東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

     東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

詳しく読む
ニュース
2021/03/19

【静岡例大祭開催記念・再掲載】例大祭じゃなくても一度は訪れたい! 宿泊で行くと丁度いい、静岡の「東方の名所」観光案内

観光系ライター、えむてー氏による「泊まってゆっくりと観光したい、少し遠目の東方スポットを紹介」の紹介

昨年の開催中止を経て、来る2021年3月21日(日)に「第十八回博麗神社例大祭」が一年越しでツインメッセ静岡にて開催されます!

思い返せば、「博麗神社例大祭」が、東京都以外の場所で開かれるのは初めてのこと。そんな静岡での例大祭開催を記念して、昨年掲載した「静岡の『東方の名所』観光案内」記事を、改めて再掲載いたします。

前回に引き続き、えむてーさん(@FairymaidA)に、静岡の東方関連スポットをご紹介いただきました!今回は「泊まってゆっくりと観光したい、会場から少し遠目の東方スポットを紹介」に関しての紹介になっています。

※記事の内容は昨年2020年度に取材、まとめられた内容です。2021年時点と情報が異なっている場所も御座います。あらかじめご了承下さい。

 

泊まってゆっくりと観光したい少し遠目の東方スポットを紹介

 こんにちは。観光ライターで聖地巡礼マニアのえむてーと申します。

 前回の記事では、静岡例大祭会場がある静岡市から、比較的近く日帰りもしやすい東方スポットをご紹介いたしました。そして今回の記事では日帰りするにはちょっと厳しい、泊まってゆっくりと観光したい少し遠目の東方スポットを紹介いたします。

 静岡例大祭遠征で静岡に2泊以上しようと考えている方、是非とも旅の参考にしてみてくださいね。

 

無間の鐘伝説が残る「粟ヶ岳」

 まず1箇所目に紹介したいのは「粟ヶ岳」。静岡県西部の島田市と掛川市の境に位置する標高532メートルの山です。写真では山の斜面に「茶」の文字がありますが、これはこの周辺がお茶を宣伝するために昭和時代からその形に植林されているためのもの。実際、この山の麓周辺には茶畑が広がっており、「掛川の深蒸し茶」といえば、お茶が有名な静岡県内でも有名だったりします。

 この山は、公共交通機関ですとJR掛川駅からバスで40分ほど、しかもそのバスも約2時間に1本と、交通の便があまり良くない場所に位置しています。しかもバスでたどり着いたとしても、バス停から山頂まで歩いて1時間ほどかかります(一応車さえあれば楽に山頂まで行くことは可能)。静岡例大祭のついでに日帰りで行くには、体力的にも時間的にも厳しめです。

 バスの本数や山頂までの時間、静岡例大祭会場までの距離等を考えると少し苦しいかもしれませんが、それだけの時間や体力を使っても、この山は東方ファンに訪れてほしい場所の一つ。なぜかと言えば、この山はダブルスポイラーと深い関わりがあるからです。ではまず、この粟ヶ岳に伝わる昔話をご紹介いたしましょう。

 

 昔々、粟ヶ岳(無間山)の山頂には観音寺というお寺がありました。そのお寺にはとても立派な鐘があり、とても良い音を響かせると評判でした。その鐘の音は広く評判になり、いつしか「あの鐘をつくと願いが叶い大金持ちになれるが、死後に地獄に落ちる」という噂が広まっていきます。噂を聞きつけた欲深い人々はその鐘をつこうと山を訪れましたが、多くの人々が山から落ちて死んでいきました。そんな人々の欲深さを嘆いた観音寺の住職は、鐘を山頂の井戸に投げ込んで沈めてしまいました。めでたしめでたし。

……と、これが粟ヶ岳に伝わる「無間の鐘」の伝承です。「ダブルスポイラー ~ 東方文花帖」には「無間の鐘~ Infinite Nightmare」という曲が使われていますが、その曲名はこの粟ヶ岳の伝説から取ったと言われています。現在その観音寺は廃寺となっていますが、その伝承の井戸は山頂の阿波々神社境内の隅に「無間の井戸」として今も存在しています。粟ヶ岳に登ったら、ここでダブルスポイラーの原曲を聞くのもオススメです。

 

 車があれば山頂まで一気に登れますが、歩いて登るまでの道中にもいろいろな見所があります。山頂には阿波々神社の他に、売店や駐車場がありますし、神社周辺には、かつて鐘をついた人間の魂がここから地獄に落ちたと伝わる「地獄穴」という穴、古代の祭祀場とも言われる巨石群「磐座」等が静かで神聖な雰囲気を漂わせています。

 そして、個人的に一番の見所なのが、山頂から少し下った場所のお堂。これは明治時代に、廃仏毀釈により廃寺になった観音寺のお堂だと言われています。今にも倒壊しそうなほどにボロボロで独特の雰囲気があり、廃墟を見るのが好きな人にもオススメなスポットです。

 ところで、この粟ヶ岳の無間の鐘伝説、これは静岡県の遠州地方に伝わる「遠州七不思議」の1つに数えられている伝承でもあります。そしてこの遠州七不思議ですが、その中には東方Projectに関係があるものがまだあります。例えば「東方三月精」の「石の京丸牡丹」というエピソードでは「京丸牡丹」という昔話が出てきましたが、これは静岡県浜松市天竜区の京丸集落に残っている伝説です。

 

 他にも遠州七不思議にはユニークなものが数多くあります。住職が代替わりする度に新しい石を生むという奇岩「子生まれ石」(静岡県牧之原市)、斬り殺された妊婦の霊が石に憑依して、夜ごと泣くという大石「夜泣き石」(静岡県掛川市。上の写真の石)など、遠州七不思議の地の中には、有名な観光地になっているところも少なくありません。粟ヶ岳だけでなく、1泊2泊して遠州七不思議ゆかりの地を巡ってみるのも面白いかも?

アクセス情報

 ・粟ヶ岳

 ・静岡県掛川市東山

 ・JR掛川駅から掛川バス「東山線」に乗車、終点「東山」バス停下車。バス停から山頂まで徒歩1時間ほど

 

金太郎が生まれた「金時公園」

 次に紹介したいのは「金時公園」。その名の通り、坂田金時が生まれた場所に作られた公園で、静岡県と神奈川県のほぼ県境に位置しています。静岡駅からは、東海道線と御殿場線を乗り継いで片道2時間ほど。しかも御殿場線の本数が少ないため、もっと時間がかかる場合もあり、駅からも歩いて片道30分。静岡例大祭会場周辺から日帰りは、やや厳しいかもしれない場所です。

 

 坂田金時は童話「金太郎」の主人公のモデルとなった人物で、源頼光に力を認められて配下となり、共に大江山の酒呑童子を討伐した伝承でも知られている武将。近くには足柄山もあり、ちょうど北側の麓に位置していますが、この足柄山は、マサカリを担いだ金太郎の歌でもおなじみの場所であります。

 この公園には、金太郎にちなんだ様々な史跡が残っています。坂田金時の生家跡には、金時神社が建てられて、坂田金時が祀られている他、金太郎が幼少期に登って遊んでいたという杉、金太郎の産湯として使ったという小さな滝などがあり、公園中央には金太郎のシンボルの巨大なマサカリ。このマサカリなんかは、超巨大でインスタ映えしそうな迫力があります。

 ここと東方が何の関係があるかといいますと、「坂田ネムノ」と関わりがある場所です。坂田ネムノの元ネタは、坂田金時の母親が元ネタだと言われており、主に名字が共通している点、坂田金時は山姥から生まれたという伝承がある点、また東方天空璋でネムノに「まるで伝説の金時のような人間じゃな」という台詞がある点などからそう推察されています。

 他にも坂田金時は、大江山の酒天童子討伐に主君の源頼光らと参加したということで、酒呑童子が元ネタになっている、伊吹萃香などの鬼ともちょっと繋がりがある場所でもあります。また、東方以外でも坂田金時、金太郎をモチーフとしたキャラは他のアニメ・漫画・ゲームにも数多くいるので、そうしたキャラの聖地巡礼もついでにできるというのも、この場所のメリットです。

 

 また、金太郎伝承はこの金時公園から足柄山を越えた神奈川県側にも。神奈川県南足柄市の地蔵堂地区には金太郎の生家跡などがあり、伊豆箱根鉄道の大雄山駅前にも写真のような金太郎像があります。こちらは金時公園から片道1時間半~2時間くらいなので、1泊2泊するつもりで時間に余裕があれば、ついでにそちらも行ってみるのもオススメです。

アクセス情報

 ・金時公園

 ・静岡県駿東郡小山町中島

 ・JR駿河小山駅から徒歩25分

 

妹紅も登った「富士山」

 最後に紹介させて頂きたいのは、静岡県で最も東方に関係する場所「富士山」。なお、富士山が山梨県のものだという意見は、とりあえず置いておくことにします。

 日本人であれば誰もが知る日本一高い山、富士山。2013年に世界文化遺産に指定され、近年では「ヤマノススメ」や「ゆるキャン△」等の作品でも、富士山が登場していることで、漫画・アニメ好きからも注目を集めている山でもあったりします。ちなみに、2006年に頒布された「卯酉東海道」のブックレットの中で、富士山が世界遺産に登録されていることが書かれていたため、一部界隈では予言だと騒がれていたことも。

 富士山に関係する東方キャラの中で最も関係が深いのは、やはり藤原妹紅でしょう。まずスペルカードの『蓬莱「凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-」』は当然「富士山」ですし、テーマ曲の「月まで届け、不死の煙」は、童話「かぐや姫」の最後で、帝が不老不死の薬を日本で一番高い富士山で焼いて、その煙を月まで届けようとしたことが元ネタです。また、小説版の「東方儚月抄」では、妹紅が富士山で帝の使者から蓬莱の薬を奪って飲んだことが書かれています。

 他にも、前編でもお話したように、富士市のかぐや姫伝説では、かぐや姫は富士山に帰っていくため、蓬莱山輝夜とも関係があり、「蓬莱山」は富士山を指すこともある言葉です。他にも細かい所ですと、洩矢諏訪子のスペルカード『土着神「宝永四年の赤蛙」』は、宝永四年に富士山が噴火したことが元ネタとも言われています。

 また、幻想郷の設定として「妖怪の山は神話の時代の八ヶ岳」というものがあります。かつて八ヶ岳は、富士山よりも高かったのですが、そのことに怒った富士山の神・木花咲耶姫により、八ヶ岳は砕かれて現在の高さになりました。その当時の八ヶ岳が幻想入りしたのが妖怪の山……というわけです。富士山は、キャラだけでなく、幻想郷の世界観設定にも関わってくる、重要なスポットということになります。

 しかし、いくら東方に関係があっても、流石に静岡例大祭のついでに富士山に登る時間や体力は……という方がほとんどでしょう。

 そんな皆さんにおすすめなのが、静岡県富士宮市にある「富士山世界遺産センター」(JR富士宮駅から徒歩10分)です。

 

 

 こちらは、主に富士山の歴史や文化・山岳信仰など、富士山に関わる様々な事柄を展示で学ぶことができる博物館ですが、館内の構造に大きな特徴があります。内部はスロープで螺旋状に登っていく構造になっているのですが、登っている際に、周囲のスクリーンには富士山の登山風景が流れており、手軽な富士登山体験をすることができるのです。また近くには静岡のB級グルメの王様、富士宮やきそばが楽しめる「お宮横丁」や「富士山本宮浅間大社」もあり、そちらも回れば観光として楽しめることでしょう。

 登るとすれば、とてもイベントついでにちょっと、というわけにもいかず、入念な準備は必要な富士山ですが、遠くから綺麗に「見る」「撮る」のは、静岡県内なら簡単です。ぶっちゃけ、静岡県の東部地方なら、だいたいどこでも綺麗に見えます。電車の車窓から富士山がきれいに見えたら途中下車して、少し駅周辺をぶらぶらするだけで十分。東部地方を走るローカル線の岳南鉄道は「すべての駅から富士山が見える」ことを売りにしているほどです。

 

 「その中でも特に富士山を静岡県内で綺麗に撮影するなら?」という人に、いくつかオススメをしておきましょう。静岡例大祭会場に比較的近い場所であれば「薩埵峠」(静岡市清水区)。この写真のように、東海道線・国道1号線・東名高速道路が交差するように走り、その先には駿河湾が青々と広がり、さらに富士山まで見えて絶景スポットとして有名な場所です。


 また、富士山と一緒に世界遺産登録された「三保の松原」(静岡市清水区)も、比較的会場に近く、きれいな富士山を見る事ができます。白い砂浜・緑の松林・青い海・富士山……。天気にも左右されますが、浮世絵のような景色を一望できることでしょう。

 少し静岡例大祭会場から離れても良いなら、田貫湖(富士宮市)辺りもオススメできます。ダイヤモンド富士が撮影できる場所として知られていますが、富士山に近いこともあって、日中でも非常にきれいな写真が撮れる場所です。

 富士山は、東方に深く関係がある場所ですが、それを抜きにしても日本人であれば一度は登ってみたい山。静岡例大祭のついで、というわけにはいかないかもしれませんが、生涯に一度は、富士登山にチャレンジしてみましょう!

 

 東方聖地以外も魅力たっぷりの静岡に行こう!

 この度は、静岡例大祭会場から近い場所をご紹介した「前編」、少し遠い場所をご紹介した今回の「後編」と、記事を2本に分けて、静岡県内の東方スポットをご紹介させて頂きました。少しでも多くの方が、聖地巡礼や静岡に興味を持ち、静岡例大祭ついでの観光で訪れて、楽しんでいただければ嬉しいです。

 しかし、今回紹介させて頂いた以外にも、東方関連スポットはまだまだありますし、静岡県の魅力はそれだけではありません。

 静岡県は「静岡おでん」「富士宮やきそば」などの豊富なB級グルメ、駿河湾や遠州灘で取れた海産物も一級品。最近有名になったハンバーグチェーン店「炭焼きレストランさわやか」もあります。食べ物の他にも「久能山東照宮」などの有名観光地があったり、沼津の方はラブライブの聖地として賑わっていたりもします。

 静岡例大祭のためだけに来るのがもったいない程、魅力たっぷりなのが、静岡。是非とも静岡例大祭を機会に、静岡の真の魅力を味わい、その後も何度でも静岡にいらしてください!

 

 

おすすめ記事