東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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「脈々と続いてきたものを引き継ぎつつ、流動性が保たれる場所にしたい」――東方Project人気投票・新旧運営インタビュー(後編)

【後編】東方Project人気投票・新旧運営インタビュー

 東方Project人気投票の新・旧運営の4名をお招きしてお話を伺っている今回の座談会。

 前編では、人気投票が始まるまで、二代目運営の烏粋氏が引き継ぐまでの経緯、三代目・新運営のえむけー氏朱澄はや天氏鶴宮 諭弦氏が東方に、人気投票に触れるまでの経緯をお聞きしました。

 後編となる今回は、烏粋氏が「終了」ではなく「引き継ぎ」を選んだ理由、3名の新運営によって行われた第16回人気投票の話、現在開催中の「第16回Ex」開催のワケ、そして「東方Project人気投票」のこれからについて伺います。

文/西河紅葉
聞き手/西河紅葉・紡

 

「たくさんの人と編集してきた場所を、一存で消すわけにはいかない」―終了、ではなく引き継ぎへ。東方人気投票運営の交代

――そろそろ、人気投票運営の交代の話に移っていきたいと思います。
 烏粋さんが、東方Project人気投票の運営と東方Wikiの管理人から退こう、と考えた発端はなんだったのでしょうか。辞めざるを得ない状況というか。

烏粋:
 忙しくなってきてしまったので、引き継ぎを考え始めた時期があって。

 やはり流石に、たくさんの方が編集してきていただいて情報がまとまっている場所を、一存で消してしまうわけにはいかないという思いはありました。なので、どうにかして引き継ぎという形で残したいと思っていて。

――初代管理人さんが集めたデータがあり、匿名のユーザーさんが記したデータがあり、烏粋さん自身も纏めたデータがあり……これらを失くしてしまうのは良くない、という気持ちがあったんですね。

烏粋:
 なので、閉鎖ではなく、引き継ぐという形にしたいと思っていました。

 交代のことは、交代を発表した第15回よりも前から考えていました。2017年くらいから話自体は進めていて。即売会で知り合いと会ったときに「運営をやりたいという人、誰か居たら紹介してほしい」と、草の根で探していました。

 ですけど、やはり中々そういう人を見つけることはできなくて、「これはサイトで公開募集をするべきだな」と判断した、という感じです。

――身内レベルだと、なかなか難しいですよね。

烏粋:
 ただ、草の根で探していたころに一度、即売会の打ち上げかどこかで鶴宮さんとはちょっとお話をしていて。

鶴宮 諭弦:
 そうですね、京都秘封とかで隣のサークルになったりすることが多かったので、烏粋さんのお話を聞く機会は度々ありました。

――なるほど、鶴宮さんは事前に少し聞いていたんですね。
 えむけーさんとはや天さんは、東方Wikiに掲載された「お知らせ」を見て、手を挙げた感じだったんでしょうか。

第15回人気投票の実施告知とともに、東方Wikiに掲載された「存続と引き継ぎについて」のページ。

えむけー:
 はい、そうですね。

 人気投票は、存在を知ってからは毎年参加していました。自分の好きなキャラの投票コメントを読むのが楽しみで(笑)。

第16回、犬走 椛の投票コメントページ。

えむけー:
 だから、
そんな楽しみが無くなってしまうのは寂しいなと。残したいと思って、やってみようと手を挙げました。

朱澄はや天:
 僕は東方Wikiのお知らせが出る前に、人気投票のツイッターアカウントで第15回の開催予告とともに出た「次回スタッフの募集のツイート」を見て「興味ある」とつぶやいたところからです。

朱澄はや天:
 ツイートしたら、烏粋さんが反応してくれて。

 まだなんの決心もついていないタイミングだったのですが、烏粋さんのほうから「次の京都秘封で相談しませんか」と、トントン拍子に話が進んで、やりますという話になりました。

烏粋:
 なんだか強制してしまったみたいに見えますね……(笑)。

一同:
 (笑)

――でも前回伺った話では、正に烏粋さんも同じような流れで人気投票の運営をすることになったという話でしたから。完全に継承が行われています。

朱澄はや天:
 本当に似たような経緯ですね。

烏粋:
 なので、サイトに募集を掲載する前から、鶴宮さんとはや天さんにはお話がついていたんです。

――その後、サイトのお知らせを見て挙手されたえむけーさんが入られて、今の三人の新体制になった、という形ですね。
 お三方は、完全に初対面だったんでしょうか?

朱澄はや天:
 いや、僕と鶴宮さんとは「大学東方サークル」の枠の中で、前から知り合っていたんです。割とガッツリ面識がありました。

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“大学東方サークル”ってなんだ? 「Twitterから分かる大学東方サークル」/ 各大学東方サークルさんの「新入部員募集のお知らせ」を、大募集!

鶴宮 諭弦:
 運営が決まったって聞いたときに「あっ、はや天さんも居るんだ!」って驚きましたね。

えむけー:
 私はおふたりとは初対面だったんですが、はや天さんのことは知っていて。所属している同好会に旧作クラスタが居たので、はや天さんのお名前は前から存じておりました。

朱澄はや天:
 だ、誰だ(笑)。

 

「ひとりだったら、無理だった」―実際の運営が始まった第16回、ひとりから3人に変わった新しい体制

――新体制の3人制になって、現状はどのような運営形態になっているんでしょうか。

えむけー:
 だいたい月1くらいで会議をしています。

 鶴宮さんが会議の取りまとめや、仕切り、進行をしてくださっていて、はや天さんは主に広報関係、TOP絵を飾るイラストレーターさんとのやり取りなどをやっていただいてます。今回のインタビューの取りまとめもそうですね。私は、システム側を担当してます。

 特にそういう風にしようと最初に決めたわけじゃないんですが、なんとなくそれぞれの役回りが、1年くらいで固まった感じですね。

鶴宮 諭弦:
 そうですね、自然と今の役割に落ち着いた感じがあります。

 私たちが運営を開始した第16回が始まる前に、実は第15回の時点で、サポートと言うか、運営方法を見させていただくような形で、運営に参加させていただいたんです。そのときにいろいろ教えていただいて。

朱澄はや天:
 やっぱり、投票の動きや、集計の動き、当日開票までの流れとかをいろいろ見させていただいたので、第16回の運営は比較的スムーズにやらせていただけたかな……と思っています。

――一ファンとしての感想ですが、外から見ている感じだと、今までとまったく同じ通り、つつがなく運営されている印象でした。

えむけー:
 ああ、良かった……(笑)。そう見えたのであれば、良かったです。

朱澄はや天:
 内部では、めちゃめちゃ「怖い、怖い」って言いながらやってました。投票開始とか、速報の発表のタイミングとか、ずっと怯えてたので(笑)。

一同:
 (笑)

――実際、「新体制に変わります、私たち3名で今後行います!」と発表したタイミングでは、反応とかは結構ありましたか?

えむけー:
 そうですね、「引き継ぎます」というツイートには、いいねがたくさん付きました。でもフォロワーがすごく増えるわけでもなく、次の日から元通りでしたね。

朱澄はや天:
 僕は、読書会とかサークルとか、いろいろなことをやっているのを周りの方に見ていただいてたので、「また、はや天がようわからんことやってるな」という感じでしたね。

 あと、先程も話しましたが、鶴宮さんとは「大学東方サークル」で一緒だったので、そのクラスタの人たちが「知っているふたりじゃん」って反応していて。

鶴宮 諭弦:
 大学東方界隈が、なんか深いところに食い込み始めているぞ、みたいな反応をもらったりしましたね。

 今までの人気投票の運営と違うのは、中の人の存在やハンドルネームがはっきりと公開されている、というのが大きな点でした。

――烏粋さんの頃は、やはり控える必要がいくらかあった、という話が上がりました。そういう点では、今の御時世ではあまり気にしなくても良くなった、という感じだったんですね。

朱澄はや天:
 そうでしたね。

鶴宮 諭弦:
 (大きな余波が起きることは)無かったですね。

朱澄はや天:
 Twitterのプロフィールに「東方Project人気投票運営」とか書いたりはしてないですが、僕自身「運営をしている」ということは時折話していますし、そういう点は緩くなったのかもしれない、と今お話を聞いていて思いました。

――新運営の3名とも、もともとは人気投票をファンとしてものすごく楽しんでいた、という話を先程伺いました。運営側に今立っている気持ち、みたいなモノはありますか。

朱澄はや天:
 こういうこと言うと良くないかもしれないんですが、実はまだ、運営をやっているという実感があまりないというか……。こう、当日もふわふわしていたというか。

 それでも、速報を出して、Twitterのトレンドが「妖夢1位」になったりしたときに、「わあ、すごいモノに関わっているんだ」という実感がそのときにやってきました。

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第十六回東方人気投票で妖夢が1位など、今週の東方ニュースまとめ

朱澄はや天:
 でもまだ若干、ふわふわしているので、もうちょっとがんばりたいです。

――そんな話をお聞きすると、いい意味で肩の荷が一人に集中しない形になっていて、「引き継ぐのなら複数人にしたかった」という烏粋さんの思惑は、とても成功しているように感じますね。

朱澄はや天:
 いろいろな対応や問い合わせも、分散して対応できています。もしひとりだったとしたら、多分無理だったんじゃないかなと思います烏粋さん、よくひとりで運営されていたなと、ひしひしと感じていました。

鶴宮 諭弦:
 自分が最初に知った第14回の時点で、ほかのジャンルであるような有志の人気投票のレベルとは比べ物にならないくらいの大きさだったので、最初はもっと多い人数、数十人くらいで運営しているものだろうと、勝手に想像していました。

 実際に運営側に回ると「こんな少ない人数で、あの大きさのものを回していたの!?」と、それが一番の驚きでしたね。

――確かに、3万票、4万票クラスの人気投票が個人レベルで運営されていて、しかもとても少人数によるものだということ、改めて目を丸くしてしまいます。

鶴宮 諭弦:
 だからこそ今は、人気投票という、様々な層のファンが集まってくる場所の運営を担当させていただいているということに、使命感というものが生まれてきたというか。

 東方が好きな人にこの投票のことを知ってもらいたい、もっと新規の投票が入りやすいようにしていこう、という気持ちは強くなりました。

――すごくいい話を聴かせていただいて、本当に引き継ぎが上手くいったんだなと、改めて思いました。

 

「せっかくなら、新しいことをやりたい」――投票先は「ベストパートナー」のみ!第16回“EX”をやるワケ

――続いて、次に行われる第16回東方Project人気投票EXについて教えてください。東方Project人気投票は、ここ最近は基本的に「年1回」という形で開催されてきました。それが今回、年2回に近い形で行われることになった経緯はなんでしょうか。

昨年10月に出された、第16回Exの開催告知ツイート。

鶴宮 諭弦:
 本来なら、例年通り第16回も例年通り1月の開催でやりたかったんですけれど、やはり新運営ということもあって、いろいろ準備期間がほしいと考えて、6月の開催になったんですね。それを、次回から戻すか、それとも6月でキープするのか協議したんです。

 そうした中で、期間の空白を作らないようにしたいという方針から「通常の人気投票とは違った、別の企画を含む回をやりたい」という話が上がったんです。

 また、過去の問い合わせで「第13回に行われた『ベストパートナー部門』を復活させてほしい」という意見を数多くいただいていてそこから、『ベストパートナー部門を中心にした、新しい回をやろう』として生まれたのが、第16回EXです。

――ファンから多くもらっていた要望を叶える場として、新たに「EX」という仕組みを作ったわけですね。

鶴宮 諭弦:
 もうひとつは、せっかく新運営という形になったので、なにか新しいことをやりたいなと。前から意気込みとしてあったんです。

 できることなら、さまざまな挑戦はしていきたいなと思っています。ずっと同じだと、飽きちゃうんじゃないかなという気持ちもあったりしたので。

――単独キャラへの投票も、楽曲も、アンケートもなくて、ベストパートナー部門のみの投票という、今まで無い形ですよね。

朱澄はや天:
 第16回を一通り開催して、その上で変えられる場所は変えていこう、ということをやっている真っ最中です。そのひとつとして、今回第16回EXができたというのもあります。

――今後、東方Project人気投票からも、今までとは違った新しいムーブメントを起こせるんじゃないか、という実験の一環でもある、ということですね。

朱澄はや天:
 今後、いろいろ変わっていくと思います。

――これからの運営がとても楽しみです。

【コラム】新運営に望むこと

これからの「東方Project人気投票」

――最後になりますが、新運営の皆さんに、今後の東方Project人気投票をどのようにしていきたいかというのを、改めて伺えたらと思います。

えむけー:
 私はシステム担当なので、より投票しやすい形のサイトになるようにしていきたいです。いまは、スマホからの投票が多いので、スマホで見やすい、使いやすいサイトにしたいですね。

――やはりスマホからの投票、多いんですね。

えむけー:
 確か、半分くらいはスマホからの投票だったとおもいます。

――そんなに!確かに、毎回やるたびに若い人が増えている投票なので、PCよりもスマホユーザーの割合も多くなっている感じですね。

えむけー:
 もともとPCビュー前提で作られているサイトなので、スマホから投票するのはけっこう大変なんですけど、それでも皆さんがんばって投票してくださっているので、今後はスマホからでもやりやすい形にしたいです。

――それは今後の投票数、各部門の得票率にもつながっていきそうです。

朱澄はや天:
 第16回のとき、1位になった妖夢を筆頭に、かなりTOP10の顔ぶれが入れ替わったのを感じていまして。時代が変わってきているのかなというのを感じています。今の時代に合った人気投票をできたらいいなと。たまには、ぶっ飛んだ企画もやりたいなって思っています。

――東方と言えば即売会というのが今まででしたが、なかなか人がリアルの場で集まり合うのが難しくなった現在、改めてインターネット上のイベントというものは、注目され、重要視されていると思います。
 人気投票のときに「お、やってるな」と戻ってくる東方ファンたちも居るというか、全員集合するタイミングで面白い企画があると、お祭りとして活気が出て良さそうですね。

朱澄はや天:
 あと、個人的にはふわふわしないようにがんばります。

えむけー:
 ふわふわしないように(笑)。

鶴宮 諭弦:
 ふわふわしないように(笑)。

朱澄はや天:
 ふわふわしてるので地に足つけられるように、自分の担当以外でもおふたりと協力しながら、がんばっていこうと思います!

鶴宮 諭弦:
 今まで脈々と続いてきたものを、しっかり引き継いで、地盤を固めて維持しつつ……久々に人気投票に戻ってきた人が、「これだよね」と我が家のような安心感を抱く場所になっていたらいいなと思っています。

 そうでありながら、流動性が保たれるように、新規の人が入りやすいような改善をしたいと考えています。

――「流動性のあるコンテンツ」というのは、まさに今の東方を象徴するような言葉だと思います。それをさらに後押しするような形になると、本当にいいですね。
 新運営のみなさんが考えていることをお聞きして、烏粋さん、いかがですか。

烏粋:
 なんというか、感謝の念でいっぱいです。

 やっぱり、引き受けても、大変なことばっかりになるんじゃないかと思っていたので。

 これまで続いてきたものを、自分のところで終わらせずに次につなげられたんじゃないかなと、今日の話を聞けて嬉しい気持ちになりました。

――本日はお集まりいただき、ありがとうございました。

 

◆「第16回東方Project人気投票Ex」開催中!

「第16回東方Project人気投票Ex」が、2021年1月24日(日) ~ 2021年1月30日(土)の期間で開催中です。

今回の投票部門は、自分の好きなキャラのペア二人組に投票できる「ベストパートナー部門」のみ。もちろん、第16回の人気投票に参加していない人も参加可能です。はじめての方も、忘れてた!という方も、ひさびさに一票入れるか~という方も、ぜひともこの機会にご参加ください!

投票にはメールアドレスの登録が必要です。「投票の決まり」ページをよく読んでから、下記のページの「投票する」ボタンより投票してみましょう。詳しい内容やよくある質問などは、東方Project人気投票のページよりご確認ください。

https://toho-vote.info/

 

「脈々と続いてきたものを引き継ぎつつ、流動性が保たれる場所にしたい」――東方Project人気投票・新旧運営インタビュー(後編) おわり

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