「4年越しの『またやろう』」少年ヴィヴィッド×Kurage seek room×モジャン棒出演ライブ『ユレカ vol.2』現地レポート
少年ヴィヴィッド×Kurage seek room×モジャン棒出演『ユレカ vol.2』ライブレポート
10月22日、博麗神社秋季例大祭の前日。ここ、赤坂のnavey floorに集まる人影がちらほら。今日は少年ヴィヴィッド主催のライブ“ユレカ vol.2“。前回のVol.1から実に4年ぶりとなる開催に東方ライブキッズたちは沸き立っていた。
今日のライブは普段の対バンライブとは一味ちがう。集まった3サークルのそれぞれの持ち時間は、およそ1時間。自分たちの持ち味を存分に魅せつけるに十分な時間だ。
それぞれのプライドがぶつかる真剣勝負。さぁ、“ユレカ vol.2“の幕が上がる。
写真:るぅく
文:eve、ゲン
感情のジェットコースターに乗っているよう ―― Kurage seek room
優しい音がフロアを包む。おなじみのSE、『primal』とともにメンバーが登場した。
Kurage seek roomは2017年より活動している東方ロックアレンジサークルだ。今年頒布されたCOOL&CREATE主催のコンピレーションアルバム「東方オトハナビ」でご存じの方もいるだろう。今回はオリジナルメンバーの湯豆腐(Gt.&Vo.)、犬殺し丸ひじき(Gt.)に加え、下條ケイ(Ba.)、シュン(Dr.)という編成だ。
最初を飾る曲は『プレイバックフォーユー』。同タイトルのアルバムの表題曲である。湯豆腐の「Yeah!」という掛け声から一気に会場の雰囲気が一転し、身体が揺さぶられた。「怪我せんように、楽しんでいってください」という湯豆腐。今日は容赦しないぞ、という気持ちの表れだろうか。
2曲目『水底落伍心中』 、3曲目『フリーフォール』 とアッパーな曲が続く。各楽器から身体に響く音が立て続けに聞こえてくるなかで、Gt.&Vo.湯豆腐の淡く、色気すら感じる声がフロアに広がる。アンバランスで、しかし心地よく聞こえる不思議な感覚だった。『フリーフォール』はハルトマンの妖怪少女のアレンジ。古明地こいしのようにパワーがありながらも、ゆらりと人の懐に入ってくる、そんな印象を受けた。
ライブは実に2年ぶりだと語る湯豆腐。言葉の端々に、有観客でライブができるうれしさが滲み出ている。
4曲目『喘鳴』は広有射怪鳥事~Till When?のアレンジだ。綺麗に研がれた刀で何重にも切られるような感覚になったかと思えば、続く『revive』では切ない気持ちにさせられる。感情のジェットコースターに乗っているようだ。
続いてはアルバム「sick girl triangle」より、『星に願いを』。当サークルのなかで筆者一押しのバラード曲が投入された。会場の壁は宇宙空間のような雰囲気で作られており、風景と相まってより一層心に沁みる。言葉で言い表すには感情が入り過ぎてしまうため、気になる人はぜひCDで聴いていただきたい。
2度目のMCでは、少年ヴィヴィッド主催のコンピレーションCD「Eureka」について語った。「うちのバージョンの『死にたい夜にかぎって』をやります」という言葉で演奏が始まった。しっとりとしたメロディに湯豆腐の声が伸びて響き、特に最後の「それでも」というフレーズには特に気持ちがこもる。その感情を持ったまま、湯豆腐が一番好きな曲と語る『seaside』が始まる。
その後、MCでライブを開催できる感謝を再度述べ、次のフェーズに移る。ゆったりとした『眠り姫』『蠢眠にて』の新旧バラードが投入される。
最後のMCではシンガロングを求める言葉が掛けられた。ライブ開演直前に都条例の変更があったため、声出しが急遽可能となったのだ。ラストはアルバム「primal」より『RGB』だ。デザイアドライブのメロディラインに合わせて照明が赤・緑・青のRGBの三色に光る。
ライブのなかった2年間の、いや、今までの想いすべてを乗せて曲が進む。この曲は「愛」について歌った曲だ。愛してやまない音楽が「いつまでも 消えないで」という歌詞に込められているように感じた。
名残惜しいがバトンタッチの時間が来てしまった。Kurage seek roomの想いを引き継ぎ、2番手のモジャン棒へバトンは渡された。
セットリスト
01:プレイバックフォーユー
02:水底落伍心中
03:フリーフォール
04:喘鳴
05:revive
06:星に願いを
07:死にたい夜にかぎって
08:seaside
09:眠り姫
10:蠢眠にて
11:RGB
フロアは一瞬で最高潮へ ―― モジャン棒
Kurage seek roomの2年ぶりのライブという火種で火が点いたユレカ。施行されてホヤホヤの新ガイドラインのもと、声出しOKライブのやりかたを徐々に思い出してきた現場は、2バンド目の登場を待つ。
本日の会場、navey floorはドリンク類が充実。ビールが旨いし、カフェめいたオリジナルドリンクやオシャレな限定カクテルまで準備されている。まだ最初の幕間ではあるが、早くも一部は売り切れという盛況ぶりだ。幕間でのこうした一休みも、現地でのライブの醍醐味だろう。
一休みしている間に、次のバンドの準備が整いつつあるようだ。フロアとステージの間にはスクリーンが1枚隔てるのみ。隙間から音出しするメンバーが時折顔を覗かせ、いやが応でも期待を高めてくれる。
2番手のバンドはモジャン棒。トレードマークのタンバリンをつけたサークル代表田中じゅんじろーが高らかに開始を宣言し、フロアは揺れ動き始める。パワフルさが持ち味のバンドが舞台に立ち、観客は声出しの準備もできている。役者は揃ったが、いきなりメインディッシュは出てこない。まずはオリジナルインストの『0.の均衡』で場を整える。
待たせて待たせて、2曲目は『六道オルタ』。妖々夢でフロアは一瞬で最高潮へ。モジャン棒がパワフルなボーカルで情熱的にオーディエンスを盛り上げていく。条例を守るため、コール&レスポンスやシンガロングなどの「流れに沿うところだけ声出し」というのが本日のルール。ライブシーンの全盛期にはまだ道半ばだが、曲の終わりに響く顧客の歓声さえ、今の我々には感動的だ。
筆者の感傷を待つ間などは当然なく、3曲目の『転落ゲエム』は爆速でリズムを刻み続ける。ハイな曲の連続だが、オーディエンスはついてくる。コロナ禍のライブで声を出さずに身体の動きだけでノってきた連中の体力ゲージはまだまだ残っている。
MCを挟み、始まったのは『滑空スカイハイ』。イントロの瞬間ガッツポーズを決める観客がいたのを、私は見逃さなかった。春色小径 ~ Colorful Pathのメロディに合わせてクラップが鳴り、変わらずフロアはハイペースを刻む。そしていつもの呪文「モジャンガールカモン!」。ガールズを召喚し、翌日リリースの新譜から『タブーパズル』を披露する。
新曲は持ってきたが、物販在庫は僅少。おまけにTシャツは無し。みんな有観客ライブのやりかたを忘れている!
本日フロアは満員御礼。MC後の『双尾ステップ』では、バンドメンバー全員とモジャンガールが集結し、ステージも同じく満員だ。メンバー勢ぞろいで会場すべてがティアオイエツォンで踊り出す。配信メインのライブ“Grazy Crazy!!”でも元気を振りまいていた曲が、声出しを経て本来の形を取り戻す。そしてそのままツインボーカルで過去のコンピCDから『余命イクバグ』。フロアを煽り、煽られる。こんな日がくると信じてやってきただけに、今日の熱量は高い。
この日に続くライブ、“さっきみたゆめ”や”博麗神社うた祭”の宣伝を挟みつつ、いったんクールダウンの時間。有観客にはこういう時間も必要だ。『白の瞳憬』、神霊廟4面の名曲たちが箱をクリアにしていく。そして『紡織カーニバル』、(新譜より)『不眠ニズム』と心地よく音を浴びるターンが続く。
そしてMCで告げられる「あと3曲」という事実。オイオイ今何曲目だっけ? 休んだからイケるだろと言わんばかりのセットリストだ。『彼女の描いた庭』でまたアップテンポの世界へ引き戻し、激しいクラップを思い出したあと、『リピートビートドープ』でガールズが復帰。フロアは縦ノリの熱狂に染まる。
ラストは定番の『刹那コミュニケヰション』。Aメロはクラップの嵐、そして声を出すチャンスを逃さぬよう、田中じゅんじろーが観客を煽り、年単位で溜まった鬱憤を晴らすがごとく観客がそれに応える。間奏のヘッドバンキングでフロアが揺れる。
無観客ライブを経験し、客有り声無しを経て、ついに取り戻した声有りライブの日。熱い情熱を載せてフロアに火をつけたまま彼らは退場していった。
セットリスト
01:0.の均衡
02:六道オルタ
03:転落ゲエム
04:滑空スカイハイ
05:タブーパズル
06:双尾ステップ
07:余命イクバグ
08:白の瞳憬
09:紡織カーニバル
10:不眠ニズム
11:彼女の描いた庭
12:リピートビートドープ
13:刹那コミュニケヰション
また君に会えたら同じ夢を見よう ―― 少年ヴィヴィッド
トリを飾るユレカ主催の少年ヴィヴィッド。転換は貴重な休憩時間のはずなのだが、このときだけスマホを見つめる人が目につく。それもそのはず、偶然にもこの時間に、あるライブの告知が出ていたのだ。
ステージ一発目は『造花』で、入場曲から流れるようにスタート。幽香を思わせる笑顔でイチがこのときを待っていた、とばかり思い切り感情を込めたまま歌い上げ、『Stand By me』『Seeker』『メランコリ』と切れ目なく続いていく。ライブ翌日は博麗神社秋季例大祭。明日ハレの日、ケの昨日アレンジを歌うにあたって、これほどふさわしい日はないだろう。
少年ヴィヴィッドのステージはつなぎが上手い。初見だったライブ“Grazy Crazy!!”のときから、筆者のその感想は変わらない。MCで「4曲一気に」と言ったときに、私は「またやられた」と思ってしまった。切れ目なく引き込まれる空気に、何曲目だった、などということは忘却の彼方に消えてしまう。
MCでは、第1回の“ユレカ“も同じ会場で開催しており、当時「赤坂CLUB TENJIKU」だったこの場所は、現在「navey floor」になっていることに触れる。当時のスタッフは今もnavey floorに在籍しているものの、時間が流れていて変わってしまったこともあるが、2回目が開催できたことに感謝を述べた。
そして、続いているのはユレカだけではない。東方バンドアレンジサークルのコンピ企画「極東アウトブレイク」も、また今まで続いている。関係者も客席に多数いるというのがつながりの深さだ。いろいろと変わってしまったこの数年で、変わらなかったものもある。
そんな極東アウトブレイクから『カミクラフト』。高速のドラムにオーディエンスが応え、殆どの人が久しぶりの声出しライブな中、今日一番の盛り上がりを見せた。聞かせる曲で世界観を感じさせる少年ヴィヴィッドのライブ。激しい曲では観客に休む暇を与えない形でその特性が発現する。
続くは『Falling Down!』、そして新曲の『another world』。例大祭新譜の「eureka」は今日出演した3サークルがお互いの曲をカバーしあう相互カバーのアルバム。『another world』は各サークル1曲づつ収録されたうちの1曲だ。
MCを挟み、いよいよユレカはフィニッシュに向かう。MC伴奏からそのまま『usotsuki』。しっとりとした曲でありながら、声出しを活かすべく観客にも要所で誘いが入る。
ああ、声を出せるって気持ちいい。
ステージと観客のコミュニケーションが生み出す一体感がライブの醍醐味であるなら、やはりこれまでのコロナ禍ライブは何かが足りなかったのだ。『Sphere』『紙飛行機』と曲調は静かだが、観客のテンションが静かに上がっていることはフロアを眺めれば分かる。
そしてステージの最後は『ユレカ』。4年前、初回ユレカの為に作られた、「また君に会えたら同じ夢を見よう」というフレーズが、また同じ場所で「また」の機会に披露され、コロナ禍を経ることで同じフレーズながら別の実感を持って、4年越し二度目の「またやろう」という語りかけから万感の思いを込めて演奏される。
MCの雰囲気を受け継ぐ雰囲気のイントロから、ライブの楽しみを噛みしめるように演奏するバンドメンバー。そしてそれをクラップで受けるオーディエンス。
縁ある曲で締めて大団円の雰囲気だが、ライブのお約束がまだ残っている。観客のアンコールを受け、待ちきれないように早々に再登場だ!「アンコールは企画者の特権」という主催ならではの気持ちを吐露し、これまで楽しませていたフロアだけでなく、自分たちも最高に楽しむため、「本日一番うるさい曲」とコールして『針音アンバランス』の演奏が始まる。
“Grazy Crazy!!”のときにはできなかった、コーラスの声出しがついに叶い、フロアは貯めた体力を解放する――オーディエンスが思い切り腕を振り、演者がフロアを煽り、それにオーディエンスが応えていく。この数年失われていた光景が徐々に取り戻されていることに感動しつつ、大声を忘れた喉が、かすれて力尽きるとともにこの日は終了した。
セットリスト
01:造花
02:Stand by me
03:Seeker
04:メランコリ
05:カミクラフト
06:Falling down!
07:another world
08:usotsuki
09:Sphere
10:紙飛行機
11:ユレカen:針音アンバランス
公演情報 石鹸屋LIVE DOJO YABURI VS 少年ヴィヴィッド
特設サイト
https://www.sekkenya.com/vs2023
チケットはこちらから
https://eplus.jp/sf/detail/3764680001-P0030001
石鹸屋LIVE DOJO YABURI VS 少年ヴィヴィッド
2023年1月14日(土)
open 17:30/start 18:00
会場:西川口Hearts
Twitcastingにて、配信予定
チケット:前売り3500円、当日4000円
配信チケット:2500円(予定)
出演者:石鹸屋、少年ヴィヴィッド
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