開幕と同様、平安のエイリアンのサビメロディーと共に、スピ―ディーに視点が切り替わる封獣ぬえのアタックムービーが流れます。“次の演者は正体不明”ということなのでしょうか？
……ワクワクドキドキが止まらない！

　そして正面のスクリーンに映し出された文字は……森羅万象！二番手は、森羅万象だ！

　フロアも大いに沸き立ちました。期待を込めた眼差しがステージに向けられ、一瞬の静寂が訪れます。さて、一曲目はどう来るのでしょうか？　

VAMP紅魔!　Who are you?

　そう、一曲目は『悪戯センセーション』！

　森羅といえばこれ！というくらいにみんな大好きな鉄板曲！突然エース級の曲で殴りかかってきました。そして背景には巨大なスクリーンにあのPVが！

　これにはフロアの皆もたまらず、あっと言う間に会場全体の熱気が最高潮に。

「鬼がかった高火力で」
「わかんな～い」
「あなたが押したからでしょ」
「聞こえな～い」

　気づけば、ステージ上にはスカーレット姉妹が――いや、あやぽんずさん、あよさんの二人がお互い指差して姉妹喧嘩をしていました！　やんちゃな妹を指さし詰問するレミリアあやぽんずと、そんな姉に対して首を傾げてしらばっくれるフランドールあよ。

　サビでは二人とも右に左に、舞台中を駆け巡ります。動きの一つ一つが最高にキュート。この館を滅茶苦茶に引っ搔き回す姉妹のステージはどんどん加速していき……

VAMP紅魔‼　ちょちょいのちょい　Fooo‼

　この追い込みで完全にタガが外れてしまいました。『Fooo‼』を一緒に声出しできる！　なんて素晴らしいことでしょう！　『一曲目からこれで体力が持つのか？』なんて心配してる場合じゃありません。踊れ！　騒げ！　感じるままに楽しむんだ！

　嵐のようなラストスパート、最後の最後まで騒ぎきって、気がついたら一曲終わっていました。アウトロがほぼ無い曲であることも理由の一つですが、それ以上に“我を忘れる”という言葉が一番しっくりくる余韻の感覚でしょう。こうもされたらもう止まらない！

　熱をそのままに、続く2曲目は『カリスマ煉獄天神』。悪戯センセーションと同じく、大画面にあのPVが流れる！

　こっちはもう一曲目から“できあがって”います。オリエンタル・リフ調のダンサブルなBGMにノせられ、観客席側も自然に体が揺れていきます。

　あやぽんずさんの語りかけるようなパートから、あよさんのラップパートへつなぐ。そして二人で、

＜Notis Notis Notis Notis Notis Notis No…>

　徐々に調子を上げていく曲調に、フロア側の人々は抗えようはずもなく、どんどん体の動きが大きくなっていきます。これが逆らう気力を失わせる程度の能力か！

　そうして口火を切る『お願い』……

レキレキ煉獄天神！＜天神！＞
歴然レキ憐憫＜憐憫！＞

　一気に爆発しました。サビまで溜めに溜め込んだ熱量が、地獄の業火のようにフロアを熱します。これにコール＆レスポンスも続き、＜天神！＞＜憐憫！＞＜Woh Woh＞……ああ、みんなこの熱にやられてしまっている……私たちは、どうにもこの音楽には逆らえないようです。

あなたは私の奴隷です

　そうしてトドメとばかりにラストのサビ前には一瞬の静寂が訪れ……

私のこと、心から、愛してくれますか

　この瞬間、フロアから、どっと歓声が湧きあがりました。熱狂の渦！全てが吉弔の虜に！

レキレキ煉獄天神！＜天神！＞
歴然レキ憐憫＜憐憫！＞
＜woh woh＞
ぎゅっとしてよHell＜Hell！＞

　フロアの全てを意のままに操るステージング。熱に浮かされた人間霊わたしたちは狂ったようにコール＆レスポンスを繰り返します。

逃がさない＜Hey!＞

　自然と体が動き、声が出てしまう……もう、自分が自分じゃなくなってしまったような気さえします。しかし嫌いじゃない。むしろ心地が良い。そんな甘い地獄に浸ったまま、最後は視界いっぱいに映し出された吉弔と、二人の『愛してください』で締められました。こんな地獄ならずっと浸っていたい。

　そして一呼吸。1曲目とは別種の“熱”を感じたまま、MCタイムが訪れます。

「カリスマ煉獄天神は元々コール&レスポンスが出きる曲だった」「そんなときにヤツ（コロナ）がきて……」とあやぽんずさん。そう、カリスマ煉獄天神は合いの手を入れるタイミングが豊富な、ノリの良い曲です。考えてみれば、頒布されたのは2020年の5月。

　今までの我々は、カリスマ煉獄天神の真の実力を知らなかったのです。今回のライブで、そのポテンシャルが最大限に発揮されました。

　みんな揃って＜woh woh＞＜Hell！＞＜Hey！＞とコールする。それが楽しいなんてわかっていたのに、いざ実際にやってみると想像以上に楽しい、気持ちが良い！　フロアが熱狂した理由も頷けるというものです。改めて、声が出せることの素晴らしさを噛み締めました。

あよさん「こっち(フロア右側)」
フロア右「ワァァァァァ！」
あよさん「こっち(フロア左側)」
フロア左「ワァァァァァ！」

　左右に動き回って観客と遊ぶあよさん。それに応えるフロア。
　そして、『みんなの言葉が聴きたかった』とあやぽんずさん。
　わーわー騒いでいるだけなのに、本当に楽しい。この時間がたまらなく愛おしい。

　続く三曲目は……？「トンテン、カンテン……」絞られた暗めの照明と、会場に鳴り響く硬質の音。ここは、坑道なのでしょうか。ふと目をやれば、あやぽんずさん、あよさんの二人が採掘作業をしていました。ああ、振りかぶった手の先にツルハシを幻視してしまう……

ドカーン！

　そんな様子を見入って(聴き入って)いると、静寂をブチ破る爆発音が坑道に鳴り響きました。開幕を告げる発破用の『ダイナマイト』だ！

　落ち着いたイントロから打って変わって、おもちゃ箱をひっくり返したように、コミカルで忙しない音が鳴り響きます。なんだ、なんだと騒めき立つフロア側。それもそのはず、『ダイナマイト』は夏コミの新曲。鉄板曲を抑えてこれが来るとは思いもしなかったでしょう。

トンテンカンテン夜明けまで音鳴らせ
dig up dig up dig up Ho!
トンテンカンテンあの世まで鳴り響け
dig up dig up dig up Ho!

　音に合わせてリズミカルにツルハシを振るうあよ＆あやぽんずの二人。

　フロアのライブ経験値はゼロと言ってもいい曲ですが、ここまでの流れにのせられた私たちには関係ありません。次の瞬間には『dig up dig up dig up Ho!』しちゃっていました。尋常じゃない対応速度！

ダイナマイト ダイナマイト woh
ダイナマイト 愛の心で

　もうサビのフレーズも一瞬で“掴んだ”！『これぞキャッチーの極致』といっても過言ではないくらいにフロアの心を鷲掴みにしちゃいます！合間に挟まれる『ハッ！』『フッ！』『ヤッ！』の掛け声もめちゃくちゃ楽しい！

　四曲目は『さよならヒストリー』。ダイナマイトに続き、またもや今年の新曲を繰り出してきました！　最近PVが発表されたことでも印象深い曲です。まさか二連続で新曲をやるとは……限られた出演時間の中で、挑戦的なセトリです。ですが、この盛り上がりようなら何の問題もありません。

　そして寺子屋ロマンチカ開幕。二人の『wah、wah』の声とともに、「懐かしき東方の血」の切ないメロディーが会場を包み込みました。ハチャメチャな一曲目、狂乱の二曲目、陽気で浮かれた三曲目とは別種の“熱”です。

　エモに極振ったメロディーにフロアも酔いしれ、大きなうねりが出来上がっていました。しかし程よくスピード感のあるサビと、二人から次々繰り出される二重唱形式の歌声が、観客側に静かな火をくべていきます。

　次第に熱量が高まっていったところに、ここで大サビ前の間奏！　突然クラブミュージックのドロップのように、ノイジーなメロディーが流れます。クライマックスへ向かう加速感にこの縦ノリ、これはノらざるを得ない！　その衝動はヘドバンという形で体の動きに出ていました。フロアの皆が一心に手と頭を振っている……

wah wah もう我慢できないわ
wah wah 寺小屋ロマンチカ

　最後は力ある限り『wah wah』と叫びました。寺小屋ロマンチカ、これにて閉幕です。

　そして最後のMCタイムへ。

　続くMCタイムで、森羅万象からは来る12月のコミックマーケット101参加の告知が。

「夏コミ、紅楼夢、秋季例大祭と全部新譜出してます」と鼻を鳴らすあやぽんずさんに、フロアからは「えらーーーい！」の歓声が。もうここまで来たら、自然とノリの良い声が返ってきます。声が出せるって、本当に楽しいですね！

kaztoraさん「つながる」
kaztoraさん＆フロア 「東方ーーー！！」
フロア「Fooooo‼」

　kaztoraさんが音頭を取って最後にコール・アンド・レスポンス。そうして迎えたラストの一曲、五曲目「星降る夜の二重奏アンサンブル」。

　最後の締めはしっとりめの曲で！　これは……これはずるいですよ。「シンラミュージック4(最新)」に収録された「さよならヒストリー」から「シンラミュージック(無印)」の「星降る夜の二重奏」へのバトンタッチ！

『今までの森羅万象を全部ぶつけてやる』そんな意気込みが伝わってくるようです。

　いざ始まれば、ステージ側が煽らずとも自然とクラップが鳴り響きます。そして歓声は止みません。優しい青のライトを見つめていると、なんだか視界が滲んできました。コロナにも負けず、やっとここまできた、声出しライブまで漕ぎ着けてきたんだ！

あよ『自由な』あやぽんず『 わたしの』
『『音楽を』』
『『誰かの為じゃなしに声上げる絶頂！』』

　自由な音楽を奏でる九十九姉妹と、今ここで！私たちが一緒に歌えること！　その姿が重なりました。前の4曲ともまた趣向が違い、おそらく一番おとなしい曲ですが、このどうしようもない胸の熱さと高鳴りは止めようがありません。締めの曲にこれを持ってくるのは本当にずるい！

『どうか終わらないでくれ』そんな気持ちが胸をよぎるほどに、この音をずっと聴いていたいと感じました。きっとそれはフロアのみんなも同じ思いでしょう。

　しかしどんなライブにも終わりは訪れます。名残惜しいですがこれで最後。

　みなが熱狂した世界、その世界の最後。森羅万象が生み出した幻想郷(ステージ)はこう締めくくりました。

『『音の雨降り注げ合唱！』』
あやぽんず『二人で一片の作品うたを』
あよ『紡いでく作品うたを』

 

セットリスト

１.悪戯センセーション
２.カリスマ煉獄天神
３.ダイナマイト
４.さよならヒストリー
５.星降る夜の二重奏