東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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インタビュー
2022/05/07

この熱量は会場でしか味わえない! “同”じものが好きな“人”と、会って、話せること。―「博麗神社例大祭in新潟」現地リポート

「博麗神社例大祭in新潟」現地リポート

 イベントから一ヶ月以上経ったこのタイミングで新潟例大祭のレポートを掲載するのには、わけがあります。

 それは、例大祭に足を運んでほしいから。例大祭でなくても良い、できれば今年中に一度くらいは、東方のイベントに足を運んでほしいから。

 

 いよいよ、5月8日に開催される「第十九回博麗神社例大祭」。このイベントは間違いなく“アツい”イベントになります。そのアツさの一端が、約一ヶ月前に開催された「博麗神社例大祭in新潟」でも感じられました。

 この熱量は、現地じゃなきゃ味わえないんです。

 

この熱量は、会場でしか味わえない!

「博麗神社例大祭in新潟(以下、新潟例大祭)」が開催されたのは、3月20日。まだ全国的にも肌寒く、新潟もその例に漏れず気温も10度をきっていた頃。そんな寒さにも負けず、会場の新潟市産業振興センターには多くの参加者が集まりました。

 朝、取材チームが現地に入ったのは、サークル入場が終わり、それぞれが設営を始めたころ。会場となるホールは、即売会が行われる地方都市の会場としてはそれなりに広く、(わかる人に向けて例えると)東京ビッグサイト西1ホールと近い規模感です。

 今回のイベントは「博麗神社例大祭in新潟」と「ガタケット170」という、二つのイベントが共同開催する形で行われました。

「ガタケット」は、新潟県新潟市で長年行われてきたオールジャンル同人誌即売会。今回のイベント名に「170」とあるとおり、開催回数はなんと170回目(7月には171回目の開催も待っています)。1983年から40年近くにわたって開催されてきた、歴史ある同人誌即売会です。ガタケットも、会場の改修工事と、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、この二年間休止を余儀なくされてきました。例大祭と似た状況にあったのです。

 そんなオールジャンルな即売会「ガタケット」のスペースと、特に区切りなく例大祭のスペース、東方ジャンルのスペースが配置されているのは、都心でも地方のイベントでもなかなか見ることができない不思議な光景でした。まるで小さなコミケのようです。

 スタート時間の10時30分になり開場すると、一斉に人が押し寄せます! 開場から数分と経たずに、通路はどこも人でいっぱいになっていました。例大祭の参加者も、ガタケットの参加者も、この二年間に抱えたもやもやを、このハレの日に全部出そうとしていたのかも知れません。マスクで隠れてはいましたが、どの参加者の表情も晴れやかでした。

 当日、一番人が集まっていたのは(おそらく)例大祭社務所のグッズ販売所でしょうか。会場の壁に張り付くように、ずらっと列ができていました。新潟例大祭限定のグッズや、特別パッケージの『神社エール』をお目当てにした人も多かったようで、この人気にも頷けます。

 サークルにもその熱量が向かいます。開場して二時間と経たず、正午を過ぎる前には幾つかのスペースで「売り切れ」の文字が踊っていました。参加者みんなが、リアルで、オフラインで、手渡しでの頒布を待ち望んでいたことがわかります。

博麗神社例大祭生放送 #193 ~ 博麗神社例大祭 in 新潟の会場から生放送! ~ 【東方Project】より引用

 会場の様子を眺めていて思ったのは、一般参加者に若い子の二人組が多かったこと。東京の例大祭も例年若年層が増えていますが、基本は小学生などの親子連れが多い印象です。新潟では少し年齢が上がり、中高生が“友だち同士”で来ていた様子でした。このあたりは「東京まではいけないけど、地元だったら絶対行きたい」という、地方で開催されるイベントならではかもしれません。

 筆者がサークルの頒布列に並んだ際、前に並んでいる方に声をかけてもなかなか最後尾札を渡してくれず、「どうしたのかな?」と自分の声の小ささを疑うシーンがありました。どうやらその前の子は「イベントで最後尾札を持ったのが初めて」だった様子。列に並んだ隣のお友達に「初めて(最後尾札)持っちゃった……!」とうれしそうに話していたのが、なんとも微笑ましい光景として記憶に残っています。

 

 会場で、実際に来ていた高校生と小学生のご兄弟にお話を伺いました。

 

実際に来ていた東方ファンにインタビュー

――お二人の年齢を教えてください。

兄:
 17歳です。

弟:
 11歳です。

ー―どちらから来られましたか?

兄:
 新潟市から来ました。

ー―ふたりとも、例大祭に来たのは初めてですか?

兄:
 初めてです。例大祭のことは前から知ってましたが、今回は新潟市でやっていたので、いい機会だと思って来ました。

ー―東方を知ったきっかけは?

弟:
 お兄ちゃんが教えてくれました。

兄:
 僕は、まらしぃさんとか、ビートまりおさんとかをYoutubeで見て知りました。

ー―一番好きな東方キャラは?

弟:
 チルノです! かわいいところがすきです。

兄:
 諏訪子が好きです、ネイティブフェイスがめっちゃ好きなので。あと、小さくてかわいらしいんですけど、あれでいて神様、っていうギャップが良いです。

ー―お友達や自分のクラスに東方が好きな子はいますか?

弟:
 います。クラスにいます。ぼくと合わせてふたりです。

ー―もうお目当てのサークルさんには行きましたか?

兄:
 まだ、まりおさんのところしか行けてなくて……まりおさんのところで『東方オトハナビ』の特装版を買いました。

ー―特装版! 大きいやつ!

兄:
 直接手渡しで受け取れる機会、滅多にないなと思って。

ー―例大祭に来てみた感想を教えてください。

兄:
 例大祭に初めて来たし、コロナ禍でずっと人が集まれなかったから、こんなに人がいるイベントっていうだけで楽しいです。サークルの有名人さんに会えたりとか、おえかき道場みたいなのもあったりして、来るだけで楽しかったです。

ー―ぜひこのあとも楽しんで下さい! インタビューへのご協力、有難うございました。

 

“同”じものが好きな”人”と、会って、話せること。

 午後を過ぎると、どのサークルスペースでも売り切れが続出。サークルさんに話を聞くと、口を揃えて「ここまで盛り上がるとは思ってませんでした」と言います。

 そんな午後を過ぎたころに、なんと会場にZUNさんが登場。

 サークル本部でZUNさんがマイクを握ったのを見るやいなや、たくさんのファンが集まりはじめます。それはそうです、だって新潟にZUNさんがいるのですから。TwitterやYoutubeでしか見れない、東京の例大祭に行ける人くらいしか普通はお目にかかれない博麗神主が、そこにいるのですから。本部前の通路はあっという間に人で埋まってしまいました。

 こんな光景も、このコロナ禍の二年で失われていたものの一つだったなと、その場で思い出します。

ZUNさんの到着で、会場もTwitter(のハッシュタグ)も大盛り上がり。

 一つ、筆者が会場で見たもので、忘れられない光景がありました。

 あるサークルの列に並んだときです。前に並んでいた中高生くらいの男子ふたりを、近からず遠からずの位置で(列は妨げずに)ずっと見つめている女の子がひとり。なかなか列が動かなかったその間、女の子は絶妙な距離を保ちつつ、もじもじとずっと立っていました。

 列の前方がザワザワしだし、そろそろ動こうかというその時。意を決したように女の子は男の子ふたりに近づいていきます。

「……あ、あの、○○さんですか? Twitterでこういう格好で来ているって書いていたから」
「あれ、もしかして××さん!? うそ、会えると思わなかった!」

 三人はどうやらネットだけでの知り合いだったようで、この新潟例大祭で初めて顔を合わせたのがこの瞬間だったそう。列が動くまでの本当に短い間、三人はそれぞれのお目当てのサークルとその作品について熱く語り合っていました。

 ちょっと作り話っぽいというか、筆者自身もいま原稿を書きながら、さすがに出来過ぎな話ではないかな……と、自分の記憶を疑っています。でも、即売会に足を運ぶと、そういうできごととの出会いが発生することは、過去の経験として覚えています。本当に起きるんですよね。

 そして、そんな胸がじんわりするような光景が起きるような空気が、人に会えなかったこの数年のもやもやが吐き出されようとしている「2022年の即売会」、そして「今年の例大祭」にはある――そんな気がしています。

 

 筆者が東方のイベントに――なんなら、同人誌即売会に足を運ぶようになって、もう十年以上が経ちました。最初に行ったイベントのことは、最初に買ったサークルは、買った本は、CDは、グッズのことは、今でも覚えています。

 同人イベントには人が集まります。同じものが好きな人、文字通り“同人”が集まるのです。そこには、人が集まることでしか生み出せない、生まれようがないできごとが、いくつもあります。そしてそのできごとは、目の前で体験した人だけの「思い出」に変わります。

 

 会って話すこと。この二年で、人類がもっともかけがえがないものだと認識したことのひとつでしょう。同人誌即売会という場には、まさにそれがあるのです。

 

 いままで行っていた人、この数年で行くか迷うようになってしまった人。まだ行ったことがなくて、この数年の間ずっと行きたいと思っていた人も。ぜひ今年は、さまざまな事情が許すのであれば、同人イベント・同人誌即売会に足を運んでみてほしいと思います。

 

 友だちを誘ってでも、家族を連れてでも、あるいはひとりでも。イベントでしか会えない人と、大好きなサークルさんと、即売会を作るスタッフのみなさんと、同じ東方が好きな人たちと。会って、話したいことを、話してみて下さい。

 大丈夫です。例大祭には、じ東方が好きなしかいませんから。

 

第十九回博麗神社例大祭

開催日:2022年5月8日(日)
会場 :東京ビッグサイト 東456ホール

一般参加には、チケットの購入が必要です。

チケットの購入はこちらから↓
https://t.livepocket.jp/e/rts_19

チケット買い方がわからない人は、公式サイトのこのページをチェック!
https://reitaisai.com/rts19/howtobuy/

見れば例大祭がわかる! まとめ情報はこちらをどうぞ
https://reitaisai.com/rts19/matome/

参加に当たっての諸注意が漫画でまとめられています。
参加する方は、こちらも要チェックです!
https://reitaisai.com/rts19/notes/

この熱量は会場でしか味わえない! “同”じものが好きな“人”と、会って、話せること。―「博麗神社例大祭in新潟」現地リポート おわり