東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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インタビュー
2025/08/14

目指すはCOOL&CREATEのハイスコア。修羅場を越えた修羅場が生み出した“奇跡”の作品――『チルノのパーフェクトさんすう学園』インタビュー・ビートまりお/ひとびと/まろん【ダイジェスト】

『チルノのパーフェクトさんすう学園』インタビュー・ビートまりお/ひとびと/まろん【ダイジェスト】

 2024年5月にリリースされたMV『Help me, ERINNNNNN!!』がインターネットに“学園旋風”を巻き起こしてから、一年がたった。今でも「#学園えーりん」のファンアートが投稿され、YouTubeの再生数は現在2150万回を越えるなど、その広がりはとどまることがない。

 そんな「学園えーりん」の世界に新たにやってきた転校生が『チルノのパーフェクトさんすう学園』だ。プロセカ」東方Projectコラボ第二弾楽曲の一つとして公開されたこの曲のMVは、制服の上にジャージを着た“腕振学園”のチルノが主人公。彼女とその仲間たちが繰り広げる、学園での日常を描いている。

 リリースからおよそ17年、オリジナルの『チルノのパーフェクトさんすう教室』を令和の世に生まれ変わらせ、そして学園えーりんの世界に引き込んだのは、COOL&CREATEのビートまりお氏IOSYSのまろん氏、そして昨年に引き続きMVの制作を担当したひとびと氏だ。

 彼らは『チルパ学園』だけでなく『超ナイト・オブ・ナイツ』『とうほう☆ワンダーランド』の2曲も制作し、そして2025年5月の例大祭では3枚の音楽CDと1冊の同人誌の同時リリースを敢行した。

 曰く、この5月のリリースは「修羅場を越えた修羅場」、極道進行でお馴染みのCOOL&CREATEの中でも類例がないほどのスケジュールだったそうな。私も同人の世界に飛び込んで十数年経つが、話を聞けば聞くほど、正直ここまでえげつない制作進行をしているサークルは聞いたことがないレベルだ。ビートまりお氏は語る。「ハイスコアを目指したかった」のだと。

 2025年に達成されたCOOL&CREATEの到達点。『チルノのパーフェクトさんすう学園』がこの世に生まれるまでのエピソードを紐解かせてもらった。

――文・インタビュー:西河紅葉

※このインタビューはコミックマーケット106頒布の「チルノのパーフェクトさんすう学園の本」収録のインタビューを一部抜粋したものです。

ギリギリまで学園じゃなかった――『チルノのパーフェクトさんすう学園』のはじまり

――本日は『チルノのパーフェクトさんすう学園』のひみつについて訊かせてください。まずは、この作品が作られることになった経緯について、簡単に教えてもらえますか。

ビートまりお:
「学園えーりん」のあと、ちょっとしたお疲れ様会があったんだよね。

まろん:
 その場に東方コラボの担当の方もいらっしゃってて。「大好評だったので来年もぜひ」みたいなお話をいただいたんですよね。その時はまだ冗談も混ざった話だったと思いますけど。

ビートまりお:
 去年の夏コミよりも前、学園えーりんの同人誌出す前だったよね。

――ずいぶん早くからお話があったのですね。

ビートまりお:
 MVが500万再生まで行って、YouTubeの急上昇に乗ったりして、みんなのテンションがノリノリな時だったね。

まろん:
 ただ、来年の話が出た時に「この時点でめちゃくちゃ本気出したけど、これ来年どうするんだ……?」ってクエスチョンマークが浮かんだんですが、とりあえず深くは追求せずそのまま時は過ぎていき……。

ビートまりお:
 わりとすぐにメールがきたんだよね。その後すぐにColorful Palette(プロセカの開発会社)さんで打ち合わせしてる。

――ちょうど学園えーりんの同人誌を作ってる頃ですね。その時期から進行していたと。

まろん:
 その打ち合わせで『ナイト・オブ・ナイツ』と『チルノのパーフェクトさんすう教室』のアレンジ、そして「描き下ろしの東方アレンジ」を作ることに決まりました。歌うのはプロセカのユニット“ワンダーランズ×ショウタイム(以下、ワンダショ)”と、初音ミクさんで。

ビートまりお:
 最初は既存の東方アレンジをカバーして、という話だったんだけど、いろいろ進むうちに「せっかくだしワンダショの新曲にしましょう!」ってなった。

まろん:
 それなら、遊園地っぽさが出るし、演奏のわちゃわちゃ感も楽しいから『幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble』が原曲のアレンジでワンダショさんに歌ってもらいたいなと。

――プロセカ第二弾コラボ楽曲として『チルパ』が選ばれるわけですが、やっぱりこの盛り上がりをよりつなげていくために『チルノのパーフェクトさんすう“学園”』にしよう!……って、すぐに決まった感じですか?

ビートまりお:
 いや、結構ギリギリまで学園じゃなかった。

まろん:
 でしたね。わりとずっと「教室」で作ってた。紆余曲折あったので後で語ります(笑)

 

「えーりん2」としての、新しい『チルパ』

――それでいうと、チルパ自体はかなりリミックス回数の多い曲です。まりおさんも何度も歌い、まろんさんも何回かリアレンジしている曲じゃないですか。今回の形にまとめるのは大変だったのでは?

まろん:
 サウンド面ではすっと決まってるものがありましたね。ぼくの中では、もう「えーりん2」として『チルパ』を作るつもりだったんです。これからのCOOL&CREATEのライブで盛り上がる定番のコール曲にしたいし、作るのがIOSYSのまろんなので、文脈もあるし。そういう系譜をガッチャンコした「えーりん2」にしようと思ってました。それが今年の1月くらいかな。
 イメージが固まっていたので、最初のオケはわりと早く作れたんですよ。まりおさんにすぐ聴かせて「ああ、かっこよさが結構勝つけど、いいんじゃない」みたいな反応をもらって。

ビートまりお:
 いつもネチネチ言うのに、急にすんなり「いいんじゃない?」って(笑)

まろん:
 逆に大丈夫!? ってなる。

ビートまりお:
 チルパは何回か歌ってるんだけど、自分で曲に手を入れたことはなかったんだよね。基本的にARMさんが編曲してたから。

まろん:
 明確にオケを変えなきゃいけない理由がふたつあって。ひとつは、ビートまりおがセリフを歌うことが、ビートまりおのライブっぽくない。なんか他人の歌を歌ってる感じになっちゃう。
「ゆっくりしていってね」のところ。原曲は歌う感じじゃなく、セリフじゃないですか。でもビートまりおがライブで「ゆっくりしていってね」をセリフのつもりでやっちゃうと、なんかカバーを歌ってる感じになる。なので『学園』では「ゆっくりしていって~ね~~!」と、語尾を伸ばして歌い切る感じにしました。

――ビートまりおの曲じゃなくなる、とても良くわかります。

まろん:
 もうひとつの理由は、ビートまりおは早口が言えない。Cメロの「あらゆるあらゆるあらゆるあらゆる……」が、舌が回らない。なのであのパートは全カットするしかないね、って方向性になって。

ビートまりお:
 あれ言えないよ。ライブでちゃんとやってるmikoさんすごいよ。そもそも人間が歌えるように作られてないんだから。

まろん:
 mikoさん、ライブでは「あらゆるあらゆる~」をしっかり歌い切って、「集めても~」がぼくらのパートなんですよね。

ビートまりお:
 ふつう逆だよ。

まろん:
 そう。すごい。

ビートまりお:
 mikoさんはすごい。レジェンド。『チルパ』のライブパッケージを自分で作ってるもんね。

――mikoさんはすごい。

「今年はMVを2曲、お願いします!」――あの地獄をもう一度

――ひとびとさんはすでに昨年夏の打ち上げのタイミングで「えーりん続編MVやるかも」と聞いていたわけですよね。

ひとびと:
 そうですね。だいぶ強めと言うか、ほぼ確定くらいの感じというか。ぼくはあの苦しみにもう一度立ち向かうんだ……!と、覚悟を決めてた気がします。

――そこから正式に依頼が来て「今年は2曲お願いします!」って、どういう気持ちだったんですか?

ビートまりお:
 いや、最初は一曲だけの予定だったの。チルパだけ。

――え!?

ビートまりお:
 だったんだけど、プロセカさんから「『とう☆ワン』のMVも、ひとびとさんにお願いしたいんですけど、どうですかね……」と飛んできたんだよね。

――ワァ……。

ビートまりお:
 去年のMVの熱量は流石に1曲分が限界じゃない? って思ってたし、でもワンダショの新曲もパワーがあるMVを出したいというプロセカさんの気持ちもすごくわかったから……とりあえずひとびとさんに相談してみましょうと。もう相談というか、ほぼほぼ「2曲やってくれ!お願いします!」ではあったけど。

――「2曲やってくれ!」で、ひとびとさんはどうしたんですか?

ひとびと:
 シンプルに2曲は無理だなあ……と。

一同:
 (笑)

ひとびと:
 どう考えても難しいのはわかってたんですが……すこし調子に乗ったような言い方に聞こえるかもしれないんですが、自分の味を両方の曲に乗せたくなっちゃったんです。欲ですね、これは。
 別の人に『とう☆ワン』をお願いするとか、あるいはその逆も考えたんです。考えたんですけど、なんか自分の中でバランスが違うなと思ってしまって。『チルパ』を他の人に任せたら「学園えーりん」の世界じゃなくなっちゃう気がしたし、『とう☆ワン』を任せたらワンダショ側に引っ張られて、東方の文脈からはずれてしまうような気がしちゃって。
 どうにかうまく中央に寄せたいって思ってしまった時に「これはもう、どっちも関わる形にしなきゃダメかもなあ」って、決心がついたかもしれないですね。

――相当な覚悟ですね。

ひとびと:
 遊園地に行く「修学旅行編」の話がきれいに『チルパ』と『とう☆ワン』でテーマが分かれて、同じ世界線にある話として作りやすくなったので、それなら自分でディレクションするのがブレがないだろうし、最終的に自分が納得するだろうなと思いました。
 こんな無理を通すなら、その分ちゃんとしたものを作らないといけないなって、プレッシャーと言うか責任が増したなとは感じました。

【コラム】リチャードさんとのSSRな奇跡の出会い

倒れたまりお、残されたまろん――チルノを令和の愛で包むために

――『チルパ学園』の歌詞は、オリジナルを全体的には踏襲しつつも、内容がガラッと変わっています。先程もあったように、Cパートはまるっと違うものになっていますしね。

まろん:
 ラフ段階でプロセカさんに送った歌詞も、一旦はオリジナルの歌詞まんまの仮歌、尺はワンコーラスでした。さあここからフル尺作ろうか!――ってタイミングで、まりおさんが倒れた。

――あー、ここで……。

ビートまりお:
 二年ぶり二度目。また右耳が聞こえなくなって病床に伏した。2月25日。

まろん:
 まりおさん倒れちゃって、やばいチルパもMV進行しなきゃ、でもまりおさんには耳の治療に専念してもらわなきゃ、とりあえず一旦任せてください、とだけ伝えて。すぐにひとびとさんに連絡して「まりおさんが入院してるんですけど、そろそろMVを進行しないといけないので、一回打ち合わせしましょう」って。

ーーもう、普通だと絶対に間に合わない未来しか待ってないシチュエーションですよ。

まろん:
 まだ「チルパ“教室”」だったころで、どうやって映像化しようか、「学園えーりん2」として考えた場合、あの世界でチルノってどんなかんじだろう、って相談して。ひとびとさんが「案が2パターンあります」って言ったんですよね。

ひとびと:
 そうですね、ヤンキーチルノと、令和チルノ論と。
 学園えーりんの続きもの、学園モノの世界にチルノが入ってくる、さんすう教室が落とし込まれる、ってなった時に、サビの「バーカ!バーカ!」がいじめにしか聞こえなくなっちゃうんですよね、どうしても。

――たしかに。令和の世界観だとちょっと厳しいかもしれない。

ひとびと:
 学園えーりんの世界観にチルパをどうやって落とし込むか、って議論が始まって。学園でチルノに「バーカバーカ!」って言ってもいい理由を、すごい考えました。どうしたらそれが違和感なく、いやなものにならず、みんなが楽しいものになるかを。
 そこで浮かんだのが、チルノをヤンキー化、ちょっと悪者化させて「バカ」って言ってもいいくらいの存在にしちゃうか、あるいはもう「愛で包むか」。二つのパターンが出て。

――それが「ヤンキーチルノ」か「令和チルノ論」か、ですね。

まろん:
 2パターン、両方とも良いなって思ったんですよね。だから「両方ともやっちゃえば」って言いました。両方のいいところをガッチャンコして、最初のサビでは悪いコトしてるから「バーカバーカ!」って言われてて、後のサビでは「バーカバーカ!」がチルノをリスペクトする、崇める感じになるフレーズになったら良いなと。

――「愛のあるバカ」と言った感じですね。

まろん:
 バカは素晴らしい言葉になる。もうバカっていうのが、もう最高とか素敵とかの意味になっていく世界なんじゃない? だから両方ガッチャンコすればいいんじゃないかと。この認識でふたりで合致させて、MV進行はまずキャラデザからすすめていきましょう、って感じでした。

 

オリジナルの歌詞を崩す決断―なぜ『チルパ』は『チルパ学園』になったのか

まろん:
 プロセカ側とも相談を進めつつ、2週間したらまりおさんが戻ってきて……さあ歌詞とフル尺どうする。

――ここから本番ですね。

まろん:
「ほんとうにさんすう教室なのか?」「これを『学園えーりん2』とするなら、もしかして、『さんすう学園』なんじゃないか?」とか。それを思いついたタイミングがあって、そこから「Aメロで学校の中を描ければ、ただの替え歌にはならないんじゃない?」とか、収まりがついてきて。これで新曲として成り立つような気がしてきました。

――なんとなく歌詞の輪郭が見えてきました。

まろん:
 でもそこで「え、幻想郷のバス、どうする?」ってなって。正直言って、オリジナルの歌詞のセンスが、ぼくとまりおさんのセンスと噛み合わない感じだったんですよね。

――確かにCOOL&CREATEの世界観じゃない気がしますね。極めてIOSYSっぽい。

ビートまりお:
 最初「保健室からバスが出て~」とか、いろいろなパターンを試したんだけどしっくり来ない。だから、Aメロの最初の一行はオリジナルと同じ「紅魔館からバスが出て~」にした。じゃないと、歌が“みんなのもの”にならないな、って思った。

まろん:
 でもぼくらの中で「他人の歌詞を勝手にいじくり回して良いのか」っていう罪悪感も若干あったんですよ。

ビートまりお:
 だから、本人にお越し頂いた。夕野ヨシミ氏に。

――『チルパ』オリジナル版の歌詞を書いた、IOSYSの夕野ヨシミさんですね。

まろん:
「いま、あなたの大切な曲の歌詞をいじくり回そうとしてるんですけど、いいですか?」と。

ビートまりお:
 よく覚えてるのは、夕野さんに「試しに新しい歌詞を書いてみてほしい」ってお願いしたら、当たり前だけどめちゃくちゃガラッと変えちゃうんだよね。それはもう、本人がオリジナルだからなんも気にしないのは当然なんだけど。結構変えてくるから、逆に「なんか違うかも?」ってなっちゃって。
 夕野さんとの打ち合わせが終わった後にまろんくんと話して、ウチがやるならやっぱこうだよなってちょうどいいバランスに落とし込めたんで、このタイミングで夕野さんに相談できたのは良かった。

まろん:
 オリジンが歌詞をガラッと変えるのを見たから。崩すことに罪悪感がなくなって、それなら自分たちがこのくらいやるのはいいかなと。オリジンと話した上で、あ、ぼくらがやりたいことはこれなんだ、あ、こっちじゃないんだっていう。全くガラッと変えたいわけじゃないんだなって。

ビートまりお:
 かといって、そのまんまやりたいわけでもない。令和のチルパとしてやるなら、ちょうどいいバランスで新しいものをやりたいなって気持ちはあったので。
 最終的に、夕野さんも「いい歌詞になりましたね」って言ってくれた。

――上手くまとまったわけですね。

ビートまりお:
 夕野さん、やっぱ頭いいから。手札が多いんで、いろんな案をポンポンポンポン出してくれて。単純に良い話し合いでした。夕野ヨシミもやっぱ天才のひとりですよ。素晴らしい。

まろん:
 いろいろ出てきた案を組み合わせて、そこから「『チルパ学園』にしよう。Aメロで紅魔館からバスから出て、体育館に突っ込もう」みたいなのが決まって。すぐに内容をひとびとさんに共有して、MVのAメロのイメージが出来あがりました。

 

前代未聞のインタラクティブ制作――すべてはユーザーが『チルパ学園』を受け入れてくれたから

ビートまりお:
 プロセカさんから「そろそろコラボ情報を出すので、曲のタイトルをください」ってお願いされて。最初は一旦『チルノのパーフェクトさんすう教室』でタイトルを提出したの。だけど「やっぱ『学園』にしよう!」ってなって、たぶんまだ運営さん見てないからこっそり変えようぜ!っつってテキスト書き換えて。

まろん:
 運営さんから「なんか変わってましたね」って、普通にバレてた(笑)

ビートまりお:
 次の週くらいにあったプロセカの生放送番組で「次の東方コラボは、この3曲です!『チルノのパーフェクトさんすう学園』!」と出て。それがちゃんとユーザーに、プロセカファンたちにすんなり受け入れられて、結構驚いた。もっと反発あるかなって思ったから。
 ちゃんと学園受け入れられてるじゃん!ってなって、そっから歌詞をガッツリ学園側に寄せきったはず。

――そのタイミングでまだ歌詞FIXになってないんですか!?

ビートまりお:
 結構すごい、インタラクティブ制作。

――良い名前を付け過ぎなんだよな。

ひとびと:
 だから、あの情報公開が出たタイミングで「あ、本当に俺ってMV作るんだ」みたいな。

一同:
(爆笑)

――いやぁ、本当に良く間に合いましたね……。

ビートまりお:
 マジでよく間に合ったなぁ……。

まろん:
 もうあのときの記憶、思い出したくないんだよな。

ひとびと:
 ずっと「全部終わるのか分かんない……!!!」って叫びながら制作してた感じはすごいあって。

――じゃあ本当に一ヶ月半で曲も映像も作りきって、って感じだったんですね。

ひとびと:
 MVは特に、もう本当に一ヶ月半で全部終わらせてる感じ。

まろん:
『チルノのパーフェクトさんすう“学園”』が受け入れられるかの心配が、ずっとあったんですよ。情報局で『学園』を見たユーザーたちが受け入れモードだったからこそ、ぼくらも「じゃあこの方向でいいんだ、全部やるぞ!」って、覚悟が決められて。あれで結構叩かれてたら、ぼくら死んでたかも。

ビートまりお:
「このタイトルなんなんだよ」とか言われてたら、

まろん:
「あ~ダメなんだ~~……オワオワリ」ってなってた。

――失敗した世界線のCOOL&CREATEだ。でも実際本当に抑え気味になってた可能性はありますよね。受け入れられて本当に良かった。

ビートまりお:
 逆に、タイトルそのまんまで、いまの歌詞みたいに元と全然違うもの出したら「全然違うじゃん」ってなってただろうし、最後にシレッと『学園』に書き換えて出して良かったなと思う。

まろん:
 放送のコメントで「学園の方かぁ、楽しみ!」って言ってる人がいて「よかった!もう既に知ってる人がいる、まだできてないけど!」ってなってた。

一同:
(笑)

――成功した未来の世界線から書き込んでくれた人のお陰で、いまCOOL&CREATEはこの世界線に立てています。

ビートまりお:
 なんだかんだユーザーの反応を見て、安心して突き進めるってことはあるから。

まろん:
 この同人進行じゃなきゃね、できない。

――同人進行でもこんなスケジュールは組まないですよ。

まろん:
 これはビートまりお進行だったわ。

ビートまりお:
 ほら、クリエイターって最後の一週間でものすごい熱量と内圧を高めるじゃん。

ひとびと:
 すごい、とんでもない圧でしたね。

【コラム】本編を一部公開!『チルノのパーフェクトさんすう学園』テキストコメンタリー

「いいんですね?」――マスターアップ6時間前のボーカル全リテイク

ビートまりお:
『チルパ』については俺、ほとんど何も言わなかった。

まろん:
「いいんじゃない?ARMさんの後継者って感じでいいと思うから」……じゃないんだよ! もっと言ってくれよ!!お前歌うんだぞ!!ってキレてた。

ビートまりお:
 ナイツにはお気持ちがあったけど、チルパは聴いてて良いなぁと思ってたからなあ。

まろん:
 なのに、チルパCD完成予定の6時間前とかにまりおさんから電話かかってきて。「まろんくん、俺のボーカル、なんか大丈夫?」って不安の電話。

一同:
(爆笑)

ビートまりお:
 散々他の人にネチネチネチネチ、まろんくんにも言ってるのに、俺だけネチネチ言われないのって大丈夫なのかなって。

まろん:
 こっちはマスターアップが第一じゃないですか。もう落とせないから、とりあえず完成を目指してるわけですよ。そんなタイミングで「なんか思ったことあったら言って?」ってさあ。

ビートまりお:
 もう電話した時点で、俺の中で自覚があるんだよ。なんか引っかかるところが。直してほしい何かが。

まろん:
「……いいんですね?」って前置きして。そっから歌詞全部書き出して、気になるところ一箇所一箇所に矢印ひいて、

←「もっとウザく」
←「もっとビートまりおっぽく」
←「(仮歌の)ミクの真似しない」
←「ミクの真似しない」
←「ミクの真似しない」

ってつらつらつらと。

――来た!完成直前に発生するビートまりお巨大感情オタクによるダメ出し!

ビートまりお:
 返信見て「あーあー来ちゃった来ちゃったいっぱい来ちゃった、よーしがんばるか!」って。

――これをマスターアップの6時間前に……?

まろん:
 そのタイミングでセリフも、メインボーカルも全部歌い直し。

ビートまりお:
 俺はボーカリストだけど、同時にプロデューサーでもあるわけで。言うてさ、プロデューサーって暇そうにしてるイメージあるんだけど、実はけっこういろんなことを見なきゃいけなくて。だから、レコーディングってだいたい一番最後のほうになっちゃうのよ。まろんくんには申し訳ないなと思いつつも。

――全体の工程を見ている立場になると、自分の実作業が後回しになりがちですよね。

ビートまりお:
 そんな状況で日頃の寝不足がたたってたりして、収録するとボーカルがやっぱり弱い。MIXしてもらったやつ聞いても、なんか弱い、綺麗すぎて面白くないなってなっちゃって。音程を合わせただけの歌い方になっちゃってて、これって大丈夫?って不安になっちゃって。

まろん:
 大丈夫?って聞かれたから、最初に「完成させる方がいいですか、殴る方がいいですか?」って確認して。「殴ってください」って言われたから、じゃあOK!っつって。

――前のインタビューでも聞きましたけど、まりおさんとまろんさんの間で取り決めた「気になったことは全部言う事にしよう」があるから、瞬発力を持ってすぐ対応できるんですよね。入稿直前でも。

ビートまりお:
 まろんくんは絶対全部試してやり切ってくれる人。だから殴られても「よしきた、恒例の全リテイクだぞ!」っつって。録り直して、入稿間に合ったね。

まろん:
 ちょっと話戻りますけど、1月の段階でワンコーラスデモできてた時。あのときにもう「あ、この曲は完成したわ」って思ったんですよ。ちゃんとアレンジも組み上がったし、かっこいいのができた!と思って。それをまりおさんに渡した時に「かっこよすぎる」って言われたんですよ。もっと可愛くしてくれって。

ビートまりお:
 そうだったっけ。

まろん:
 可愛くした音を入れてほしいとか、もうちょっと原曲可愛いから、可愛い方面に寄せてほしいって。「あとでちゃんと聞くわ」っていう一言を残して、まりおさん倒れたから。
 でも、ぼくの中で可愛い音を入れたくなかったのがちょっとあって。ビートまりおに合うオケはこれだから、って確信があった。サビでテンション上がるZUNペットが入ってきて、最後歌い上げてかっこよく締めるのが、令和のチルパ歌うビートまりおだから、って確信があって。

――まろんさんの中での一番かっこいい「ビートまりおのための『チルパ』」がもう見えてたんですね。

まろん:
 基本、リテイクとかで言われたことは全部やるんですけど、これだけはちょっとなあなあにしたいって気持ちがあって、結局やらなかったんですよね。まりおさんが戻ってきた時に、そこは直さない状態で聞いてもらって、特に何も言われなかったのでそのままで行きましたね。
 それがこの長い期間やってて唯一ぼくが多分自我を通したところ。

――こだわりポイントがとうとう出たと。

 

当日納品、当日公開――もう、走り切るしかない

――そもそも、この映像が完成したのって、いつなんですか……?

ビートまりお:
 見てみよ……(スマホを確認)。

まろん:
 このMVの最初のラフを見たのも、結構ギリギリのタイミングだったはず。

ビートまりお:
 正直そのタイミングは一瞬不安だった。出来上がるのかなって。でも、ひとびとさんは去年やり遂げてくれた人だし、クリエイターって大体ギリギリですごいの上げてくるから、まあ大丈夫だろうなと信じてたんだけど。
 上がってきたのを見て、もうすごい、流石だなって。

ひとびと:
 いや本当に、ご迷惑をおかけしました。

――この動画が公開されたのは5月3日なわけですよね。納品のタイミングは……?

ひとびと:
 完成した順番でいうと、バーチャルシンガーバージョンの『とう☆ワン』が一番最初ですね。次にワンダショバージョンの『とう☆ワン』。そのあとに『チルパ学園』のバーチャルシンガーバージョン、最後にこの『チルパ学園』で。確認に時間がかかるものから先に上げてます。まりおさんたちの確認は究極、一瞬で終わるので。

ひとびと:
 バーチャルシンガーバージョンはだいたい、オリジナルより3、4日早く作り終わってて。提出して、その確認を待ってる間にワンダショバージョンを進めつつ、チルパはどうやったら終わるかな、みたいな時間計算をしつつ……みたいなのを、一週間くらいずっとやってたような気がします。本当に一時間も無駄にできない一週間でしたね。

――ひぃ……。

まろん:
 実際に上がってきて「もうバッチリ、よかったよかった、オッケー」って安心して。去年のMVでぼくらが初稿で指摘したところ、例えばコール&レスポンスのテロップとか、そういうぼくらが気にしそうなところは全部先にひとびとさんが潰してくれていたので。

ビートまりお:
 その頃俺たちは、例大祭のセット組みをやっており……。5月3日の16時半。「セット組みも順調です~!」みたいな連絡をしたあとに、最終FIXデータが上がってきて。16時33分に最終納品。こんなスケジュールでやってたんだ、思い出してちょっと引いちゃったよ。

――5月3日公開の動画を、5月3日の16時33分に受け取っている……?

ビートまりお:
 YouTubeの公開設定を16時40分に入れて、18時に公開。

――修羅場の次元を超えてますね。このスケジュール、一秒たりとも悩めない。

ひとびと:
 一秒も悩めなかったですね。とにかく走り切るしか無くて。
 イラストの枚数がとてつもなくあって、それを置いては動かしてを繰り返すんですけど、置いたら分かれたパーツ全部にピンを打って動かして、それをプリコンポーズして……を三日間くらいずっと連続でやり続けたんですよ。その期間、いつ寝たか覚えてないですね。

まろん:
 4月の半ばくらいに、まりおさんから「活蔘」が20本届くんですよね。

【第3類医薬品】活參(カツジン)28 50mL×10本 : 健康ショップMy - 通販 - Yahoo!ショッピング

※活蔘:カツジン。めちゃくちゃ効く栄養ドリンク。寝れなくなるレベルで効くので、いにしえの同人マンの御用達アイテム。

ひとびと:
 赤いピッカピカの「活蔘」。

ビートまりお:
 修羅場のお供にどうぞつって。

まろん:
 まりおさんからの「もう、寝かせないよ^^」っていう。最終警告。

ひとびと:
 あれが届いて「あ、俺もまりおさんの一味に入れてもらえたんだな」って感じ。

一同:
(爆笑)

ひとびと:
 これやりながらグッズも作ってるじゃないですか。良く本当にできましたよね。 

ビートまりお:
 修羅場はね、楽しいんだよ。本当に。

まろん:
 めっちゃ楽しい。やってる途中も嫌になることはない。楽しかったが……

ひとびと:
 ほんとに頼むから、精神と時の部屋貸してくんねえかな……みたいな気持ちはすっごいありましたよね。

ビートまりお:
(IOSYSの)ARMさんにもよく言われた。「COOL&CREATEの制作は楽しいんだよね。修羅場がすげえ楽しい」って。なんだかんだ楽しい。

まろん:
 楽しいけど、自分の体力とか、怪我とかで、ちょっと物理的に無理になった瞬間全てが終わる。

ビートまりお:
 終わるね。

ひとびと:
 頼むから風邪にならないでくれって、すごく思ってましたね、あの時は。

ビートまりお:
 本当にさ、これに付き合ってくれるプロセカチームにも感謝してる。ほんっとにギリギリまで「ぼくがやればいいんで、当日でも対応します」って担当さんが返してくれるから。去年よりも遥かにギリギリだった。

まろん:
 これに加えて「学園えーりんの日常」の本もあるから。同時進行っていうレベルじゃない。CD3枚、同人誌1冊、それにグッズ……っていうのが、このゴールデンウィークに向けた一週間。

ビートまりお:
 一回やりきってみよう。ハイスコア、出してみたいってまろんくんと決めたもんね。

 

新しい『学園』が、新しい東方への道になるように

――月並みですが、この作品を見ても誰も一ヶ月で作ったとは思わないですよ。公開して約二ヶ月ほど経ちましたが、反響はいかがですか。

ひとびと:
 映像制作はすっごい楽しかったんですけど、もうあのあとすっごい疲れちゃって……(笑)

ビートまりお:
 ちゃんと受け入れられて、100万再生越えて、本当に良かったなと思った。

まろん:
 今回の『チルパ』に関しては、ネットよりも現場で、ライブで伸ばすぞという気持ちが強いかもしれないですね。ちょうど少し前に、韓国でCOOL&CREATEのライブをやらせてもらって。『チルパ学園』の反応がすごく良かったんですよね。

ビートまりお:
 良かったし、オリジナルのチルパを韓国のみんなが知ってくれてるから、当たり前に「バーカバーカ!」って返してくれるし。『チルパ学園』もちゃんとライブで歌っていけるなって実感が持てた。

まろん:
 楽曲尺も3分ちょっとになって、ライブでやりやすい、令和ナイズドされたサイズにできましたしね。ライブでやって初めて「チルパ学園、これで良かったんだ」ってようやく実感できたかも。

ビートまりお:
 去年の『えーりん』から始まったこの学園がさ、東方にこれから入ってくる、遊ぶ人たちにとっての一つの道になればいいな、と思っていろいろ進めてきたからさ。とりあえずここまでやりきれて良かった。

――「ビートまりおの心残り、えーりんをちゃんと作り直そう」っていうスタートから、去年のMVが1000万再生まで行って、コラボ第二弾まで決まって、最終的にプロセカのユニットが東方アレンジを歌って幻想郷から帰る画まで導いたわけですからね。

ビートまりお:
 この一年ぐらいで相当ファンアートとか増えたし、去年の「新えーりん」から東方を知った、って言ってくれる人がいっぱいいてさ。プロセカからチルノを知って、とか。未だにこんなに”東方の入口”になれることがあるんだなって。
 前のインタビューでも話したけど、ARMさんが言ってた「IOSYS人気の理由、映像があるからだよ」ってやつ。すごい覚えてる言葉なのよ。当時、俺は自分からは映像を作ってなくて、周りのファンやサークルさんが作ってくれていたから。改めていまCOOL&CREATEとして映像を作って、本当にARMさんの言葉を実感してるかな。東方って、やっぱり映像とともに発展した文化だから。入口として映像って入りやすいよなと思った。

この学園では「ハズレものを作らない」。将来の夢は◯◯ゲー!?――『Help me, ERINNNNNN!!』制作秘話インタビュー:ダイジェスト

『Help me, ERINNNNNN!!』制作秘話 MV制作者のひとびと氏、編曲者のまろん氏、ビートまりお氏インタビュ…

――「学園えーりん」のこの先は、どうなっていくんですか?

ビートまりお:
 セカイに羽ばたく。

まろん:
 改めて、やっぱりみんな学園パロ好きじゃないですか。

ひとびと:
 間違いない。

ビートまりお:
 間違いない。

まろん:
 ぼくたちはみんなギャル咲夜のコスプレが好きだから。

一同:
(笑)

ビートまりお:
 学園えーりんってものが、いろんな広がりを見せてくれるのは面白いよ。

 

二次元を、三次元に引っ張りたい――「学園えーりん」はまだ途中

――改めて今回の「チルパ学園」、やりきった感想をそれぞれにお訊きしたいです。

ビートまりお:
 ちゃんと「学園えーりん」は途中だと思ってて、この学園の世界を広げたいから、チルパも学園えーりんの世界に入ってもらったし。この、東方の原作の外にある二次創作の世界観がこれだけみんなに受け入れられた、その事実は大事にしたいし、どこまで広げていけるんだろうって楽しみがあるから。
 いままではあくまで東方の二次創作を俺はやってきたけど、学園えーりんの創作は「三次創作」だから。これがどこまで広がるだろうなって、こういうことはいままでやったことがなかったし、やれるところまでやってみたい。
 俺もいま44歳で、この先、全力で走れる時間ってそんなに長くないかもしれない。だったら、この目の前にある時間はちゃんと走りきりたいから。やれること、やってみたいこと。全部やって、こういうのやってみたほうがいいよ、って他の人から言われたことも全部やりたい。

――全部やる。大変ですけど、できたら楽しいですからね。

ビートまりお:
「学園えーりん」はまだ途中、だからみんなで広げていきたい。ファンアートもコスプレも、こうやって広がっていっていることはもっと大事にしたいし、みんなで広げていった先にある「学園えーりん」を見てみたいから。
 ひとびとさんが前に「永琳が人気投票で10位以内に入ってる世界線も見てみたい」って言ってたじゃない。あれ言われて「確かに」って思ったから、だから今年はちゃんと人気投票で「えーりんに清き一票を!」ってやろうかなって思ってる。みなさんぜひえーりんに投票をお願いします!

ひとびと:
 やっぱり「学園えーりん」って世界観に今年も居させてもらえるってことがうれしいです。それに携われるのもうれしいですね。
 今年はわりと反省が多くて、やりたかったことはできるだけ詰めたんですけど、でもやりきれなかったことも見えてるような気がしてて。「学園えーりん」ってこんなものじゃないって気がしている、そう感じてる自分がいるので、もっともっと、また一個広げられるような何かを作ってみたいと思っています。

ビートまりお:
 ひとびとさんは「戦いながら成長していく」からね。

まろん:
 「学園えーりん」の企画もそうなんですけど、ぼくとビートまりおとの今の関わり合いって、“終活”を手伝ってる感じなんですよ。ビートまりおの終活。いままでまりおさんがやりきれなかったことを全部叶えようって。全部やりきって「ビートまりお」をかっこよく終わらせてほしいっていうのがある。
 なので、後悔しないように全力でやりますし、全力で面白いこともやります。まりおさんが「これやりたいんだよね」って言ったことは一旦全部叶えようと思ってます。結果、春例大祭に4作品出すって、バカみたいなことになったんですが。でも、できちゃった。やったら出た。できるんだなって。

――今年の春のひとつは「全力でハイスコアを目指そう」であったわけですけど、その根幹にあるのはやはり「学園えーりん」の世界がもっと広がってほしいという思いですよね。それだけ、あの曲とMVが多くの人に受け入れられた事実があって。
 みんながあの世界をもっと見たい、えーりんたちの続きをもっと見たいって思ったから、だからここに『チルノのパーフェクトさんすう学園』が存在している。

まろん:
 東方で学園パロをもっと見たいって気持ちは昔からありましたし、そういう作品がいまの世の中にもっと溢れてたら、ぼくらは「学園えーりん」をやってなかった。でも誰もやってくんないから、ぼくらがやるしかないっていうのが今の現状なんですよ。

――ないから自分で作る、まさに同人活動の礎ですね。

まろん:
 なのでぼくは「学園えーりん」の二次創作をやる方がもっと増えてほしくて、みんなどんどん「学園えーりん」の世界を広めていってほしいとおもってます。
 いつか、実際の学校に「学園えーりん」のコスプレをした子たちが集まって、実際に学園祭を開いてほしい。二次元を、三次元に引っ張ってきてほしいって思ってます。この二次元が三次元になるまで、ぼくはまりおさんと「学園えーりん」の世界をより多くの人に届けたいと思うし、どんどん世界を紡いでいきたいな、っていう勢いと気持ちと覚悟はあります。

――二次元と三次元がもしかしたら繋がるかも、という夢は「学園モノ」特有だと思うんですよね。自分の知っている場所にあのキャラクターたちがいるかも知れないっていう輝きが、喜びが学園モノにはあるので。

まろん:
 まりおさんのやりたいことを全部全部、全部やりきって終わって、学園からみんなが全員卒業したあとに、バニーガールのお店で働く『東方バニーガーデン』がやりたい。

一同:
(爆笑)

ビートまりお:
 エ◯ゲはやりたい。やっていい。どうしてもやりたい。

まろん:
 まりおさんがやりたいエ◯ゲって「泣きゲー」なんですよ。ぼくは「◯◯ゲー」がやりたい。アトリエ◯◯◯がやりたい。きゃんでぃ◯◯◯がやりたいの。

――これ以上書けないですよ!!

まろん:
 ビートまりおがやりたいこと全部叶えるので、その後に許してくれ。

ビートまりお:
 いっそアニメ化しよう。

まろん:
 舞台やりたいんだよな。2.5次元舞台。

――「学園えーりん」がどこまで行けるか、本当に楽しみです。本日はありがとうございました。

 

 大変だからいいとか、がんばったからいいとか、そういう話ではない。修羅場なんて無い方がいいに決まっている。でも、最後まで「自分が見たいもの」を突き詰めて、妥協のない満足を目指した先に待っているのが、修羅場というだけ。「修羅場は楽しい、でもしんどい」と語る三人の顔は、最後まで突き詰め続けた果てにある満足を浮かべていた。

 自分たちが見たい世界。学園えーりんをもっと広げたいという思いが彼らを最後まで走りきらせ、その結果、この世界に新たな『学園』『ワンダーランド』を生み出した。

 なぜヒトは学園モノを愛するのだろうか。もしも◯◯が同級生だったら、友達だったら、先生だったら。学園モノは究極の“あるある”ネタだ。記憶の底にある「あの時こうだったよね」「楽しかったよね」という学生時代の――人によっては現在進行系での――記憶と、自分の大好きなキャラクターが混ざり合う瞬間。言い換えるなら、ぼくの三次元セカイに、二次元キミたちが入り込んでくることの喜びなのだろう。もしも三次元に二次元が来てくれたら、オタクはうれしい。

 学園えーりんのセカイはこれからも大きくなっていく。腕振学園の生徒たちは、この学園の中で生き続けている。でも、彼女たちの青春の一ページは、この世界を愛する人間が、観測者である[だれか]が切り取らなければ、見たいモノを生み出すことはできない。

 この世にない、でも見てみたいものを作り出す。それも最高の形で。同人活動の最もピュアな形をCOOL&CREATEは今後も続けていくのだろう。「学園えーりん」のセカイは彼らの手と、そしてこれを見ている[ぼくら]の手によって、広がり続けていく。

 

※このインタビューはコミックマーケット106頒布の「チルノのパーフェクトさんすう学園の本」収録のインタビューを一部抜粋したものです。
本編ではさらに「チルパ学園テキストコメンタリー完全版」「『とうほう☆ワンダーランド』制作秘話」など、ここに書ききれなかった情報が満載! 怒涛の4万5千字インタビュー、ぜひ同人誌を手に入れてお読みください。

「チルノのパーフェクトさんすう学園の本」2025年8月17日(日)リリース!

チルノのパーフェクトさんすう学園の本
頒布イベント:コミックマーケット106
頒布日時:2025年8月17日(日)
会場:東京ビッグサイト
頒布スペース:東6ホール ア-16ab
価格:イベント1,000円
ショップ1,300円(+税)
夏のチルパ学園セット2,000円
BOOTHで購入 通常版 / 夏のチルパ学園セット
同人ショップ メロンブックス アキバホビー あきばお~ ブックメイト Grep

【内容紹介】

・チルノ大辞典&チルノ団紹介
・チルパ学園MV、ひとびと一言コメンタリー!
・4コマ!学園チルノ団!(作:もや造)
・豪華ゲストイラスト(憂姫はぐれ、かわやばぐ、はまふぐ、リチャード)
・チルパ学園MV絵コンテ!一挙大公開!
・パーフェクト設定資料集!!
・ビートまりお×まろん×ひとびと超修羅場秘話:4万5千字インタビュー
・チルノのパーフェクトさんすう学園テスト
・プロセカ運営・Colorful Palette近藤代表にインタビュー!
・チルパ×クークリ収録CD一覧!

【夏のチルパ学園セット】

https://cool-create.booth.pm/items/7281753

※BOOTHでの価格は2500円になります。

目指すはCOOL&CREATEのハイスコア。修羅場を越えた修羅場が生み出した“奇跡”の作品――『チルノのパーフェクトさんすう学園』インタビュー・ビートまりお/ひとびと/まろん【ダイジェスト】 おわり