東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

     東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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地霊殿のステンドグラスのマークには元ネタがあるって知ってた?来年のイベントに合わせて、関東“東方聖地”を歩く。――東葉旅人の聖地巡礼手引き

東葉旅人の聖地巡礼手引き【浅草・本所(両国・亀戸)】

 東方我楽多叢誌をご覧の皆さん、はじめまして。

 東方Projectに登場した「キャラクター」「スペルカード」「背景」などを題材に、原作に関連付けることのできる場所を訪れる行為、いわゆる聖地巡礼を主な活動としている、東葉旅人と申します。東方の同人イベントなどで、聖地巡礼の同人誌を制作して頒布もしています。

 有志によるwiki・ホームページ・ブログ・SNSでの投稿や、今まで頒布された同人誌などで紹介された聖地巡礼スポットはとても多く挙げきれないほどです。本日から複数回の記事に分けて、関東に存在している聖地巡礼スポットに焦点を当てて紹介させていただきます

 また、来年1月以降開催される東方イベントに合わせて、“イベント会場の近くにある聖地”をピックアップしてご紹介します。

 今回は2021年1月17日(日)に都立産業貿易センター台東館で開催される博麗神社遊芸祭(ゲームフェス)と、1月30日(土)に両国SUNRIZEで開催される蓬莱キャビネット(LIVE)の前後に訪れやすい場所を紹介していきます。

地霊殿のステンドグラスの元ネタ―五方山熊野神社

 【博麗神社遊芸祭】の最寄り駅である浅草駅から都営浅草線に乗って行ける場所に、五方山熊野神社という神社があります。

 西暦1000年前後に陰陽師の安倍晴明によって熊野大神が勧請されたこの神社は、『東方香霖堂』【第19話 龍の写真機】でも語られていた「木・火・土・金・水」の概念である陰陽五行説に基づいて、正五角形という非常に珍しい形状の境内地とされています。これが結界として機能し、当時悩まされていた水害から近辺を守護されていると伝わっています。

 神社を象徴する神紋にもこのことが反映され、正五角形に八咫烏が囲まれているデザインとなっています。この神紋こそが、『東方地霊殿』『東方心綺楼』『東方智霊奇伝』などで登場する地霊殿を飾るステンドグラスの絵柄の元ネタなのではないでしょうか。

 この比較用の画像を見ていただけると分かりやすいと思います。

 八咫烏の神紋を切り取ると、『東方地霊殿』4面背景で使用されているステンドグラスの絵柄とほぼ同じになります。様々な加工を施していると思われるため細かい違いがありますが、八咫烏のシルエットや正五角形に加えて四隅にある円の名残も一致しているように見えます。この東方我楽多叢誌で常に公開されている『東方智霊奇伝』第一話~第三話でも原作をもとにした地霊殿のステンドグラスが描かれているので、そこと見比べてみても重なる部分があります。

 境内はこの神紋による物が数多く設置されているため、地霊殿のような雰囲気を味わえます。また、こちらの神社は3頭のポニーが神馬として育てられ、併設されている幼稚園の子供たちの友達として親しまれています。地霊殿と同様の神紋に囲まれていて動物もいるぐらいですから、ひょっとしたら『空想上の友達(イマジナリーコンパニオン)』である某さとり妖怪も子供たちと遊んでいるかもしれません。残念ながら筆者はお酒が飲める年齢のためか見えませんでした……。

 入口に三本足のカラスが飛んでいる授与所では、神紋や八咫烏をモチーフにしたさまざまなお守りなどがそろっています。地霊殿好きはもちろん、霊烏路空が好きな人も満足できると思いますので参拝後におすすめです。地底では灼熱地獄跡を封じているのに対し、地上では水害を封じている地霊殿マークを見に訪れてはいかがでしょうか。

住所・アクセス

五方山熊野神社
東京都葛飾区立石8-44-31

最寄り駅:

京成立石駅
浅草駅から都営浅草線で乗り換え無し10~11分
南1出口から約1km 徒歩13分程度 

青砥駅
浅草駅から都営浅草線で乗り換え無し10~13分 
東口より約700m 徒歩9分程度

 

幻想郷名物焼き八目鰻―八ッ目鰻本舗

 続きまして【博麗神社遊芸祭】の会場、その最寄り駅の浅草駅から徒歩圏内にある八ッ目鰻本舗を紹介します。書籍版『東方文花帖 ~ Bohemian Archive in Japanese Red.』や『東方三月精 〜 Oriental Sacred Place』【2巻第13話】などで描写がされている八目鰻。もともと明治末期に日本橋で八目鰻専門問屋を営んでいた前身を持つこの店は、八目鰻関係を中核にした非常に貴重な会社の本店です。

 こちらの本店や雷門通りを挟んで向かいにある漢方薬局では、三月精でミスティア・ローレライが手に持っていた干物(乾燥八ッ目鰻)を販売しています。ランクによって値段は違いますが1本辺り860~2,160円となっています。歯応えと苦味があり癖が強いですが、これでミスティアごっこ(調理)をすれば幻想郷の少女達と同じ食事ができます。調理が苦手……という方にも、八目鰻の佃煮(本舗限定)や調味料代わりに使える粉末が販売されています。

 東方の作中で紹介されているように、鳥目(夜盲症)や疲れ目に効く成分が八目鰻にはあり、それは油分に含有されているビタミンAによるものが大きいです。それらをゼラチンで、弾幕のようなカプセル状に固めた第②類医薬品「八ッ目鰻キモの油」は、80年以上販売している看板商品となっています。パソコンやスマートフォンなどで眼を酷使しがちな現代社会ですので、疲れ目を感じた際には選択肢のひとつとして検討してみるといいかもしれません。弾幕ごっこ(原作プレイ)も眼が疲れますし、無理は禁物です。ちなみに八ツ目鰻本舗公式ツイッターによると、ビタミンAはウイルスなどの侵入口である喉や鼻の粘膜を丈夫にする作用があるため感染症対策にもなるそう。

 大正時代には浅草で「八ッ目食堂」を開業していただけあって、2016年ごろまでは店内で八ツ目鰻の蒲焼きを注文できたのですが、残念ながら現在はやっていないようです。代わりに、比較的マイルドな味わいの八ツ目鰻春巻スティック(300円)が食べられて、薬膳茶や薬膳酒も豊富です。ぜひ休憩も兼ねて寄ってみてはいかがでしょうか。

 しかし可能ならば、プロが調理した八目鰻そのものをしっかりと食べたいと思うかもしれません。そんな時は山手線の巣鴨駅からも近い「八ツ目や にしむら 巣鴨店」がお勧めです。

 こちらのお店では「八ッ目重定食」と「八ッ目蒲焼き定食」が3,000円、串焼きの「八ツ目短冊」が650円で食べられます。店員さんに「癖が強いけど大丈夫か」という確認をされるだけあって、弾力のある歯応えと苦味が特徴ですが、山菜の「ふきのとう」や「タラの芽」を楽しめるのならば平気かと思われます。アラスカ産の八目鰻を使用しており、常に入荷している訳ではないので確実に食べられるとは限りませんが、機会がありましたらぜひ行ってみてください。ご飯やお酒が進みます。

住所・アクセス

八ッ目鰻本舗
東京都台東区浅草1-10-4

営業時間 10:00~19:00 毎週火曜日定休

都立産業貿易センター台東館から約940m 徒歩12分程度
浅草駅出口1から約470m 徒歩6分程度
つくばエクスプレス浅草駅出口Aから約240m 徒歩3分程度

 

八ツ目や にしむら 巣鴨店
東京都豊島区巣鴨3-34-2

営業時間 10:30~19:00(ラストオーダーは18:30)
定休日は月毎に違うためホームページに掲載されている

JR巣鴨駅から約400m 徒歩5分程度

 

「本所」にある元ネタたち―鷽替神事、置いてけ堀、本所七不思議、能勢の黒札、鈴奈庵の来客用グラス

 最後に【蓬莱キャビネット】の開催会場近くにある、両国駅から行きやすい元ネタの紹介をします。

 江戸時代には本所と呼ばれていた両国駅から亀戸駅周辺。20世紀の関東大震災や東京大空襲などの影響で面影は残っていませんが、細かいネタなどが東方の公式作品で登場しています。

 『東方三月精 〜 Strange and Bright Nature Deity』【1巻第6話】で行われている鷽替うそかえ神事。この鷽替神事自体は、1月24日や25日に天神様(菅原道真公)を祀る神社の多くで行われていますが、この亀戸天神社では博麗霊夢が鷽を呼ぶために吹いていた笛と似た形状のお守りを、時期を問わず授与しています。

 災厄を退け幸運に変えることを祈念したこの鷽笛という名のお守り(700円)は、実際に吹くことができます。漫画のようにヒュイーという音色を奏でられます。鷽は、越冬期には関東の平地にも姿を見せるようなので、これを吹いて博麗の巫女ごっこをすれば、鷽が来てくれるかもしれません。神事の時期以外は鷽の作り物を授与していませんが、社殿の近くにある鷽の碑では一年中木彫りの鷽が置かれていことがあるので、どの時期に訪れても鷽替神事の要素を味わえます。

 錦糸町駅周辺には『東方鈴奈庵』【3巻第14話と第15話】で語られていた、本所七不思議が発生した場所があります。すっかり現代的な風景となっていますが、錦糸堀公園の河童像や、大横川親水公園の七不思議レリーフなど、怪異に関係する設置物が存在し、妖怪の伝承が地域に根付いている様子を目にすることができます。

 南北に細長い大横川親水公園の七不思議レリーフが設置されている場所の近くには、能勢妙見山東京別院という名のお寺があります。境内にある鷗稲荷の黒札は、魔除けや火伏の御札として江戸時代より有名で、これが『東方鈴奈庵』【3巻第十九話】で語られていた「能勢の黒札」の元ネタと思われます。4月15日に催される春季大祭花まつりのときや前後の日曜に「能勢の黒札」が授与されます。

 鈴奈庵では、来客の少女たちに飲み物などを出している場面が度々描かれていて、夏の時期においては、現代でいう江戸切子のような硝子細工のグラスで提供されています。流石まったく同じデザインの物は見当たりませんが、似たようなデザインのグラスは、錦糸町駅近くのすみだ江戸切子館などで購入することができます。近年では当たり前になってきた猛暑ですが、冷えたお茶を江戸切子のグラスに注ぎ飲み干す鈴奈庵ごっこをすれば、例年の暑さもやり過ごせて気が楽になるかもしれません。

住所・アクセス

亀戸天神社(鷽替神事)
東京都台東区浅草1-10-4
東京都江東区亀戸3-6-1

亀戸駅北口から約920m 徒歩12分程度 

 

錦糸堀公園(置いてけ堀)
東京都墨田区江東橋4-17-1

JR錦糸町駅南口より約360m 徒歩5分程度

 

大横川親水公園(本所七不思議のレリーフ)
東京都墨田区本所4-8付近(春日通りの南側)

JR錦糸町駅北口より約1.2km 徒歩15分程度

 

能勢妙見山東京別院 鷗稲荷(能勢の黒札)
東京都墨田区本所4-6-14

JR錦糸町駅北口より約1.1km 徒歩14分程度

 

すみだ江戸切子館(鈴奈庵の来客用グラス)
東京都墨田区太平2-10-9

営業時間 10:00~18:00 日曜・祝日は定休日

JR錦糸町駅北口より約440m 徒歩6分程度

 

 本記事をご覧いただきありがとうございました。次回は同じく東京にある聖地巡礼スポットを、1月から3月にある同人誌即売会に合わせた形で紹介していく予定です。記事を通してまたお会いできることを楽しみにしています。

 

地霊殿のステンドグラスのマークには元ネタがあるって知ってた?来年のイベントに合わせて、関東“東方聖地”を歩く。――東葉旅人の聖地巡礼手引き おわり