「少しでも東方動画のコミュニティを知ってもらいたかった思いがありました」―東方ニコ童祭代表・luno.氏インタビュー(中編)
東方ニコ童祭代表・luno.氏インタビュー(中編)
2009年から始まった東方ニコ童祭は、毎回数百本の東方Projectに関する動画が投稿される、ニコニコ動画を代表する東方のイベントです。
今回は、ニコ童祭第1回からの中心人物であり、ニコニコ動画の初期から東方動画を見続けてきたluno.さんをお迎えして、東方ニコ童祭が始まった経緯、ニコニコ動画と東方Projectの関係、東方動画の広がりの歴史などについてお話しいただきました。
中編では、週刊東方ランキングや例大祭、MMDといった話題にフォーカスしていきます。
聞き手/斉藤大地・西河紅葉・myrmecoleon
文/myrmecoleon
luno. @lunopunzer
東方ニコ童祭主催。東方二次創作に関しては雑食で動画も漫画もアレンジも幅広く楽しむ。
ニコニコ動画黎明期に、東方二次創作動画を紹介する「文々。動画」を投稿した。
週刊東方ランキング・例大祭で広がる活動
――第2回からはニコニコ生放送やニコニコ静画でも参加者を募集するようになりました。
第2回のイベント告知のひとつ。ニコニコ生放送での参加についての説明がある。
luno.:
ニコニコ生放送は第1回でやりたいという声が掲示板であって、実際にゲリラ的にやってもらったらかなり盛り上がりました。
第2回をやる上で、それなら一般にも生放送をやる方を募集しようかなと思ったんです。開催期間中にみんなで動画を見て盛り上がる、別に企画を立ててイベントをやる、などですね。せっかくニコニコ生放送というサービスがあるんだから、それも最大限利用して、ニコニコでの東方のお祭り、生放送も静画も巻き込んでやろうかなという気持ちがありました。
どの試みも新しいことばかりだったので、試行錯誤しながらやっていくのが大変でした。生放送はそうしたイベントが当時あまりなかったので、どういったルールを作り、どういった企画をやるのか、自分でいろいろ考えました。
――2011年・2012年頃に数回週刊東方ランキングを代理で作られてるかと思います(※1)。このときの経緯や思い出話などありますでしょうか。
luno.:
第1回東方ニコ童祭の運営4人中、3人がランキング動画の制作者でした。
そういう縁もあって、「週刊東方ランキングをやりませんか」という話がその以前から来てたんですよ。 忙しいという理由で断っていたんですが、当時週刊東方ランキングを作っていた秋紅涼さんが動画を作れなくなったときに、数回だけなら、と引き受けた感じです。
ただ、いつもの週刊東方ランキングをやってもつまらないなと思って。自分の「文文。動画」のようなネタを取り入れたり、東方界隈のニュース、たとえばZUNさんの結婚を取り上げたりとか(※2)。東方のニュース番組、テレビ番組を目指してみたくて。少し手を広げすぎて投稿が遅れてしまったりで、わたしにはランキング動画無理だなって思ってやめちゃったんですけど。
週刊東方ランキングに求められてるのは、ちゃんとした期日にちゃんとしたデータを公開するということなんで、そのへんは「わたしダメだな」と。いろいろ楽しいことやりたい!を優先してしまって(笑)。
(※1)「週刊東方ランキング」は2008年3月にスタートした前述の「週刊ニコニコランキング」と同様のランキング動画。東方関連の動画のみを集計対象としている。何回か制作者が変更となっており、そのうち秋紅涼さんが担当していた時期に、luno.さんが2011年9月第2週と2012年の2月から3月第1週にかけての計6回の動画制作を代行している。
(※2)最後の代行回となった「週刊東方ランキング 12年3月第1週」中ではその週のZUN氏結婚の判明などのニュースを話題にしている。
――2012年8月のコミックマーケットで出された、久樹輝幸さんの「東方コミュニティ白書2012」にluno.さんが寄稿されています(※1)。このあたりの経緯や感想はいかがでしたか。
luno.:
久樹輝幸さんにはもともとTwitterで繋がっていて、そこからデータの話や動画を紹介したりで、話すようになりました。久樹輝幸さんがランキング動画に当時興味があったので、ニコニコ動画のデータに注目をする人が当時は少なかったのもあって、話せるのが嬉しかったですね。そんな中、2012年のコミックマーケットで依頼が来て寄稿しました。
(※1)「東方コミュニティ白書」は久樹輝幸さんが自身のサークル「久幸繙文」で2010年から発行してる同人誌のシリーズ。2012年8月発行の「東方コミュニティ白書2012」にluno.さんが寄稿している。同号ではmyrmecoleonもデータ関連で一部協力している。
――博麗神社例大祭にはじめて参加したのはいつ頃でしたか?
luno.:
例大祭には2010年ぐらいから一般参加しています。そこからは同人誌即売会も毎年参加するようになっています。サークル参加は第10回博麗神社例大祭が初ですね。売り子で参加したりもしました。はじめて参加したときは、同人誌即売会ってこういうものなんだなと、何もかも新しくて楽しかったですね。
その頃からニコニコ動画だけでなく他の二次創作物、同人誌などもいろいろ読むようになって、ニコニコ動画とはまた違った作風に触れるようになりました。
わたしはシリアスな作品が大好きなのですが、ニコニコ動画は当時はそういった作品が少なかった。ニコニコ動画だとネタ系の動画が流行っていて、原作の設定を生かした話が少なかったので、そういうものを例大祭などの二次創作物・同人誌で読んですごく感動したんです。それをがんばってニコニコ動画に持ってこれないかなと思っていたんですけど、なかなか上手くはいかなかった。わたしのスタンスというか、ニコ童祭の告知動画などがネタによらないで無難な感じになっているのも、その影響かもしれません。
――luno.さんは2013年の第10回博麗神社例大祭に東方ニコ童祭としてサークル参加されていますよね。有志から募集した素材集を無償頒布されていたと伺っています(※1)。どのような経緯だったのでしょうか。
luno.:
第10回でお祭りだから、自分もサークル側として参加したい気持ちがありました。わたしたちも例大祭で何かできないかなと考えて、頒布したのが素材集だったんです。
即売会でも積極的に活動して、ニコニコ動画でやっていることをみんなに見せたかった。少しでも東方動画のコミュニティを知ってもらいたかった思いがありました。
(※1)「東方ニコ童祭 文々。放送局」としてサークル参加し、有志から募集した立ち絵等の画像を収録した動画制作支援ディスクを無料頒布している。
東方動画を変えたMikuMikuDance
――この2011年・2012年あたりから目立ってきているのが東方のMikuMikuDance動画かなと思います。MMDが登場したことによる東方動画の広がりなどはどのように感じていたでしょうか。
luno.:
当時、みんな東方手書き劇場に憧れていました。絵を描いて二次創作動画を公開することへの憧れですね。
ただ、絵の描けない人はけっこういるじゃないですか。それでも東方の話を作って見せたい。それで、一番やりやすい方法がMMDだったんじゃないかと思っています。
当時はそんなにモデルの数も多くなくて、「3Dカスタム少女」(※1)からキャラクターを持ってきたりなどもありましたが、だんだん使えるキャラクターが増えてきたことで話を作りやすくなりました。
そこから「わたしにもこれやれるんじゃないか」と参入する人が増えていったんです。いまでは、動画界隈では手書きよりMMDが主流になっています。MMDで投稿する人がニコ動全体で増えてきて、MMD動画を楽しむ東方動画のファンも増えていった。また、作りやすさでは手書きよりもMMDの方が圧倒的に楽なので、作る側もそちらにシフトしていったんじゃないかなと思います。
(※1)「3Dカスタム少女」はTechArts3Dより発売されたアダルトゲーム。パーツを組み合わせて自由に3Dの女性キャラクターを作れるのが特徴。2009年からこれで作成した3Dモデルの動画等での二次利用が公式に認められており、また有志がMMDモデルに変換するソフトウェアを公開したことから、これで作成した3DモデルがMMD動画でもよく使われている。
――MMDの東方動画で特に記憶に残っているものはありますか?
luno.:
3.3mmさんの『射命丸 文の取材シリーズ』がめちゃくちゃ好きです。
文ちゃんが好きなのと、話自体がすごい面白くてファンなんです。この間も、10周年でTwitterにMMDの静止画を投稿されていました。
おかげさまで10周年という節目を迎えることができました。
これも未だにこの動画を好きでいてくれる方、ここから東方に入ったという嬉しい言葉の数々、そしてモデルやステージ、エフェクトやアレンジを配布してくれる方々がいればこそです。
皆さま本当にありがとうございます! pic.twitter.com/4bc3nRPPDu— 3.3mm (@ExtensionSpacer) March 9, 2021
ほかでは、ぐやもこたんさんの動画も素敵なものが多くて。
有名なのでは「Paranoia!!!!」でしょうか。自分は第4回東方ニコ童祭で投稿されてた幽々子様の動画が印象に残ってます。
こういう東方のアレンジPVをMMDでやったことがイメージに残ってて、すごい感動しました。東方のMMDはストーリー動画に発展するものもあり、完成度の高さもあって記憶に残っています。
中編はここまでとなります。後編では、コミュニティとしてのニコ童祭について語っていただきます。
「少しでも東方動画のコミュニティを知ってもらいたかった思いがありました」―東方ニコ童祭代表・luno.氏インタビュー(中編) おわり