東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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コラム
2023/05/08

なるべく避けないSTG!?今だからこそ伝えたい『東方花映塚』の面白さ

なるべく避けないSTG!?今だからこそ語る『東方花映塚』の面白さ

 この記事は、東方花映塚のおもしろさを、当作品をあまり遊んだことのない方々に対して、プレイヤーとしての私の経験をもとにして語ろうというものです。

 2005年に発売された東方花映塚は、東方シリーズならではの弾幕を楽しみながら、誰かと直接競いあうことのできる唯一無二のSTGシューティングゲームです。発売以来、実に多くのプレイヤーが花映塚に魅了されてきました。各地でオフ会が呼びかけられ、100名規模のオフライン大会も数年に渡って開催されてきました(日本で5番目に強い先輩もこの中にいる可能性が……?)。18年経ったいまでもオンラインの対戦募集がされており、いまなお遊び続けているプレイヤーがいます。

 私も10年以上にわたって花映塚を遊び続けてきたプレイヤーのひとりです。配信したり、オフ会に参加したり、大会を主催したりしてきました。2021年にはそうした活動の成果を『DEHANA』という攻略本にまとめました。


DEHANA
https://dehanac99.tumblr.com/

 プレイヤーとして、花映塚には人を長く惹きつけるだけの特別な魅力があると感じています。このゲームでなければ得られない体験や快感があり、それはどれだけ時間が経とうと色あせることがありません。花映塚ってこんなに楽しくて夢中になれるゲームなんだよ!ということを、この記事を通してぜひ知っていただければと思います。

 また、新作「東方獣王園」が発表されたいま、細かなシステムは異なるにせよ、同じ対戦型STGである花映塚から学べることがあるかもしれません。新作発売までに、花映塚で肩を温めてみるというのはいかがでしょうか。

 

なるべく避けないSTG

 はじめに言っておきたいのですが、花映塚では他の東方作品とは異なる能力が試されます。というのも、降ってくる弾幕の物量が多すぎるので気合避けだけでは到底対処しきれないし、ランダム要素が多いので安定するパターンを組むこともできないからです。「原作をプレイするのは好きだけど、花映塚はちょっと……」という方は、ここにつまづいてしまうのかもしれません。

 花映塚は、なるべく避けなくても済むように、常に少し先の未来を予測して行動するゲームです。そのためにはシステムを知ることが重要で、知識や画面に表示されている情報を使って、避ける弾を大幅に減らすことができます。その上で、最後には気合避けの勝負になってくるということです。

 実際、花映塚はシステムを理解しているかどうかで、プレイヤーの強さもゲームの楽しさもまったく変わってくるゲームです。花映塚を説明するのに「ノーマルシューターがルナシューターに勝てるゲーム」というフレーズがコミュニティで使われたことがあります。まさに、システムの理解がクリティカルであるということです。ゲームに慣れてきたらシステムにも目を向けてみましょう!

 

かんたんな用語解説とやさしいマニュアル

 先に、ゲーム画面と重要な用語の対応を示しておきます。とりあえずこれだけ分かっていればOK。

  • ①ライフ(被弾すると陰陽玉が減り、先になくなったら負け)
  • ②コンボボックス(「SPELL POINT」と書かれた囲みのこと。左がコンボヒット数、右がスペルポイント。なにかを倒すとスペルポイントが増える)
  • ③コンボゲージ(コンボボックスの下にある白い棒のこと。なにかを倒すと増え、時間で減る。これが0になると、連動してスペルポイントも0になる)
  • ④チャージゲージ(画面下部にある灰色のゲージのこと。このゲージを使って、相手への攻撃であるカードアタックを打つ)
  • ⑨バカ

 

 また、私が制作した花映塚のマニュアルを、拙同人誌から抜粋して公開します。これだけ知っていれば十分ということを網羅しているので、よければご覧ください。全部読むのは面倒という方は、最初の「キーコンフィグ」の項だけでも見ておいたほうがいいかも。

「弾幕凡例+マニュアルリライト」抜粋

 

花映塚ならではの魅力

 では早速、花映塚ならではのおもしろさや奥深さを、プレイヤー目線で紹介していきます。5つのポイントにまとめてみました。

 

① 弾消しのリアルタイムパズル ~ ギリギリの状況で最適手を探す楽しさ

 花映塚のキモは弾消しです。妖精や幽霊を倒すと生じる爆風に白弾を巻き込むと、白弾を消すことができます。

●弾消しと爆風の連鎖
※妖精を倒したことで青い爆風が発生し、それに巻き込まれた白弾が消えている(実際は消えた白弾は相手陣地に送られている)。
また、爆風は他の妖精や幽霊も巻き込み、巻き込まれた対象も爆風を発生させている。

 妖精や幽霊の配置、白弾の降り方を見て、きれいに弾を消す方法を考えます。もちろん向かってくる弾をたくさん消せれば、それだけ安全になります。うまく弾を消すためには、あえてショットを出さないタイミングを作ったり、幽霊を少しだけ留まらせておくのも有効です。また、画面上部にまで目を向けられると、次に降ってくる弾の分布が大まかに分かるのでより安定してきます。

 一瞬ごとにランダム生成された問題が提示されるので、きれいにさばける「解」を求めて動く、というイメージです。狙ったとおりに弾を消せると爽快ですし、少し安全な時間ができます。

 しかしその先にはまた、次のパズルが待っています。もちろん時間が経つにつれて、弾幕は激しくなっていきます。理解が追いつかない物量や速度の弾幕が降ってくることもあります。解を求めて、常に頭を回転させなければなりません。「苦しい→なんとかなった!→また苦しい!」のループをこなしていると「つらいけど気持ちいい……」という不思議な感覚になってくることでしょう。

 

② スペルポイントによるボスの押し付けあい ~ 盤面を支配する快感

 もうひとつの重要な要素が、画面左上にあるスペルポイントです。仕組みをざっくり説明すると

  • 妖精や幽霊を倒すとポイントが増える
  • 倒さない時間が続くとポイントは0に戻る
  • ポイントが10/30/50万になると、自動でボスが相手に送られる

というものです。

 本作を攻略する上で「スペルポイントを制するものが花映塚を制する」といっても過言ではありません。この数値によってボスが相手に送られ、ボスがいるほうは大量の弾幕を捌かなければならないからです(ボスは両方の陣地に、同時に一体しか出現しません)。

 実際のところ、はじめはスペルポイントを継続的に増やしていくことすら難しいです。低難易度の序盤はそれが顕著で、50万点なんてたまるわけがないと思うかもしれません。しかし上達するほどに、この数字を自分の思い通りにできるようになってきます。そして相手との駆け引きが生まれてきます。たとえば開幕は、どちらが先に10万点をためるかの探り合いです。相手より少し後に10万点を踏めば、しばらくの間ボスを相手に押し付けられることでしょう。

 このようにスペルポイントを上手にコントロールできれば、自分は楽になり相手には負担を与えることができます。うまくはまると、自分がゲーム全体を支配しているような感覚になります。……逆に相手のポイント管理がうまいと、ずーっと自分が苦しいわけですが。

 

③ 極限としての開花合戦 ~ 理解を超えたエクスタシー

 さて、試合時間が伸びてくると、次のような状態になることがあります。「弾幕が激しく飛び交い、常に爆風が発生し続け、お互いにスペルポイントがカウントストップ状態(99万9990)から動かず、C2(後述)を連打して耐えしのぐ」。この状態をコミュニティでは「開花」(あるいは「開花合戦」)と呼んでいます。

 C2とは「カードアタック-レベル2」のこと。チャージゲージを1本消費して打つ攻撃で、自機周辺の弾消し効果と自機の無敵時間が付与されるので、C2の連打が永遠に続いてしまうのではないかと思うかもしれません。しかしそうでもないのです。キャラクターにもよりますが、この状態でも十分に被弾リスクはあります。弾消しも無敵時間も追いつかないくらいに、速度と密度を持った弾幕が飛んでくるからです。

 こうなるとC2を打つ合間の無防備な時間をいかに凌ぐかの勝負になります。また、開花の最中でもチャージゲージを回収しきれずに、次のC2が撃てない場面も出てきます。そこをいかに凌いで、C2のループに入り直すか。プレイヤーの腕が問われます。

 弾消しの精緻なパズルと繊細なスペルポイント管理の先に、この開花合戦が待っています。理解を超えた弾幕が飛び交い、ちょっとでも油断すれば、弾幕の大波に飲み込まれてしまう。ここまでの緻密な戦いは一転して、息もつかせぬ乱打戦へと変貌します。開花状態には、脳汁が出まくって出まくって止まらないような快感があります。花映塚を遊ぶなら、一度はこの開花状態を体験してみてほしいと思います。

 ただし、どちらかが被弾した瞬間に、再びそれまでのじりじりとした戦いに戻ることもあります。その切り替えもまた難しいところです。

 

④ 絶妙なバランス ~ 何度でも遊びたくなる

 花映塚には、プレイヤーに愛され続ける、遊びごたえのあるマッチアップがいくつかあります。たしかに上級者になると16キャラすべてが対等に戦えるわけではありません。しかし、いくつかの組み合わせは絶妙なバランスで、熟練度がはっきりと出るので、やりこみがいがあります。霊夢 vs 魔理沙、小町 vs 映姫、妖夢 vs 妖夢、咲夜 vs 咲夜がその代表です。

 ちなみに、対戦ゲームということで、ティアリスト()が気になる方がいるかもしれません。もちろんティアリストはいろいろと作られているのですが、これはあくまでもお互いに熟達したプレイヤー同士でのことであって、初心者にはあてにならないことが多いです。さしあたりは自分の好きなキャラ・動かしていて楽しいキャラを探すのが良いでしょう。それでも強キャラが気になるなら、霊夢・魔理沙・妖夢・小町・映姫あたりがおすすめです。

※ティアリスト

対戦系ゲームにおける、使用キャラなどの強さを表したランキング

 もうひとつ、バランスということで言えば、花映塚には「喰らいC2」というシステム(バグ?)があり、これがとてもいい味を出しています(ここからは複雑なので、分からない方は⑤まで飛ばしても構いません)。これは「被弾してから60フレーム以内にC2以上のカードアタックを発動すると、本来であれば被弾によって回復するはずのチャージゲージが、一切回復しなくなる」というものです。

 このシステムによって、結果的にリスクとリターンが発生するようになります。対戦中、ボスを送り返すためにしばしばスペルポイントをリセットする必要があります。「スペルポイントをリセットする」というリターンを得るためには、コンボゲージが0になるまで時間を稼いでからC2を打ちたい。時間を稼ごうとすると、当然弾は自機近くまでやってくる。そして弾を引きつけるほどに、「ライフを失う+チャージゲージが増加しない」という大きなリスクを抱えることになります。

 喰らいC2のリスクがあるからこそ、ライフでリードしていてもまったく油断できません。特に自分がラストライフになるときに喰らいC2をすると一瞬でゲームが終わる可能性があります。本来ラストライフになるときはチャージゲージが全回復するのですが、喰らいC2になってしまうと一切回復しないからです。ゲーム終盤は、ライフで勝っていてもこのように強い緊張が生じます。同時に、負けている側から見れば、どこからでも逆転のチャンスがあるということです。最後の最後まで、勝負は分かりません。

 

⑤ 間接的なインタラクション ~ 対戦がニガテでも安心

 格闘ゲームと比べてみると分かりやすいのですが、画面が分かれている以上、自分も相手も自由に動くことができます。相手に動かれている間は何もできないということがありません。また、ゲームであっても相手を殴ったり撃ったりすることにはストレスが生じることがありますが、弾消しやスペルポイントを通して間接的にやりあう花映塚にはそのようなストレスが少ないように思います。

 対人対戦ゲームが好きではないが花映塚は遊べるという人を、わたしはしばしば目にしてきました。競争をあまり好まない人でも、抵抗が少なく遊べるというのもこのゲームの大きな魅力です。

 

おわりに

 以上、5つのポイントに絞って花映塚の魅力を紹介してきました。ここには書ききれませんでしたが、まだまだ花映塚には気持ちいい瞬間や奥深いテクニック、楽しい遊び方があります。これを機に、ちょっとプレイしてみようかなと思っていただけたら幸いです。現在はsteamで購入できるし、フレンドとネット対戦もできますよ。

 また、花映塚についてはこれまでにたくさんの攻略や考察、記録が書かれてきました。そのような情報を、日本海外問わずまとめたリンク集を作っています。こちらも必要に応じて参考にしてみてください。

花映塚を楽しむためのリンク集

 それでは、良き花映塚ライフを!

 

当記事を執筆いただきましたmedoさんによる、東方獣王園の解説記事を後日掲載予定です。

刷新されたシステム面の解説など、獣王園をより楽しく遊ぶための内容となります。掲載までしばらくお待ちください。

なるべく避けないSTG!?今だからこそ伝えたい『東方花映塚』の面白さ おわり

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