東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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音楽評
2020/04/08

『妖しくも頼もしい音楽冒険世界への隙間は、ここにあります』 東方アレンジCDレビュー「Broad Border」/ShibayanRecords

東方アレンジCDレビュー

 

 東方アレンジで熱い音楽ジャンルといえば、クラブミュージック系アレンジが挙げられますね。
 アゲアゲでノリノリなクラブミュージック、いわゆるEDMと呼ばれるような音楽が大人気な中、EDMとは違う一風変わった“エレクトロ”を届けてくれるサークルをご存知でしょうか?

 そう、ShibayanRecordsです。 昨年の冬コミで頒布されたこちらのCD「Broad Border」で、“エレクトロ”をぜひ堪能してみてください。

 

(このアルバムはサークル公式Youtubeにフルで公開されており、あなたも今すぐ聞くことができます。ぜひYoutubeの再生ボタンを押してから以下のレビューをお楽しみください)

 

 現在の東方アレンジ界隈には、謂わば“情報過多EDM”から“断捨離テクノ”、“血の池ハードコア”に“冷徹トランス”まで………幅広い音楽ジャンルを作れるトラックメイカーさんがたくさん居ます。
 しかしながらその中で、「そこからそこにいく!?」というジャンルの奥行きの広さ、“境界の幅”をshibayanさんの楽曲は見せてくれるのです。

 “イージーリスニング”と“エレクトロ”の両方を楽しめるこのアルバムは、さながら、室内着でまったりコーヒータイムを終えてリビングの扉を開けたら、自分がフルパワーフルボムフル残機の最強キャラ黒のロングコートになって夜の帳の向こうへ大冒険…!と、いったような独特の世界へと連れて行ってくれます。 どっちも好きなので、たすかる~!

 可愛い声で歌唱力の高いボーカルさんを起用していて聴きやすいこと、そうでありながら、楽曲がDJユース【※】であり、クラブなどの完成された環境で聴くとよりいっそう低音を楽しめるサウンドになっているのもオススメポイントです。

 【※】DJユース:音域・音圧がクラブで大音量で流したときに耳に気持ちよく届き、展開などもDJがMIXしやすい構成で作られた曲のこと。

 

境界を超えた“音楽冒険体験”

 ShibayanRecordsの大きな作品の分け方としては、ボサノバシリーズとエレクトロシリーズがあります。どちらにもインスト楽曲とボーカル楽曲が収録されています。

 ボサノバシリーズは、生楽器の音を中心に、聴き心地の良い音で構成された、優雅でキュートなアルバムです。カフェとか美容院でかかってそうな感じ。ふわふわでかわいい。また、ボサノバシリーズは、shibayanさん以外にも、そういった曲調を得意とするトラックメイカーが多数参加しているアルバムとなっています。

 エレクトロシリーズは、shibayanさんが好きなアナログシンセを使った、エレクトロ楽曲集です。定期的にリミキサーを招いたリミックスアルバムが出るのですが、こちらもオススメ。MyonMyonシリーズは現在MyonMyonMyonMyonMyonMyonMyonMyon!まで続いています。いつまで続くのか。

 

 昨年末にリリースされたこの「Broad Border」は、ShibayanRecordsが他サークルへのゲストトラックとして提供した楽曲の総集編です。様々なアルバムでの客演作品からの収録ということで、いろいろなジャンルの曲が収録されています。

 ここが重要なのですが、収録元のCDは今はもう手に入らないものがほとんど。当時を思い出して、おたくはデケエ声を出したりもするのですが、なんと実は入門にも最適です。ぜひ、境界を超えた“音楽冒険体験”のために聴いていただきたいです。全員聴いてください。全員聴いて新譜も旧譜も買ってください。

 

「Monochrome in the Night」

 3曲目「Monochrome in the Night」は、出典元では「モノクロ・インザナイト (Funk Remix)」というタイトルでした。エレクトロシリーズに収録されているモノクロ・インザナイトという曲のファンク版ですね。ファンク、聴いたことありますか?グッドミュージックです。

 オシャレなお父さんとかが知っている有名ドコロだと、Earth, Wind & FireとかJamiroquaiとかが挙げられます。要はグッドミュージックです。

 

 走るパーカッションとスラップベース、そこにエレクトリックピアノが乗ると、静かな曲のはずなのに体じゅうが楽しいやつです。ボサノバシリーズでもそうですが、ぴょこぴょこと体が勝手に動き出して踊りたくなるのは、ドコドコ鳴っているクラブミュージックだけじゃないんだなというのを再認識させてくれます。
 つまるところグッドミュージックですね。

 

 

しばやんエレクトロー「R.I.N. 」「アモリタチテカミトミユ 」「我亲爱傀儡 」 

 アルバム最後の3曲はしばやんエレクトロです。 音楽ジャンル?しばやんエレクトロです。

 クールで力強い、と言ってしまうとカンタンですが…、芯が図太く、好戦的で、ちょっとやそっとのことでは絶対に動じなさそうな曲調と、皮肉なまでに可憐かつミステリアスな歌詞とボーカルで紡ぐこれらの音楽は、幻想郷のつよつよ魑魅魍魎ガールズにぴったりなのです。

 アレンジの原曲はお燐ちゃんゆかりちゃんとせいよし曲です。魑魅魍魎の宝石箱や…!

 この3曲は、いずれもダークだったり荘厳なテーマのアルバムに収録されていたので、メリハリのある曲調が特徴のしばやんエレクトロがアルバムの世界観に良い影響を与えていました。

 

「GAZE IT」

 私が一番好きなのは4曲目の「GAZE IT」
 かっこいいですね。この偉そうなシンセベースがいい。褒めています。偉そうにしやがって。本当に良い。覚えておいてください。

 テレレテレレテーンなメロディが印象的な「天空のグリニッジ」といえば、秘封倶楽部曲の中でも人気が高く、アレンジの曲数も多い曲です。しかしながら、この曲はそのメロディを「テレビドラマで 聞いたあのセリフも」と説いてきました。たまら~ん。どうしちゃったんだ。最初に聴いた時は椅子から転落しました。

 CDを通して唯一の秘封アレンジなのと、キュートながらも小難しい歌詞が曲調マッチするのも合って、ドキッとさせられます。

 

 

 さあ、どこか独特な雰囲気のある民族衣装を纏ったゆかりちゃんのジャケットと目が合えばそのとき。

 多種多様なアレンジに出会える、背中を押してくれるような妖しくも頼もしい音楽の冒険世界に飛び込むための隙間入り口はここにあります。

 

 

【作品情報】

アルバム名:Broad Border
  http://shibayan.info/stal1903/

サークル名:ShibayanRecords
  http://shibayan.info/

twitter:
  Shibayan @yaaaaaan

Youtubeチャンネル:

  https://www.youtube.com/user/shibayan

 

ショップ委託:

  メロンブックス
  とらのあな
  AKIBA HOBBY
  あきばお~こく

ダウンロード配信:

  iTunes
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