東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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リポート
2020/08/03

「宇宙と交信するような攻撃的な音が、会場を信仰で塗りつぶす」 FloweringNight2020 岸田教団&THE明星ロケッツライブレポート

FloweringNight2020 岸田教団&THE明星ロケッツライブレポート

 

「一体次はどのバンドなんだ…?」

 

 Flowering Night 2020の3バンド目を終え、合間のMCの中視聴者の大半の興味はそこだ。
 このライブに出演するのは全5バンド。次の出番は誰なのか、それは即ちトリの確定である。残るは“岸田教団&THE明星ロケッツ”と“COOL&CREATE”、どちらも古参かつ実績も十分。どちらがトリでもおかしくない。

 そんな中、MCにステージのリハ音が入り込む。 

 宇宙と交信するような特徴的な歪みのあるギター音、間違いようのない岸田教団&THE明星ロケッツのサウンドである――

 

 思い返せば私は、2009年のフラワリで生の岸田教団を見て以来、ずっと聴き続けている。2008年はチケットを入手できず悔しい思いをしたが、その分翌年のフラワリに出演していたバンドに対する思いはひとしお。それから数多の音楽サークルに目を向けているが、この頃聴いていたバンドはずっとウォッチ対象だ。
 今年のフラワリは“懐古厨への花束”、配信だろうがソーシャルディスタンスだろうが、オタクがあの頃に戻ってしまう理由には十分だ。

 

 ――かくして、本人らの宣言なくして4バンド目は“岸田教団&THE明星ロケッツ”の出番と確定した。

 

 

 

「最高になるべく『跳べ!!!』」― 13年の時を経た、貫禄という名の「岸田教団らしさ」

 幕開け、岸田教団の1曲目はワンマンで中々セットリストに入らない「残月アリア」からスタート。1つ前のTaNaBaTaがエフェクトありの映像だったこともあり、画面の鮮明さを取り戻したディスプレイと、攻撃的な音が会場を信仰で塗りつぶしていく。

 

 2曲目からは定番の流れに入り、「メイドと血の懐中時計」で積極的にichigo(Vo.)がインターネットの向こう側の観客を煽る。配信ライブならではの配慮だ。だが、岸田教団の配信作戦はこれだけにとどまらず、はやぴ~(Gt.)とT-tsu(Support Gt.)が頻繁に動き回り、ichigoを映すカメラのエリア内に入り込む動きを見せる。

 その後のMCでは、Twitterでもカミングアウトしていた岸田(Ba.)の痔がマジで危険という話からスタートして全員からツッコミ。豚乙女、石鹸屋…これまでのバンドが丹念に積み上げTaNaBaTaで頂点に到達した、いわゆる”エモい流れ”をド派手に粉砕する。挙句の果てに「ケツにバラ咲かせてんだろww」「メイドと血の肛門括約筋」「会えなくてもスパチャがあればいいwww」等の問題発言を連発。他人主催のイベントであることをいいことにやりたい放題言っている。

 

 MCを挟み、「緋色のDance」「知ってる?魔導書は鈍器にもなるのよ」と立て続けに紅魔郷の曲を続け、休みなく「霊知の太陽信仰」に入る。みっちゃん(Dr.)によるイントロの破壊的なドラムが誰の記憶にも残る曲だ。自主規制と一緒に緩急も置き去りにした今日の岸田教団&THE明星ロケッツは、先程とは真逆の真剣な表情で楽器をかき鳴らす。

 何を隠そう、今回のFlowering Nightに配信用機材を持ち込んだのは彼らだ。自分たちの理想の音を出すために努力を惜しまない姿勢は配信ライブでも健在。グダグダのMCとキレキレのステージのメリハリが岸田教団&THE明星ロケッツの魅力だ。

 

 地霊殿最終面を終えた瞬間、岸田教団&THE明星ロケッツは禁断のハイテンポ曲4発目を敢行。激しい曲で5本の指に入る「ネクロファンタジア」をここでもってくる。しかもスピードアップしたMODバージョンだ。

 

 最後のMCでは、彼らの始まりである「FloweringNight2007」のエピソードが話される。ファンにはもちろん分かる、”次はアレですよ”という意味だ。

 FloweringNightに初登場した岸田教団&THE明星ロケッツ、一番最初に演奏した曲「夢は時空を越えて」。原曲も旧作。東方Projectと岸田教団&THE明星ロケッツの歴史の長さに浸る。

 

 最後の曲はトリの定番「明星ロケット」。「最高になるべく『跳べ!!!』」との煽りで、岸田を含める全員で全力のパフォーマンスが始まる。

 初めてのFloweringNightでは緊張して客席が見えないほどだった彼らも、13年の時を経て、貫禄という名のフリーダムさを出している。ステージを駆け下りスタッフを拉致ってステージに引き上げ光線銃ギター(?)を見せつけるはやぴー。どんどん動きが少なくなる岸田を中央に引きずり込んでジャンプでフィニッシュするichigo。キャリアとともに積み上げられた「岸田教団らしさ」とも言うべきパフォーマンスを存分に見せつけていた。

 でも、ちょっとくらい汚くなってもいいじゃないか。次はあまねさん抜きのCOOL&CREATEと確定しているのだから、きっと、小学生が好きそうなワードを連呼しつつ、今までのFlowering Nightの想起と積み重ねた時間でいい感じにまとめてくれるはずなのだから。

 

セットリスト

1. 斬月アリア
2. メイドと血の懐中時計
3. 緋色のDance

4. 知ってる?魔導書は鈍器にもなるのよ
5. 霊知の太陽信仰
6. ネクロファンタジア
7. 夢は時空を越えて
8. 明星ロケット

文:ゲン
撮影:羽柴実里、紡

 

「宇宙と交信するような攻撃的な音が、会場を信仰で塗りつぶす」 FloweringNight2020 岸田教団&THE明星ロケッツライブレポート おわり