東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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ゲーム評
2019/11/20

東方二次創作ゲームレビュー#02 一人前の式を目指して!橙が旅するカードバトル+アドベンチャー「セイブ・ザ・フォックス」

アンタマニドのゲームレビュー

 皆さん、こんにちは!このコーナーでは同人ゲームばっかりプレイしている筆者が、数ある「東方の二次創作ゲーム」の中から、特にオススメする選りすぐりの一作をご案内させて頂きます。

 第2回は、プレイヤーがゲームジャンルに抱く固定観念の「死角」を突く、現在活動3年目の新鋭「シカクゲームズ」が贈るデッキ構築型アドベンチャー『セイブ・ザ・フォックス』を紹介します!

 

相手のカードを見極めて常に最良の一手を選択する、頭脳勝負のカードバトル!

 タイトルに「フォックス」とありますが、このゲームの主役は化け猫の「橙」

 橙の主人である「八雲 藍」、その橙の主人の主人「八雲 紫」に、一人前の式として認めてもらうため、「式の力を使わず20日間以内に迷いの竹林まで辿り着く」という課題にチャレンジするのが、本作の目的となっています。

 ゲームはマウス一つで操作可能なアドベンチャーで、基本はマップ移動→イベント→バトルの3つのフェーズを繰り返してストーリーが進行。

 とにかく広い幻想郷、橙が棲むマヨヒガから目的地の迷いの竹林まで、その道のりは多岐に分かれています。ただ一直線に竹林を目指しても、まだまだ未熟な橙の力では、そう易々といきません……。そこで、道中で出会う妖精や妖怪たちの協力を得て、稽古をつけてもらいながら少しずつ進んでいきましょう。

 孤独にスタートする橙の厳しい修行の旅ですが、開始早々に出会える心強い旅の同行者「犬走 椛」の存在によって、楽しく賑やかな旅が待っています!

 

 マップ上には、幾つかのポイントを示す目印と、橙の今居る場所が示されています。移動したい先のポイントが橙の居る場所と一本の道で繋がっていれば、行動ポイントを消費して場所移動が可能です。そして多くの場合、移動した先で出会ったキャラクターとのバトルが待ち受けています。

 

 バトルパートでは、橙と相手キャラクターとの一対一のカードバトルが行われます。手元に配られたカードの中から3枚を選択し、選んだカードによって攻・狙・速の3つのパラメータが変化、それらを相手の数値と競い合って自動的に戦闘が行われます。

 相手のHPをより多く削るためには攻の数値を上げれば良いのですが、狙の数値が相手の速を下回れば攻撃が外れてしまいます。もちろん相手から攻撃を受ける時にも同じことが言えますし、そもそもどちらが先に攻撃できるかは速の数値で決まる……と、3つ全てのパラメータが密接に関わって戦闘結果に反映されます。当然、相手もカードを選んでパラメータを変化させてくるので、相手の数値がどうなって、自分の数値をどう調整すれば有利に戦えるのか、常に読み合いながらの手に汗握る頭脳バトルが楽しめますよ!

 バトルの状況は、画面中央に表示されているちびキャラクター同士の弾幕バトルによって再現されます。弾幕のバリエーションはキャラクターごとに複数用意されていて、原作シューティングをプレイしたことがある人ならば、きっと一目でピンとくるものばかり。力が溜まると使えるようになるスペルカードの演出も、これまた非常に高い再現度を誇り、ド派手な演出で緊迫感のあるバトルをより一層盛り上げてくれます!

 相手のHPをゼロにするか、規定ターンを超えた時点でHPゲージが相手より多く残っていれば、バトル勝利となります。勝つことでより多くの経験を得られるので、どんどんバトルして橙を強くしていくのがストーリー攻略のカギです。

 もしバトルに負けてしまっても、戦闘の最初からやり直したり、マップ移動前の状態まで戻すことができるので、基本的に詰むことはありません。勝つまで何度も再挑戦しても良し、どうしても勝てそうにない相手なら一度戻って作戦を練り直しても良いでしょう。諦めて別の道から進むというのも一つの手です。

 

多数の選択肢が用意された、バリエーション豊富な会話イベント!

 長い旅の道中、橙は様々な場所に足を運んでいきます。魔法の森、紅魔館、人間の里……プレイヤーにとってはよく知るこれらの名所も、橙にとってはどれも初めての場所ばかり。そして、その行く先々で多くのキャラクターとの出会いが待っています。

 マップ移動後やバトル終了後に見られる各キャラクターとの会話イベントも、本作における見どころの一つです。霊夢や魔理沙といったおなじみのキャラクターはもちろん、リグルやルーミア、にとりやアリス、そして霖之助や名無しの本読み妖怪など、実に20人以上のキャラクターが登場します。どこに行けば誰と出会えるのか、想像しながら進む道を選んでみるのも面白いかもしれませんね!

 イベントでは複数の選択肢が表示されることがあり、選択の結果によって会話の流れが変化するとともに、バトルで使用する様々なカードを入手することが可能です。どんなカードを得られるかは選択肢によって変化するので、イベントの進め方次第でデッキの組み方も大きく変わってきます。

 とは言え、選んだカードによって有利・不利が決まるようなこともありませんので、最初は自分の想いに従って自由に選択肢を選んでみるのが良いでしょう。

 他にも、スペルカードや装備、道具といった旅をサポートするアイテムが入手できる場合もあります。更には一度出会ったキャラクターが居る場所にもう一度足を運ぶことで、今度はまた違ったイベントが発生することもあったりと、豊富なバリエーションでプレイヤーを楽しませてくれます!

 本当に沢山のイベントが用意されているので、色々見て回りたくなってしまいますが……肝心の旅の目的だけは忘れないように気を付けて下さいね!

 

 ところで、橙が修行の旅に出ている一方で、藍もまた紫からとある”使命”を受けて動き出しています。日数の経過に合わせてときどき挿入される「FOX SIDE」では、視点が藍に切り替わって物語の裏側で起きている事件に迫ります。

 藍視点の「FOX SIDE」と橙視点の「CAT SIDE」、この二つを繰り返しながら本作のメインストーリーが進んでいき、橙が旅の目的地である迷いの竹林に辿り着いたとき、初めて二つの線が一つに交わります。その先に何が待っているかは──実際にプレイしてみてのお楽しみ!

 

ついつい何度もプレイしたくなる、遊びごたえ抜群の周回システム!

 初めてこのゲームをプレイする人ならば、だいたい3〜5時間ぐらいでエンディングまで到達できると思います。とは言え、1回のプレイで全ての登場キャラクターと出会うのは至難のワザですし、ましてや“全てのイベントを見ることは絶対に不可能”です。なぜなら、本作は周回プレイを前提とした作りになっているのですから!

 無事に目標を達成し、エンディングを迎えたあとにセーブができるクリアデータを使うことで、これまでの周回で手に入れたスペルや装備、実績を引き継いでの周回プレイを開始することができます。

 実績は解除条件を満たすことで、ボーナスとしてアイテムや経験を得ることができます。既に解除済みの実績であれば、周回プレイ開始時にいきなりボーナスを獲得できるので、ある程度強化した状態でストーリーを開始することができちゃいます。初めは強くて歯が立たなかった相手も、周回プレイならば勝利をもぎ取ることできるかも……!?

 

 イベントで得られるカードも、目指すデッキの方向性に合わせて最適な選択肢を選んでいくことで、バトルスタイルを任意に調整する事ができます。これぞ、デッキ構築型バトルの醍醐味というものですね!

 他にも、引継ぎを行うことで初めて発生させる事ができるレアなイベントなど、周回ならではの楽しみ方が盛り沢山! 正直言って、1回だけのプレイで終わらせてしまうにはあまりに勿体ない程、楽しめる内容がギッシリと詰まっていますよ!

 また、実績の中には周回してもなお達成の難しいものが、数多く用意されています。より高みに挑戦してみたいという方は、是非とも実績コンプリートを目指してみて下さい。デッキ構築やスペル・装備の選択、そして更なる周回プレイ……ありとあらゆる要素を駆使して、全ての実績を解除した先に見える”光景”は、きっと本作プレイヤーにとって感慨深いものになるはず筈です。

 デッキ構築の自由度による幅広い戦略性に、魅力溢れるキャラクター描写と選択肢による多彩な会話パターン……こうした「プレイヤーを飽きさせない周回モデル」こそ、『セイブ・ザ・フォックス』最大のアピールポイントと言えるでしょう。

 

 隅々まで遊び尽くしてしまう人続出の本作の”魅力”に、どっぷりとハマってみませんか?

 

作品情報

「セイブ・ザ・フォックス」

【サークル】
 シカクゲームズ(@sikakugames
 https://sikakugames.amebaownd.com/

【サークルの次回参加予定イベント】
 第17回博麗神社例大祭 サークル当落結果待ち

【委託・頒布情報】
 Booth(クリックで飛びます)

【一言コメント】
 シカクゲームズでは東方の世界観を活かしたゲーマーズゲームの制作に取り組んでいます。現在は秘封倶楽部を題材とし『読んでいるだけではクリアできない』ノベルゲームを制作中。