「昭和最後の??」、是空とおるとは何者なのか。「博麗神社崇敬会」の結成、エヴァでは「アスカのマネージャーのシンジ君」そしてグッズ会社の経営者…!?
是空とおる氏インタビュー【前編】
是空とおる氏といえば、2020年7月に開催された「FloweringNight2020」でMCを務めたり、東方Projectの公認を受けた商業商品を専門に扱うメーカーグッズオンラインショップ「東方やおよろず商店」を立ち上げたり、アトレ秋葉原などで開催されるイベントを主催している博麗神社崇敬会の代表だったり、二次創作スマホゲーム『東方LostWord』にも関わっているという多才な人物。幅広いジャンルで活躍する是空氏ではあるが、それゆえに今ひとつ何をしているのかよく分からないと思っている東方ファンは多いはず。
そこで今回は謎多き是空氏の実態を直撃! すると是空氏の口からは、漫画家にトレカゲームのプロデューサー、さらには人気声優のマネージャーまで、驚きの経歴が次々と明らかにされました!
是空とおる氏とはいったい何者なのか? そして是空氏は東方Projectでどんなことを行っているのか? そのすべてが今ここで明らかになる!?
<プロフィール>
是空とおる
(ぜくう・とおる)本名は高野信二。漫画家 → 雑誌ライター → 編集 → 声優マネージャー → トレカ開発(ハドソン)→ 会社設立(グッズメーカー「アクシア」代表)という異色経歴は全部書けない。MCやパーソナリティも務める二児のパパさん。コミケ参加も約30年というキャリアで原作・脚本などの代表先は「式神の城」「四季使い」「トリニティ・ヴィーナス」「TRPG書籍各種」。アニメ原案では「えとたま」などがある。オタクビジネスの最先端に立ちすぎて「昭和最後のゴロ」という不名誉な名称を与えられるが、本人的には「誉め言葉」と捉えて今日も「立派なゴロ」を目指して邁進している。好きな東方キャラはレイマリ&お姉さん系らしい。
「博麗神社崇敬会」を結成した、東方Projectに関わる“商業”を代表する人物
——東方Projectのファンのみなさんから「是空とおるさんって、何をしている人なんですか?」という声をよく聞くんです。だから今回はご本人に直接、「是空さんとは何者なのか?」を伺いたいと思っています。
僕は断片的にではあるんですが、是空さんが非常にユニークな経歴の方だというのを聞いているので。そのため今日のインタビューでは、東方と直接関係ないこともいろいろとお尋ねすると思いますが、よろしくお願いします。
是空氏:
なるほどです。よろしくお願いいたします。なんでも聞いてください。ただ、企業や商業の会社の世界はさまざまな考えがありますので、このインタビュー内容は是空とおる個人の主観・意見・考え方ということでお願いします。「すべての東方Projectに関わる“商業”がこう」というわけではありませんので、ご注意ください(笑)。そういう世界もあるんだなー。程度に聞いてもらえたら嬉しいですね。
——ではまず自己紹介を兼ねて、ふだんはどんなお仕事をされているのですか?
是空氏:
「是空とおる」はペンネームで、本名は高野信二です。1973年生まれで、今年で47歳になります。株式会社アクシアという企業を経営しているんですけど、こちらは基本的にはグッズメーカーになります。この会社を設立して20年近く経つんですが、その間にコスパタブリエグループに加わり、そちらのグループ役員も務めています。あとの話に出てくると思いますが、コスパの役員は僕と同世代が多くて、僕が20歳ぐらいの時にオタクイベントの現場でよく会っていたメンバーなんですよ。
僕は立ち位置が特殊なので、自由にやらせてもらっています。自分の会社(アクシア)は僕が気になるタイトルのグッズとか、僕がやりたい企画でお金を稼ぐメーカーになっていますね。
——是空さん自身が気になったタイトルやご自身が企画したグッズを扱うメーカーとのことですが、東方Projectとはどのような関わりがあるのですか?
是空氏:
東方Projectに関しては、上海アリス幻樂団の版権許諾を得てグッズを制作しています。公認という言い方でも正しいかもしれませんが、いち企業としてほかのメーカーさんと同じように企画を申請しています。ですが今、東方Project関連の僕の活動でいちばん目立っているのは、「博麗神社崇敬会」という企業主体のファンクラブ団体でしょうね。僕はこの団体の代表を務めています。
博麗神社崇敬会は、東方Projectを応援する企業や個人が集まって結成した団体なんですけど、アニメイト、ゲーマーズ、メロンブックス、とらのあなといった同人グッズを扱っている企業から、ブシロードやアークライトといったカードゲーム系の企業まで、いろいろな商業メーカーに参加してもらっています。それで2017年から、アトレ秋葉原などで「博麗神社 夏祭り」といった催事を開催しています。直近だと2020年9月16日から30日まで、アトレ秋葉原とコラボして「博麗神社秋祭り2020」を開催する予定です。
他にも最近では、2020年5月18日に開催される予定だった「博麗神社例大祭」が中止になり、同人サークルだけでなく商業のメーカーさんたちも大きなダメージを受けた情勢に対応すべく、博麗神社崇敬会から、「東方Projectの商業グッズだけを集めたサイトを作らせてほしい」という話をして、ZUNさんに名付け親になってもらって「東方やおよろず商店」というWebサイトを立ち上げました。このサイトには前提として、例大祭を支援するという役割もあります。
東方のトレカゲーム参戦を依頼するため、アニサマの会場でZUNさんに突撃
——是空さんが東方Projectに関わるきっかけとなったのは、そもそもどんなことだったのですか?
是空氏:
僕は自分の会社を立ち上げる以前から、もともとトレーディングカードやカードゲームの仕事をやっていまして。カードゲームで有名なブシロードの木谷高明さんとは、もう30年ぐらい一緒に仕事をさせていただいてます。
さまざまな業務をご一緒してますが、中でも、ブシロードから2009年に発売された『ChaosTCG』【※1】というカードゲームのアソシエイトプロデューサーを、最初から最後まで10年間務めていました。その立ち上げ時期に木谷さんから「『ChaosTCG』に何か、驚きのタイトルを参戦させたい」と相談を受けたんです。それがきっかけになって世に出たのが『東方混沌符』【※2】ですね。
※1 『ChaosTCG』
ブシロードから2009年に発売された、対戦型トレーディングカードゲーム。アニメやゲームの人気キャラクターの中から、プレイヤーのパートナーとなるキャラを選び、パートナーと協力して対戦相手と勝敗を競う。2019年2月をもって、商品展開を終了している。
※2 『東方混沌符』
OS(Operating System)と呼ばれる『ChaosTCG』の参戦作品の1つとして、東方Projectのキャラクターたちがカード化されたシリーズ。ただし本文中にあるように、通常の『ChaosTCG』とはやや異なる扱いとなっていた。
——是空さんがZUNさんに、『ChaosTCG』への参戦を依頼した時の様子が、ものすごくドラマチックだったという噂を聞いたのですが?
是空氏:
2009年に、ビートまりおさんが「Animelo Summer Live(アニサマ)」に出たじゃないですか。その時にZUNさんも、会場まで見学に来られていたんです。
——当時、ドワンゴで「アニサマ」を担当していた伴龍一郎さんが、ZUNさんを招待していたんですよね。
是空氏:
そうなんです。じつはその時、ZUNさんのいた関係者の部屋が、ブシロードの関係者部屋と隣同士だったんですよ。木谷さんから「隣は上海アリスらしいよ」と聞いて、「じゃあビジネスの話をしに行きましょうよ」と。そこからですね、僕が東方Projectと明確に関わるようになったのは。
当時のアニサマは2日間開催だったんですが、僕らがZUNさんを訪ねて行った時は、ちょうど初日の終わり頃だったんです。そこで、本当は次の日には来ない予定だったZUNさんに、無理を言って2日目もアニサマの会場に来てもらうようにお願いをして。それで僕は徹夜で企画書を作って、「東方Projectを『ChaosTCG』に参加させてください!」と、ZUNさんにプレゼンしたんです。
——「あの時の是空さんはスゴかった。ものすごく厚い企画書を持ってきて、ZUNさんの目の前にバーッと広げて」と、伴さんがよく言ってましたよ。
是空氏:
みんながあぐらをかいているところに企画書をバーッと広げて、ZUNさんに「結論から言うと『ChaosTCG』に参加してほしいんですけど、どれくらい期間がかかりますか?」と聞いたら、「よく分かんないけど、僕がカードゲームを作ると3年かかるよ」と言われて。「じゃあタイトルだけ借りるためにはどうしたらいいですか?」と聞いたら、「二次創作は認めているけど、版権を直接許諾することはしない」と。
それでいろいろと聞いていった結果、今ではスマホゲームとかでもやっている「これは二次創作です」という形で商業展開する案が、その場で紹介されたんです。しかもそれだけじゃなくて「流通制限もある」と。商業のカード流通ではダメで、同人流通でしか売ってはいけないと言われて。
カード流通って卸問屋さんとかが大事で、古いお店は全部問屋さん経由なんです。一定の掛け率で商品を問屋さんに預けて商売してもらう。同人流通とはまったく違う背景がありました。僕としては、この条件をそのままブシロードに持っていくとトラブルになるだろうと予測できたので、「じゃあアクシア社が間に入ります」と提案しました。それで2010年に『東方混沌符』というタイトルで、アクシアから発売できたんです。アクシア社がブシロードのカードゲームシステムをお借りして、東方Projectを題材に発売するカードゲームですね。
——ということは、カードゲームとしてのルールは『ChaosTCG』と同じだけど、あくまで同人的な二次創作による、ある種の外伝みたいな形だったんですか?
是空氏:
そうです。だから最初の頃は、『ChaosTCG』の大会では『東方混沌符』のカードを使えないレギュレーションになっていました。流通もカード流通には流せないので、代わりに直売のイベントを開いたんです。そこにカードショップの人が買いに来て、それを自分のお店で中古として売るという形になっていました。
そのうちに「『ChaosTCG』のキャラと『東方混沌符』のキャラで対戦したい」とか、ユーザーさんからいろんな要望が出てきて。それを5年くらいかけてお伝えしていると、だんだんと「カード流通で売ってもいいですよ」というふうになってきたんです。そうやって少しずつ、風穴を開けていった感じですね。
——ZUNさんに信頼されるようなビジネスをずっと積み重ねてきて、「是空さんなら信用できる」ということになっていったわけですね。それにしても、アニサマの会場でいきなりZUNさんのところに飛び込んでいって、それでよく話を聞いてもらえましたね。
是空氏:
じつはここにもビックリするような話があるのですが、説明がちょっとややこしいので、また後でお話しします。
——えっ、そうなんですか? それは気になりますね……。
コラム:東方が『ヴァイスシュヴァルツ』に参戦する可能性もあった
漫画家として、コミックマーケットや『ゲーメスト』誌上で活躍
——ここまでのお話だと、バリバリの商業の人のように見える是空さんですが、もともとは同人誌即売会で大人気のサークルを率いていた漫画家だったそうですね。マンガを描き始めたのはいつ頃ですか?
是空氏:
漫画家としてデビューしたのが、19〜20歳の頃です。僕は川崎市立工業高等学校(現在は川崎市立川崎総合科学高校)の出身で、プログラムを勉強していました。それが18歳あたりで急に「漫画家になろう」と言い始めて。じつは東芝に就職が決まっていたんですけど、それを蹴って「漫画の専門学校に行く」と言って、親とケンカになりました(笑)。
——それはたしかにケンカになりますね(笑)。漫画家になりたいと思ったきっかけは?
是空氏:
コミックマーケット自体は中学生の頃から行っていたので、オタクではあったんですけど、同時に、昔で言うところの“ヤンキー”的なこともやっていまして(笑)。高2の頃がなかなかヤンチャのピークで、学校から「どこか部活に所属しろ」と怒られたんです。それで「ラクそうだし、オタクだから、ここにしよう」と選んだのが、アニメーション同好会だったんですね。
それでいざ入ったら、「部じゃなくて同好会だから、学校から出る部費が少ない」みたいなことを言われてしまい、なんとかこの同好会を盛り上げたいと思ったんです。そこで3年になったとたんに自分が会長になって、20名ぐらいの規模にしました。
当時、川崎区内の高校にはアニメオタク系の部活がたしか20ぐらいあったんです。その全部に声をかけて、川崎市民プラザを借りて展覧会をやろうという企画を、当時はリーゼントだった自分がやり始めました。僕はその時から他人に声をかけるのはうまかったので、各校に直接電話をかけて交渉して。最後には神奈川新聞だったかな? 取材も来ましたよ。
——それはスゴいですね。
是空氏:
この活動にあいだに、自分たちで同人誌を作っている他の高校の人たちにやり方を教えてもらったりして、「マンガって面白いな」と感じて、漫画家になりたいと思ったんです。
それで専門学校に通うようになって、学校の仲間で同人誌を作ってコミックマーケットに出てみようということで作ったのが、いまだにサークル名として使っている「剣聖覇皇商会」です。この前アニメ化された『超可動ガール1/6』のOYSTER(オイスター)さんは、もともと一緒に同人サークルをやっていた仲間です。当時40名ぐらいいた仲間のうち、今でもクリエイター活動やってるのは僕らくらいですね。
——同人誌を作ってコミケにデビューしたのが、18歳の時ですか。
是空氏:
高卒後の18歳から19歳のあたりですね。そこから角川書店のカット系や成人マンガなどで商業デビューして。ほかにも『ゲーメスト』のアンソロジーコミックや4コマコミック集で描いていました。『ゲーメスト』は雑誌のほうにもイラストやレポート漫画を描いたりしていて、そこで「是空とおる」の名前を知ってもらっている方もけっこう多いですね。声優の安元洋貴さんに初めてお会いした際に「是空です」と言ったら「とおるさん?」と聞かれて驚きました。僕の4コマ読んでいたと、本人から聞きました(笑)。
——『ゲーメスト』で描いていた、ということはゲームもお好きだったのですか?
是空氏:
好きですねぇ。ジャンル問わず。高校でプログラム専攻したのはその影響ですね。僕が専門学校にいた時に、スーパーファミコンで『ストリートファイターII』が発売されたんです。それを友達と徹夜で遊んで、「これで同人誌を作ろう」と。当時の同人誌で人気のジャンルといえば、『ストII』と『セラムン』でしたから。
初めてコミケで頒布したコピー本が速攻で完売したので、次はオフセットで作ったらまた売れて。その次に『セラムン』のエッチな本を作ったら、それもすごい売れたんですよ(笑)。振り返ってみれば、参加していたメンバーがみんな画力も高くて、内容も面白かったということに、後から気づくんですけど。だから恵まれてはいたんです。僕自身も小器用にやらせていただいていたので。
そんなこんなで20歳から23〜24歳ぐらいまでは、マンガを描いたり同人誌を作ったりしていました。『ときメモ』の同人誌を作った時がピークでしたね。
——ということは、壁サークル【※】だったんですか?
※壁サークル
コミックマーケットの会場では、行列のできる人気サークルが整理の関係上、建物の壁沿いに配置されている。その中でも特に人気の高いサークルは、建物の外へと行列を伸ばすために、出入口のシャッター前に配置されていることが多い。
是空氏:
シャッター前まではいきましたね。晴海のA館【※】まではいけなかったんですけど。
※晴海のA館
コミックマーケットの会場が幕張メッセから晴海の東京国際見本市会場に戻った1991年8月の夏コミから、1993年12月の冬コミまでの間、特に長い行列のできる超人気サークルが、A館に集中配置されていた。
レポート漫画の取材から、なぜか人気声優のマネージャーとなることに
是空氏:
このままいけば同人出身の漫画家で終わるんですけど、じつはここから、僕のややこしい人生が始まるんです(笑)。
ある日、僕が『ゲーメスト』の編集部に原稿を提出に行ったら、「この後、ヒマ?」と聞かれて、『ストリートファイターZERO2』の声優さんを取材した4コマ漫画を描くことになりまして。そこでお会いしたのが、春麗とローズ役の宮村優子さんだったんです。
——宮村優子さんというと、『エヴァ』のアスカ役で有名な方ですよね。
是空氏:
その時は、ちょうど宮村さんが歌手デビューした時期で、「インストアライブを見に来ませんか?」と声をかけられたんです。それで見に行くと、今度は「ラジオの収録を取材に来ませんか?」という話になって、そんな感じで宮村さんやレコード会社のスタッフさんと、だんだん仲良くなっていったんですね。
ちょうど『新世紀エヴァンゲリオン』が大ヒットした直後で、宮村さんが全国でライブツアーをやられた時期でもありました。僕は取材陣としてカメラ・ライター・イラストとかをやりつつ全国ご一緒したんですね。岩田光央さんと一緒に(笑)。もちろん現場もお手伝いしました。そういうこともあって宮村さんやレコード会社の方々から信用を得まして、宮村さんが当時の所属事務所を辞めて独立することになった時に、「マネージャーをやってくれないか」という話が僕に来たんですよ。
——それもまた、かなり唐突な話ですね。
是空氏:
さすがにどうしようかと思って、周りの友人に相談したんです。『ゲーメスト』で知り合った漫画家さんたち、『鋼鉄天使くるみ』の介錯さんだとか、一緒にサークルやってる『コットン』の水上広樹さんだとか。あとは当時、僕のアシスタントをやってくれていたのが、後に『ぱにぽに』を描く氷川へきるさんで。
そのあたりのメンバーに「宮村優子さんのマネージャーにならないか、という話が来てるんだけど」と相談したら、「そんなフラグ、そう簡単に立つもんじゃないからやれ!」と言われて。介錯さんやへっきーからは「オレたちがバックアップするから」と言われたんだけど、よく考えたらマネージメント業務なんて誰もやったことがないので、バックアップできるわけがないんですよ(笑)。
それで宮村さんのマネージャーをやることになったんですけど、あの時は本当に大変でしたね。まだ20代で超元気だった自分が、3カ月に1回倒れましたから。
——そこまで大変なんですか!
是空氏:
宮村さんは当時、レギュラーのお仕事を10本以上抱えていて。朝から晩まで宮村さんに同行して、お家まで送っていった後に、僕は事務所に戻って書類仕事をして。夜中の2時、3時に自宅へ帰ってきて、次の日の朝8時には宮村さんを迎えに行くという。そういうスケジュールでずっと仕事をしていたので、3カ月に1回は倒れます。それで半年に1回ぐらいは、今度は宮村さんが倒れるっていう。「大丈夫なのか、オレたち?」みたいな。
——独立したばかりで仕事をあまり断ることもできず、という状況ですよね。
是空氏:
とにかく宮村さんの仕事に対する情熱に押されてた感じですね。このときに出会った方々や人脈、考え方はいまでも僕を支えてくれています。あと、宮村さんのマネージャーをやっている時にいちばん大きく変化したこととして、僕はそこで無版権の同人誌を作るのを止めているということですね。
——というと?
是空氏:
僕は本名が信二じゃないですか。「アスカのマネージャーのシンジ君」って、いろんなところでいじられていたんです。それ自体は別にいいんですけど、「あのマネージャーは漫画家の是空とおるらしいぞ」というのが広まっちゃって、宮村さんのラジオの公録会場とかに、僕の同人誌を持ってくるファンの方が現れ始めたんです。僕は『エヴァ』の同人誌も出したことがあったので、そういうのを持ってこられると、宮村さんのお仕事にも悪影響が出かねないので。
そういうこともあって、コミケに参加して同人誌は頒布しているんだけど、無版権の二次創作本は出さなくなったんですね。僕自身が仕事として関わっているものだとか、アクアプラスさんみたいに公式から「同人誌を出してもいいよ」と言われているようなものは、出していましたけど。
この時の経験から、僕のIPというものに対する考え方、版権に対する関わり方の根幹が作られたんだと思います。
——是空さんほど同人と商業の区分けを気にされる方は珍しいと思っていたのですが、そういうきっかけがあったんですね。それで宮村優子さんのマネージャーは、どれぐらいやられていたんですか?
是空氏:
1年ぐらいですね。もともと「次の事務所に落ち着くまでのあいだ、手伝ってよ」と言われていたので。1年も経つと落ち着いてきたので、「じゃあそろそろ漫画家に戻りますね」という話をしていた時に、当時はブロッコリーの社長だった木谷高明さんから、連絡があったんです。
前編から是空氏にまつわる不思議な縁や衝撃の事実が盛りだくさんとなったインタビュー。明日更新予定の中編は、宮村優子さんのマネージャーを辞めてからのお話です。お楽しみに!
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