「慧音の後ろについていくと、自分が幻想郷に行った気分になれた」今こそ、東方のキャラについて熱く語りたい! 東方キャラクター座談会:上白沢慧音について①
東方キャラクター座談会:上白沢慧音について―第一回
今こそ、今一度、東方のキャラクターについて熱く語りたい!!
「東方オタクは、集まっても東方の話を(ほぼ)しない」、そんな冗談をときどき見る。でもそれは「相手が好きな東方と自分の好きな東方が同じか分からない」から。
じゃあ、ひとりのキャラクターを見続けてきた相手なら? そんな場が用意されたなら……。それが、東方我楽多叢誌の新企画「東方キャラクター座談会」。
毎回、「自分の好きな≒推しキャラクター」が共通する、3名の“オタク”にオンラインで集まっていただき、お酒などを交えつつトークをする……そんな内容だ。
ひとりは、東方アレンジ黎明期より活躍するロックバンド「石鹸屋」のドラマー、hellnian氏。
ひとりは、音楽サークル「IOSYS」のトラックメイカーとして活動し、また別名義「七条レタス」では作詞や『東方スペルバブル』のシナリオも担当している、D.watt氏。
ひとりは、“バーチャル美少女受肉”ムーブメントの火付け役であり、中のおじさんはかつて東方二次創作同人誌を作っていたりもした、バーチャルYoutuber魔王マグロナ氏。
三人に共通する推しキャラクターは、上白沢慧音。
少し照れ臭いけど、とても楽しい。そんな新しい「東方の遊び方」として、提案できたら幸いだ。
「東方Project」との出会い、「上白沢慧音」との出会い。
――本日はネット飲みですが、お集まりいただきありがとうございます。軽く皆さんの自己紹介をお願いします。
hellnian:
石鹸屋でドラムを叩いております、hellnianと申します。よろしくお願いいたします。
D.watt:
IOSYSっていうサークルで音楽制作と、あと作詞を「七条レタス」名義でやっています、D.wattと申します。よろしくお願いいたします。
マグロナ:
魔王マグロナです。中の人は以前、東方で絵を描いてました。よろしくおねがいします。
――では、まずは乾杯から。目の前のディスプレイに向かって、乾杯!
全員:
乾杯!
マグロナ:
やっぱり、東方語るときはお酒がないとですね〜。
――東方我楽多叢誌では今後、東方キャラについてひとりずつ語っていく座談会をやろうと思っています。東方が好きな人は、なんだかんだみんなキャラ語りをするのが好きなんじゃないかと。
初回は「上白沢慧音」さんについて、ということで、皆さまにお集まりいただきました。
hellnian:
なんというか、初回からすごいキャラクターチョイスですよね。
D.watt:
霊夢や魔理沙は主人公枠で当たり前だから、それならパチェあたりかな……? と思いきや、すごくツボを突いてきましたね。
――光栄です。ではさっそくですが、皆さまが東方に初めて触れたときの話を教えてもらえますか。
D.watt:
最初に東方に出会ったのは、僕が大学を出て社会人を始めたころなので15年くらい前ですね……。
地元のオタク友だちがコミケ買い組だったんですよね。永夜抄が出たあとのタイミングで、友だちが体験版を遊んでいたところを、僕も面白そうだなって感じでやらせてもらって。そこが初東方ですね。
hellnian:
自分はちょうど、東方萃夢想が出たときでしたね。自分はもともと別のジャンルで活動していて、そこで知り合った東方でサークル活動されてる方に2004年の冬コミにお誘いいただいて。
そのとき、ZUNさんがスペースに挨拶に来られたんですよ。ZUNさんが当時、ちゃんとサークル一人ひとりに挨拶しているとかまったく知らなかったんですよ! あとで「あの人が東方の原作者だよ」って説明されて、すげー人だなと。 そこから、サークル主に東方やろうぜって誘われたのがきっかけで。その冬コミ直後の年明けから1月・2月・3月と、人とも会わずにどっぷり延々やり続けて……触ったのは紅魔郷からでしたね。
マグロナ:
余はちょっと面倒臭い話になるんですけどいいですか?
その当時、東方に触れる前から、かなりアーケードでシューティングをやっていたんですよ。怒首領蜂大往生【※】とか。
【※】怒首領蜂大往生:ケイブが開発した、2002年稼働開始のアーケードシューティング。いわゆる“弾幕系シューティング”の金字塔とも言えるタイトルで、画面を埋め尽くす大量の弾や、弾幕STGでは異色とも言える高速弾が特徴。当時としても非常に高い難易度を誇り、一人プレイ+ノーコンティニューでクリアすることで突入する高難易度の“2周目”、その最後に現れる裏ボス“緋蜂”は、稼働開始から数ヶ月の間誰にも倒せなかったという、現在でもSTG史上に残る高難度ボスの一つ。
マグロナ:
その頃、シューター界隈で「同人で東方とかいうシューティングが、幅を利かせているらしい」みたいな話題があがって(笑) どうせキャラゲーでしょ〜? とか上から目線で思っていたんですけど、周りの友達が一人ハマり、二人ハマり、ついにはゲーセンの端っこにパソコン持ってきて妖々夢をやらせるやつが現れて。そんなだから、余も最初は「どんなもんか見てやろうか」ぐらいのテンションだったのに、触れてみたら「この作者わかってる!」みたいな気持ちで手のひらを返しちゃって。やっぱりオタクなので、キャラクターの関係性とか、同人が盛んだっていうことでガンガンハマり始めて、気づいたらどっぷりみたいな(笑)
――シューティングゲームを遊ぶ人たちのコミュニティ、いわゆるシューター界隈から東方に入った人は当時多かったみたいですね。
マグロナ:
その頃、アーケードではシューターが減り始めていた時なんですね。でも、シューターたちは弾幕が美しい=キャラクター性がある、この弾幕といえばこのボス! みたいなことを、みんなが愛していて。 東方には、そういうシューティングゲームの美しさがシステムや作品性に完全に取り込まれていたから、これはすごい!となったんですよね。
――みんな沼に落ちていくっていう。妖々夢に触れて、その美しさでハマったというのはよく聞きますね。
マグロナ:
シューターって設定厨が多いんですよ。「なんでその兵器がこのような弾幕で撃たれるのか」みたいな設定話があると、もう大喜びしちゃうんですよね〜。
東方って、キャラの性格や出自とかを弾幕っていう表現にしてるじゃないですか! そりゃあシューター大好きですよねっていう。
「慧音の後ろについていくと、自分が幻想郷に行った気分になれた」
――皆さんありがとうございます。次は、上白沢慧音というキャラクターに出会ったのはいつかというのをお聞きしたくて。好きになった理由って、覚えていたりしますか?
D.watt:
(慧音を好きになった大きな)理由って、なかったんですよ。
萃夢想のジャケットに萃香が写っているじゃないですか。シルエットで角が生えているのを見た誰かが「これ慧音じゃない?」っていう話を当時していて。今思うと慧音なわけないんですけど(笑)
D.watt:
たまたま僕はそれを聞いて、何故か印象的で覚えていて。その後、永夜抄をプレイして、三面でファーストコンタクトして。なんの理由もない出会いなんですけど、僕が最初に名前を覚えてたキャラが上白沢慧音だったので、思い入れがあったんです。
――理由はないけど、なんだか記憶に残っているキャラクターだったんですね。
D.watt:
その直後くらいでイオシスでも東方やってみようという話になって。ぼくは2曲か3曲作ったと思うんですけど、全部永夜抄からチョイスしたと思います。イオシスの一作目ですね。
なんか、顔が好きとか、そういうことじゃなくて、一番最初に名前を覚えたのが慧音ってだけなんですけど。でも、東方アレンジの二作目作った時も、一作目慧音やったし、またやるか、っていう感じで慧音の絵描き歌をやったりして。そうやっていくうちに縁が深まった感じがありました。
――しばらくイオシスのアルバムには、ひとつは慧音のアレンジ曲があるって状態が続いていましたね。
D.watt:
そうですね。結構、知る人ぞ知る感じで、D.wattのプレインエイジアのアレンジが必ず入っているっていう豆知識みたいな感じになってましたね。
――創作する中で慧音の捉え方が変わっていったみたいなことって、ありました?
D.watt:
めっちゃありました。イオシスでよくやる電波ソングって、物語というか、“曲のためのキャラクター性“を作ったりすることがあって。そのために、こいつはどういうキャラクターなんだろうっていうのをどんどん考え始めるんですよ。一年中東方アレンジを作って、そうすると一年三百六十五日慧音のこと考えているわけじゃないですか。
一同:
(笑)
D.watt:
名前だけ覚えている雰囲気のキャラクターだったのが、慧音の後ろについていくと自分が幻想郷に行ったみたいな感じになってきて。そのタイミングで、推しキャラ筆頭みたいになっていました。
――東方について考えるときに、慧音を入り口にして考えることが多くなっていったと……。
「永夜抄EXTRAに出てきた、あのふたりは濃ゆいぞ」
――マグロナさんの場合はいかがでしょうか。上白沢慧音さんに出会ったときと、好きになった理由についてお話しいただきたいです。
マグロナ:
余が慧音に最初に出会ったのも、永夜抄が出たときで。初プレイの時は慧音の印象が薄くて、印象に残ったのはみすちー(ミスティア・ローレライ)だったんですね。でも、そのあとEXTRAでまた慧音が出てきて「おぉ!?」ってなって。
当時、かなり百合厨だったので、同人作品を漁ったんです。そしたらかなり「永夜抄EXTRAに出てきた、あのふたりは濃ゆいぞ」みたいなことが分かって。原作だと、慧音のほうが妹紅に対して熱量があるみたいな雰囲気じゃないですか。そういうの大好きなんですよ(笑) そこから、ガンハマりをしてしまった感じですね。
永夜抄やったときにパンチが効いてると思ったのが、ゆかりん(紫)と霊夢が組んでいるっていうところと、妹紅と慧音がEXTRAで濃ゆい感じっていうのがあって。その印象は後々の創作にも引っ張られていますね。
――永夜抄はキャラクターの関係性を意識したゲームシステムですよね。当時、追いかけていた二次創作って覚えていますか?
マグロナ:
作品よりもむしろ、掲示板のちょっとした創作みたいなので悶えていたことが多かったですね。スレッド内の数行のやりとりだけで狂わせる職人がいたじゃないですか。そういうのに一番影響されたかもしれないですね。
――そこで見たやりとりを自分でイラストにしてみたり?
マグロナ:
いやー、当時はただただ悶えてましたね。プレイヤーとしてがんばって攻略する側の時期が結構長くて、絵とか描いてなかったんですよね。萃夢想のあとにようやく、東方を題材に絵を描くかって思い始めました。
――いやーいいですね、こういう話が聞きたかったです。こういうの、なかなかみんな、話す機会がないような気がしています。
「当時あまり語られてなかった幻想郷の姿、急に人間味のある世界観を一番最初に見せてくれた」
――hellnianさんの、慧音さんが好きになった理由はなんですか?
hellnian:
僕は、 特に事前情報とか何も知らずに、ZUNさんのゲーム内にあるおまけテキストも一切見ないで、通しでゲームやってたんです。それでクリアしたあとにテキストを開いて、慧音の設定を見て、あぁ〜〜となったんですよね。
慧音は、珍しいんですよ! 紅魔郷、妖々夢、永夜抄と順番通りにやったんですけど、急に一番まともなやつ出てきたんですよ。露骨に人間サイドの話が出てきたのが、慧音が初めてなんです。生真面目なやつなんですよ。頭が硬い。こんな“イジれる“対象ないですよって。完全に、こんなの、悪いことするしかないじゃん! っていう(笑)
――確かに、東方は色々な意味でぶっとんでいるキャラクターが多い中、慧音の「人間を守っている」というのは、東方において特殊な設定のキャラクターと言えますね。プレイヤー側、人間としての視点は魔理沙が担っていたりしますが「社会性」を持っているキャラクターって当時あまりいなかったんですね。
hellnian:
ある種、道徳や倫理観が通用する初めてのキャラクターだと思ったんですよ。さらに言うと、当時それまであんまり語られてなかった幻想郷の姿を一番最初に見せてくれたのが、慧音だったんですよね。急に人間味のある世界観を見せてくれた。僕はそこで拗らせてしまった(笑)
でも、生真面目なキャラクターなのに、真逆の方向性の同人作品探しちゃうのはよくないと思いました(笑)
マグロナ:
同人作品ってIFが見たくて作るから、そういうのってありますよ!
本日はこれまで。次回は、三人が「上白沢慧音」について思っていることについてお聞きします。朱衣子さんのイラストもお楽しみに。
「慧音の後ろについていくと、自分が幻想郷に行った気分になれた」今こそ、東方のキャラについて熱く語りたい! 東方キャラクター座談会:上白沢慧音について① おわり