東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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『東方オトハナビ』全曲レビュー!! Disc1-01『日々是紅日 ~ Folksy Touhou days./上海アリス幻樂団』

『東方オトハナビ』全曲レビュー 「日々是紅日 ~ Folksy Touhou days./上海アリス幻樂団」

 8月14日にリリースされた、東方アレンジ“お祭り“コンピレーションアルバム東方オトハナビ

 同人イベントが思うように開けなくなってしまった今、「こんなときだからこそ、俺たちの東方愛を盛り上げたい!」という、COOL&CREATEのビートまりおさんの呼びかけによって始まった「東方アレンジ活性化大作戦」。『東方オトハナビ』は、Disc4枚、合計40曲、総勢38もの東方音楽サークルが集まった、まさにお祭りといえるコンピレーションアルバムになりました。

 参加した面々の中には、なんと「上海アリス幻樂団」のZUNさんも。この『東方オトハナビ』のために1曲書き下ろしています。

 そんな『東方オトハナビ』をさらに盛り上げたい!
 ということで、東方我楽多叢誌では(Bonus Trackの『マツヨイナイトバグ』『幻想に咲いた花』を除いた)全38曲を、1曲ずつレビュー! 日曜日・祝日を除く毎日、1曲1記事のペースで更新いたします。

 本日のレビューは「日々是紅日 ~ Folksy Touhou days./上海アリス幻樂団」。ライターは、凋叶棕RDさんです。

 

「Touhouは彼女とともにある」 ライター:RD

Disc1-01 日々是紅日 ~ Folksy Touhou days./上海アリス幻樂団

 

 私は今、この曲を聴き始めたばかりです。

 

 ほどなく、B♭ E♭ F A♭の四音を基調とするフレーズに出会います。

 私はそこに、ある種の”懐かしさ”を感じたように思います。

 

 このフレーズを聞いて、ああ、Folksyとはつまるところ”いつもの”ということなのだろうか、と思い始めます。

 どこか軽快で暢気なトーンとフレーズは、私をどこか愉快な気分にさせつつも、どこか安心させもします。

 

 そうして馴染み深さとともにじわり先の展開への期待が膨らむところ、それは唐突な展開として叩きつけられます。

 

 さあ、00:52の一和音目です。

 

 その刻みからまさか、とある種の予感が生じますが、それは早とちりにすぎないのかもしれない、と思い直します。

 

 けれど二和音目、三和音目と聞くに従い、その予感は一層強さを増していくようです。これはもしや……と。

 

 四和音目でもまだ、それを信じきるには何かが足りない……なぜならこの展開は音楽的にはそれほど耳慣れないものではないからです。

 

 しかし、五和音目を経て、六和音目、そして、七和音目に至る進行は、極めて確定的です。

 

 間違いない、この進行の曲は……そんな思いが脳裏を駆け巡ります。

 

 そう思ったところに、01:19から流れる、耳に覚えのある「かのメロディ」です。

 

 もう、私には何も言うことはできません。

 

 そこには「かのメロディ」が象徴するものが存在するばかり、その存在を幻視するばかりです。

 

 ここまで聞いて、このすべてがそうでないとなれば、もう何を信じてよいか分からなくなります。

 

 こうして私は「日々是紅日」という言葉の意味を夢想するのです。

 

 曲は次第に派手さを増しながら、再び件の四音を基調とするフレーズに戻ります。

 トランペットが加わることで、より一層タイトル曲らしさが増していきます。これこそが曲に示されるTouhouの主題なのではないか?と思いさえもします。

 

 そして、再びあの印象的な刻みです。

 

 ところでこの刻みに挟まれる合いの手のシンセ、音の質感が紺タイトル画面を彷彿させるようです。

 件の曲のタイトルを思い出すと、その関係性になんだかちょっと笑えて来てしまいます。

 

 気持ち賑やかさを増して再び流される「かのメロディ」を噛みしめます。

 

 さて曲はブレイクを挟み、03:41からの最も強い盛り上がりへと向かいます。

 

 ここのメロディ展開こそが、この曲におけるもっとも見事な仕掛けなのではないかと私には思われます。

 

 これまで奏でられていた「かのメロディ」は、ここに来て三度目の登場となりますが、

 ここに来て登場した「かのメロディ」は、それまで示されていたB♭ E♭ F A♭のフレーズ……Touhouの主題ときわめて自然に融合しています。

 後に曲を聴き返してみれば、すでに一度目の登場からその気配はしていたではありませんか。これが意図されたものだとすれば、それは何と緻密な伏線でしょう。

 

 それにしてもこの展開。主題≒Touhouと、「かのメロディ」に象徴された存在がひとつになっていくようです。

 

 けれど、それは当然といえば当然の帰結です。Touhouと、空飛ぶ巫女――博麗霊夢がともにあるのは、思えば当然のことです。

 

 Capriccio、Dream Battle、そして、Folksy。

 Folksy=気取らぬ様、自然体である様の彼女がそこにいる。それならば、この曲は、Touhouの主題と「かのメロディ」との綺麗しき融合をして、

 Folsky Touhou Days……いうなれば「空飛ぶ巫女の普通の毎日」を奏でるものなのではないか、と思わずにはいられません。

 

 思えば普段(?)目にする彼女の姿は、往々にして何かの異変と伴にあります。

 彼女が登場するからこそ、異変を扱う作品が存在する――それは逆説的真理のようでありますが、それであるからこそ、なんの異変もない、何もない日々の彼女の姿をこの曲に幻視するのかもしれません。

 たとえこの曲が《二次創作》であったとしても。

 

 どうか、これからも、Touhouに空飛ぶ巫女のありますように。

 

補遺:
 これは、一層個人的な鑑賞ですが、この、0:52からの刻むピアノの音色に私は強く惹かれるものがあります。

 この刻みは、過去の曲においてはシンセで奏でられていました。

 今回、この刻みを、このピアノのちょっとくすんだ倍音を含む音で聞く機会を持てたことは、個人的な喜びです。

 

 この音色が醸し出すイメージ。

 誰も知らない遠い空に、紅白の影が落ちているような孤独――けれどそれは寂寥ではなく、むしろ孤高でさえあるような――そんな印象。

 そしてその存在と、その空間とのスケール比が醸し出す浮遊感。

 さらには、けして触れ得ぬ、どこか超然超越としたものを象徴するかのような――その存在が、本質的にほかの存在と隔たっているような――そんな音のイメージを含んでいるように、私には聴こえます。

 

 彼女の姿を追っていっても、彼女は遠ざかるばかり。

 そんな経験がきっと貴方にはおありなのだ思いますが、それがこの刻みに込められた力のようにさえ思えます。

 

 

『東方オトハナビ』

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