Jユーロスタイル東方ユーロビート爆誕！！

　今回レビューさせていただくのは、A-Oneさんのコンピレーションアルバム『TOHO EUROBEAT VOL.4』です。

　東方ユーロビートアレンジの普及に一役担った『TOHO EUROBEATシリーズ』。その第四弾である本作では、王道のユーロアレンジに加えて、西洋のユーロビートに日本の音楽スタイルを取り入れた所謂『Jユーロ』のアレンジも数多く収録されています。

　多数のアーティストが参戦している本作品では、一曲一曲が雰囲気も世界観もまったく異なる曲に仕上がっています。アレンジャーとボーカルの組み合わせによって大きく変化する『TOHO EUROBEAT』の魅力をいくつかの曲に絞って、ご紹介します！

 

東方×ユーロビート×Jポップのひとつの完成形

Tr.1「ゼンマイ恋時計（T.E.B. summer mix)」
原曲：遠野幻想物語／ティアオイエツォン（withered leaf）
編曲：はにーぽけっと
ミックス：DJ Command（Eurobeat Union）
ボーカル：あき（はにーぽけっと）

　はにーぽけっとさんのポップロックアレンジ『ゼンマイ恋時計』をユーロビートにリミックスした本作品は、まさしく東方×ユーロビート×Jポップの一つの完成形とも言えます……！！

　DJ Commandさんのマシンガンのようなメロディと、ボーカルあきさんの美しい歌声の異色のコンビネーションに度肝を抜かれる事間違いなしです。

　イントロは幻想的なキーボードの音.とドラムのビートでスタート！まるで心音が加速していくかのような、疾走感を感じます！　そして、ハイスピードなメロディが一瞬静まり、ボーカルあきさんの清んだ美しい歌声が現れます。

『眠れない夜に思い出す君の香り　深く優しくココロを浚さらうわ』

　舞い降りてきた歌姫こそが主役なのだ！と言わんばかりに、激しい曲調から一変。ボーカルの歌声を際立たせる、落ち着いた曲調に変化します。しかし、それも束の間、Bメロからボーカルの歌声とともに再び音が加速します。声と音、ふたつの感情が最高の昂りを見せ、再び激しいビートを刻むサビへと突入！

　このアレンジャーとボーカルが作り出す音の緩急に、聴く者は心を鷲掴みにされてしまうのです！

　一発目から『TOHO EUROBEAT』の世界観に惹きこむ絶大な魅力は、まさに、最強のトップバッターと言えるでしょう……！！

 

人の心を昂らせるのはメロディだけにあらず

Tr.2「DREAMIN’ GIRL」
原曲： 無何有の郷　～ Deep Mountain／クリスタライズシルバー
編曲：ELEMENTAS
歌詞：Yassie
ボーカル：ランコ（豚乙女）

　豚乙女さんのランコさんがボーカルとして参戦した、この一曲。ランコさんのパワフルな歌声と、シンセサイザーが奏でるアゲアゲな音の絶妙なコラボレーションが、聴くものの気分を軽やかにします。

　さらに、注目して欲しいのが、作詞担当のYassieさんによる「豚乙女愛」がつまったユニークな歌詞です。

『Boot up!　音　目一杯アゲてくんだ　何も恐れずに　サァ行こう!』

　ここの「Boot up!　音　目一杯』というフレーズ。なんと歌の中では完全に「豚乙女いっぱい」と聴こえるようになっているんです！　この不意打ちの一言には、思わずクスッと笑ってしまいますね。『豚乙女いっぱいアゲてくんだ！』のフレーズの後に来るサビでは、もうテンションMAXに！！

　キャラクターの名前だったり、イベントの名前だったり、A-Oneさんのアレンジには、あえてそう聴こえるように狙って作られた歌詞の曲がいくつも存在します。ライブのコール＆レスポンスでその名前を叫ぶのは本当に最高！！　その一瞬の遊び心に、思わず笑顔になること間違いなし。

　人の心を昂らせるのはメロディだけにあらず。想いが込められた歌詞にも力は宿り、その歌詞の中に『遊び心』も加わることで、曲が放つエネルギーは何倍にも膨れ上がるのです。

『DREAMIN’ GIRL』は、それを体現した至高の東方ユーロビートなのです……！！

 

ユーロビートの魅せる多様性

Tr.3「BREAK INTO THE DARK」
原曲： 少女幻葬　～ Necro-Fantasy／ネクロファンタジア
編曲：Sugano(Sugano Music)
歌詞：黒岩サトシ（君色美術館）
ボーカル：あにろく！
ギター：魔王デビル

　紫と藍の熱いライブが始まるぞ！！！！！

　バチバチロックな東方アレンジがお好き？　でしたらこの曲がブッ刺さることでしょう。ギターロックと完璧に融合したユーロビートのメロディと、闘志が湧き上がるような歌詞の組み合わせに鳥肌が立つこと間違いなしです。

『Break into the dark！終わりの見えない　暗闇を切り裂いてみせる！』

　重なり合うふたりのボーカルの力強い歌声。そして歌声とともに流れ込んでくる熱い歌詞に、心が燃える。まるで、紫と藍に鼓舞されているような感覚に浸れる名曲です。

Tr.6「ANYTHING FOR YOU」
原曲：妖々夢～ Snow or Cherry Petal／さくらさくら～ Japanize Dream…
編曲：samfree
ボーカル：(V)・∀・(V)（かにぱん）

『ルカルカ★ナイトフィーバー』など、数多の殿堂入りボカロ曲を生み出したsamfreeさんと、歌ってみた、ネット声優、作詞作曲とさまざまなジャンルで高い評価を受けている歌い手系動画投稿者(V)・∀・(V)さん。ニコニコ動画古参兵の人であれば、このふたりの組み合わせに思わず歓喜する人もいるのではないでしょうか。

　最強コンビが送るジャパニーズ『K A W A I I 』東方ユーロビート！！！

　これぞ、ダンスミュージックの王道！と言えるような、自然に体が動いてしまうハッピーな曲調と(V)・∀・(V)さんの可愛いボイスから発せられる流暢な英語が最高に心地良いです!!　

 

感情が溢れるかのような音

Tr.7「FINAL BREATH」
原曲：幽雅に咲かせ、墨染の桜　～ Border of Life／ボーダーオブライフ
編曲作詞&ボーカル：Odyssey Eurobeat

　最後にご紹介するアレンジは国境を超えた泣ける東方ユーロビートです。

『幽雅に咲かせ墨染の桜～ Border of Life』のアレンジであるこの曲は、アメリカ在住の『Odyssey Eurobeat』というアーティストがアレンジした一曲です。歌詞もガッツリ英語の歌詞ですが、ユーロビートでありながら、その雰囲気はまさに悲恋の曲。西洋の言葉で『西行寺幽々子』というキャラクターへの愛を体現した東方ユーロビートなのです。

　イントロは悲しげなピアノソロから始まります。明るい印象が強いユーロビートですが、この曲は、切なく哀愁漂う曲調になっているのが特徴的です。ボーカルOdysseyさんの歌い方も、低いトーンで悲しげな雰囲気を纏っています。しかし、サビに入る瞬間、声色もメロディもまるで感情が溢れるかのような音へと変貌するのです。

『If I told you I loved you, would you still have survived?』

　嘆き悲しむような歌声で発せられる、このサビのフレーズ。

「もし私が愛してると伝えたら、あなたは死なずにすんだのだろうか？」という意味になります。

　そう、この曲は、死んでしまった幽々子のことを憂いた曲なのです。幽々子の死を憂いているのは一体誰なのか。八雲紫？　それとも幽々子に思いを寄せた誰か？

　幽々子が命を絶ったその瞬間、そこには悲恋の物語もあったのかもしれない、という想像を掻き立てられます。西行寺幽々子というひとりの人物のバックボーンを踏まえて聴くことにより、この曲と東方の世界観に深く惹きこまれてしまうでしょう。

　この曲を構成するメロディ、歌声、歌詞そのすべてにキャラクターへの多大なリスペクトを感じました。言語を超えた感動がそこにあるのです。

　幽々子が好き！　原曲の「幽雅に咲かせ、墨染の桜　～ Border of Life」が好き！と言う方にぜひ聴いてもらいたい一曲。

　この曲を聴きながら、一度『西行寺幽々子』という人物の物語を想像してみませんか？

Till the day we’re united, I draw my final breath!

いつか結ばれる日を願って、私は最後の息をする

　無限の可能性を秘めた東方アレンジ、いかがだったでしょうか！

「TOHO EUROBEATはイイぞ……！！」と、どうしても言いたくて今回レビューさせていただきました。『ユーロビート』というひとつの音楽ジャンルだけでも、こんなにもたくさんの東方の世界に出会えるなんて！　作り手の解釈しだいで、青にも赤にも見える東方アレンジは、やはり無限の可能性を秘めているのでは！？

　ワクワクが止まらない！

　これだから東方クラスタはやめられない……！！

　本作品は10年前に頒布されていますが、サブスクで全曲視聴可能となっております。サブスクでも東方アレンジが聴けるなんて良い時代になりましたね。その他の旧譜も視聴可能ですので、ぜひそちらも聴いてみてください。

　さまざまなアーティストが集い、それぞれの世界観で『東方Project』を表現した『TOHO EUROBEAT』シリーズ。ぜひ、一度ご賞味あれ！

作品情報

『TOHO EUROBEAT VOL.4 PERFECT CHERRY BLOSSOM』

YouTube Music：
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A-One

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