東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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「上白沢慧音が幻想郷を広げたといっても過言ではない」“慧音”にまつわるエトセトラ。東方キャラクター座談会:上白沢慧音について②

東方キャラクター座談会:上白沢慧音について―第二回

 今こそ、今一度、東方のキャラクターについて熱く語りたい!! そんな想いから始まった今回の企画「東方キャラクター座談会」。

 今回は「上白沢慧音」が推しキャラの三人、石鹸屋のドラマーhellnian・IOSYSのトラックメイカーD.watt氏・バーチャルYoutuber魔王マグロナ氏にお集まりいただき、上白沢慧音に対するアツい感情を語っていただいています。

 「東方Project」、そして「上白沢慧音」との出会いについて語っていただいた第一回。続く第二回は、慧音というキャラクターに、三名それぞれが抱いている気持ちについて、お酒を入れつつトークしています。


第一回の記事はこちら
「慧音の後ろについていくと、自分が幻想郷に行った気分になれた」今こそ、東方のキャラについて熱く語りたい! 東方キャラクター座談会:上白沢慧音について①

 

「葛藤を持ってくれるのは慧音先生だけ!」

――皆さんは、慧音というキャラクターにどのようなイメージを持っていましたか? 原作の立ち絵を用意したので、こちらを見ながら改めて語っていただければ。

『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』で登場した、上白沢慧音の立ち絵イラスト。

マグロナ:
 やっぱり、原作の絵からして生真面目で、頭が固めで、大変そうに見えるというか……。そういうのがあるから、逆にドタバタさせたいし、倫理観がブレイクされることに葛藤を持ってほしいというか(笑) 余は百合厨だったので、女同士の葛藤とかめっちゃしてくれそうとか、思ってましたよね。妹紅が、人間としては禁忌踏んでるじゃないですか。それに対して、生真面目な慧音先生が庇護欲を出している感じが、見ようによっては歪んだものが見られて嬉しかったっていうのはありますよね。

――マグロナさんは昔、慧音と妹紅の同人誌を出されていますよね。慧音の倫理観を破壊する系の本を。

「U.M.E.PROJECT」制作のR18同人誌『ALGOLAGNIA』

マグロナ:
 幻想郷の人々は、基本的にハッピー倫理観ブレイクが多いので。そういうものに対してある種の嫌悪感を持っていて、「でも……」みたいな葛藤を持ってくれるのは慧音先生だけ! みたいなのはありましたよね。紅魔郷勢とかはそういうの1ミリも気にしなさそうだし。本人たちはナチュラルに倒錯しているのが多いから、倒錯していることの葛藤はなくて。それがあるのは慧音先生だけだなと思いますね! ……この話、掲載できるんですかね(笑)

 

「何とかして上白沢慧音に生きていてほしい」

D.watt:
 シリーズが続くにつれて、特定のキャラクターをこよなく愛する人たちの界隈、たとえば「上白沢慧音界隈」とでも呼ぶような群が形成されていくじゃないですか。そういう人たちが、公式では直接接点が描かれてはいないキャラクター、たとえば阿求とかを勝手に上白沢慧音に絡ませていくのが面白くて。なんとかして上白沢慧音に生きていてほしい人たちががんばって界隈を形成していくのが、なんかいいなと思っていて。 

――確かに慧音は、永夜抄以降は原作のメインストーリーにあまり絡まないですよね。 

D.watt:
 でも、慧音と妹紅がカップリング投票で上位を取ったときあった【※】じゃないですか。支持されてるんだなって分かって、心が温まったのは覚えています。こんなにセリフがなくても(笑)

※第13回東方Project人気投票で行われた「ベストパートナー部門」で、上白沢慧音と藤原妹紅は9位。第5回東方ニコ童祭で行われた「東方人気投票 ベストパートナー部門」では、上白沢慧音&藤原妹紅は4位だった。

――あと、慧音も妹紅も二面性を持っていますよね。昼と夜のような。そこがすごい妄想させてくれるからいいなぁと思います。

マグロナ:
 わかる〜。

D.watt:
 普段はパンピー、一般人なんだけど、明らかに人間ではないパワーを持ってて……っていうのは、ドラマチックなところがありますよね。慧音を主人公に据えると、お話がいくらでもできそうって言うか。 

マグロナ:
 あーでも慧音、若干ポンコツ感あるというか、EXのときに若干おらついてくるポンコツ感とか、それでいて妹紅の前座みたいな感じとか、めっちゃかわいいんですよね~ 

D.watt:
 しかも自分で言明しているのが面白いですよね。月が出てるからどうのこうのって。「今日はイライラしてるから」みたいなのとあんま変わらない(笑)

――自分のことを真面目なキャラクターだと押し込めている感じがあるのが、ネタにしやすいなと思います。

マグロナ:
 いじられキャラとしてまとまってる(笑)

 

「上白沢慧音が幻想郷を広げたといっても過言ではない」

――あと、前編でhellnianさんがおっしゃってくださいましたが、社会性ですよね。さっきの二面性も、社会に属していないと二面性って強く発揮されない。 

hellnian:
 紅魔郷で敵役として出てきたのって咲夜じゃないですか。咲夜なんて明らかに人間じゃないんですよ、種族は人間なのに。能力もそうですけど、感覚も妖怪というか、悪魔サイドに寄っているので。でも、慧音は人間サイドなので、ルールとか倫理とか、東方とか幻想郷にあまり存在しないんじゃねーかと思っていた物が存在してるんですよ。

マグロナ:
 いい意味で地に足がついている。紅魔郷とかだと、霊夢たちも含めてぶっ飛んでいて、妖怪的というか、人間の理の外で動いているみたいな感じがあって。人間の視点から見るとこいつら何言ってるんだろうって。

 だから、それまでの創作でよくあったのが、みんな妖怪的すぎる中で一番苦労して葛藤してるのが魔理沙なのではないかっていう。そんななかで、地に足のついた人間側のキャラクターは、慧音が初めてだったかもと思いますね。

――人里を想像する一つのとっかかりになりましたよね。 

D.watt:
 上白沢慧音が幻想郷を広げたといっても過言ではないと思います。 

hellnian:
 幻想郷の文化がどういったものかって、想像がつかなかったと思うんです。幻想郷は現代の世界から切り離されて、そこから文明が止まっているっていう、想像と設定の話でしかなかったことが、慧音がいたことで人里と文化があったっていうことが分かったんすよねぇ。 

マグロナ:
 それまでは「人がいるらしい」みたいな感じでしたよね。

D.watt:
 そこまではゲームのための都合のいい世界なのかなって思われがちだったものが、そこにはどうも社会が形成されていて、ある程度の規模で物が生まれているらしい……みたいな。そこに転機があったのかな。

hellnian:
 プレイヤーが幻想郷の社会について考えるとっかかりにもなってるっていう、めちゃめちゃ重要なキャラクターでもある……でもこれをZUNさん自身に話しても「そうだったかなぁ?」って言いそう(笑)

 ただ、そのあとに風神録から文化的な話につながっていくことを考えると、慧音がいなければ風神録での出来事が「なんか外から現代人が入ってきた」、というだけになっていたと思うんですね。

 ――確かに、早苗が入ってくることの衝撃が少なかったかもしれないですよね。

hellnian:
 永夜抄って、ラスボスサイドがこれまでにない気狂いな連中なんですよ。輝夜、永琳が規格外の能力で。そこで妹紅が蓬莱の薬に手を出して、不老不死っていう人間にとってとんでもない禁忌を犯したっていうその後の話で。それに追随する一番近い存在が慧音なんですが、人間じゃない。妖怪なんですね。逆転しているんです。妹紅は人間なんだけど、慧音は人間じゃない。輝夜、永琳、妹紅、慧音……この4人の中で、慧音だけは先に死ぬっていう……(嘆息)

マグロナ:
 その手の創作、めちゃめちゃ漁りましたよ!

D.watt:
 いわゆる寿命ものですよね。

マグロナ:
 寿命もの多かった! 好き〜。

上白沢慧音は藤原妹紅にもう少し近づいてもらいたい

■もこたんはお別れするのに慣れています
■もこたんはお別れするのが辛いのを知っています

■でもけいねせんせいはもこたんにもう少しこっちに来てほしいと思っています

ーキャプションより抜粋

――寿命ものはほかのキャラクターも多かったですけど、hellnianさんが言ったように、普通は死ぬのは人間のほうが先なんですよね。いや、いいですね。こんなに盛り上がるとは。

マグロナ:
 お酒がうま〜い!

D.watt:
 やっぱり、妹紅が人間っていうのが大きかったですよね。

hellnian:
 歴史上の人物を題材にしてるのもでかいですよね。

――東方というゲームそのものの話でいうと、弾幕と演出を妖々夢でかなり高めて。そういったものの集大成が永夜抄に引き継がれて……。

D.watt:
 永夜抄ってゲームをクリアするためのシステム全部が演出になってるじゃないですか。物語の作り方がゲームに直結してるのがすげーなと思いますよね。なかなかないと思う。あとはコンティニューのシステムとか。時間が巡って、次の夜にならないとできないっていう。

マグロナ:
 あのあたりの演出とかシステムって、シューティングゲームのいいところを詰め合わせている感じで、シューターとして信頼できるっていうのがあるんですよね。シューターはこれ好きでしょとか、シューティングゲームってこういうところいいよねっていうのを、ぼかぼか詰め込んでいくので。他のゲームだとなかなかできないような、強制スクロールだから音楽と展開を合わせるとか、そういうところばちばち入れてくるので「やめて! 好き!」ってなっちゃうんですよね〜(笑)

 

 

今回の「キャラ座談会:上白沢慧音」記事にあわせて朱衣子さんに書いていただきました、白沢モード慧音のイラスト。

 本日はここまで。最後となる第三回は、三人が今まで制作した上白沢慧音に関する二次創作について掘り下げます。朱衣子さんのかわいい慧音イラストもお楽しみに!

 

「上白沢慧音が幻想郷を広げたといっても過言ではない」“慧音”にまつわるエトセトラ。東方キャラクター座談会:上白沢慧音について② おわり