東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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コロナ禍におけるサークル事情―大学東方サークルインタビュー(前編)

大学東方サークルインタビュー

 コロナ禍によって人の集まりが著しく制限されるようになった現在。その影響は教育機関も例外ではなく、多くはリモートでの受講を余儀なくされています。

 そうした、学生が集まることのできない状況下において、大学サークルもまた、対応を迫られていました。従来通りの活動が難しくなった現状で、学生たちはどのように活動を継続していったのでしょうか。

 このインタビューでは、コロナ禍の大学東方サークルを経験した3名に、お話をうかがいました。

聞き手/西河紅葉
文/紡

 

いどみず @Idomizu_oishi / 東方理學団 @toho_nodaTUS

戎瓔花ちゃんが大好きでよく描いています。瓔花ちゃんってかわいいんですよまじで。

pixiv

おみず @dedicated_water東工プロジェクト @toukouproject

東工プロジェクト現代表。原作るなてぃっく遊んだり絵を描いたり。
第8回秋例大祭ではサークル参加して初めての漫画本出しました。嫌いなものは締め切りです。

はちじ @StarLotusShip8東大幻想郷 @UTgensokyo

GUT(東大幻想郷)前代表。東方原作を主にプレイしています。
好きな東方作品は天空璋と星蓮船です。

 

むしろ対面のころより活動が活発化しました

――本日は、お集まりいただきありがとうございます。この度、3名の方にお集まりいただきました。早速ですが、自己紹介から始めさせていただきます。

おみず(東工大):
 東京工業大学の大学東方サークル「東工プロジェクト」にて、現代表を務めさせていただいております、おみず(東工大)と申します。
 個人としては、原作を遊んだり、Twitterでイラストを投稿したりしています。あと、音楽関連も少し触っています。

いどみず(東京理科大):
 東京理科大学の大学東方サークル「東方理學団」の元代表・いどみず(東京理科大)と申します。
 最近はちょっと忙しくて、原作は遊べておらず、創作メインで活動してることが多いです。

はちじ(東大):
 東京大学の東方サークル「東大幻想郷」にて、昨年度の代表を務めさせていただきました、はちじ(東大)と申します。
 活動としては、主に原作をプレイするほか、部内ではボードゲームを通した交流をしています。

――現在、感染症によって大学も影響を受けています。授業形態などもオンラインが主流になっているように、大学サークルの活動も従来の形態から変更を余儀なくされているものと思います。
 大学サークルの近況を知る皆さんから、実際に、現在の大学サークルはどのような活動をしているのか、どのような状況なのかといったことについて、生の声をお聞かせいただければと思っております。

おみず(東工大):
 東工大は、今でもほとんどオンラインで活動してますね。基本的に授業は全部ZOOMで、大学に行くのは実験のときぐらいです。
 ZOOMに移行したのは去年の4月ころからですね。私のところは実験も昨年度からZOOMでやっていました。そのあたりは教授も結構苦労していたみたいで、実験の様子を手元のカメラで録画して、それをZOOMの画面で流しつつ説明して、という感じでした。

――通信教育のような形になりつつあるんですね。その状況だと、大学の友人との交流はどういう状態なんですか。

おみず(東工大):
 ほとんどないですね。私はいま3年生で、1年生のときは普通に大学へ行ってました。コロナ以前の1年生当時の交流は続いているものの、2年生以降の講義で一緒になる人たちとの面識はほぼありません。

――講義で同じZOOMに入ってはいるものの、ほとんどもう知らない人ばっかり、みたいな状況だったりするんですね。

おみず(東工大):
 そうですね。1年生のときに広く交流が作れていれば、知り合いも多いんでしょうけど、2年生以降での出会いは、ZOOMだけですからね、厳しい面もあります。

はちじ(東大):
 東京大学は、東工大さんと同じようにいち早くオンライン授業を取り入れていて、去年4月の段階からZOOMを使ったオンライン授業をやっている状況でした。
 去年はそれこそ、実験も極力オンラインでしたが、去年の秋冬から今年の春あたりにかけて、徐々に緩和されるようになりました。もちろんオンライン授業も多いんですが、オフラインの対面で実験できるようになったり、講義形式の授業も対面でできるところが増えてきている感じですね。
 私の学部が特殊な制度というか、対面とオンラインを併用するという特殊な制度を取り入れているのもあり、今では週1~3回ほど通学しています。

いどみず(東京理科大):
 東京理科大は、学部や学科によって異なりますが、去年は基本的に全部オンラインです。実験だけは人数制限をかけたうえで、対面で行っていました。現在は、少しずつ対面の授業も増えているそうです。
 学部生はそうなのですが、僕のように研究室へ配属された人は、なにはなくとも実験しなきゃいけないわけです。なので、週5で毎日大学に行って、ずっと研究室に入り浸る生活になっていました。

――実験内容や使用する器具の都合で、研究室に行かないとどうしても実験ができないという。

いどみず(東京理科大):
 そうですね。そこは難しいところですね。知り合いにも院生がいるんですけど、やっぱり似たような状況だというのは聞いてます。「コロナだけど、あんまり関係なくなってる」と。

――実験をしなければ研究が行えない分野ですと、本当に大変ですね。
 続いて、大学での東方サークルの活動についてお聞きしたいと思います。去年から今年にかけて、大学に顔を出す、サークルメンバーで集まるといったことが難しい状況下で、皆さんはサークルの活動をどのようにされていたのでしょう。

いどみず(東京理科大):
 去年から対面での活動が禁止になったので、オンラインに活動を移すことにしました。
 最初はZOOMとかで活動してたんですけど、やっぱりちょっと利便性がよくないっていうことでDiscordで遊ぶようになりました。
 そうすると、Discordでは東方の原作や二次創作ゲームの配信とか、Rythm(※)などの音楽再生botで音楽を流したりもできますから、単純に集まってゲームをするっていうだけじゃなくて、半分作業部屋みたいな感じで。

※Rythm
Discord上で音楽を楽しめるbotサービス。現在はサービスが終了している。

 音楽流しながら曲を作ったり、絵を描いたり、雑談したり……と、Discordメインになって、むしろ対面のころより活動が活発化しましたね。
 また、オンラインの活動が中心となったことで、他大学のサークルとの交流を考えるようになりました。明治大学さんや東京大学さんとも交流させていただいたり、他大学とも交流を持つようになって、サークル活動としては活発になっていきましたね。

――Discordは本当にサークル活動に向いているツールなんだなだと、改めて思いますね。

いどみず(東京理科大):
 そうですね。なんだか上手くハマった感じです。

――ちなみに、東京理科大の東方サークルの部員は現在何名ほどいらっしゃいますか。

いどみず(東京理科大):
 だいたい11人ですね。
 修士1年が1人、4年生が2人、3年生が1人、2年生が3人、1年生4人ほどで、むしろ最近の人のほうが多いです。先ほど、オンラインの活動が活発になった話をしましたけど、それも要因なのかなと考えています。

――集まるのが難しいなかで、逆にオンラインの場がコミュニティとして非常に機能していて、メンバーも増えたのですね。

いどみず(東京理科大):
 そうですね。オンラインだと、むしろオフラインで会うよりやりやすいので、本当に毎日集まって何かいろいろやってたりします。

――東工大ではいかがでしょうか。

おみず(東工大):
 東工大でも、2年ほど前からDiscordサーバーを立ててオンラインでも活動していました。コロナ禍以前は、オフラインで集まった時には原作やボードゲームなどで遊んでいましたね。オンラインでも画面共有で似たようなことはできますが、集まる機会も不定期になりがちで、活動自体の頻度は落ちています。

 所属メンバーは35人ほどです。2年生が2人、1年生が1人と少なくて、修士課程を含む4年生以上の層が厚いですね。東工大は大学院まで進む人の割合が多いので、その関係で4年生の層が多くなっています。

――東京大学はいかがですか。オンライン活動などは行なっていますか?

はちじ(東大):
 まず前提として、私のサークルは他大学と状況が違っていて、大学構内に自由に使える部室を持っているんです。部室の中に、原作ができるパソコンや東方の書籍が置かれていて、空いた時間に自由に出入りができる状態でした。ただ、昨年の4月から部室が使用禁止になり、そこからオフラインでの活動ができなくなっていきました。

 そこからは、ほかのサークルさんと同様にDiscordを導入して、オンラインでの活動ができないかと模索するようになりました。当初はそこそこ上手くいったんですけど、やはり、サークルが部室に依存していたからか、途中から活動が停滞してしまっていた状態です。

――部室が使えなくなると、交流の仕方が変わってしまう難しさを感じます。

 

原作してる人と創作してる人がだいたい半々ぐらい

――次に、勧誘についてもお聞きしたいと思います。基本的に、今はオンラインでの勧誘になるかのかと思いますが、1年生の方はどのようにしてサークルを知るのでしょうか。

いどみず(東京理科大):
 理科大の場合ですと、新入生が健康診断などで大学に来るタイミングがあるんです。
 そこで、僕らが対面で活動することは禁止されてはいるんですが、学内にある教室にポスターを貼ることができるんです。ポスターには、たとえばTwitterやサークルのリンクを載せて、詳しい活動やオンライン新歓の日程はリンク先に、という形にして。

おみず(東工大):
 東工大学は大学サークルの有志連合があって、新入生勧誘用にDiscordサーバーを作るんです。そこで、各サークルの代表が紹介するシステムですね。

はちじ(東大):
 Twitterアカウントがあるので、勧誘ツイートを部員が拡散する方法で広めています。
 部員は50人以上はいますね。2年生が4人、1年生が12人ほどです。今年はTwitterも含めて宣伝に力を入れようと部員同士で進めてきたので、その成果が出たのだとすれば大変嬉しいです。

――それぞれの東方大学サークルさんの中で、個人のサークルを持っている方はどのくらいおられるのでしょう。サークルを持たれていなくても、絵を描いている、音楽、ゲームを作っているなど、なんらかの創作活動をしている人は、どれくらいいらっしゃいますか。

いどみず(東京理科大):
 うちはちょっと特殊で、多分6割強ぐらい創作してるんですよね。
 もともと創作を結構やるサークルではあったんですけど……、強いて言うなら、僕とかが新入生に対して「いや、絵が下手とか関係ない。描けるなら描け!」って言ってた節があるので、それでやり始めた人が何人かいたりします。
 大学1年生だとパソコンの使い方が分からないんで、「まずはこのソフトをダウンロードして。これ無料だから」って話したり、「ペンタブ? 俺持ってるから貸すよ。っていうかあげるよ」みたいな話して(笑)。

――とってもいい先輩ですね(笑)。

おみず(東工大):
 たしかに、コロナ禍によってそういう作業や創作関連は進みやすくなった感じはありますね。
 私のところは、原作してる人と創作してる人がだいたい半々ぐらいのイメージなんですけど、たまにDiscordを作業配信で使ったり、画面共有による利便性などは創作する上でのプラスになっていますね。

――思ったよりも、サークルの中で創作活動をしている人は多いんですね。嬉しい気持ちになりました。

はちじ(東大):
 うちのサークルは、もともと創作活動をする先輩や同期が、結構多かったサークルではあるんです。ただ、これは先程も言いましたけど、Discordでの活動はあまり盛んにはなりませんでした。
 部員全体の比率としては、東方自体を楽しむ層の割合が多めで、だいたい東方7:創作3ぐらいになるんじゃないかな。

――原作や書籍が置いてある部室を持っている、となると、そこで東方を嗜むのが目的でサークルに入る人も多そうですしね。 東方を楽しむ人たちは7割ということですが、そのみなさんは原作を遊んでる感じなんでしょうか。

はちじ(東大):
 多くは東方原作だと思います。それ以外ですと、先程もおみずさんからの話にもあった、『東方祀爭録』(※)ってゲームがうちのサークルで大変盛んでして、それこそ部室に行って何人か集まったら大抵卓は立ちましたね。それを楽しみに部室に来る層も割といる感じです。

※東方祀爭録
ホビージャパン社より発売されていた東方Project二次創作カードゲーム。世界的に有名なカードゲーム『ドミニオン』を原型としている。

株式会社ホビージャパンより引用

おみず(東工大):
 ボードゲームやりますよね、大学東方サークル。個人的なイメージなんですけど。

――「あるある」なんですね。以前、何回か大学東方サークルの集まりに参加したことがあるのですが、皆さんボードゲームをやられていて(笑)。本当に盛んなんだなと。

 

 前編はここまでとなります。

 後編では、大学サークルでの東方人気や、創作に関するお話をうかがいます。

コロナ禍におけるサークル事情―大学東方サークルインタビュー(前編) おわり