東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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インタビュー
2020/04/23

「長く続けること、オタクなりのこだわりで継続してきたことを大事に思っています」 東方コラボ日本酒を作った、鈴木酒店さんにインタビュー

東方コラボ日本酒を作った、鈴木酒店さんにインタビュー

 残念ながら中止になってしまった静岡例大祭。

 いつもとは違う場所での開催ということもあり、沢山の催し物や静岡地酒の試飲、地元とのコラボレーションアイテムが販売される予定でした。
(現在、通販での入手を企画しているとのこと。詳しくは下記記事をご覧ください)

第17回博麗神社例大祭中止について 博麗神社社務所代表、北條さんの東方ステーション出演パート書き起こし

 

 例大祭と静岡地元名産品とのコラボレーションアイテムの中でも、一際目を引いていたのが「東方コラボ日本酒」。

「狭間之紫」「駿河天子」この二本の日本酒は、静岡にある酒屋「鈴木酒店」さんとのコラボレーションアイテムです。こちらの鈴木酒店さんは、なんと静岡例大祭会場の、本当に目と鼻の先にあります。

 静岡駅から、静岡例大祭会場のツインメッセ静岡まで、徒歩で歩くと、だいたい10~15分前後。「地図で見るよりも歩いてみると結構遠いな………」なんて感じるその道中に、鈴木酒店さんの店舗があります。

道中にある電信柱の看板。此処にも美少女が。ちょっと阿求に似てるかも?

  閑静な住宅街の中に建つ、昔ながらの日本家屋………を飾るのは、沢山の二次元美少女。少し面食らう光景ではありますが、ビックサイトに向かう道のりではない、いつもと違う道程を進み不安な今の私には、目の前にある二次元の「オアシス」に出会ったような気持ちになります。

 

 中に入れば、更に沢山の美少女とお酒がお出迎え。

 「今日は通常の30%増し位の展開でしょうか」
 『え、いつもと同じじゃない?』

 来られていた常連さんとそんな会話を交わしていたのが、「鈴木酒店」店主鈴木誠さん。

 「狭間之紫」「駿河天子」この二本の日本酒は、一体どのような経緯で生まれたのか。詳しく伺うとともに、街の酒店さんが、どうして“オタクな酒屋“になったのかも、併せて聞いてみました。

 

 

前から東方でお酒が作りたかった!ー「東方コラボ日本酒」の経緯

ーー 今回、どのような経緯で「東方コラボ酒」を静岡例大祭で展開することになったのでしょうか?

鈴木 実は、静岡に例大祭が来られるという話の前から、元々、東方Projectとお酒のコラボレーションが出来ないかと考えていたんです。

 当店で展開している「静岡萌酒綺譚」という、オリジナルキャラクターの日本酒があるのですが、そちらのイラストを描かれている「ぎヴちょこ」さんが、長く東方のイラストを描かれている方なのは存じていて。数年前から、東方のイベント、例えば東方紅楼夢さんとか、そういったところで、何か出せないかなーと考えを練っていました。東方とお酒って親和性めちゃめちゃイイですもんね(笑) でもやはり東方関連商品が無いので、出店は難しくて…。

 そんなときに、静岡の、しかもウチの近所のツインメッセで例大祭をやるときいて「これは!」と。動くしか無い!と思った矢先、ほぼ同時くらいに、博麗神社社務所の北條さんから「東方でお酒を作る、というのはいかがでしょうか」という話をもらったんです。それが今回のキッカケですね。

 

 本当は、会場どこでもお酒が呑めるようにしたいと考えていました。ですが、昨今情勢的にちょっと難しくなってしまいましたね。

取材に伺ったのは3月22日。「エア例大祭」と称して、限定10本ずつのみ先行で店頭販売が行われていましたが、開店と同時に即座に完売!

 

 

純米大吟醸 「駿河天子」純米吟醸 「狭間之紫」

ーー どうして天子と紫だったんでしょうか。また、今回のお酒の特徴についても教えて頂けますか。

鈴木 実は、キャラのチョイスは社務所さんによるものなんです(笑)。

 昨年の話になりますが、私が厳選したオススメの静岡地酒を10数種類、社務所さんに送り付けまして(笑)。それぞれのお酒の銘柄名や味わいのデータ等も添えて、ですね。それで、社務所の皆さんが集まった時に、飲み比べをしていただいたんです。その時に選ばれたのが今回の2種類になります。

 天子のお酒は「天虹(てんこう)」という銘柄の純米大吟醸。その銘柄名からも天子がすぐに結び付いて選ばれたかと思います。
 紫のお酒は「英君(えいくん)」という銘柄名ではありますが、ラベルが紫色をしておりまして、また味わいも紫色のブドウのようにフルーティだったので、紫様が結び付いたかと思います。

 

天子のコラボ日本酒、純米大吟醸 「駿河天子」(スルガテンシ)。パッケージイラストはいなたそ(@inatasohime)さん

鈴木 天子の酒は純米大吟醸という最高クラスのお酒です。精米歩合が40%なので純米大吟醸の中でも更に良い物であります。また、酒蔵の冷蔵庫にて約一年間じっくりと熟成させてあります。その味は結構甘めで、静岡県内のお酒では珍しいです。熟成させてあることでまろやかコッテリめにもなってます。カラメルのような甘美な感じがあり、でもそれでいてしつこくなくて綺麗なお酒でもあります。なにげに、ぬる燗がオススメだったりもします(笑)。

 

八雲紫のコラボ日本酒、純米吟醸 「狭間之紫」(ハザマノユカリ)。パッケージイラストは乃樹坂くしお(@ku_shi)さん

鈴木 紫のお酒は、純米吟醸というグレードです。静岡酵母の作用によってブドウのようにジューシーな甘さがほんのりあります。しかしながら、このお酒を作られる酒蔵さんの特徴である、淡麗な綺麗さもあって、とても爽やかな甘さでキレも良いです。妖艶で高貴な紫様のイメージにピッタリかと思います。
 もしかしたら、社務所の皆さんは、甘めでフルーティなお酒がお好みなのかもしれませんね。


 なお裏に貼ってあるラベルは当店のテイストで作ってありまして、お酒の特徴を細かく載せてあります。日本酒に詳しい人も初心者さんも、ご購入いただいたらその内容見ながらお酒を味わってみてもらえたら嬉しいです。

 

「長く続けること」ー“オタクな酒屋”であるために

ーー “オタク酒店”になったきっかけは?

鈴木 子供の頃からゲーマーで、アニメも大好きなただのオタクです。学生の時から関東に出ましたが、その頃がちょうどゲーム業界がおもしろい時代だったし、格闘ゲームブームだったりで、遊んでいた格ゲーキャラのコスプレも、同人イベントでよくやってました。ゲームの腕もそれなりに自信ありますよ(笑)

お店の奥には、当時のフォトブックが。一部だけ撮らせて頂いたが、他にも写真は沢山!
店内に飾られている「ドラゴンころし」は、もちろんコスプレ用に作ったもの。この写真だけ見ると、酒屋の要素がほぼない。

鈴木 東京でIT関連やデザインの仕事していましたが、その後、今更ながら親孝行できたらなと実家に戻ってお店を継ぐことにしまして。

 ちょうどその時代に、西又葵のあきたこまち【※】が出てた頃で、こういうことができるなら、ウチでも静岡の地酒で同じようなことは出来ないか~って考えたんです。

 ※「JAうご」(秋田県羽後町)が2008年に新米のパッケージイラストに、イラストレーター・美少女ゲー原画師の西又葵氏を起用。「萌えキャラ」が描かれたお米のパッケージは、当時非常に話題になった。当時の記事 https://akita.keizai.biz/headline/453/

 

鈴木 とはいえ、老舗である酒蔵さんのブランドイメージを損なっては失礼なことなので、誠心誠意時間を掛けてご相談させていただきました。やはりこういったビジュアルを付けて売ることに抵抗があった酒蔵さんもありましたが、逆に、真剣にこだわって企画している姿勢を理解してくれたり一緒に楽しんでくれる酒蔵さんもおり、そういったご協力のもとで生まれた感じです。

 

 「静岡萌酒綺譚」シリーズ、というこちらの娘達は、お酒そのものの味わいと、女の子たちのキャラクター性を結びつけています。
 例えば、スッキリしてるけどほんのり甘い、というタイプのお酒だったら「じゃあこの娘はツンデレかな?」とか、属性を合わせたりして。そもそも作られているのが由緒ある酒蔵さんですし、美味しくて有名な銘柄のものだったりしてオススメのお酒なので、味についても保証しますよ。

 

鈴木 でもやっぱり、静岡の小さな酒屋なので、此処まで足を運んでもらうのは難しいです。存在を知って貰えないと、継続して買っては貰えないので。

 それでも、こういった“オタク”的なものは「長く続けること」が大事だな、と思っています。オタクのお客さんは分かるんですよね。例えば、何か大きなオタクコラボな名産品とかが出て、それで一時的に人が増えても、それっきり一度しかやらなかったら「なんだよ一回だけかよ」「結局ビジネスかよ」って呆れられたり見透かされちゃう(笑)

 今、全国的にもちょっとだけ知れ渡っているのも、オタクなりのこだわりで継続してきたことが大きいよなと感じています。

こちらは、静岡県に由縁のある日本刀の逸話をモチーフにした日本酒
仮想通貨ブームの時に即座に企画された「仮想通貨キャラのお酒やグッズ」もまだ販売中

 

 

第二回目通販は4月26日からスタート

ーー 最後に「東方コラボ酒」の通販に関する情報と、鈴木酒店さん自身の通販情報などを頂いてもいいでしょうか。

鈴木 販売は静岡市の当店店頭および当店オンラインショップでの全国通販(宅急便)で行います。うまく調整しながらバランス良く販売できたらと思っておりますが、ただ、新型コロナウイルスという見えない弾幕の心配もありますので、遠くからの遠征とかは極力避けていただき、通販にてご購入いただけたらと思います。

 

鈴木酒店オンラインショップ ー http://www.sake-online.com/

 

 なお、売り上げ金のうち、お酒の原価やパッケージ代等の諸経費を除いた利益分から、(当店分の利益をできるだけ削って)なるべく多くを博麗神社社務所にお納めする予定でおります。全額と言えなくて恐縮なのですが…ともあれ、ご購入頂くと間接的に例大祭への援護射撃になります。

 鈴木酒店オンラインショップは、大手ショッピングモールとかに属していない…小さなオンラインショップです。見た目は、やや古めの形式ですが、スマホからでもご利用いただけます。利用方法はごく普通のカートシステムなので、欲しい商品をカートに入れてご注文を進めていただけたらと思います。会員登録は任意で、購入ポイント等は無く、クレジットカードも使えません。

 

 なお、東方コラボ酒の1回目の販売(4月19日)の時、用意していた200本は約10分で完売しました。ですので、会員登録を予め済ませて、住所等を記憶させておくと、ひょっとしたらスムーズにご購入いただけるかもしれません。

鈴木酒店ブログ「東方コラボ酒、一回目の販売は10分で完売!」 ー https://osake.eshizuoka.jp/e2058660.html

 実は、例大祭用に、少し多めに仕入れてある商品とかがあったりします。もしよかったら東方コラボ酒と一緒に購入ご検討下さいませ!(なおオンラインショップでは、ひとまず東方コラボ酒だけは買い逃さないよう、それだけで注文を確定していただいてOKです。)

 萌酒やグッズ等も多数ありますので、よかったらいろいろ覗いてみていただけると嬉しいですね。

 

 

 取材は、3月22日、鈴木酒店の店頭で行わせて頂きました。取材中も「今日はすごいね」と、「エア例大祭」の様子を見に来ている常連さんが来店されたりして、「オタク酒屋」でありながらも、町の酒屋さんとして信頼されている場所であることを感じました。これも、店主の鈴木誠さんがおっしゃっていた「長く続けること」「オタクなりのこだわりで継続してきたこと」の、成果による信頼があるからかもしれません。
 静岡例大祭が改めて開催になった際は、静岡駅とツインメッセとの道中に、是非足を運んで欲しいお店です。

 そんな鈴木酒店さんと例大祭のコラボ日本酒「駿河天子」「狭間之紫」の第二回通信販売は、4月26日を予定とのこと。第一回は10分で完売(!)してしまったそう。手に入れたい人は是非、鈴木酒店のサイトをチェックしてください。

店舗情報

鈴木酒店

静岡県静岡市駿河区豊原町9-20
TEL&FAX 054-285-1926

★営業時間
だいたい 9:00~21:00頃
定休日 ほぼ年中無休

http://www.sake-online.com/

https://osake.eshizuoka.jp/

 

 

「長く続けること、オタクなりのこだわりで継続してきたことを大事に思っています」 東方コラボ日本酒を作った、鈴木酒店さんにインタビュー おわり