東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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「現代人はチルノのメンタリティに学んだほうがいい」チルノを演じられると聞いた時の、夢のような気持ち

【後編】ファイルーズあい「東方Project」一万字超えインタビュー

 前回のインタビューでは、「純狐は私が守護らねばならぬ」「ヘカ様に『どこにもこんな面白い女いなかった』って思われたい」などなど……東方キャラに対する大変ディープな愛を教えてくださったファイルーズあいさん。

 後編となる今回は、スマートフォン向けリズムゲーム東方ダンマクカグラ』で演じられている「チルノ」についてお伺いしました。今までずっと見てきた東方キャラクターを自分が演じるということについて、その思いについて語っていただいています。

聞き手・文:西河紅葉
聞き手:斉藤大地/紡
写真:えぬに

「この世のすべての愛が好き」

――お話されているのがまさに「東方夢女子」の概念そのものなのですが、「東方」の“夢”概念が反映された作品やプロダクトはあまり存在していないじゃないですか。

ファイルーズ:
 はい。なのでもう、脳内で全部賄っています。

――夢女子としてのファイルーズさんは、東方だけで生計を立てておられるのか、それとも別のジャンル、他の場所でも夢女子をなさっているのか、気になります。

ファイルーズ:
 もうがっつりです。私はこの世の愛が全て好きなので。もちろんボーイズラブも、ガールズラブも、ヘテロも、夢も、全部大好きなんですよ。全部行くぞという気概でございます。「東方だと夢の割合が強い」みたいなこともなくて、東方でもどちらも好きです。夢も、キャラクター同士の恋愛も、すごく好きです。

――全て美味しくいただくぞという。すべてを受け入れる東方でも「全部行けます」と豪語できる人は多くないので、同じ気持ちを持つ人が今、勇気づけられたと思います。

ファイルーズ:
 全て好きです。いずれにしても敵なしな感じです。何でも来いですね。

 男性だから好きとか、女性だから好きとかじゃなくて、その人物としての魅力を捉えて好きという気持ちに変わるんです。性別の差も全く気にならなくて。妹紅はめっちゃかっこいいなって思いますし、もすごく美しくて強い女性として大好きだったり。そういう感じですね。

――ということは、同担拒否ではないって感じですね。

ファイルーズ:
 全くないです。大歓迎ですし、そのキャラの魅力を「分かる、この子いいよね!」って一緒に語り合いたいですね。もちろん、相手が同担拒否だったら遠慮して話はしないようにしますが、一緒にコミュニケーションを取れるのは、すごく素晴らしいことだと思います。

――今ちょうど、小中学生の子たちが「ゆっくり」をきっかけにして東方を知るようになって、キャラを詳しく知るたびに「この子たちはこんなに強い存在だったんだ」って気付かされているみたいなんですね。その子たちが今感じている、まだ言葉になっていない感情を、ファイルーズさんがこのインタビューで具体的に語ってくださったことは、その子たちの背中を押す一つの優しさになると思います。
「東方夢概念」が意味のある文章としてメディアに残ることは、今後本当に大きな価値があることですので。あのファイルーズさんのツイートのすべてがわかりましたので、このインタビューは本当に素晴らしいものになりました。

ファイルーズ:
 もう、私は一枚ずつ服脱いでるような気分でしたよ(笑)

――ちなみに、「幻想郷に住みたいか」または「幻想少女に現代に来てほしいか」でいうと、どちらですか。

ファイルーズ:
 住みたいです。……いや、違いますね、通い妻になりたい。現世の美味しいお菓子とか持っていって、妖精たちを手なずけたい。

――状況を利用して「面白い女」ポジションを確保する方向にいきましたね。

ファイルーズ:
 チルノとかに「あんたまた来たのね。よこしなさい!」「あんたなら、たまに遊びに来てもいいわよ」みたいなお許しをいただけるようなポジションになりたい。

 

現代人はチルノのメンタリティに学んだほうがいい

――ファイルーズさんは『東方ダンマクカグラ(以下、ダンカグ)』で、チルノ役を演じられています。お話を最初に聞いたとき、どう思われましたか?

『東方ダンマクカグラ』公式サイト ダンカグペディアより引用。公式サイトでは、ファイルーズさんが演じるチルノのボイスも聞くことができる。

ファイルーズ:
 私たち世代はチルノで育っていると言っても、過言ではないですよね。「みんなー!チルノのさんすう教室始まるよー」って。東方を知らない子でも知っている曲じゃないですか。それで育ってきたので、最初に伺ったときは「私がチルノに?!」と純粋に驚きました。もう本当に、夢のような気持ちでした。

 私、専門学生の頃にどうしても「私、東方の曲が歌いたい!」と思って、東方音楽サークルさん……IOSYSさんがボーカル募集していないか、調べたことがあるんです。歌いたいと言いつつも、当時は歌に自信がなかったので「なんかセリフっぽいのだったらできるのにな」と思ったりとか。でも、将来声優でデビューした時に、もしかしたらそれでご迷惑をおかけしてしまうかも……と思って踏みとどまったんですけど。

――もし申し込んでいたら、すこし歴史が変わっていたかもしれないですね。

ファイルーズ:
 かもしれないです。東方のキャラクターの声をやりたいって、ずっと思って生きてきたので。本当に幻想郷入りできてうれしかったです。声だけ幻想郷入りできました。

――チルノを演じる上で、気にかけていることはありますか?

ファイルーズ:
 やっぱり、世間にはIOSYSさんのチルノが広まっているじゃないですか、大人気なので。

 私自身もその印象が強かったので、引っ張られすぎないようにというのを念頭に置きました。『ダンカグ』のチルノなわけですから、そのオリジナリティをいれつつ、みんなが思い浮かべるチルノになるべく近いようなイメージにしたいと考えています。その塩梅が少し難しかったですね。

――ファイルーズさんの考える、チルノの魅力を伺いたいです。

ファイルーズ:
 チルノって常に考え方が主観的なんです。最初に見た印象がずっと強いが故に、ずっと決めつけてかかったりするタイプだと思うんです。

 けれども、『ダンカグ』のエピソードだと、意外と周りの妖精たちの小さな変化に気づいていたりするんですよ。だから「あ、意外とちゃんと見てるんだな。天才と馬鹿は紙一重って、こういうことか」と思ったりして。チルノは、ただバカなだけじゃないというところが魅力だと思っています。

 あと、自分をしっかり持っているし、あれだけ「あたいは天才!」と言い切れる、その自信やパッションは、現代人が必要としているものなんじゃないかと。自己肯定感、絶対高めた方がいいじゃないですか。自信過剰になるのは危ういですけどね。今の世界の私たちは、チルノぐらいのメンタルを持っていた方が、心は健康なんじゃないかと思います。

――確かに。チルノには現代人が学ぶべきところがありますね。

ファイルーズ:
 周りにバカって言われたら、「バカはあなた」「あたいの天才さが分からないあなたの方がバカ」って言い返してやりましょう。

――最後に、『ダンカグ』を遊んでいるユーザーさんに一言お願いします。

ファイルーズ:
 『ダンカグ』は、本当にスタッフさんたちが、キャラクターへの愛と理解をとても深めてシナリオも作ってくださっています。なので私たち役者陣も、毎回台本を受け取るのが楽しみで、ウキウキしながら演じています。原作では描かれていないキャラクターたちの意外な一面だったり、別の表情が見えるエピソードを読むと、そのキャラのことがもっと好きになります。

 ダンマクカグラをきっかけに、新しい楽曲や、知らなかった楽曲に出会えますので、ぜひこれからもたくさん応援して楽しんでプレイしてくれたらうれしいです。

――もう一つ、今、東方が好きな中高生の女の子たちに、一言いただけますか。

ファイルーズ:
 やっぱり私も、最初は東方がどんなものか分からなくて、何から触れていいのか、右も左も分かりませんでした。でも、何から入ったっていいと思うんですよ。

自分が好きだなと思うキャラクターを調べてみて、たくさん絵を描いたり、そのキャラの音楽を聴いたり、カラオケで歌ったりして、色んな楽しみ方でそのキャラクターを愛してみてください。きっとその愛情の深さが、同じ原作の別のキャラクターや、別の原作への興味にも繋がって、どんどんどんどん広がっていくので、色んなキャラクターを好きになって、東方を楽しんで下さいね。

――大変貴重な内容になりました、本日はインタビューありがとうございました。

 

「現代人はチルノのメンタリティに学んだほうがいい」チルノを演じられると聞いた時の、夢のような気持ち おわり

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