東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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【連載】全国の大学東方サークルに話を聞いてみました! 東京都立大学の東方サークル「東方都立璋」にインタビュー!

東京都立大学の東方サークル「東方都立璋」にインタビュー!

「“東方”が好きな“大学”生たちが学内で集まって活動する“同好会サークル」、通称大学東方サークル」。

 いま、日本各地で大学東方サークルが続々と増えており、その数は25年3月末時点でなんと71サークルにものぼります【※】

【※】東京都立大学の大学東方サークル「東方都立璋」調べ(X より引用)

 同月に放送された東方ステーションの番組内でも、大学東方サークルが取り上げられるなど、大きな盛り上がりを見せ始めています。

 そんな大学東方サークルですが、学内での活動がメインということもあり、外部の人間が彼らの活動を知る機会は非常に少なく、その実態はというとあまり明かされていないのが実状です。

 いったい彼らは学内でどのような活動をしているのか? そもそも大学東方サークルとは何者なのか? 

 それらの疑問を解消するべく、全国の大学東方サークルを取材して話を聞いてきました!

【前回の記事はコチラ→【連載】全国の大学東方サークルに話を聞いてみました! 九州工業大学の東方サークル「東方慧逢亭」にインタビュー!

聞き手・文・写真・編集/土露団子

 

個性派の4人が奇跡的に集結! 東京都立大学の東方サークル「東方都立璋」

【主なインタビュー参加者】
崇彦(元代表)、くらふ、たくぼん、いなやわた(現代表) ※敬称略、役職は2024年インタビュー当時

――それでは、簡単にサークルの自己紹介からお願いします。

東方都立璋:
 東京都立大学の東方サークル「東方都立璋(とうほうとりつしょう)」と言います。2022年に、ここに写っている4人が中心となって立ち上げた非公認サークルです。

――「都立璋」と名付けた方は、どなたでしょうか?

 現代表のいなやわた【※】が「東方都立璋」の命名者です。天空璋のオタクというわけではなく、元代表の崇彦が「永夜抄が好きなのと、他の大学サークルがまだそこまで多く使っていないから、サークル名は『東方都立抄』でどうだろうか?」と提案したところ、いなやわたが「それだと3文字の密度がデザイン的にアンバランスだから、濃い・薄い・濃いになる『都立璋』の方が良いのでは?」と発言し、結果それがそのまま採用されました。

【※】ちなみに、冒頭で取り上げた「大学東方サークルマップ」の製作者でもある

――現在は何人くらいの学生が所属していますか?

東方都立璋:
 19人です。内訳としては4年生が3人、3年生が5人、2年生が2人、1年生が8人で、そこに院生が1人加わった形になります。

――最初は4人から始まったことを踏まえると、わずか2年間で一気に増えましたね。部員はみな、今我々がインタビューを行っているここ、南大沢キャンパスの学生でしょうか?

東方都立璋:
 そうですね、都立大の1年生全員が南大沢キャンパスに通うことになるのと、2年生以降もシステムデザイン学部と健康福祉学部以外は引き続きこのキャンパスに通うことになるので、殆どの部員が南大沢キャンパス所属の学生です。

南大沢キャンパスってどんなところにあるの?

 

――さきほど「非公認サークル」と仰っていましたが、今回のインタビューのように、普段から教室を借りて活動しているのでしょうか?

東方都立璋:
 
確かに都立璋は非公認サークルではありますが、一般的なサークル基準で言えば公認サークル並の権限が与えられています。教室もこのように堂々と使用することができますし、新歓や学祭といったイベントごとにも参加することができます。

▲教室入口のホワイトボードには、誰かがイラストを描くのが常とのこと。

――非公認サークルは活動場所が見つからない問題をよく聞きますが、ここではそういった問題が起きていないのですね。

東方都立璋:
 
そうですね。恐らくこれは都立大の校風によるところが大きいと思います。他の大学よりも学生による自治に任されているというか、良い意味で大学側の規制がゆるめというか(笑)

――活動の頻度はどれくらいでしょうか?

東方都立璋:
 今は週1~2くらいで活動しています。曜日を固定してしまうと、カリキュラムの都合上、参加できない部員が生まれてしまうので、曜日はその時々でズラします。他にもバイトや兼部している部員も多いので、なるべく皆が参加しやすいように工夫しています。

――兼部している部員はどのくらいいますか?

東方都立璋:
 大体半分くらいですね。兼部先は漫研部やスマブラ部、ピアノ、山岳、地理、料理、といった感じでバラバラです。

――普段の活動はどういったことをしているのでしょうか?

東方都立璋:
 基本は原作プレイを中心とした対面活動がメインですね。プレイする作品は各々好きなキャラやシステムがあるので、特に偏りはないですね。他にもボードゲーム
をすることもありますが、他大学のサークルと比べるとそういった二次創作系は少なめかと思います。

――構外活動はどうでしょうか?

東方都立璋:
 24年度では、「大・東方Project展」や「あつまれ!東方ステーション」に参加したり、「博麗神社秋季例大祭」に初めてサークル参加しました。他にも東大幻想郷主催の「花映塚大会」に参加したり、東方天空郷主催の「東方獣王甲子園」に参加するなどしました。

【連載】全国の大学東方サークルに話を聞いてみました! 静岡大学の東方サークル「東方天空郷」にインタビュー!

静岡大学の東方サークル「東方天空郷」にインタビュー!

▲「東方天空郷」のインタビュー記事はこちら

――非常に精力的に活動されていますね。オンラインでの活動はどうでしょうか?

東方都立璋:
 大学東方合同合宿の時に仲良くなった大阪公立大の「東方澪椰伝」とオンライン交流会をしたこともありますが、基本的には対面活動の延長線上で使うことが多いです。部内での運用も同じで、Discordをはじめとするオンラインツールは連絡手段として用いることが多いですね。

――対面での活動がメインなのは、何か理由があるのでしょうか?

東方都立璋:
 特に何か大きな理由がある訳ではないのですが、一番は部員たちがこの南大沢キャンパスに集まりやすいから、という理由が大きいように感じます。あとは、例えば龍谷大学の「東龍門」は部内でハンドルネーム呼びしているそうですが、都立璋では逆にほぼ全員が本名呼びで活動しています。元代表の崇彦がX(旧:Twitter)をはじめとするSNSであまり活動しておらず、他の部員たちもそういったネット文化に馴染みがない人が多い印象です。と言っても、現代表のいなやわたもさることながら、くらふ【※】に限ってはYouTube活動をがっつりやっているので、今はだいぶ浸透しているかもしれません(笑)

▲2月21日に放送された東方ステーション「東方初心者特集」で公開された大学東方サークルの紹介動画は、彼によって製作された。他にも東方と旅行にまつわる動画を多数制作している。

 

東方都立璋はこうして生まれた

――ところで、設立者の4人はどのようにして出会い、そして「東方都立璋」を結成されたのでしょうか?

東方都立璋:
 
この話を始めるとだいぶ長くなってしまうので恐縮なんですけれど……(笑)。ことの発端は、崇彦が2022年4月に「東京都立大学 東方Project(仮)」という名前のアカウントを作成して、下のツイートをポストしたことがきっかけでした。

東方都立璋:
 
都立大ではもともと、「東方都立大学」という大学東方サークルがあったのですが……、この4年ほど前から音沙汰がなく、入部しようにも情報を得ることができなかったため、新たに東方サークルを立ち上げる以外方法がなかったというのが、正直なところです。

▲ちなみに「東方都立大学」のアカウントはこちら。2018年4月23日で更新が途絶えている。

――つまり、都立大の東方サークルとして考えるならば、「東方都立璋」は二代目ということになるのでしょうか?

東方都立璋:
 
そうですね。コロナ前に一度廃部になってしまった都立大の東方サークルを自分たちの手で新たに復活させたのが、「東方都立璋」になります。ただ、その当時は他メンバー3人は誰もこのポストに気付かないどころか、そもそも誰一人として学内で繋がっておらず、まだ出会ってもいませんでした(笑)

――そんな状況下のなか、一体どのようにして知り合うようになったのでしょうか?

東方都立璋:
 
きっかけは、ほんの些細な出来事でした。いなやわたが「大学のスポーツ大会?的なの楽しかった」と呟いたポストが、偶然知り合いのいいね欄を経由して、たくぼんのTLに表示されたのです。

▲その当時の様子がこちら。まさに奇跡とも言える出会いだった。

――あれっ、ちょっと待ってください。このツリーの下の方にある「すたっくくん」というのは、もしかして……!?

東方都立璋:
 
そうです、この前静岡大学の東方サークルでインタビューを受けていた、「東方天空郷」浜松キャンパス代表の彼【※】のことです。

【※】詳しくは「東方天空郷」のインタビュー記事内のコラム「正直、辞めようと思ったことはなかったの?」を参照。

――彼が冗談交じりに「都立璋の浜松支部代表」を名乗っていましたが、それにはこういった理由があったのですね。

東方都立璋:
 
もともといなやわたと彼とはX上で知り合っていた仲でしたが、その彼のお陰でたくぼんといなやわたとが繋がったのです。そしてその3ヶ月後に、たくぼんがさらなる奇跡を起こします。都立大で大学東方サークルを立ち上げようとしている、あの崇彦のポストを偶然見つけたのです。

――なんというか、たくぼんさんは”持って”いますね(笑)。二度もこういった偶然を引き当てるのは、そうそうないですよ。

東方都立璋:
 
本当にそうですよね(笑)。その後たくぼんと崇彦が繋がり、ようやく初期メンバー3人での活動が始まりました。ですが、その頃はまだ他の大学東方サークルがどのように活動しているのか知る由もないですし、最初は手探り状態での活動でした。

▲その当時の様子がこちら。最初のポストから5ヶ月目にして、初めて本格的に行ったサークル活動でもあった。

東方都立璋:
 
そういった活動を続ける中で、「来年の2023年度には本格的に活動したいよね」という話になり、そのためには活動実績もそうですし、大学の教室を借りて定期的に活動するためには団体名を決める必要があったので、夏休み明けにサークル名を決めるなど、少しずつ大学東方サークルとしての体裁を整えていきました。そして10月に行われた「第九回博麗神社秋季例大祭」で、今後の活動の参考にするために他大学のスペースに赴いて、部誌を買ったり話を聞いたりしていると、東方理學団のスペースで「都立大の人、ウチのサークルにインカレで1人いますよ」と言われて、ある人物を紹介してもらったのです。

――それが4人目のくらふさんだった、と。

東方都立璋:
 
そのとおりです。彼がこのサークルに加わったことで、これまで知ることができなかった情報にアクセスできるようになりました。大学東方サークルが大学祭に出ていることを知り、学外での活動の幅が一気に広がりました。また、くらふの助言でLINEグループから他の大学東方サークルにならってDiscordサーバーの運用に切り替えるなど、運営面での知識が手に入ったことは本当に助かりました。そういった数多くの情報の甲斐あって、設立1年目ながらも翌年の新歓活動もそれなりにうまくいき、今のような規模感で活動することになりました。

――これもたまたまかもしれませんが、大学側がサークル活動に寛容だったことも大きいですね。

東方都立璋:
 
そうですね、そういった学風だったのも功を奏したように感じます。教室を借りたり、新歓のような学内イベントにも参加できたことなど、色んな要素が全て噛み合った結果だと思います。

――発起人である崇彦さんが指針を決め、たくぼんさんが人を繋ぎ、くらふさんが情報を取得し、いなやわたさんがそれをまとめる……といった具合で、このサークルに集まった4人がそれぞれ互いに補完し合いながら作り上げられた「都立璋」は、まさに血と汗と偶然が幾重にも重なった奇跡の産物なのですね。

 

これからの東方都立璋

▲サークル活動中の様子

――この先、サークルとしてやってみたいことはありますか?

東方都立璋:
 やりたいこと、というよりも今後の課題点としては、いかにこの熱量と言いましょうか、「都立璋」の空気感を次の世代へと引き継ぎ、継続させていくかということを考えています。

――具体的な案はあるのでしょうか?

東方都立璋:
 大学から初めて東方の原作に触れる人が多いので、まずはとっつきやすい「東方キャラかるた」を通じてキャラ名を少しずつ覚えていったり、その後「◯◯概論」と呼ばれる、初心者向けのシューティング講座を定期的に開いたりしています。

▲これ以外にも「獣王園概論」「花映塚概論」といった各作品ごとの攻略講座以外にも、「お絵かき概論」「イベント参加概論」といった別角度からの講座を開くなど、様々な初心者向け講座を後輩に向けて行っている。

――後輩の育成にも力を入れていて素晴らしいですね。最後に一言、お願いします。

東方都立璋:
 質問や入部希望などありましたら、お気軽に東方都立璋のサークルXのDMまでご連絡ください。また、他大学でこれから大学東方サークルを作りたいけれど、どこから手を付ければ分からず困っている人がいましたら、声をかけてください。少しは参考になるかもしれません。
 東方都立璋ではこれからも、東京都立大生で東方Projectが好きな方からの連絡をお待ちしております。

 

サークル基本情報

サークル名:東方都立璋(東京都立大学東方サークル)
代表(※インタビュー当時):いなやわた
サークルX:@toho_metro
連絡先:上記のサークルX
主な活動場所:東京都立大学(南大沢キャンパス)

 

【連載】全国の大学東方サークルに話を聞いてみました! 東京都立大学の東方サークル「東方都立璋」にインタビュー! おわり