誰かの「他愛もない日々」は二人の「掛け替えのない日々」。 『東方オトハナビ』全曲レビュー!! Disc3-03『ふたり月夜のパラレルワールド／TUMENECO』

音楽評

2021/09/17

　8月14日にリリースされた、東方アレンジ“お祭り“コンピレーションアルバム『東方オトハナビ』。

　同人イベントが思うように開けなくなってしまった今、「こんなときだからこそ、俺たちの東方愛を盛り上げたい！」という、COOL&CREATEのビートまりおさんの呼びかけによって始まった「東方アレンジ活性化大作戦」。『東方オトハナビ』は、Disc4枚、合計40曲、総勢38もの東方音楽サークルが集まった、まさにお祭りといえるコンピレーションアルバムになりました。

　参加した面々の中には、なんと「上海アリス幻樂団」のZUNさんも。この『東方オトハナビ』のために1曲書き下ろしています。

　そんな『東方オトハナビ』をさらに盛り上げたい！
　ということで、東方我楽多叢誌では（Bonus Trackの『マツヨイナイトバグ』『幻想に咲いた花』を除いた）全38曲を、1曲ずつレビュー！　日曜日・祝日を除く毎日、1曲1記事のペースで更新いたします。

　本日のレビューは『ふたり月夜のパラレルワールド／TUMENECO』。ライターは、ベルクートさんです。

ああ、この曲は秘封俱楽部だ。私はいま、秘封倶楽部を聴いているんだ！ライター：ベルクート

Disc3-03　ふたり月夜のパラレルワールド／TUMENECO

――さあさあ、お立合い！今宵このメロディーにて、宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの他愛も無い活動シーンが開幕いたします。そこのアナタも、なんでもない、されどかけがえのない二人の旅路を見届けていってください。

　数々の秘封ヴォーカルアレンジを手掛けてきたTUMENECOがオトハナビにも参戦いたしました！　秘封好きでアレンジも聴く方ならご存じでしょう？

　今回のTUMENECOも、題材は秘封倶楽部。『他愛も無い二人の博物誌』のアレンジです。

　曲調は原曲の雰囲気を踏襲し、明るくポップに仕上がっています。「これから出会う不思議が待ちきれない！」そんな二人の心情を表すかのようにアップテンポなメロディー。聴いているこちらまでどこかに繰り出したくなっちゃいますね。

『気分次第』『思考回路くすぐる』――旅前のワクワクが抑えきれない跳ねるようなＡメロ

『蒼に飲み込まれていく』――夜が降りていき、“秘封倶楽部”始動前の静けさを湛えたＢメロ

『今夜も踊りましょう』『目が覚めるまでのあいだ』――夢の世界で好奇心が爆発するサビ

　曲パートごとに旅のシーンが決まっているので、二人の活動の情景が容易に想像できます。それはまるで起承転結をもったストーリーのようで……二人の他愛も無い博物誌冒険譚を、切り取って歌にしたかのような情景描写力です。解放感のあるサビとyukina氏の優しく切なげな歌声が、どことなく儚げな印象を抱かせます。

ポツリポツリ　雨のように降るのは

待ちきれない星たち　音を止めないで

　二番のサビのフレーズ、こんなにも美しい「流れ星」の表現があるでしょうか。さらに続く『音を止めないで』でやられてしまいました。

　「この博物誌を歌った物語を止めないで？」
　「ゆらぎの先の世界の弾幕ごっこの音を止めないで？」
　それとも、東方オトハナビが花開く音を止めないで？　様々な想像を掻き立てられます。

　「この特別な時間が終わってほしくない」そんな二人の感情が伝わってくるようです。

　「ああ、この曲は秘封俱楽部だ」繰り返し聴いているうちに、そんなシンプルな感情があふれ出てきました。そう、私はいま、秘封倶楽部を聴いているんだ！