東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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リポート
2024/12/13

「あつまれ!東方ステーション2024」はメインホール以外もアツかった!? 今だからこそ振り返る、現役大学生から見た「あつまれ!東方ステーション2024 in ところざわサクラタウン」イベントレポート(後編)

『あつまれ!東方ステーション2024 in ところざわサクラタウン』イベントレポート後半

 皆様はじめまして。彗罫(すいけい)と申します。

 普段は大学生として生活しつつ、東方では小説などで同人活動をしている私ですが、今年の初夏近くに編集部の土露さんからこんなお誘いがありました。

土露団子「彗罫さん、大学生目線で『あつまれ!東方ステーション』に行ってきたレポートを書いてみません? 宿ならウチを提供しますので」
彗罫「はーい!^^」

 そんな二つ返事で決まった「あつまれ!東方ステーション2024 in ところざわサクラタウン」の取材ですが、そこで待っていたのは私の想像を超える数々の催しと参加者の熱量でした。

 前編に続き、今回もメインホール以外を一日中見て回った私が感じた、このイベントの魅力と熱量を伝える、そんな参加レポートの後編です。

 夏の長い昼が終わり、太陽が沈みきるまで続いた会場の熱気を今回もお届けいたします。

文/彗罫
編集/土露団子

 

みんなで作るもう1つのメインステージ

 野外エリアの中でも一際大きなイベント「東方カラオケ歌ってみたステージ」は、前編でも少し触れたように、開場前から常に盛り上がっていました。

 イベント会場内を歩いているとどこに居ても聴こえてくる歌声と、それに応える大きなコールは、メインホールとは別にもう一つのメインステージを自分たちで作っているような力強さを持っていました

 歌いたい人を募ればたくさんの人が集まり、どこの誰かも知らない人が歌っていても数十人以上の人が歌に合わせて声を出したり、時には身振り手振りでコールを行う。

 大きなカラオケ会場でありながらも、マイクを持って歌っている人はもちろんのこと、集まっている人たち全員を主役にするような一体感のあるステージでした。

 

原作体験コーナーにあつまる沢山の思い

 先程のカラオケステージの階段を更にあがった先に、沢山のゲーミングパソコンが並んだ部屋があり、そこは東方原作を体験できる部屋となっていました。

 横並びになったモニターの前に座る人たちは、みなヘッドホンを着けてコントローラーを握ったりキーボードの両端を使っていたりと、集中して東方原作をプレイされていました。

 こいしちゃんの帽子を被って地霊殿をプレイしている、まさにいま東方に夢中な小学生から、ひさびさに新作をやりにきた東方復帰勢の大人まで、みな思い思いの作品をプレイしていました。

 プレイが終わった人たちに少しお話を聞いてみたところ、なかには家にパソコンがないせいで原作ができないから、原作体験があると聞いて参加を決意し、好きなキャラクターに会いに来たという声には驚くと共に、それほどまでの熱量を持ってこの場所に集まっている人がいることに強い感銘を受けました。

 

負けられない闘いは大地を揺るがす

 原作体験コーナーの隣には「東方獣王園勝ち抜き対戦台」と称したコーナーが用意されており、こちらも沢山の人が詰めかけていました。

 私が来たときには、大学東方サークルの方が大勢いて大盛況。現在のチャレンジャーは7勝中というところで、試合も白熱。

 ですが8戦目の1本を取ったところで突然、部屋の電気とパソコンのモニターの明かりが切れてしまいました。

 後で分かった話なのですが、実はこのとき部屋の外では天気が急激に悪化しており、近くの変電所に雷が落ちた影響でところざわサクラタウン全体が停電してしまったのです。

▲そのせいでメインホールで行われていた生放送も一時的に放送がストップする事態に(2:08:24〜)

 この落雷により7.5勝の勢いが途切れてしまったチャレンジャーでしたが、その後も勝利を重ねて、見事10勝して殿堂入りを果たしました。

 

集めたスタンプは思い出に

 原作体験の部屋の横にはスタンプラリーのブースがあり、私はここでスタンプを集めきりました。

 5つのスタンプを集めたあとは最初に台紙を受け取った総合受付へと向かい、特製ステッカーをもらってスタンプラリーは完了です。 

一つだけ逆に押してしまいました(笑)

 

美味しいご飯はイベントの醍醐味

 時刻は15時過ぎたところで、先程の落雷もあってか野外の人たちが空いてきたタイミングでキッチンカーへと足を運びます。

 たくさんのキッチンカーが並ぶ中、私が選んだのはケバブサンドのお店。 

 すぐそこにある東方青空DJパーティーから聴こえる音楽を浴びながら食べるイベントフードは、まるで音楽フェスの屋台さながらの、言葉では言い表せない贅沢なひと時でした。自分のスペースや売り子さんとの時間、買いたい作品を手にすることに追われていた即売会イベントとは一味違うイベントの楽しみ方が、そこにはありました。

 

新しい出会い、新しい思い出

 また少し雨が降ってきたので、私はメインホール入口にある物販と東方二次創作ゲームプレイコーナーへと移動しました。

 物販は上海アリス幻樂団の他にも、出演されている音楽サークルさんのCDやグッズなどもあり、既に在庫がなくなっているものもありました。

 また東方二次創作ゲームプレイコーナーでは、ゲーム機やパソコンで配信されている東方二次創作ゲームの試遊ができ、私も「幻想戦略録」をその場で体験させていただきました。

 

もう一つの原作の可能性

 ところざわサクラタウンに常設されているダ・ヴィンチストアの一部が東方やおよろず商店の出張コーナーになっており、たくさんの東方のグッズや書籍が並んでいました。

 お母さんに向かって東方について話すお子さんや、熱心に原作書籍を読み漁っている子どもがいたり、逆に子どもが普段遣いできるハンカチを親御さんの方から一緒に選んでいたりと、東方の幅広い年齢層を感じる場所でした。

 

スクリーン越しでも変わらぬ熱気

 イベントも佳境です。

 メインステージでは東方人気投票の開票速報が今まさに行われようとする中、メインステージの外でも会場の様子を見ることができるライブビューイングが実施されていました。その会場も既にたくさんの人で溢れており、ただならぬ熱気を放っていました。

 作品や楽曲の発表はもちろんのこと、人妖部門の発表では誰もが固唾をのみ、最下位からの発表にも関わらずかなりの熱気。東方人気投票の発表前に落雷の影響で遅れて進行していたライブパフォーマンスでは手拍子が起こるなどの盛り上がりを見せていましたが、それからも会場は一向に冷めていません。

 とりわけC62サークルカットの娘でざわつくなど、非常に強い関心が向けられているように感じました。

 発表は進んでいき、遂に1位と2位の発表。霊夢と魔理沙という主人公組による決戦に、ライブビューイング会場のボルテージは最高潮に。

 発表された霊夢1位のアナウンスを聞いて、会場は大盛り上がり。その熱気のまま神主の予想を見てひとしきり笑ったりしたあと、ビートまりおさんの「起立!」の声にこちらの会場も全員起立。その場にいた全員で「えーりん!えーりん!」の大合唱が始まりました。

 誰もがみな本気で声を出していて、声を出すのが恥ずかしいなんて1ミリも思わせない、そんな楽しい雰囲気をみんなで作り上げていました。

 

提灯が照らす帰り道

 ライブビューイングが終わって会場の外に出ると、日がとっぷりと暮れていました。暗くなった会場を、名入り提灯たちが明るく照らしていました。

▲5連単予想をしていた土露さんも、いつの間にか提灯売りをしていました

 思えば一日中会場にいた訳ですが、イベント開催中に見た時と帰り際に見た時とで、この場所に名入りの提灯を飾られていることの意味が随分変わりました。

 これらは単にイベントで名前を飾るスポンサーとしてではなく、確かにこの会場に集まってイベントをみんなで作り上げたのだという、そんな思い出の証こそがこの提灯だったのです。

 持って帰られた提灯の数だけ、それぞれの思い出がある。そんなことに思いを馳せながら、私も家路につきました。

 

終わりに

 さて、前後半と二夜にわたってお送りした今回の「あつまれ!東方ステーション」参加レポート、いかがでしたでしょうか?

 一日中メインステージ以外の催し物の見て回ったのですが、運営はメインステージと野外イベントの両方を回れる想定で作っているのか?と思うほど濃密な催しが目白押しでした。

「あつまれ!東方ステーション2024 in ところざわサクラタウン」会場フォトレポート

あつまれ!東方ステーション2024 in ところざわサクラタウン 会場フォトレポート

▲イベントの様子は、フォトレポートやレポート動画といった形で別の方たちも上げているので、さらに知りたい方はぜひこちらも合わせてご覧ください

 今回”メインホール以外”をあえて一日中回った訳ですが、そうすることでこのイベントの本質に少しだけ触れることができたように感じます。

 それは親子や友達、あるいは同じ友達でもリアルではなくインターネットで知り合った友達、さらにはこの場で知り合った人たちとその場で一緒に楽しさを共有する、そんな場所だったと私は振り返ります。 

 そしてこの楽しみ方をできる場所は運営の人たちだけで決して作れるものではなく、参加者一人ひとりが自分の楽しいという感情を心のうちに留めずに、身体の外に出しているからこそ作り上げられていたと感じます。 

 みんなで”あつまって”作り上げるという役割を参加者みんなが果たしている状態からも、全員が参加者としてイベントを作り上げる即売会の理念に近いものを私は強く感じました。 

 カラオケ、ライブビューイングなどで率先してコールをしたり盛り上げている人たちだけでなく、それに続く人たち、あるいはこのイベント会場で東方の話をしているだけでも、それを聞いた人が「ここでは自分の好きを、楽しいという感情を共有しても良いんだ」と思える空間を作ることができる。そんなイベントだったのではないかと今になって思うのです。

 その場で楽しみを共有できる、という即時性を持ったこの「あつまれ!東方ステーション2024 in ところざわサクラタウン」に参加したことで、どこか新しい世代のイベントの形を知ることができたような気がします。

 みんなで作る東方イベントの最前線、もしまた来年の開催があればぜひ皆様も行ってみてください!

 

「あつまれ!東方ステーション2024」はメインホール以外もアツかった!? 今だからこそ振り返る、現役大学生から見た「あつまれ!東方ステーション2024 in ところざわサクラタウン」イベントレポート(後編) おわり