東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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ゲーム評
2020/06/18

東方二次創作ゲームレビュー 最新なのに懐かしい!?聖白蓮のロッ〇マン風アクションゲーム「東方ROCK MAIDEN FC2」

アンタマニドのゲームレビュー

 皆さん、こんにちは! このコーナーでは同人ゲームばっかりプレイしている筆者が、数ある「東方の二次創作ゲーム」の中から、特にオススメする選りすぐりの一作をご案内させて頂きます。

 第6回は、東方に限らず数多くのジャンルの二次創作ゲームを手掛けている実力派同人ゲームサークル「かぷりこーん」より、今年3月にリリースしたばかりの最新作『東方ROCK MAIDEN FC2』を紹介します!

 

レトロ感すらも完全再現した、懐かしのファミコン風アクション!

 まず『東方ROCK MAIDEN FC2』とはどういうゲームなのか。これについては言葉であれこれ語る以前に、とりあえずゲーム画面を見て頂くだけでも大体は伝わると思います。ということで、早速ですがコチラの動画をご覧ください。

 ロックマンだこれ─────────────!!!

 おそらく動画をご覧になった方のほとんどが、開始からものの5秒程度で、パロディ元が何なのかを察して頂けたことでしょう。更に言ってしまえば、作品タイトルの時点でも気付いた方はいらっしゃるかと思います。そう、本作『東方 ROCK MAIDEN FC2』は、ロックマンを元ネタにした東方二次創作ゲームなんです!

 「東方ROCK MAIDEN」シリーズと言えばサークル「かぷりこーん」の代表作とも言うべき作品群で、これまで1・2・3のナンバリングタイトルと「FC」を冠したタイトルの、計4作品が登場していました。本作は「FC2」ということで、FCシリーズ第二弾、そして全体を通したシリーズ物としては第五弾に当たる作品ということになります。

 

 これまでの「東方ROCK MAIDEN」シリーズでは基本的に霊夢が主人公でしたが、本作では命蓮寺の住職・聖 白蓮が主役に抜擢されています。過去のシリーズでも霊夢以外のキャラがプレイアブルになっているものはありましたが、霊夢以外のキャラが単独主人公となったのは本作が初めて。とは言えロックマン風アクションという意味では、これまでと変わらない操作感で楽しめる内容となっています!

 

 大まかなゲームの流れも、パロディ元であるロックマンをそのまま踏襲しています。つまりは、8体のボスが待ち受ける個性豊かなステージを、ショットやジャンプといったアクションを駆使して、プレイヤーの好きな順番で攻略していく……といった流れですね。モチロン、ボスに勝利すれば倒した相手にちなんだ特殊武器を習得するところも、しっかり元ネタ準拠! そうやって手に入れた特殊武器は、他のボスに対してとても有効な弱点武器となっています。うまく弱点を突くことができれば、手ごわいボスも簡単に倒せるようになりますよ! この攻略法もまた、ロックマンならではと言ったところですよね。

 

 そしてFCシリーズを冠する本作は、その名の通りFC(ファミコン)風を軸に作られています。

 ご存知のとおり「ロックマン」シリーズと言えば、ファミコンから端を発した作品です。当時の少ない情報量で表現されたキャラクターやステージの雰囲気など、あの「独特」とも言える雰囲気のレトロなドット表現は、かえってそれだけで「ロックマンだ!」と伝える事のできる一種の芸術でした。

 それを見事に東方風にアレンジしたのが、FCシリーズ最大の注目ポイントです。モデルは完全にロックマン、なのにちゃんと聖らしさが伝わるキャラドットは、ロックマンと東方の絶妙なコラボレーションの産物! モチロンそれは立ち姿だけでなく、走る姿にジャンプ時の動き、ショットやスライディングのポーズまで完ペキに再現しています。もはやこれは、聖の格好をしたロックマンなのでは……!?

 

 更にはキャラクターだけに留まらず、ステージの背景やUIなど、画面から伝わる情報全てが当時のファミコンのロックマンらしさを忠実に再現されています。そのヒミツは、徹底したファミコンらしさの追求……なんとドット表現に使う色数や、画面の解像度までもが、ファミコンと全く同じ情報量で作られているんです!(※表示上の解像度は2倍サイズに拡大しています)

 そうそう、当たり前のようにバックアップファイルを残せるこの時代に、あえてファミコンながらのパスワード方式を採用しているのもまた、当時を思い出させるニクイ演出ですよネ。新しい作品でありながら、懐かしさをとことん突き詰めた本作は、まさに「最新鋭のレトロゲーム」と言えるでしょう!

 

ここまでやっちゃって大丈夫!?怒涛のパロディ詰め合わせ!

 徹底した「ロックマン風」を貫き通す本作には、これでもかというぐらいのパロディ要素が存分に詰まっています!

 たとえば、ゲームスタート直後に見ることのできる、ロックマンのまわりをグルリと囲むボスの顔グラフィック──ステージ選択画面として使われているコチラの表現は、もはやシリーズ恒例の風物詩ですよネ。『東方ROCK MAIDEN FC2』でも、聖の顔を中心にズラリと並ぶ8人の顔が、レトロ感溢れるドット絵で表現されています。そうそう!ファミコンのドット絵ってこんな感じでしたよね!

 

 主人公が聖なので、ボスとして登場するのも当然、東方星蓮船にちなんだキャラクターが中心です。ナズーリンに小傘、一輪、村紗、星、自機組からは魔理沙と早苗、そして何故か巻き込まれた射命丸 文の計8人が、聖の前に立ちふさがり──もとい、聖の説法の餌食となります(ちなみにナゼ文ちゃんなのかは、ストーリーを見ればナンとなく想像が付くんじゃないかな……と思います!)

 

 また、各ボスキャラが待ち受けるステージの道中には、これまたしっかりと東方風にアレンジされたザコキャラが沢山登場しています! 例えばロックマンシリーズで有名なザコのメットールは、ヘルメットのかわりの美鈴の帽子を被っていますし、盾を持った難敵・スナイパージョーには、同じく盾を持った東方キャラとして犬走 椛が割り当てられています。妖精や毛玉といった名も無いモブキャラから、マミゾウ、妹紅のようなEXボスまで、様々な東方のキャラクターがロックマンのザコキャラ風にアレンジされており、ロックマンシリーズをやりこんだ人が見れば、ついニヤリとしてしまうこと間違いナシです。

 更にステージに施されたトラップも、ロックマンシリーズでよく見たものをしっかり再現。気の抜ける効果音とともに出たり消えたりする足場や、当たると一発でティウンしてしまうトゲなど、見ればきっと「知ってるコレ!」となるようなギミックが要所要所に仕込んであります。中には、特定のシリーズにしか登場していない知る人ぞ知るギミックも……全て分かった人は、きっと相当なロックマンマニアでしょう!

 バラエティに富んだ各ボスキャラの攻撃方法も、これまた見事にパロディ要素が満載です! 例えば一輪の法輪を飛ばす攻撃は、ロックマン4のリングマンの動きを完全に再現。星の動きはロックマン6のヤマトマンそのもので、飛ばした矢じりをいちいち回収しに行く動きまで完璧にトレースしちゃっています。また、ナズーリンは3のスネークマンと7のジャンクマンの技を繰り出してきたり、小傘の攻撃方法はは2のエアーマンと4のトードマンがモチーフとなっていたりと、一部のボスは複数の元ネタを組み合わせて新しい攻撃パターンを生み出しています。この、あまりにも完璧すぎる再現度の前に、かつて挑んだあの激闘の思い出も鮮明に蘇ってくることでしょう……

 ……それではここで一曲、心を込めて歌います。タイトルは「小傘ちゃんが倒せない」。

 

始まりは音楽CDから……みんなが望んだゲーム化の夢が現実に!

 もうひとつ、このゲームを語る上で絶対に外すことができないのが「BGM」です。

 本作のだいじなテーマである”ファミコン風”を忠実になぞったピコピコ感溢れるレトロサウンドは、プレイヤーの心をガッチリと掴む大きな魅力の一つだと言えるでしょう。モチロン、ただ東方の楽曲がチップチューンにアレンジされているだけではありません。いかにもロックマンらしいサウンドも随所に盛り込まれており、文字通り「東方×ロックマン」を耳でも楽しませてくれる、両作品のファンにはたまらないアレンジとなっています!

 

 このステキな楽曲の数々を手掛けているのが、東方のオーケストラアレンジでも有名な音楽サークル「趣味工房にんじんわいん」です。今回このゲームにピッタリな楽曲を、新たに用意して貰ったのかな?と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。これらの楽曲は、趣味工房にんじんわいんが過去にリリースした東方アレンジCD『東方岩僧侶 ROCKGIRL6 -史上最大の説法-』に収録されているものが使用されています。そうなんです、つまりはBGMのほうが先に存在していて、それを元にして後からゲームが作られた……という順番だったんです!

 この、ちょっとハレンチなオープニングシーンや、おなじみのボス選択画面まで、PVに使用されているドット絵のほとんどが、ゲーム内でも使われています。先に挙げた8大ボスの存在も、実はこのPVの時点で既に決まっていたものだったんですね。そうそう、「史上最大の説法!!」というサブタイトルもまた、音楽CDで使われたものがゲームのほうにも採用されています!

 

 もともとこの一連の音楽CD「東方岩少女」シリーズ自体が「ロックマン風東方アレンジ」コンセプトに作られた作品なんです。ちゃんと作品ごとのストーリーも用意されていて、いかにも本物のゲーム画面っぽく作ったドット絵をパッケージやPVにも起用、「実はこんなゲームが本当に存在するんじゃないか」と見る人を錯覚させるような完成度の高さが特に話題の作品でした。ニコニコ動画に投稿された過去シリーズのPVには「ゲーム化希望」のタグが付けられていますし、同様のコメントもたくさん投稿されているのが今でも確認できます。

 そんな視聴者の長年の願いを、本当に実現してしまったのがこの『東方ROCK MAIDEN FC』シリーズだったんです。ちなみにFCシリーズ1作目である「東方ROCK MAIDEN FC」は、初代「東方岩少女 ROCKGIRL」が元ネタとなっています。東方岩少女シリーズも既に7作品リリースされているので、もし今後更なるFCシリーズが作られる際には、そのうちのどれかが元ネタになっている可能性も……!?

 当時この音楽CDを聴きながら、頭の中で何度もゲーム画面を思い浮かべて楽しんだという方も、中にはいらっしゃるかと思います。かつては”ゲーム風”として作られた妄想の産物が、今こうして現実にプレイできるものとして存在しているというのは、当時を知る人からすれば本当に夢のような出来事ではないでしょうか。そんな”夢のゲーム”を実際にプレイして、ありし日の感動をもう一度──今度はもっとリアルな形で、追体験してみませんか?

 

作品情報

「東方ROCK MAIDEN FC2 史上最大の説法!!」

【サークル】
 かぷりこーん
  http://moon.tiyogami.com/index.html

【作品サイト】
  http://moon.tiyogami.com/trfc2/index.html

【作者twitter】
  https://twitter.com/airataso

 

【委託・頒布情報】

 パッケージ版

  メロンブックス 
  とらのあな
  AKIBA HOBBY
  Grep
  あきばお~こく

 ダウンロード版

  DLSite