東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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インタビュー
2021/12/08

次の10年に進んでいく「しょじょろん」の姿をライブで見てほしい――バンド結成10周年記念ライブ『非合理論理ショー』開演直前、サークル「少女理論観測所」テラ 1万字インタビュー

サークル「少女理論観測所」テラ、1万字インタビュー

「少女理論観測所」の結成10周年を記念したライブ『非合理論理ショー』が12月12日に開催となる。

少女理論観測所しょじょろん」は、ギタリスト、テラがサークル主の東方アレンジサークルだ。主にロックを中心としたダンサブルでテクニカルな楽曲を数多くリリースしてきた。 ライブではボーカル咲子、ボーカルうきね、ベースバツヲ、ドラムkent watariをメンバーとした、しょじょろんバンドでフロアを魅了する。

本誌ではこの10周年記念ライブの開催に合わせ、少女理論観測所リーダーのテラに独占インタビューを敢行。テラの音楽的なルーツから始まりしょじょろんの歴史、しょじょろんというバンドへの思い、今回のライブへの想いまで存分に語ったその内容は、1万字にも及んだ。

文・インタビュー:えふび~
編集:西河紅葉
写真:紡

ビートまりおに憧れて

――はじめに、テラさんご自身の音楽のルーツを教えてください。

テラ:
 小学生のころだと、ゆずとか、サザンオールスターズとか、ORANGE RANGEとか、バンドもののj-popを親の趣味で聴いていました。

 その後、石鹸屋さんや岸田教団さんとかは聴いていましたが、どちらかというとアニメソングやALI PROJECTさんとかを聴いてたんです。日本のロックバンドの曲をいろいろ聴くようになったのは、高校に入って、軽音楽部に入部してからですね。月並みですけど、バンドの原点はそこになるのかな。その頃からギターも初めて、バンド音楽というものにきちんと触れ始めました。

――当時から、東方アレンジを作ってみたいと思っていたのでしょうか。

テラ:
 音楽、特に東方アレンジを作りたいという気持ちはずっとありました。中学生のときから石鹸屋さんのライブに行ったりしていましたから。

 それと、ビートまりおさんにすごい憧れていて、「ビートまりおになるにはどうすればいいんだろう?」って、ずっと考えていたんです。

 ビートまりおと言えば歌だから「歌を録音したい!」と思って、高一の誕生日にマイクとオーディオインターフェースを買ってもらいました。でも結局、それで録音して発表するとかは特にしなくて、スタジオにマイク持ち込んで自分で使って満足しちゃいました。まあ、よくある話ですね。あとはギターのタブ譜とかを作るソフトでなんちゃって東方アレンジを作ったりしてました。

――スタートは、東方アレンジが好きなファンの一人、という感じだったんですね。

 

「しょじょろん」の始まり、メンバーが揃うまで

――続けて、サークル「少女理論観測所」の始まりをお伺いしてもいいですか?

テラ:
少女理論観測所しょじょろん」を始めたのは、高校三年生です。音戦玉子(現:味玉定食)さんが出演されているライブを見に行ったのが転機でした。そのライブの場で、東方アレンジをやっていたり、やりたがっている知り合いが増えたんです。そこから、DAWとか音源とか、音楽を作るための情報が一気に増えて、曲作りの環境が整いました。得た環境で作った1曲をサウンドクラウドに上げたのが、東方アレンジの一番最初です。

 そのあとにもう1曲作り、シングルCDを作って、当時知り合いだったじゃねっと亭さんのサークルスペースに委託で置かせてもらったのが、少女理論観測所の始まりですね。

――「しょじょろん」がはじまり、今に至るまでメンバーがどんどん加わっていくことになります。メンバーはそれぞれどの様に集まったんでしょうか?

テラ:
 ボーカルの咲子さんが最初です。高校1年生のときに東方のコピバンのライブイベントがありまして、そこで知り合いました。そこからなんとなくSNSで交友が続いていて、1枚目のミニアルバム『over knowledge』を出すときにボーカルをお願いしたのが始まりです。

 もうひとりのボーカルのうきねさんは、SNSでたまたまフォローした知り合いです。シノダナオキさんのボカロ曲「食べなくちゃ」の歌ってみたを上げていて、それがかっこいいなと耳に残っていたんです。最初のフルアルバム『Like a Retrospective』を出すときに、曲数を増やすためにボーカルもいろんな人に頼みたいなというのがありました。

 うきねさんは、咲子さんとは全然歌い方のキャラクターが違っていたので、このタイミングでぜひとお願いしました。それからずっと、ふたりには協力して貰っています。

 今のベースのバツヲさんとは、彼が別のサークル、地雷少女症候群のサポートとしてライブに出ているところを見たのが最初です。バキバキにスラップとかしてて、かっけー!って、しょじょろんはこれや!って思いました。

――ライブで演奏してるのを見て、この人かなみたいな。なんというか一目惚れみたいですね。

テラ:
 ドラムのwatariくんとは、大学の同じ学部の同期で、一緒にジャズサークルに入ってたんです。

 ジャズ研の部室でふたりとも一切会話せずに、暇さえあればずっと基礎練習してたんです。「なんかいつも練習してるやつ居るなー」みたいに、お互い思ってました。もともとすごく上手いなと思っていたので、初めて自分で主催したライブ『魔法少女達の音楽祭』のときにサポートをお願いしました。

 僕がオタクであることは隠してたし……そもそも東方って説明難しいじゃないですか? なので、「オタク系のバンドのサポート」ってストレートに伝えたら、断られるかなと思ってたんです。

 なのでそれは言わずに……「僕がやってるロック系のバンド、なんかポップスとか?フュージョンとか合わせたような感じかな。3月にライブあるんだけど、叩いてくれないかなー」みたいな感じで伝えて(笑)。

 そこで快諾してもらったので、まずLINEの「いいよ」の発言をスクリーンショットにとって、そこからいきなりすごい長文のラインを送りました。「東方Projectっていうのがあって、そのアレンジっていう文化があって、それをライブでやる感じなんですよ」……っていう説明。これを伝えるのって、難しいじゃないですか。

――そうですね(笑) 長くて文脈がすごいです。

テラ:
 そうなんです。なのでそういう文脈があることと、おおむねこういう曲がある文化なんですっていうのがわかる音源を送りました。そしたら、意外とwatariくんもオタクだったんで「東方ね。なんかニコ動で見たことある」みたいな感じで、すっと受け入れてくれました。

 これで今の5人が集まった感じです。以降、メンバーは基本固定でお願いしていますね。

――そうなると、今のメンバーでやってもう7~8年くらいになるんですね。年月を経ていくにつれて、絆やシンパシーは感じますか?

テラ:
 しょじょろんは、お互いに好き勝手にやる感じのバンドなんです。メンバーでご飯とか飲みとかもあんまり行かないんですが、でもその自由な感じがいいのかなと思っていて。仲が悪いわけではなくて、話もするし、楽しいし、そういう意味では年々やりやすくなっているという実感はあります。初期のころは、よそよそしさがあってお互いに気を遣っていたというか。今はいい意味で、一切気を使ってない感じがあります。

 

「もっと“バンド”にならないとダメだ」

――そのメンバーでやってきた10年間を振り返ってみて、特に印象に残っていることはありますか?

テラ:
 2016年にやったワンマンライブ『少女理論観測所5th anniv. ONEMAN LIVE PARTY 2016』と、 2017 年秋の豚乙女さん主催ライブ『東方フリークス(通称:トウフ)』。このふたつのライブが、もっとバンドをちゃんとやろうって思ったきっかけなんです。

 どちらのライブも共通するのは、悔しかったということですね。

  2016年のワンマンのときは、そもそも初めて演奏する曲が多いなかで、主催業務やライブの取りまとめも行っていました。しかも、あのときはシンプルなバンド編成だけじゃなく、ジャズ編成や管楽器3管(トランペット/サックス/トロンボーン)とバイオリンとピアノを入れたラージバンド編成を初めてやったりして、チャレンジングなライブだったんです。

 それもあり、自分の練習や、基本のバンドメンバーでの合わせが少しおろそかになってた部分があったと思います。新しい挑戦も出来て、あれはあれでいいライブだったと思うんですけど、「もっとやれたんだよな」と、ちょっと引っかかっていました。

 2017年のトウフのときは、大好きな豚乙女さんにライブに呼んでいただいたのもあり、「もうここでかますぜ!」と意気込んでいました。

 でも、機材トラブルがあって事故っちゃったんです。しかも、1曲目の音が出ないトラブルで、ライブが初められなかったんです。イベントに迷惑をかけてしまっている、と思ったらあわててしまって、そのあともあまり演奏に集中できなかったんですよ。それがすごい悔しくて。

 それで、「もっと“バンド”にならないとダメだ」と思い直して、リハの頻度を上げました。それまでは、決まったライブに向けてリハをやるという感じで集まっていたんですけど、そこからはライブの有るなしに関係なく、月に一度はリハに入るようにしました。

 

意識を変えた「東方の乱」――芽生えた、ひとつのバンドとしての向上心

テラ:
 意識を変えたなかで出演したのが、石鹸屋さんとぴずやの独房さんの主催したライブ『東方の乱です。2018年の2月ですね。

「東方の乱」公式サイトより

 ちょうど「トウフ」で悔しい思いをしたあとに誘っていただいたので、「今度こそかますぞ!」と、同じ曲を何度も何度も練習して合わせました。もっといける、もっといけるって。

 東方バンドサークルのライブって、まずCDで出した音源があって、その音源の通りにサポートメンバーでそれを演奏していく、一種のコピーバンドみたいな形式が多いと思います。そういった形じゃなくて、ひとつの“バンド”のライブとしてようやく動き出せたのは「トウフ」「東方の乱」の流れがあってこそだったので、その辺りは印象的ですね。

――しょじょろんは元々東方アレンジサークルの中でもかなり演奏水準が高いバンドだと思うんです。それなのに、まだまだ、もっといける、もっといけるという気持ちがある。その向上心がすごいと思っています。どういったエネルギーがテラさんを突き動かしているんでしょうか。

テラ:
 たとえば、しょじょろんが確かに上手かったとしても、石鹸屋さんのライブのほうが“いい”じゃないですか? もう音の説得力が違いますよね。今までは個人の上手さや曲の難しさに甘えていたところがあったなって、すごい反省したんです。

(少女理論観測所の)曲自体の演奏が難しいので、ミスらなければそれなりに聴けてしまうのですが、そうじゃなくて、もっと気持ちいいグルーヴとか、音圧とか、演奏の一体感とか、パフォーマンスとか。バンドとして突き詰めていくべきなんじゃないかなって、そのころに思い始めたんです。

 技術的な向上心はメンバー各々が持ち続けています。けれど、バンドとしての向上心っていうのは、その辺りで明確に芽生えたんじゃないかな。

 

“彼ら”と同じ土俵で戦うということ

――バンドとしてのまとまり、という視点を持つようになったんですね。ほかに変化したことはありますか?

テラ:
 今までは豚乙女さんや石鹸屋さん、岸田教団さん、TaNaBaTaさんにCOOL&CREATEさんは、同じ東方アレンジ界隈、東方バンドサークルといっても、違う世界だなと思っていたんです。世代も違うし、集客規模とかも全然違う。全く別のフィールドで戦っていると思っていました。

 それが、「トウフ」とか「東方の乱」で一緒に演奏させていただいたことで、これからは同じ土俵で戦っていかなきゃいけないんだな、と認識を改めました。

 やっぱり彼らは演奏が、ライブがすごく良い。なんで良いかっていうと、ただ上手いだけじゃないから。バンドとしての個性があって、音に説得力があって、感動させる何かがある。だからしょじょろんも、ただ演奏が上手いだけ、難しい曲ができるだけじゃなくて、そういうところを目指していかなきゃいけない、って思ったんです。

――徐々に大きな舞台に上がられる中で、記憶に残るのは2018年の「博麗神社うた祭」です。当時のしょじょろんが立った場所として、一番大きなキャパシティのライブでしたが、それに対してなにか特別な想いはありましたか。

テラ:
 そりゃ、もう、とってもあります。東方音楽サークルの一種の大きなお祭りと言える「うた祭」に呼んでいただけて、しかも、新宿ReNYという今までで一番大きなステージに立たせていただけて、錚々たるメンバーと共演させていただけて、ひとつの夢、目標が叶った瞬間でした。あの場に呼んでいただけたのも、「東方の乱」での演奏を、もしかしたら誰かが見てくれていたのかもしれないなと思ったりもしました。

 ちょうどあの時期は、大きなライブに呼んでいただきがむしゃらに練習をしていい演奏をする。するともっと大きな舞台に呼んでいただけて、またがむしゃらに準備をしていい演奏をする。そういう流れが続いていて、バンドとして成長を実感していました。

 加えて、僕は昔から大きなステージに憧れというかこだわりがあって、とにかく大きなステージで演奏したかったんです。「チッタでフラワリを見て育った世代」なので。ライブ=あの規模だと思ってたんです。だから高校で軽音楽部に入って、初めて地元のライブハウスに出たときに、ちょっとガッカリしたんですよね。「ライブハウスってこんなに狭いんだ」って。

 自分が憧れたステージは、広いステージなんです。だから、新宿ReNYという大きな規模のステージに人生で初めて立って、すごい気合が入りました。

「うた祭」のために意識したのは、大きいステージ向けのパフォーマンスでした。いろんなバンドさんのライブ映像とか改めて見返して、研究して。しょじょろんのパフォーマンスは、主に僕とバツヲさんが両サイドで動き回り、ボーカルはどっしり構えてるという形なんですが、「うた祭」のときは、僕とバツヲさんで「この曲はこの部分でこういう動きをする」と、パフォーマンスを全部決めて望みました。

――「うた祭」のフロアでしょじょろんのアクトを見た時、泣きながら聴いた覚えがあります。ずっと好きで、「魔法少女達の音楽祭」から追ってたサークルが、うた祭に出てる!! と、感情が昂ぶってしまって。

テラ:
 ありがとうございます。

 

新しい発見があった「しょじょろん放送部」

――ここからは、近年の話をさせてください。大きなステージに立て続けに上がられ、いよいよというタイミングで、コロナ禍がやってきてしまいます。ライブの開催が難しい中、しょじょろんはYouTubeチャンネルを開始していますね。始めた理由やきっかけはなんだったんでしょうか。

テラ:
 これはたまたまなんですけど、コロナ禍に入る前、2020年の1月にミラーレス一眼のカメラを買ったんです。それでカメラがあるなら、少し機材を足せばパソコンから一眼の画質で配信ができるらしい、と聞いて、じゃあやってみようかと。例大祭前日の生配信が最初でした。

 一度やってみると足りないモノがわかってきて、あれよあれよと言う間に機材が増えて、「せっかく機材も揃えたので、毎月やろっか」……となり、これが「しょじょろん放送部(YouTubeチャンネル)」の始まりでした。もともとバンドで月1回リハーサルには入っていたので、リハーサル風景を垂れ流してるぐらいのゆるさでやれればいいかなって思って始めたんです。特に最初の半年ぐらいは、機材や撮影環境の不備もあったんですが、回数を重ねる度にどんどんアップデートしていって、そういうのも楽しかったですね。

 あとは、配信場所が家なので、狭いから速くて激しいライブ定番曲が叩けなかったりするんですね。それが逆に、今までライブハウスではやっていなかった、静かめの曲を演奏してみるきっかけになりました。実際やってみると「この曲すごいいいじゃん」みたいな再発見につながって。

 今はライブの定番になっている『AKANESASUOONI』や『神様の言う通り』も、放送部(YouTubeチャンネル)でやってみたらめちゃくちゃ良かったのがきっかけで、これライブハウスでもやろうよとなった曲です。

――気軽にトライできる場ができたのは良いですね。

テラ:
 放送部はほんとにゆるくやっています。毎月新曲を2~3曲入れるんですが、それでもリハとかはしなくて、当日集まって放送までの2時間で初合わせして。一度もライブでやったことのない曲をセットリストに入れるのって結構気合が居るんですが、放送部では気軽に試せました。おかげでレパートリーがすごく増えました。

 2016年のワンマンライブでは、演奏したことない曲が多すぎて詰め切れなかった反省があったんですが、今は(放送部のおかげで)演奏したことがある曲が増え、次のワンマンにはとてもいい形で望めるなと思っています。

 

これまでとこれから―両方をひとつに詰め込んだ、10年の集大成

――ちょうど、今回の10周年記念ライブの話がでたのでそちらに関係した話をお聞かせ下さい。10周年記念にあたってシングル『非合理論理ショー』をリリースされました。シングルに込めた思いを伺いたいと思います。

テラ:
 10年の集大成を1曲でやれって、結構難しいんです。しょじょろんというサークルはひとつのアルバムにさまざまなタイプの曲を入れていて、その闇鍋感が少女理論観測所の表現だと思っています。だから、コンピなどもそうなのですが、1曲勝負だとどんな曲にするか、ものすごく悩みます。

 まず、文脈的にエモい要素はないといけないと思っていました。音楽的な部分っていうよりは、歌詞の部分です。そこでやり残したことがあるのを思い出して、それをやろうと。

 活動初期のころ、パチュマリ(パチュリー・ノーレッジ×霧雨魔理沙)の曲を多く作っていたんです。初めて出したシングルが「恋色マスタースパーク」のアレンジで、そのあとに出した1枚目のミニアルバムもパチュマリ(ラクトガール~少女密室/ヴワル魔法図書館のアレンジ)なんです。自分の中でなんとなく、パチュマリの物語が同人誌のような感じで存在していて、それを曲の中で断片的に描いていたんです。いつかその曲を集めて1枚のアルバムにしたいなって思っていたのですが、2015~6年あたりから、あまり作らなくなっちゃって。自分の中でパチュマリが終わってないなと気づいて、一回それをまとめなきゃいけないなと。

 加えて、パチュリーと魔理沙ふたりの原曲を合わせる、というのもやっていなかったんです。さらにいうと、Vo.咲子さんとVo.うきねさんのデュエット曲も作ったことがありませんでした。

 未完だったパチュマリの物語をひとつ区切りをつけなくていけない、ふたりの原曲を合わせたことがない、デュエットしたことがない……このみっつが上手くはまったんです。「パチュマリで咲子さんとうきねさんのデュエット曲を作ろう」というコンセプトが最初に決まりました。

テラ:
 あとは、今までバンドメンバー全員でひとつの曲を作ったことってなくて。それを始めてやるのも10周年にふさわしいと思いました。『非合理論理ショー』という曲は、コードとメロディとだいたいのビートは僕が決めて、ドラムとベースのフレーズやパターンはバンドで集まって作りあげました。

 音楽的な部分では、2021年に少女理論観測所が東方アレンジを出すならどういう方向性になるか、というのを考えました。しょじょろんでは「僕が好きな最近の音ってこういう感じなんですよ」というのを常に聴いてくださる方に示したくて、だから次の5年はなんとなくこういう感じでいきたい、という想いも『非合理論理ショー』に込めました。

  10年目ですが、 10年で終わるわけではなくて、その先の5年、10年に進んで行かなきゃいけないので、チャレンジを重ねています。それはデュエットっていうのもそうだし、バンドで曲を作るっていうのもそうですね。これまでとこれから、両方をひとつに詰め込もう、ということを意識して作った曲です。

 

次のステップに進んでいく「少女理論観測所」の姿をライブで見てほしい

――そのシングルを引っさげて挑む今回のライブ、どの様な思いがありますか?

テラ:
 10周年でワンマンやる、というのは、常に考えていたことでした。5周年でワンマンをやった時点で「次のワンマンは10年目かな」と冗談を言ってたら、あっという間に10年経っていて。

 やっぱり大きな会場で、しかもワンマンでライブをやりたいんです。なんなら毎年ワンマンライブやりたいし、アルバム出してツアーするみたいな普通のバンドっぽいこともやりたい。ただ現実的に考えてそれは難しい。それでもやっぱり、5年に一度くらいはお祭りさせていただいてもいいじゃないですか?っていう。だからまずワンマンライブをやりたいという思惑はあって、5年に1回ならみんな集まってくれるかな、お祝いにきてくれるかなー、っていう。

 さらにいうと、前回のワンマンからの5年間、その総決算的な意味合いがあると思っています。先ほどまでもお話させていただいた通り、5周年ワンマンが終わってからバンドとしての自我が芽生えてきたところがあるので、「少女理論観測所」というバンドがようやくバンドらしくなってから積み上げてきたこの5年間、やってきたことを今一度確認する意味もあります。

テラ:
 配信ライブをやるのは今、マストかなと思っています。現状、有観客だけでイベント企画していると、ライブ開催が出来なくなったときにはイベント中止にせざるを得ません。開催直前で無観客にする選択はあまりに厳しいので、有観客と無観客を並行してやるのは絶対だなと考えていました。

 あとは、いろんな事情でライブハウスに来られない方もいると思うので、なにかお家に届けられるのはいいなって思うし、記録としても残せますよね。

 そもそも配信自体は絶対やったほうがいいって ずっと思ってたんです。昔フラワリが、ニコ生で配信していたじゃないですか(Flowering Night2011)。あれは、すごくいい試みだなって思ってたんです。

――映像が残れば、そのタイミングで居合わせられなかった人も、あとからそのサークルや音楽を知って好きになれる、とてもいい機会になりますよね。

テラ:
 今回のワンマンは、配信で見てくれている人も、現地に来てくれた人も、両方大満足できるものを見せたいと思っています。

 正直身の丈に合わないくらい、かなり大きめの箱を取っていて、それは配信の機材があっても現地の人がゆったり楽しめるようにするためです。また、配信のカメラの台数とか画質もしっかりと確保できているので、配信で見てる方にも楽しんでいただけると思います。

 ただ、本当は無料配信でやりたいし、やるべきだと思っているんですよ。結局、無料で映像出せないと広がらないなって思っているんです。来年以降はなんとか無料でライブハウスから配信できないかなって、最近すごい考えてるんですけど、現実的になかなか難しい。定期的にライブを気軽に届けられないかなと考えつつ、今回は有料配信ということでお届けさせていただきます。

――配信ライブというもの自体も、コロナ禍でみんなが試行錯誤していく中で生まれた新しい文化だと思います。僕が配信ライブをレポートしていて思っていたのが、配信ライブってリアルライブの代わりってわけではなくて、配信ライブだからこその良い面っていっぱいあるんです。ただ、やっぱりリアルライブの良さも絶対あって、だからこそ並行してやるっていうのは、両方の良さを届けられる、ライブの新しい形になっていくのかな、と感じています。

テラ:
 やっぱり家で見たい、ゆっくり見たいとか、遠くて来られないという方もいらっしゃると思います。僕も家で夜にお酒を傾けながら、ライブDVDを見たりします。そういう楽しみ方をできるのが配信のいい面だなと思うんですけれど、やっぱり音の環境がその人に依存してしまいます。

 そういう意味では現地に来て欲しいなと思いますし、現地に来たくなるような配信ライブをお届けできればなと思っています。

 もちろん配信だけで楽しんで完結していただくのも全然いいんですけど、それこそ、フラワリの映像を見たキッズ達が「俺も現地に行きたい!」と思ったのと同じように、やっぱり盛り上がってるオーディエンス含めてのライブ体験だと思っているので、そういうところも含めたものを配信で見せていけるようになったらいいなと思っています。それを配信で見てくれた人が「次は現地に行こう」と思ってくれるのが、いい流れなんじゃないかって。次の5年ではそんな試みができたらなと漠然とですが考えています。

――今回のライブを楽しみにしてるファンやライブに来てほしい人たちに向けて、メッセージをお願いします。

テラ:
 僕自身が、皆さんに会えるのを楽しみにしてます。これはかっこつけとかじゃなく正直な話で、最後に現地でライブをやったのって、本当にいつなんでしょうね、っていう気持ちなんです。ライブハウスから配信ライブはできているけれど、人も入れてのライブはしばらくできていなかったわけですから。本当に2年半ぶりぐらいにみんなに会えるのがすごい楽しみだし、フロアに人が居ることは心強いので、早くみんなが楽しんでるところを見たいなあって思っています。

 2年半のブランクどころか、むしろ2倍も3倍も進化した、次のステップに進んでいく「少女理論観測所しょじょろん」の姿を見せられるようなパフォーマンスをするつもりです。なので、よく見ておいてください。

 

公演情報 少女理論観測所ワンマンライブ『非合理論理ショー』

現地チケットの予約購入は、12/8 23:59まで!! (当日券もあります)
https://girlslogic.booth.pm/items/3386028

配信チケットはコチラから
https://ja.twitcasting.tv/terra_shojoron/shopcart/107512

少女理論観測所のサークル活動10周年を記念したワンマンライブ『非合理論理ショー』が12月12日(日)に赤羽ReNY alphaで開催される。

同サークルの単独ライブは2016年に開催された5周年記念ライブ以来5年ぶり二度目。

今回はゲストにあやぽんず*(森羅万象)を迎え動画サイトで人気の曲も演奏する予定だ。

チケットは10月24日の博麗神社秋季例大祭な10b少女理論観測所スペースで先行販売。
その後BOOTHで一般販売予定。
ラバーストラップが入場券代わりとなっている。

現地開催と同時にツイキャスでの有料配信も実施。
こちらは情報公開と同時に発売開始されている。

例大祭では本ライブのタイトルにもなった10周年記念シングル『非合理論理ショー』も頒布される。

前回のワンマンからの5年間の総決算となる140分のロングステージ。
現地か配信か、好きな方で見届けて欲しい。

 

少女理論観測所10th Anniversary Oneman Live
『非合理論理ショー』

2021年12月12日(日)
open 16:00/start 17:00(140分程度予定)
会場:赤羽ReNY alpha

チケット:先行販売4000円、一般販売4200円
配信チケット:3,000円(税込)
配信:https://ja.twitcasting.tv/terra_shojoron/shopcart/107512

<少女理論観測所member>
テラ Guitar,Vocal
咲子 Vocal
うきね Vocal
バツヲ Bass
kent watari Drums

<ゲスト>
あやぽんず*(森羅万象)

次の10年に進んでいく「しょじょろん」の姿をライブで見てほしい――バンド結成10周年記念ライブ『非合理論理ショー』開演直前、サークル「少女理論観測所」テラ 1万字インタビュー おわり