音楽評
2020/12/25

新たな出会いにつながるシングルCDの魅力 |『風に吹かれてE.P.』/ Wujiu~うーじう~ ,『FUNKISH』/ 舞音KAGURA,『詫びやに2020』 / Matsu Yani

東方アレンジレビュー

 昨今の社会情勢における多くの課題がある中で、東方Projectの大型同人イベントは、この秋ようやく開催にこぎつけた。

 イベント主催のみならず、サークル活動も新しい生活様式の中ではさまざまな課題を抱えていたと思う。特に音楽サークルではスタジオの使用がどうしても避けられないという事情もあってか、新譜の数が心なしか少なかったと感じた。

 そんな逆風にも負けず、今年の東方紅楼夢と秋季例大祭で頒布された新作の中から、普段スポットの当たりづらいシングルCD(定義は頒布サークルによると思うが、便宜上、新規収録曲2曲以下と定義させていただきました)をいくつか紹介したいと思う。

 

『風に吹かれてE.P.』 / Wujiu~うーじう~

 

 一本目はサークル「Wujiu~うーじう~」のシングルCDを紹介したい。

 Wujiu~うーじう~は精力的に活動を続けているサークルで、昨年のコミックマーケット97で頒布された月兎装備うどんげのジャケットが印象的な『SAYONARA!』はYouTubeで聴いた人もいるだろうか。

 直近では2021年1月30日に開催される『蓬莱キャビネット』にも出演予定だ。配信でも現地でも楽しめるイベントなので、こちらもチェックしてほしい。

 今回の新譜はジャケット絵の雰囲気を裏切らない爽やかなサウンドの「桜花之恋塚」アレンジ。

 歪み過ぎないギターと、軽快なリズムで思わず口ずさみたくなるようなメロディで何度リピートしても飽きない一曲に仕上がっている。

 幻想郷の移り変わる四季を見守る、フラワーマスターとしての幽香のイメージと曲調で心が浄化されていく。

 この度、サークル代表のじんぞうさんより視聴用動画をいただいたので、ぜひ聴いていただきたい。

作品情報

『風に吹かれてE.P.』

編曲:じんぞう
Vocal:じんぞう
演奏:じんぞう / pira
イラスト:燈弥
サークル:Wujiu~うーじう~

Wujiu~うーじう~
https://twitter.com/jinzo_59
https://www.youtube.com/channel/UCaTXS4PzF7CYDofqbyteVvQ

 

※文中にてご紹介いたしました『SAYONARA!』の作品情報につきましても掲載させていただきます。

『SAYONARA!』

編曲:じんぞう
Vocal:じんぞう
演奏:じんぞう / 円城 ‘バツヲ’ 啓二
イラスト:燈弥
サークル:Wujiu~うーじう~
特設サイト:https://sayonara-wujiu.tumblr.com

委託先:
メロンブックス

 

『FUNKISH』 / 舞音KAGURA

 舞音KAGURAはC-CLAYSでボーカルを張っていた小峠舞さんが代表として立ち上げたサークル。早々にファンクラブ(メンバーズ)システムを採用するなど、意欲的な取り組みもしているので今後が楽しみなサークルだ。

 このCDではエネルギッシュなボーカルが光る2曲を収録。

 1曲目の「Oh, No!」は「U.N.オーエンは彼女なのか?」、2曲目の「Supreme Moment」は「パンデモニックプラネット」のアレンジで、ともにExtraステージからのチョイス。ここ数作に比べてカッコよさに振った曲調。何と呼べばいいジャンルなのか分からないが、非常にアッパーで体を動かしたくなる。

 「Oh, No!」は明らかにオーエンアレンジなのだが、今まで聞いたことのない類のアレンジとなっている。フランの引きこもり時代のフラストレーションの爆発がそのまま曲のテンションにも反映されていて、ダークな歌詞もフラン節全開となっている。こちらの歌詞については動画にて解説が上がっているのでぜひご覧いただきたい。

 「Supreme Moment」も原曲のテーマ通り、ヘカーティアをイメージした圧倒的な上から目線のセクシーな曲。R&B気味な雰囲気で、1曲目のワガママ感と対比された余裕のある大物大人キャラとしてのヘカーティアが歌われている。

作品情報

『FUNKISH』

編曲:けぇぽん / あとぐる
作詞:小峠 舞
Vocal:小峠 舞
イラスト:cibo
サークル:舞音KAGURA
特設サイト:http://muonofficial.com/new_discography/funkish/

舞音KAGURA
http://muonofficial.com

頒布先:
舞音KAGURA 公式通販

 

『詫びやに2020』 / Matsu Yani

 本記事の最後は、その名の通り(?)新譜を落としてしまったお詫びとして無配されていたCDを紹介させてもらう。

 サークル「Matsu Yani」のCDには東方妖々夢から2曲のロックアレンジが収録されている。

 1曲目に収録されている「幽雅に咲かせ、墨染の桜」アレンジの「ルーツオブアフターライフ」は妖々夢の舞台、雪と桜のステージとシリアスな雰囲気を想起させる、異変解決に向かうストーリーの曲。Cメロのふと静かになる瞬間が、6ボス前の雰囲気と被る個人的な推しポイント。

 2曲目の「東方妖々夢 ~ Ancient Temple」アレンジの「Rockin’ On Heaven’s Door」も当時の妖夢のイメージそのままに、危うさのある従者といった曲調のアレンジだ。公式でポンコツ従者になりがちだった彼女だが、もともとはこういうキャラだったと思い出させてくれる。

 なお、紅楼夢で頒布予定だった『瑠璃色揚羽は夢を見る』は11月に無事頒布されている。こちらもぜひ聴いてほしい。

作品情報

※こちらでは11月に頒布されました『瑠璃色揚羽は夢を見る』の作品情報を掲載いたします。

『瑠璃色揚羽は夢を見る』

編曲:松浦
歌詞:blanc
Vocal:松浦 / またろう / blanc
演奏:佐々木“Kobai“亮佑
イラスト:もずくず
サークル:MatsuYani
特設サイト:https://ruriyume.tumblr.com

委託先:
BOOTH

 

終わりに

 こうした単品EPや無配CDは委託を期待するものではないので、本来は他人に紹介するには向いていないかもしれない。しかし、新しいサークルと出会うには恰好の媒体なので、イベント会場では普段回らないジャンルの島で積極的に手に取ってみてほしい。

 とうとう東方アレンジも、ストリーミング配信が始まった。たくさんの東方アレンジに触れられる最高の機会ではあるが、約2万近い楽曲の中からこれぞという1曲に出会うのは、なかなか難しい。そういった意味では、実はネットサーフィンよりも良い楽曲に出会う”効率”は即売会も引けを取らない、いやむしろ、即売会のほうが優れているとさえ言える。

 また、事前にチェックしているサークルだけでは、自分の興味あるサークル・ジャンルとその周辺の情報収集になってしまい、意識的・無意識的に関わらずどうしても偏りがち。事前のサークルチェックが甘いと言われてしまうかもしれないが、クロスフェードの視聴はそれなりに時間を必要とする上、音楽サークルはギリギリに視聴動画やXFDを出してくるサークルも多い(偏見)のでカバーしきれていないサークルがどうしても出てきてしまう。

 そんなときに「負担も少ないので、とりあえず手に取ってみて、聴いてみる」という楽しみ方ができるし、好みに刺さったら次回のイベントで旧譜含めてまとめ買い!なんて流れになれば理想的。次回の即売会で時間に余裕ができたら、ぜひ目を向けてみてほしい。