魅力が?
活動期間が?
再生数が?
フォロワー数が?
……何かはよく分かりませんが、何かしら「伸び」ます!(多分)
作品を褒めると次の作品が今まで以上にもっと良くなるかもしれないし、
新しい作品を継続して作ってくれるかもしれないし、
評価が広まってさらに多くの人から支持されるかもしれない。
きっと、何かしら良いことがあります!
いかがだったでしょうか? 音楽の感想の書き方について、もっと詳しく知りたい方は、以前に私が書いたnoteの記事をぜひ読んでみてください。
こちらは非常に長い記事ですが、もっと感想が書けるように訓練したい!という方や、音楽をもっと注意深く聴いてみたい!という方への有効なアドバイスになるでしょう。
皆さん! イベントで手に入れたCD・音楽を、まずは聴きましょう。
聴いたら、ぜひ「聴きました」と伝えてあげてください。
そして、気軽に感想を書いてみましょう!
それでは皆さん、良き音楽鑑賞ライフを!
感想は、だれかの活力になる――東方アレンジの感想の書き方・伝え方 おわり