東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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インタビュー
2020/02/21

秘封オンリーの前日に、“秘封ファンのためのライブ”を絶対やってあげたかった 「紫明秘封プラネタリウム」主催、RFインタビュー

2019年11月開催、秘封オンリーライブ「紫明秘封プラネタリウム」主催インタビュー

 

 昨年の11月17日に京都で開催された、秘封倶楽部オンリージャンル同人誌即売会「科学世紀のカフェテラス」。例年開催されているこの秘封イベントでは、イベント当日や、その前日などに、様々な秘封倶楽部好きの皆さんによる企画が行われています。

 その中の一つが、「科学世紀のカフェテラス」の前日、11月16日に開催された、秘封アレンジのライブコンサート「紫明秘封プラネタリウム」です。
 紫明会館というレトロな趣のある会場、プロジェクター数台による天井への映像投影など、通常のライブでは行われることのないスタイルが反響を呼びました。

 紫明秘封プラネタリウム 公式サイト ー http://hihu.club/SH/

 今回は、「紫明秘封プラネタリウム」の主催者RFさんに、開催の経緯やその苦労などについてお聞きしました。

 

 

紫明秘封プラネタリウム主催 RF氏インタビュー

 

――コンサートの開催お疲れさまでした。改めて、紫明秘封プラネタリウムとはどんなイベントだったのか教えてください。

RF氏:
 「紫明秘封プラネタリウム」とは、その名の通り「秘封アレンジ楽曲を星空の下で聞く」という内容のコンサートでした。星空はその名の通り、プラネタリウムのように「天面投影」されているんです。

 

RF氏:
 ゆったりと音楽と星空で癒やされてほしいというコンセプトから、前席シッティングです。セットリストもしっとりとしたバラードが多いのが特徴でした。また、そのタイトルにも入っている、会場の紫明会館は非常に美しい建築で、戦前に作られたものです。

 

ポスターにも写っている、レトロなたてもの「紫明会館」

 

――それはおもしろいですね、なぜそんなライブを開催したのですか?

RF氏:
 そもそも、秘封オンリーの同人即売会の前夜祭として、2015年から「あの日視た幻想」というライブイベントが開催されていました。

 本当に尊くて、私はいつも毎回感動して泣いてしまうようなイベントなんです。そのライブが、2019年は開催しないとのことでしたので……非常に残念に思いました。

 秘封オンリーイベントの前日に、秘封ファンのためのライブを絶対やってあげたい、という思いから企画をはじめました。別の主催が開催している別のイベントではあるものの、「あの日視た幻想」の特別回、のような側面もあります。

 

――それにしても、「プラネタリウム」という名前からも、かなり普通のライブじゃない印象があります。

RF氏:
 「特別回」という意識がやはり強かったなぁと。みんなで企画会議をしているうちに、

「ライブハウスでやんなきゃいけないって誰が決めたの?」と、土露団子さんが言い出しまして。我々は音楽サークルなので、「ライブといえばライブハウスでやるものだ」という常識に囚われていて。正直に言って、ハッとしました。最高のアイデアが既存の慣習の中にあるとは限らないんだな……と。

 それを受けて、紫明会館という面白い会場を見つけました。出演サークルと何をしようか議論しているうちに出てきた「プラネタリウム」という案に、みんなで「それだー!」となりました。星をテーマにした楽曲の多い秘封倶楽部にはピッタリのアイデアだったんです。

 

――どのように実現したんですか?

RF氏:
 プロジェクターを4台使用して、ステージのバックと天井に映像を投影しました。それ専用のMVを四角い天井に合わせて作っているんですよ。曲に合わせて、映像で空や天気などを変動させています。雨が降ったり雪が降ったり桜が降ったり……。

 

――よくそんなことができましたね、手間はすごかったんじゃないですか? どういう体制でやったんでしょうか。

RF氏:
 企画・監督を私がやりまして、あと映像作家5人と、僕を含むCGイラスト合わせて8人程度ですね。いつもの同人サークルのノリで集まってもらったんですけど、非常に非常に大変でした。半年でも時間はぜんぜん足りなかったですね…。
 当日は腕利きのVJのたけるさん(@takeruunが実現してくださいました。天気・時間などを12個くらいの素材を切り替えてもらいました。

たける氏が主催しているDJイベント「東方混舞」はコチラ↓

https://toho-konbu.amebaownd.com/

 

――公式アカウントのツイートなどから様々な準備をされていたことが伺えます。このライブイベント(体験型イベント)で何を表現されたかったのか、教えてください。

RF氏:
 コンセプトは「もっと秘封倶楽部を体現したコンサート」にすることでしたね。そのためにいろんなことをしているんです。

 

――どういうところに秘封倶楽部が表現されているのでしょうか。

RF氏:
 蓮子とメリーそれぞれの能力を体験できるようにしました。 

「蓮子の目」のように、天面投影の中に「時間」や「座標」が見えるように表示したんです。月に会場の座標を、星空に現在の実際の時刻を投影しました。これは実際に、ライブの演奏時間である17時から21時までの4時間の動画を製作することで再現しています。

RF:実際に当日のその時間と同じ空を再現することはしていません。それをすると、演奏時間のうちに月が上がってこないのです。なので「見せたい空」を作ることにしました。実際の動きは無視して、前半には秋の空を、後半には冬の空を見ることができます。これによって、ライブ前半には浮気性のゼウスが登場しなくて、純愛の神話が展開されている秋の星座が、後半にはオリオン座など冬の星座もみることができる。それが紫明秘封の幻想の空です。オリオン座は、一等星が2つ含まれている唯一の星座で、とても特別なものです。

RF氏:
 また、「メリーの目」を「スキマAR」で表現しました。

 ケータイのカメラを通してARで「境界」が見える。そんな玩具です。これを使って会場の写真を撮ってもらおうと思ったわけです。これはパンフレットに付属していたQRコードから遊ぶことができました。現在はver.2.0にアップデートがかかっており、初期型は以下のURLから遊ぶことができますよ!

http://nazr.in/1bQ

 パンフレットをお持ちの方はver.2.0が遊べるので、再度アクセスしてみてください。

 

RF氏:
 ほかにも、MVに合わせて、空模様を切り替えたり、たくさんの仕掛けを作りました。このライブ一回のために、あらたに3本の天井用のMVも作っています。

 中でもTUMENECOさんの名曲「星を廻せ月より速く」につけた映像は、個人的には特別です。サビでみんなでタオルを回すのが定番なのですが、それに合わせて、実際にプラネタリウムの星が回るんです。北極星(ポラリス)を中心に長時間露光のように尾を引いて雄大に廻る。

 TUMENECOさんの出演は叶いませんでしたが、僕のサークルで英語カバーバージョンを演奏しました!みんなで実際に星が廻せるというとても貴重な体験を提供できたと思います。

 

――「科学世紀のカフェテラス」周辺(前日・当日)には、紫明秘封プラネタリウム・あの日視た幻想に限らず、秘封喫茶やなど小説展示会など、様々な「特殊な秘封イベント」が行われていますよね。また、頒布される同人作品も一風変わったものが多いと思います。紫明秘封主催のRFさんから見て、このような特殊なイベント、作品が秘封・或いは京都秘封周辺で多くなるのはどのような理由だと思われますか?

RF氏:
 僕はそのとき、まだ「秘封倶楽部」の創作をしていなかったので、先輩たちから伝え聞く話と消費者としての推測なのですが、まず大きいのは、2006-2012年の原作のCDが発行されていなかった空白が大きな影響を与えていると思います。

 その経緯からかもしれませんが「コミュニケーションのフィードバックが早い」のが「秘封倶楽部二次創作」の特徴かもしれません。

 作家さん、イベントの主催、そして受け手のみなさま。このコミュニケーションのフィードバックがそれぞれすごく早いんです。二次創作の作品に影響を受けた二次創作を創る作家も多く、どんどん作品の良い部分が積み上げられてきた結果、より良い作品が生まれる土壌ができてくれていると思っています。

 

 また、「秘封倶楽部は偏在している」と仰っていた作家さんがいました。

 秘封倶楽部は日常のどこにでも居るということであり、東方Projectで唯一、幻想郷を舞台としない作品群です。現実世界とも近いので、「作家さんやイベントの企画者さんの人生を映す鏡」のように、自分の熱い想いを綴った作品も多く、私はそういった作品が大好きです。

 受け手の皆様も「秘封倶楽部」の作風からか、SFや文学作品など幅広い知識がある方も多い印象です。それで少し冒険した内容のものでも受け止めてもらえるというか。

 あと「京都という街」はまさに聖地ですので、そのインスピレーションが捗るということもあり、盛り上がるのかなと。

 

 そして、読者のレベルもまた高いからだと思います。いい作品を作ると、難しかったり純文学的な作品だったりしても、ちゃんと理解してくれます。咀嚼した上で感想や反応がもらえます。たまにではありますが、三次創作されたりもしますしね。こだわりの強い作品を読み解くのは本当に知識と経験のいることですから、作者として「そこまで読み解けたのか!」というような反応がくると、やっぱり嬉しいです。紫明秘封にしたって、あのコンセプトに共感してくれる人が居るからできたんです。

 それに作家が応える……というフィードバックのサイクルができているんだと思います。これを読んでいる皆様もぜひ、作品やイベントに感想をあげてください。それだけで、さらに良いものを作れると、そう思います。

 

――紫明秘封は今年限りのイベントでした。最後に、イベントに来られた方へのメッセージと、来年の開催が告知されている「あの日視た幻想」について情報をいただければ幸いです。

RF氏:
 紫明秘封のアンコールでは、サプライズとして、(私が発行した作品ではなく、他のサークルの三次創作です)「10年前と8年前に発行された極厚の秘封小説」を読んでないと理解できない演出を入れさせていただいたのですが、来場者のみなさんが理解してついてきてくれたんですね。これは本当に「わかってくれてありがとうございました!」と伝えたいです。

 

RF氏: 
 紫明秘封は、みんなで盛り上がるライブではなく、ゆっくり癒やされてもらうコンサートでした。

 ということで……2020年は、みんなで盛り上がれる「あの日視た幻想」が帰ってきます! 京都のイベントに来られる方はぜひ参加してみてください!めちゃくちゃ盛り上がります。

 

 それだけではなくて、京都秘封こと「科学世紀のカフェテラス」もとってもたのしいイベントです!このイベントをきっかけに「秘封倶楽部」の聖地京都にぜひ来てください!

 僕も1年かけて大作をがんばって作っていると思います!みんなと京都でお会いできることを楽しみにしています!

 

 

秘封オンリーの前日に、“秘封ファンのためのライブ”を絶対やってあげたかった 「紫明秘封プラネタリウム」主催、RFインタビュー おわり