東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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選手は、より強くなって帰ってくる――東方原作STGの国際大会「Touhou World Cup 2023」日本運営座談会 第3回

東方原作STGの国際大会「Touhou World Cup 2023」日本運営座談会 第3回

 前回は、LNBルナティックノーボム2部門についてお話を伺いました。これまでの大会を塗り替えるような大記録。それを打ち出したのが若手、というのが非常に面白いですね。

 今回は、TWCに選手としても参加されたSOCさん、岩魚 (絶)さんに、参加した部門の様子についてお伺いしていきます。

海神(わだつみ)

地霊殿LNN4機体と神LNNN 夏稼ぎ全2など/TWC2023運営代表でした/アイコン→@akarinomiya_a

Twitter: https://twitter.com/wadatsumi_312
https://twpf.jp/wadatsumi_312

SOC

Lunatic全作品全機体ノーミスノーボム・Touhou World Cup運営・RTA in Japan Summer 2023走者参加など東方原作STGを中心に活動。

Twitter: https://twitter.com/soc_saudade
YouTube: http://youtube.com/@soc_th06
Twitch: http://twitch.tv/soc_th06

岩魚(絶)(いわな ぜつ)

永夜抄スコアアタック総合世界一位/救済無しLNN9作品16機体とかやっています。リグルになりたい

Twitter: https://twitter.com/Iwana_Minoriko
https://twpf.jp/Iwana_Minoriko

編集:紡
聞き手・文:おみず

 

トッププレイヤーが立つ「選手」という立場

――SOCさんは第13試合の風神録Lスコアタ、岩魚 (絶)さんは第29試合の永夜抄Lスコアタに、選手としてTWCに参加された、とのことでした。これからは、その出場された部門についてお伺いしていきます。まずはSOCさんの風神録Lスコアタ部門です。注目の試合として挙げられていたということで、始めに岩魚 (絶)さんから部門についてお教えいただけますか?

右上、SOCさんの一走目。難関と名高い「風神様の神徳」ですらスコアのために速攻していきます

岩魚 (絶):
 風神録Lスコアタですが、この試合、とりあえず見てほしいです(笑) SOCさんの最初のプレーは、序盤から非常に高いスコアで。そのままノーミスで走り抜けて、一回目で21.9億っていうスコアを出しちゃって……。最上位勢が数か月かけてようやく出るようなスコアを、です。最初の通しで、一回も被弾せずに最上位のスコアを出してるプレーですって言えば、やばさが分かるんじゃないかな。あとは画面見てください、見どころは全部です。

 昔は風神録の稼ぎをメインでやってたので、何面でいくら稼げば何億でるとかは知っていました。風神録稼ぎには、一回被弾するとスコアが一気に落ちる、という難しさがあります。どんなに頑張っても一回当たってしまったら、他の人が綺麗に繋げたプレーには届きません。大会でスコアを残して勝つために、安定するやり方で21.6億を狙うなんてことも全然ありえます。それでも十分高いんですけどね。

 しかし、SOCさんは安定を取らず、最初から果敢に攻めたプレイングをしていました。超高いスコアの推移で進んでいて、記録を残すためには絶対被弾できない、というプレッシャーが常にかかっていたと思います。それに打ち勝って一発でとんでもないスコア出してきて。エンディング隠しで「風強すぎて終わった」って言ってたけど、逆にSOCさんのほうが強くて、さすがSOCっていう感じでしたね。本人としてはあのプレーどうだったの?

SOC:
 練習は結構していて、ある程度のスコアは出るかもな、とは思っていたけど。まぁ……運?(笑) 確実に上手くいきました。

岩魚 (絶):
 二回目の神奈子戦も、自己ベスト狙って強引に攻めたから当たってしまっただけで、あれも通ればそれ以上の数字が出る推移だったからね。

――二連続であそこまで高いスコアが見られるんだ、と恐々としていました。

SOC:
 スペルカードの取得がスコアに直結する作品なので、スコアを攻めながらノーミスを決めるのがめちゃくちゃ難しいんです。それなのに、今年はプレイヤー全員がノーミスをしていて、驚く限りでした。

 この試合、最後の最後まで逆転される可能性があって。3位のtramsxxzさんの最後のプレーでは、非常に高いスコアだったにも関わらず、天竜「雨の源泉」という後ろから二枚目のスペルで被弾してしまいました。もしもノーミスで通してたら、自分の出したスコアとの差が本当にぎりぎりで……後ろの二枚をスペカボーナス狙いで攻めて取得していれば、たぶんすっごい僅差で負けてたんですよね。惜しくも被弾してしまいましたが、最後まで逆転の芽が残されていた、っていうのが面白かったポイントでした。

 風神録という作品は、スペカボーナスのためにボスを速く撃破する、というのがすごい分かりやすいので。配信する上ではその点も良かったのかな、と思います。今回積極的に攻めてスコアを残せたのは、今まで大会に出てた経験が活きたっていうのはありますかね。

岩魚 (絶):
 緊張より楽しさが勝った感じで……

海神:
 たしかにすごい楽しそうでしたね。

SOC:
 それは半分意図的で、マインドセットのために。

一同:
 あぁ~。

SOC:
 半分意図的で、半分本心みたいな感じでした。今までは、全LNB部門に参加出来るせいで、人がいない部門をやってることが多かったので。新しいことしたいなっていう想いもあって、今年は風神録Lスコアタで参加しました。風神録スコアタは、やりこむほどスコアの伸びを実感できて、練習も本番も楽しかったです。一番最初に触ったスコアタだったんで、当時の気持ちを思い出しながら。

岩魚 (絶):
 ゼロの気持ちで。

SOC:
 そうですね、ゼロの気持ちで挑むことができました。

――皆さん全員が選手として参加されたことがある、とのことですが、大会でプレイをする、ということについて教えてください。

海神:
 すごいプレッシャーがありますよね。

岩魚 (絶):
 自分自身ではあんまり気にしてないつもりなんですけどね。「大会がチーム戦だから勝ったほうが良いよな……」とか考えながらプレーをすると、明らかに安全を取った動きをしていて。自分の話にはなってしまうのですが、去年まで参加した永夜抄Lスコアタでは、そういった戦法に合う機体を使ってたので結果を残せていました。でも今年の永夜抄Lスコアタはそうもいかなくて、勉強させられたな、という内容になってしまいました。やっぱり何回やっても緊張はありますね。

 他にも、試合中の状況にも大きく左右されます。一回良い感じに高いスコアを残せたら二回目は動きやすくなります。逆に相手が上手くいってると、「やばいやばい」みたいに焦ったりとか。だから相手の試合状況を見ない人も結構いるっていうのは……

SOC:
 その辺りの戦略は……人によりますね。

海神:
 今年は見てる人のほうが多かったかな。

岩魚 (絶):
 ノーボムはTWCスコアに限りがあるから、今選んだ機体で満点を目指すことも多いけど、スコアタって相手より高いスコアを出せばいいですから。最初は見て戦略を立てるっていうのは有効なのかなと思うんですけど。相手が今大会のSOCさんみたいな感じで序盤から非常に高いスコアを出してしまうと、まじかぁ、って、諦めの感情が出てくるので。どっちもどっちだな。

海神:
 難しいところですよね。

 

少しのミスが勝敗を分ける、最高峰のスコアタ対決

――続いて岩魚 (絶)さんの参加された永夜抄Lスコアタに移りたいと思います。それではSOCさんから、解説お願いできますか?

SOC:
 永夜抄Lスコアタは、最終週の2試合目の試合でした。まず前提から言うと、岩魚 (絶)さんが今までずっと出場されていて、全部1位だっけ?

海神:
 そうですね。

SOC:
 対戦相手のRiversさんは妖夢単騎一筋でやり込んでいる超上手い方なのですが、前回は秋に行われた予選で破れてしまっていて。妖夢単騎は通しの難易度が非常に高いのですが、TWCスコアにはそれが反映されておらず……という形でした。妖夢単騎って東方スコアタの中でもトップクラスで、ほんとに全てが難しいんですよ。ちょっと触ってみて、「これ無理だ」ってなって止める、みたいなものなんです。

――試合でも一面でかなりリトライさせられていましたね。

SOC:
 そうですね、一面最強のキャラがいるので。永夜抄は自分も稼いだことあるのですが、6面が一番比重高くてそこ頑張らないといけないんです。そのために前半安定させないといけないんですが、その前半がめちゃくちゃ難しくて、全く安定しません。大会ではいつもすいすい進むから、まずそこが凄いです。しかも一番難しい妖夢単騎で……。

 試合そのものは妖夢単騎どうしの戦いで、スコアが高い方が勝ちという分かりやすい試合でした。ずっと妖夢単騎やってたRiversさんと、永夜抄のいろいろな機体をまんべんなくやってきて、今回妖夢単騎に手を出した岩魚 (絶)さんの対決で。始まる前に岩魚 (絶)さんが全一抜いてたよね? 70億出てたんだっけ?

岩魚 (絶):
 せやな。70億出してた。

SOC:
 長らく誰もたどりつけなかった70億の大台を突破して。どっちが勝つんでしょうか、と注目していたのですが……。結果は見ていただきたい。序盤から半分くらいの時点でありえないスコアが出ていて。

Riversさんvs岩魚 (絶)さん。両者とも非常に高精度な稼ぎを披露されました

海神:
 本当に高かったですよね。

SOC:
 ほぼお互いしか出せないくらいの非常に高いスコアでした。試合の最終盤は、Final Runで岩魚 (絶)さんがRiversさんのスコアを超えられるかどうか、というものでした。最後のスコアの推移は風神録のtramsxxzさんのものに近くて、本当に僅差で岩魚 (絶)さんが届かなくて。「永夜返し ‐世明け‐」取ってたら勝ってたもんな。夜明け以外でもあと少し稼げてたら届いてた。60億後半のスコアが出る永夜抄で、最後のスコアの差はたったの400万。ないのに等しいですよ。昔からのトッププレーヤーどうしの試合で、難しい部門の難しい機体なのにあんなに安定したプレイングが見られて、最後あそこまで拮抗するんだっていうのが衝撃的でしたね。

岩魚 (絶):
 あんなぎりぎりになると思ってなかったから。永夜返しを全部取ったら2,3千万ぐらいの差で勝つかなとか思っていて。全部取らないとだめだと思っていたから、最後に結果を見て、そんなぎりぎりだったの?とはなりました。あの息の詰まる状況下で、あんなに難しい夜明けを避けるのは俺には無理だったから、負けに違いないんだけど。そんなぎりぎりだったら、別のところでもう少し稼げてたら……。

SOC:
 それこそ、サラマンダーとかであったよね。

岩魚 (絶):
 そやな、通3でね。弾幕の壁が来て、ボム撃って潜ったらサラマンダー入っちゃって。かなりロスしてしまって、あぁ……ってなってました。

SOC:
 あの分ですら届いてたと思うんで。

岩魚 (絶):
 そんなぎりぎりになってると思ってなかったから。永夜返しでRiversさんがどうだったか知らなくて。待宵当たっちゃったんだっけな?

海神:
 そうです、確か。

岩魚 (絶):
 それを知らなかったから、永夜返しこっち全部取らないと勝てないんだろうなと思っていたんだけど。最後の永夜返しに入った段階ではRiversさんが出した記録と似たような推移だったらしいです。ちゃんと覚えておいて、スコア調整しておけばな~、みたいなことを思いつつも。でもやっぱり、実力不足だなっていうのは感じていて。

 対戦相手のRiversさんは、自分に妖夢単騎の何たるかを教えてくれた人です。自分は幽冥組、幽々子と妖夢のペア機体でスコアタしていて、全一出してたんですけど、妖夢単騎についてはあまり知識がなくて。いざ妖夢単騎やる、ってなった時に、Riversさんからいろいろ教えていただきました。ディスコードで「妖夢単騎について聞いてもいい?」って言ったら、気楽に「いいよ」って返してくれて。

海神:
 外国の方ですが、日本語上手ですからね。

岩魚 (絶):
 普段からRiversティーチャーって敬いをこめて呼んでいて、今回の試合でも先生に勉強させてもらいました。スコアそんなぎりぎりかー!みたいなのと、良い経験できたなっていうのとが交差していました。本当に企画とか対戦相手のRiversティーチャーに感謝してます。SOCさんのターンだったのに自分が締めちゃってますけど。

SOC:
 僕も風神録さんざん喋ったからね(笑) 少し話が変わりますが、今回の永夜抄では、Clioさんという古参のすごい方に解説していただきました。今、永夜抄スコアタをやってる人がそこそこいるのって、この方の影響が結構大きかったです。

 思い返せば、今年の解説の面々ってすごいバラエティに富んでますね。TWC2020だと私が知り合いをなんとかヘッドハンティングして解説を埋めて、という形だったんですけど、今年からは本当に完全に公募になっていて。これまで観戦していた人たちだったり、東方でVTuberしてる方だったり、古参の方だったり。いろいろな方が関わってくれたなっていうのを感じる大会でした。

――実況解説の公募は今年から始めたのでしょうか?

海神:
 去年から公募自体はあるんですけど、去年が26人、複数の解説を担当する人も多くいました。それに対し、今年は52人と、約2倍に増えてまして。本当に色んな人が応募してくれたなと感じています。

――すごいですね。TWCという大会の広まりによるもの、なのでしょうか。

海神:
 そうですね。強く感じましたね。Clioさん来てくれて良かった~。

SOC:
 本当に新しい人から古い人まで来てくれたんで、良かったです。

――それでは最後に、永夜抄LNBについてお願いします。

SOC:
 永夜抄LNBは人が多く、まずオンラインの予選がありました。昔、海外であった「DRC(Dodging Rain Compretition)」っていう大会にならい、ある期間の中で一番良いリプレイを出す、というものでした。それでmofさんと雪だんごさんとタカティンさんが本選に進出しました。mofさんと雪だんごさんが今回運営でいろいろ活動してくださってた方なのですが、その二人が同じ試合に出ていて。また、このころ大会でルールのトラブルがあり、その対応などでとにかく運営が忙しい時期だったのもあり、印象に残っています。それでも運営の二人はしっかり1ミスを出し、タカティンさんも惜しくも3ミス、というハイレベルな試合になりました。

――永夜抄LNBは予選からハイレベルだったと聞きました。

SOC:
 彼らに時間を与えるとほぼ確実にNMNBノーミスノーボムしてきちゃうので。

岩魚 (絶):
 本選では、雪だんごさんが永夜返しで当たってしまって。TWCのルールでは1ミス扱いになってしまうけど、ゲーム的にはNMNBです。普通に本番でノーミスノーボムを決めてるってことなので、運営で忙しい中、それを決めるっていうのは本当にすごい。

SOC:
 彼について言及するなら、こだわりを持って幽冥組を使ってるっていうところですね。熱い妖夢推しなんです。じゃあ妖夢単騎じゃないんだってなるんですけど、そこは永夜抄が二人組で使える唯一のゲームだから、とこだわりを持って遊ばれてます。運営もこなして、推しを使って結果を残して、大変だったねって。そういうとこも加味して見てあげてほしい、そういう部門でした。

岩魚 (絶):
 そういえば、大会とは関係ないんですけども。来年は永夜抄20周年になりますので、皆さん永夜抄のこと、よろしくお願いします。獣王園も楽しいですが、永夜抄大会でも楽しいんで。みんなで永夜抄で盛り上がれる年になったら嬉しいなと思います。

一同:
 永夜抄オンリー大会かぁ。

海神:
 それこそ、Clioさんに開催してもらいたいですよね。

 

選手は、より強くなって帰ってくる。TWC2023の総括

――ありがとうございます。ここまで今年の大会を振り返ってきて、LNMNBとか非常に高いスコアとか、凄い記録が次々出ているという印象を受けました。

SOC:
 今年の選手のレベルは特に高かったな~、という印象でしたね。大会中のLNMNBは5個ぐらいあるのかな、見落としあるかもしれないですけど。

岩魚 (絶):
 スコアタ部門でも全1ペースで進めている人いましたからね。

SOC:
 輝針城のスコアアタックで東方プレイヤー、というかもはや研究者のような方がいるんですけど。その方がとんでもないTWCスコアを出して試合をぶっ壊していった、なんて部門もありました。大会そのものに慣れてきた人も多いですね……別に大会でLNMNBルナティックノーミスノーボム出してる人が慣れてきた人ってわけでもないんだよな。

海神:
 そうですね。何だろうな……

岩魚 (絶):
 スコアタだったら、去年以前のプレイヤーが練習を積んで再び出場して、というのがありますね。天空璋Lスコアタのひろさんもそうかな。もともと強かった人が次のTWCまでにさらに強くなって参戦してるので、確かにレベル上がるよなっていうのはある。

SOC:
 試合との向き合い方とかもちょっとずつ身に付いてきてるのかな。TWCは結構特殊なルールで、与えられた制限時間の中でどれだけいい結果を残せるか、にかかっています。弾幕を集中して避けるのは疲れるから、時間内で体力的にどうやりくりしようとか。一番ベストな結果を出す立ち回りって意外と難しいんです。実力はもちろんですが、試合内での立ち回りに対する理解も広まっているのかな、と思います。

――大会そのものに対する研究も進んでるっていうことですかね。

岩魚 (絶):
 コンディションの整え方とかはみんな意識していて。経験ある人は特に、こうすればより良いプレーできる状態で試合に臨めるな、っていうのをイメージしてます。遅い時間に始まる試合だったら、その日は遅めに起きたりとか。食事の量とかタイミングとか。

海神:
 ちょっと否定できないところが……

SOC:
 そこまでやってるのは、多分一部(笑)

岩魚 (絶):
 去年の永夜抄Lスコアタは朝11時ぐらいのプレーだったんで。私は基本休日は9時とか10時ぐらいに起きるんですが、それだと試合までにコンディションが整わないから、その2週間ぐらい前あたりから常に朝6時ぐらいに起きるようにして、散歩して……

海神:
 しっかりと調整してきてる。

岩魚 (絶):
 散歩すると十何時間後に眠気が来て眠りやすいみたいなのがあるそうなので、それをすることで早く眠れるように。11時に始まる本戦に良い体調で迎えられるように、睡眠のタイミング、生活リズムを調整する、というのをやってましたね。

――体調は弾幕避けに直結するものなのですか?

SOC:
 大会直前まで来ると、実力ってやっぱり変えられないんですよね。調子の影響が大きなゲームなので、一番調整すべきなのがコンディションになります。集中力低いと本来避けられる弾幕も当たっちゃうし。

 大会が4年間続いてきて、大会そのもののプレッシャーというか、大会で結果出さないとっていう気持ちが選手の中でより高まってきているのもあります。もともとあったんですけど、今年はより緊張感が高まっていますね。それも良い方向に働いたのかな。

――ありがとうございます。TWCで出てるスコアって、簡単にはでないものですよね?

岩魚 (絶):
 はい。中でも一番やばい部分は、「1時間程度の時間制限内に結果を出さないといけない」っていうところです。さっきも言いましたけど、風神録Lスコアタの21.9億なんて、3か月かかってやっと出たって言っても全然不思議じゃないようなスコアなので。大会の緊張下と時間制限という制約がある中で、攻めたプレイをやるのがいかにやばいかっていうことを、見ている人にも何とか伝えられたらなと思うんですけど。

SOC:
 見てる側は「いつも出てるやん」みたいな感じに思うかもしれないんですけど、選手の全員が、試合のためにすごい準備して整えて来ていて。大会本番ならではの緊張感も、きっとプレイにうまく作用しているのもあると思います。そういうのが重なって、本番で爆発的なプレーが見られるのかな、と思います。そういうプレイが飛び出すと、大会やって良かったなと思いますね。

海神:
 話が戻るんですけど、今年の印象として、TWC2020からずっと選手として出ている、非常に上手いプレイヤーが敗北した、というのがありました。例えば岩魚さん、これまで3回連続で優勝していた方が、今年ついに敗北を喫しました。他にも、K・Gさんという星スコアタのトッププレーヤーも今年敗れていて。「あ!この人負ける事あるんだ!」っていうのを強く感じた年なんですよね。

岩魚 (絶):
 人ゆえに負けることもあるとは思いますが、それだけではなくて、プレーヤーがどんどん最上位に迫って全体のレベルが上がって来てるってことだと思います。よりレベルの高い戦いが今後も見られるんじゃないのかな、というのを感じますね。

――TWCに憧れた方が、いつか絶対王者を倒すような日が来るかもしれないですね。

 

 ここまでの3回では、運営に携わるトップシューターの方々に、印象に残った試合について語っていただきました。部門ごとの舞台裏、そして試合に臨む選手としての振る舞い。大会の裏側について、貴重な話をお聞きするができました。

 第4回、第5回では、日本支部運営のTWC2023での取り組みについて伺うとともに、これからのTWC、そして原作界隈の動きについてお伺いしていきます。

選手は、より強くなって帰ってくる――東方原作STGの国際大会「Touhou World Cup 2023」日本運営座談会 第3回 おわり