東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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音楽評
2022/09/14

「クラブミュージックで織り成す魔法」東方アレンジ楽曲レビュー『LOVE COLOUR』/Rolling Contact

東方アレンジ楽曲レビュー『LOVE COLOUR』

音の魔法の誕生

 時は2022年5月8日、博麗神社例大祭。久しぶりにかつての賑わいを取り戻したハレの日。カラフルな八卦路が描かれたそのアルバムは、ある先進的なジャンルを提げて、我々の前に姿を現した。

「LOVE COLOUR」

──光の粒で彩られた、音の魔法

 クロスフェードの動画や公式サイトに書かれているこのフレーズ。それこそがこのアルバムのすべてを表しているといっても過言ではない。

 改めて紹介しよう。

「LOVE COLOUR」は「Colour Bass(カラーベース)」というジャンルで構成されたアルバムである。

 そして、このアレンジを手掛けた「Rolling Contact」は2008年から活動を開始し、クラブミュージックアレンジをメインに創作を行っているサークルである。ハードコアやハードテクノのアレンジを主体としているが、そのほかにもレゲエやトランスなど、数多くのジャンルのアレンジを手掛けており、そのアルバムの数は100を超える。

 制作された曲の多さや、一つひとつの曲のクオリティの高さから、全国の東方のクラブイベントにおいてDJたちのmixに多く使用されており、数多くのフロアを沸かせてきた。まさに「東方クラブアレンジの金字塔」ともいえるサークルである。

 ちなみに、「Colour Bass」とは、近年生まれたクラブミュージックのジャンルのひとつである。ベースを主体としつつ、メロディアスな要素も込められているエレクトロミュージックとされている。……と言われてもいまいちピンと来ないかもしれない。前置きはこのくらいにして、早速聴いてもらおう。

 

「アレンジ」という名の魔法

Tr.1「Fragment Of Moon」

Tr.2「Emotion Valley」

「Fragment Of Moon」は「砕月」のアレンジ。「Emotion Valley」は「神々が恋した幻想郷」のアレンジである。

 二曲とも、重低音のベースとキラキラした透き通るようなアレンジが印象的である。どこか近未来的な曲調にも感じるし、曲の緻密な構成に美しさも感じられる。

 さて、ここで注目して欲しいのは、このように原曲のイメージとは程遠い、新たなジャンルのド派手なアレンジを施したとしても、違和感を抱くどころか、むしろ見事に曲調にマッチしていることである。

 完成された原曲を自分なりに解釈し、吟味し、そして自分が持っている領域に新たに作り上げる。このようにして見事に創作されたアレンジは、それ自体がひとつの作品として完成されている。それが、一種の「魔法」のように思えるのだ。

 キャッチフレーズである「音の魔法」はこのアルバムに限ったことではなく、すべての東方アレンジに適用されるものだと考えている。

 

そして「音を浴びる」ということ

 今回のアルバムのようなクラブミュージックを語る上で欠かせないのは、クラブという現場だ。

 東方のクラブイベントでは、東方アレンジが大音響のサウンドで、数時間ノンストップで流れる。まさに、東方アレンジ好きにとって楽園のような場所である。

 そこに集まる人々の目的は様々だ。​──自分の知らないアレンジに巡り会いたい。激しい音楽を聴きながらお酒を飲みたい。同じ東方ファンと談笑し社交の場としたい。曲に合わせて終始踊りたい。DJが織り成す曲の構成を聴きたい。

 そんなクラブに行く方々が共通で持っている認識として、「音を浴びる」という言葉がある。ライブによく行く方も同じような認識を持っているかもしれない。これは音楽を「聴く」だけでなく「全身で体感する」といった意味に近い表現だ。

 クラブミュージックは、このように「浴びる」という行為の片鱗を感じ取ることができると思っている。今回のアルバムであれば、ミュージックという本来は不可視の媒体から、沢山の色彩溢れる光や会場の熱気を、想起することが出来るのだ。

 そしてもし機会があれば、各地で開催されている東方のクラブイベントにもぜひ足を運んでみてほしい。音を浴びることで東方アレンジの良さを改めて感じたり、音楽の新たな楽しみ方に気付くことが出来るかもしれない。

 

キラキラ光る魔法を貴方にも

 このレビューを通して伝えたかったことは、「アレンジは一種の魔法だ」ということだ。

 そんな魔法を生み出す事のできる素晴らしい”魔法使い(アレンジャー)”の方々には、ぜひ、自分が良いと思った好きな領域で、魔法を紡いでいって欲しいと願っている。

──「オリジナルを尊重し、そこにオリジナリティを付加して残す」、それは”魔法使い”にしか出来ないことだからだ。

 そして、そのアレンジの中でも、「LOVE COLOUR」は「輝きを体験出来る(浴びることが出来る)魔法」だ。

 クラブミュージックが大好きな方、音楽のジャンルの新境地を求めたい方、そして音楽で「光」を体感したい方に「LOVE COLOUR」はおすすめのアルバムだといえよう。

 これを手にした貴方の元に、キラキラ光る魔法アレンジがもたらされることを願う。

 

作品情報

『LOVE COLOUR』

https://youzyo.net/post/683460376387518464/colour

Rolling Contact

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